CRASEED Rehablog ニューロリハビリテーションとリハビリ医療の真髄に迫るDr. Domenのブログ

ニューロリハビリテーションの臨床応用を実践するリハビリ科専門医・道免和久の日記【CRASEED Rehablog】

医局制度を考える その5

2005-12-08 05:25:25 | 医局制度
業界の人からは変人と呼ばれるのかもしれませんが、

●私は、医学部教授として私個人を接待する宴会はお断りします。
●地方の講演会終了後などに開催される懇親会には、文字通り(特に現場の医師や療法士との)親睦を深めるために出席しています。
●プロジェクトのメンバー全員に対する病院経営者からの説明会等は適宜実施しています。
●このプロジェクトは全国に数百名の広がりが予想されます。また、週末は講演会等でほとんどスケジュールが埋まります。したがいまして、誠に申し訳ないのですが、メンバーの結婚披露宴には全て欠席させて頂いております。そのかわりに、(本当に!)記憶に残る心からのプレゼントを差し上げることにしています。
●通常のNPO法人と同様、CRASEEDに対する御支援は受けさせて頂きます。この場合、予算、決算は理事会や総会を通りますので、透明性が確保されます。
●将来的に、CRASEEDの代表は適任者に交替して頂くことを考えています。組織運営上のけじめをつけるためです。(CRASEEDは、既にいくつか存在する「トンネル医局」ではありません。)

<その4>の記事の通り、「医局」という法人は存在せず、存在しないところに(企業や政治家の贈収賄のような多額ではありませんが)お金の出入りがあるところが、不透明だったわけです。今は大学への助成金という形で、ほとんどが透明化されていると信じていますが、リハビリ科のような地味な科ばかりではありませんので、他科のことはよくわかりません。

これまで、病院経営者等からの要望により、懇親の場にお付き合いしておりましたが、そのことがメンバーに見えないまま、「人事派遣」につながってはいけない、と思っています。当プロジェクトではそういうことは一切ありません。白い巨塔の一場面にもありましたが、永田町の料亭政治みたいなことは、医学の世界では無縁にしなければなりませんね。

医局制度を考える その4

2005-12-07 05:29:23 | 医局制度
「大学医局」という法人は存在しません。「医局」とは単に医師が集まる部屋を意味するのみです。そして、医学部教授の「人事権」は、大学病院や分院に限られ、市中病院は公式には全く無関係です。

ところが、一般的には以下のように理解されています。

医学部教授は、医局という大企業の社長。大学スタッフが本社勤務。「関連病院」は(公立病院であっても)医局の支店にあたり、多数の支店社員の人事を含めて、医学部教授や医局長(人事部長にあたる?)が決定する。したがって、支店毎に別法人の責任者(院長や理事長、市長、県知事等)がいても、責任者の意志とは全く無関係に、社員の人事が決められる。大学病院に戻ることは「本社勤務」であり、社長に気に入られなければ、遠隔地の病院(地方支店)に「飛ばされる」ことも・・・。それだけ強い結びつきがあっても、支店勤務中に、本社から支給される報酬がないどころか、大学研究生となるために「授業料」を払い、将来の「学位」取得の意志や、医局への忠誠を試される・・・。

私はこの制度について、社会科学の対象として興味がありますが、当事者である医者にとっても国民にとっても問題の多い制度だと思っています。良い点はあります。だからこそ残っています。しかし、医者だけでなく国民も「白い巨塔」の権力闘争の世界を面白がっていては、いつまでも閉鎖的な体質は改善されないでしょう。

私も、埼玉県に勤務し、子供が2歳と0歳だったときに、「次は小松だから。」という医局長からの電話一本で、埼玉県から高速道路で550km先の石川県に「飛ばされ」ました。抵抗しましたが「人事命令」は絶対でした。そもそも、そんな遠隔地の病院を「関連病院」にすることについて、社員である「医局員」の了解など得ていません。教授と医局長など一握りの幹部と、病院経営者の「決定」があるのみ。とりあえず、最初に「派遣」される医師1名だけが、「行きます」と言えば、永続的に「公式」の人事派遣先として、医局員全員が派遣の「リスク」にさらされます。

そんなひどい人事だったら、関連病院にすることを医局員全員で拒否すれば良い、と思われるところですが、結局、貧乏くじの「被害者」は1名だけなので、それ以外の医局員は「ラッキー」という心境なわけです。何年に1回、引くか引かないかの「はずれくじ」のために、医局長や教授に睨まれるより、ラッキーな人事のうちに学位研究を仕上げた方が良い、と思う人が大半でしょう。もちろん、教授など医局幹部が「関連病院」とした決定を、医局員が覆すことなど「前代未聞」のありえない話です。

