祖母は、永く暮らした、この村の一角で、土に還っていった。
幼い日、砂のいっぱいついた小さなサンダルがあった玄関の土間には、黒い革靴。
叔母が浜で採ってきたテングサ。
帰り持たしてくれたのは、それでつくったトコロテン。
ばあちゃん、お疲れさん!
また会いにくるよ。
貸借対照表の、右と左が合わない…。
パソコンで貼り付けて作業してるんだから、そんなはずはありえんのだけど、それが何故かわからず昨日は時間を喰ってしまった。
結局「トラックの車検代を現金で支払った」のをうっかり現金出納帳に移し忘れてたっていう単純なミス。
それと、経費帖の合計をまとめのページへ写すときに手打ちで末尾が~1770の数字を~1170と打ち間違えた…っていう二つが重なって、これを発見するまでに大量の時間と神経を浪費した。
てなわけで、げっそり疲れたモヤモヤ感も一緒に、夕方税務署の時間外受付ポストに投げ込んで、今年の一大イベントは終了した。
さ、現場行こ。
昼間の仕事を終えた左官のMさんと製材屋さんの事務所でくつろいでいたら、製材屋のおかみさんがカツオをもってやってきた。
知人が釣ってきたのだそうで。
左官のM氏、「腹だけ出しとこうか」と、とりあえず出刃包丁を借りたのだけど、錆びてとてもさばける状態じゃない。
しかも砥石は現場。
「…ありがとうございます」と言ったものの、いったいどうしたもんか。
真夜中、しかも自分はジェットヒーターの番をしにもうすぐ現場へ出かけなければならない…。
頭を整理すると、自分が現場で包丁を砥いで、夜のうちに3枚におろしておいたら良いのだ。ということになる…。
というわけで、どうせ起きてるんだからと、夜中、裸電球の明かりで出刃包丁を研ぐ男あり。
かなり怪しい。
錆びと刃こぼれがひどく、1時間ほどかかってようやくさばけるくらいにまでなったので、カツオをビニール袋からとりだし、手術開始。
カツオは初めてだったけど、うろこがほとんどない分、さばきやすいもんだなあと。
3枚におろして適当に切り分けて醤油と酒で漬けて終了。
血だらけのアラは鍋に。
もしこのタイミングで誰かが現場に入ってきたら誤解するだろうな。
血まみれの出刃包丁、新築現場で振り回してたら、かなり怪しいぞ。
で、一夜明け、お昼はご飯を炊いて、こないだの残りの猪(しし)汁と焼き鰹!
風も穏やか。
田んぼを眺めながら、なんて贅沢な昼食なんだろう。
めでたしめでたし。
ああ眠い、仮眠しなくっちゃ。
夜行列車。
3年ほど乗ってないな。
まして、ひとりで乗るのは実に久しぶり…。
名古屋駅で列車を待ってると、記憶がいろいろよみがえってくるのだ。
よく「ちくま号」や「くろよん号」なんかで、出かけたなあ。
あのころは、こんなビルはなかったよな。
11月13日。
旧暦10月14日の夜。
満月でも見ながら時間をつぶす。
(広角レンズなので歪んでるけれど、月は実際はほとんど真ん丸です)
列車到着。
乗り込む。
豊橋あたりまでは、通勤らしき人が最終列車として利用するようだけれど、平日、しかも、青春18切符の使用できない期間なので、人影もまばらな車内。
窓に寄ればほとんど真上にお月さん。
忍ばせておいたビールでも飲みながら月見。
この列車は、特急型の車両を使っていて、どうも身延線のふじかわ号と使いまわしらしい。
本来全車指定席なので、ひとり一つの椅子でリクライニングで…となるのだけれど、ここまでガラガラだと、昔ながらの夜行列車のノリで、こんなのをやってみた。
特急用はこんなのを想定してないのでか、昔のボックス席よりも寝にくい。
でもこの姿勢が夜行の醍醐味。
時々体の向きを変えながらうたた寝。
沼津には未明の3時過ぎに到着。
とりあえず改札をでる。
タクシー乗り場の前に忘れられた靴。
酔っ払いか、土禁のため脱いだのか…。
駅前を散歩しながら夜明けを待つ。
沼津駅で発車を待つ「ムーンライトながら号」。
満月の夜は更け、しかしこの季節の夜明けは遅く、まだまだ夜は続くのだ。
訳わからん(?)今回の旅は始まったばかり。
(つづく)