CRASEED Rehablog ニューロリハビリテーションとリハビリ医療の真髄に迫るDr. Domenのブログ

ニューロリハビリテーションの臨床応用を実践するリハビリ科専門医・道免和久の日記【CRASEED Rehablog】

長嶋茂雄氏の歩行障害について

2005-12-01 02:11:22 | リハビリ
長嶋茂雄氏のリハビリと回復状況について心配している専門家として、一言申し上げます。
(実際に診察をしたわけではなので、参考意見に過ぎないという前提で、お読み下さい。)

長嶋さんの歩行障害の状況は、東京ドームのときと文化勲章のときの映像から知ることができます。私は、東京ドームに来訪されたときの映像で、数歩の歩行と一瞬の動作しか拝見していませんが、私なりにとらえた問題点は以下の通りです。
 1)患側(右)下肢の立脚期が短い。
 2)そのために、健側(左)下肢をひきずっているように見える。
 3)装具を使用していないように見える。
 4)野球場の椅子の高さが低いとはいえ、立ち上がりに介助を要している。

最近の理学療法に多い患側下肢の遊脚期ばかりの訓練を行ったために、上記の状態に陥っているのではないかと危惧しています。足関節に随意性がない場合、十分な立脚期の支持性を得るために、
 1)短下肢装具により下腿の前方移動≒膝の屈曲を防ぐ。
 2)大腿四頭筋、大臀筋の収縮により膝の屈曲を防ぐ。
 3)上記が、患側下肢の立脚期に遂行できるように運動学習を進める。
 4)1)~3)において、膝が過伸展にならないように注意する。
などが必要となります。(スタンダードな治療をしている医師、療法士には、あまりにも明白なことですが、いくら説明しても理解できない人が少なくありません。)

歩行訓練時間はかなり長いと報道されていますが、患側下肢による荷重訓練が不足していると個人的には考察しています。結局、「痙縮を抑制すること」を「歩けるようになること」よりも優先する治療法と、共通点が見えてきます。

長時間のリハビリ治療は良かったのですが、質や内容はどうだったのでしょうか?

以上、直接診察しておりませんので、画像から観察した推測を申し上げました。

                      (道免和久)