古希来記

古希を過ぎて気ままな暮らし。
見たり聞いたり感じたり、とりとめもないが折々のつぶやき。

物忘れ、度忘れ

2008年11月06日 | Weblog
「おい、あれだ、そうじゃないってば」
「あれだと云ってんだ、わかんねえなあ、まったくう」
もちろんこんな偉そうでぞんざいな口を聞けば大変なことになるので、やわらかく、やわらかくだが、最近は物忘れがひどくなった。物の名前が出てこないのなどはしょっちゅうである。
度忘れもひどい。
二階に上がる用があり、上がったとたんにその用を忘れるなどは再三である。
玄関のカギなどもいったんかけて歩き出してから戻って確認するようなことも多い。車を降りた時はキイはたいがい二度かける。
いよいよかなぁ。その時が近づいてきたのかなぁ。
女房には時々「早い者勝ちだかんね」と云っている。
いずれ老老介護だから早くボケてしまった方が勝ちというわけである。

ま、しかし、忘れっぽくなったのにもいいことはある。
八万四千もあるという煩悩などはあらかた消えてしまっているようでもある。
もう一つのはっきりした御利益は藤沢周平を何回読んでも楽しめるということである。もともと読書好きで乱読なのだが最近は藤沢周平ばっかり読んでいる。それも同じ作品を何回も何回もである。主役ばかりでなく脇役などのちょっとしたしぐさの描写、闊達な江戸弁や侍言葉、ぽんぽんと名調子の啖呵や掛け合いなどに接するたびにわが意を得たようないい気分になる。

忘れっぽくなったらそれはそれでいいではないかなどと思うこのごろである。