しかし、私達は「関連病院」を決めるのは、教授ではなく、実際に仕事をする人(つまり医局員全員)でなければならないと思います。したがって、私のところにご挨拶に来られる病院経営者には、私にではなく、メンバーの医師達に、働きたいと思ってもらえるような情報を提供して下さい、とお願いしています。その上で、メンバー全員によるアンケートの病院ランキングが上がるように、リハビリの理念などの改善をお願いしています。

また、勤務条件について、例えばある人が半額の報酬でもある病院で働きたい、と言ったとしても、私達のプロジェクトのメンバーは全員がそれを認めないでしょう。なぜなら、「君の先輩もこの待遇で働いたのだから、君も我慢しなさい。」と言われるからです。ポストは一人のものではなく、メンバーの共有ポストである、という意識付けをもってもらっています。そういう視点で希望病院調査のアンケートもすっかり定着しました。

人事異動はないにこしたことはありませんが、すぐれた臨床医になるためには、特徴が異なるいくつかの病院でも臨床経験が必要です。したがって、旧来の医局とは違うやり方で、必要最小限の人事異動は行っています。

別の医局に移るときも、驚くべきしきたりが存在するようです。
次回をお楽しみに。



兵庫医大室内学部院内コンサート

2005-12-04 19:42:35 | 音楽
1週間前になりますが、11月27日日曜日に兵庫医大病院内のレストランで室内学部のコンサートを行いました。毎年行っているものですが、そのときの学生さんの企画により個性が出て、お手伝いしている顧問としても楽しいものです。
今年は、金管アンサンブル(王宮の花火の音楽)にも、弦アンサンブル(星に願いを)にも出させて頂きました。弦アンサンブルの方は、本来弦4部に書かれていましたので、急遽、本番直前に譜面を頂き、初見本番(?!)でした。カヴァレリアルスティカーナ間奏曲などもまずまずの出来でしたが、アンケートでは、島唄(沖縄三味線とギターと合唱)が最も好評でした。やはり、患者さんも一緒に手拍子で歌う企画が良かったようです。アンコールは、すっかり十八番になった情熱大陸。
入院中の患者さんが大勢来て下さいました。ありがとうございました。
(「急な入院でコンサートに行けなかったのに、病院内で生演奏が聴けて嬉しかったです」という患者さんがおられ、私達もそんな感想が本当に嬉しかったです。)

長嶋茂雄氏の歩行障害について

2005-12-01 02:11:22 | リハビリ
長嶋茂雄氏のリハビリと回復状況について心配している専門家として、一言申し上げます。
(実際に診察をしたわけではなので、参考意見に過ぎないという前提で、お読み下さい。)

長嶋さんの歩行障害の状況は、東京ドームのときと文化勲章のときの映像から知ることができます。私は、東京ドームに来訪されたときの映像で、数歩の歩行と一瞬の動作しか拝見していませんが、私なりにとらえた問題点は以下の通りです。
 1)患側(右)下肢の立脚期が短い。
 2)そのために、健側(左)下肢をひきずっているように見える。
 3)装具を使用していないように見える。
 4)野球場の椅子の高さが低いとはいえ、立ち上がりに介助を要している。

最近の理学療法に多い患側下肢の遊脚期ばかりの訓練を行ったために、上記の状態に陥っているのではないかと危惧しています。足関節に随意性がない場合、十分な立脚期の支持性を得るために、
 1)短下肢装具により下腿の前方移動≒膝の屈曲を防ぐ。
 2)大腿四頭筋、大臀筋の収縮により膝の屈曲を防ぐ。
 3)上記が、患側下肢の立脚期に遂行できるように運動学習を進める。
 4)1)~3)において、膝が過伸展にならないように注意する。
などが必要となります。(スタンダードな治療をしている医師、療法士には、あまりにも明白なことですが、いくら説明しても理解できない人が少なくありません。)

歩行訓練時間はかなり長いと報道されていますが、患側下肢による荷重訓練が不足していると個人的には考察しています。結局、「痙縮を抑制すること」を「歩けるようになること」よりも優先する治療法と、共通点が見えてきます。

長時間のリハビリ治療は良かったのですが、質や内容はどうだったのでしょうか?

以上、直接診察しておりませんので、画像から観察した推測を申し上げました。

                      (道免和久)