付き合い始めて1ヵ月半。だんだん気心知れてきたということもあって、互いに本性をみせはじめました。火曜の夜、Jimmyと初めてデートに行ったギリシャ人経営のハンバーガー屋にまた行ったのだけど、つまらないことで議論に。そのパターンが、またまた過去の別れた某男を彷彿とさせるような展開。
Jimmyの性格の弱点は、「いつも自分が正しい」っていうような一方的な話し方をしがちということ。僕が別の見方を提案してもそれを認めたがらなかったり、僕が単に見聞きしたことを伝えてるだけなのに、なぜか反論してくる。
ストレスの溜まった僕は、Jimmyに、「これまでにもきっと誰かが指摘してると思うんだけど、Jimmyって自分の意見を主張するばっかりで相手の言うこと聞かないよね?」って言っちゃいました。そうすると、Jimmyも開き直って
「僕ってそんなにpleasantな人間じゃないから」。
開きなおる手段に出たJimmyにこっちもムカッ。レストランから出てJimmyの車まで歩くのに、僕はJimmyより2、3歩先を早足で歩いて会話はなし。そして、僕の自宅前まで到着したとき、Jimmyが「木曜夜、また会える?」と少し不安そうに聞いてきた。一応Yesと応えておいたけど、その晩は少なくともJimmyとそれ以上口をきく気にはなれなかった・・・。
水曜はJimmyに会う日じゃないので、火曜日のわだかまりを引きずったまま、Jimmyに連絡を取るつもりは甚だなかった。だけど、会社の昼休み、インターネットで週末の映画を調べていたら、待ちに待っていた話題のゲイ映画、『Brokeback Mountain』が公開されるというのを思い出した。オンラインでチケットの残り具合を調べてみると、金曜夜、7時以降はすべてソールドアウト。かろうじて午後6時からのチケットが残っている。モタモタしているとこれもすぐにソールドアウトになりそうな気配。実は、今週末の土曜日からメキシコ、ベリーズ、ホンデュラス方面にクルーズ旅行に行く僕は、金曜しかこの映画を観るチャンスがなかった。
慌てた僕は、即、Jimmyの仕事先にEメールを送った。
「金曜、6時からBrokeback Mountainの映画チケットがまだ買えるんだけど大丈夫?」
いつもはすぐにJimmyから返事が返ってくるのに、今日は30分たっても返事がない。痺れを切らした僕は、Jimmyの返事を待たないまま、チケットを2枚購入。
「チケット2枚、もう買ったから」
という速報メールを出しておいたら、Jimmyから夕方、「Groovy!」という一言メールが返ってきた。
この映画、全米で議論を巻き起こすほどの話題になってます。監督は、ゲイ映画『Wedding Banquet』や、アカデミー賞受賞作の『Crouching Tiger, Hidden Dragon』、以前ここでも紹介した『Ice Storm』、そしてSF映画の『Hulk』なんかも手がけている今、最も多彩な才能を開花させている監督。彼自身は台湾人で、ストレート。だけど、なぜかゲイ映画を2本撮っている。
今回の『Brokeback Mountain』は、ピューリツァー賞を受賞した短編小説が原作。ワイオミング州で、ひと夏、羊の群れの番をすることになった2人のカウボーイたちの純愛を描いている。映画評論家たちも大絶賛。NY Timesの記事によると、この映画の最後は、涙が止まらなくなるようなエンディングなのだとか。運良く試写会で観たという知人からは、「ティッシュと、隣に手を握れる人を連れて行くように」というアドバイスまであった。
火曜の夜にギクシャクしてしまったJimmyとの関係だけど、旅行前に、感動のゲイ浪漫映画を二人で観ることで仲直りできるか?!(その前に木曜夜にまた会いますが・・・。)
Jimmyの性格の弱点は、「いつも自分が正しい」っていうような一方的な話し方をしがちということ。僕が別の見方を提案してもそれを認めたがらなかったり、僕が単に見聞きしたことを伝えてるだけなのに、なぜか反論してくる。
ストレスの溜まった僕は、Jimmyに、「これまでにもきっと誰かが指摘してると思うんだけど、Jimmyって自分の意見を主張するばっかりで相手の言うこと聞かないよね?」って言っちゃいました。そうすると、Jimmyも開き直って
「僕ってそんなにpleasantな人間じゃないから」。
開きなおる手段に出たJimmyにこっちもムカッ。レストランから出てJimmyの車まで歩くのに、僕はJimmyより2、3歩先を早足で歩いて会話はなし。そして、僕の自宅前まで到着したとき、Jimmyが「木曜夜、また会える?」と少し不安そうに聞いてきた。一応Yesと応えておいたけど、その晩は少なくともJimmyとそれ以上口をきく気にはなれなかった・・・。
水曜はJimmyに会う日じゃないので、火曜日のわだかまりを引きずったまま、Jimmyに連絡を取るつもりは甚だなかった。だけど、会社の昼休み、インターネットで週末の映画を調べていたら、待ちに待っていた話題のゲイ映画、『Brokeback Mountain』が公開されるというのを思い出した。オンラインでチケットの残り具合を調べてみると、金曜夜、7時以降はすべてソールドアウト。かろうじて午後6時からのチケットが残っている。モタモタしているとこれもすぐにソールドアウトになりそうな気配。実は、今週末の土曜日からメキシコ、ベリーズ、ホンデュラス方面にクルーズ旅行に行く僕は、金曜しかこの映画を観るチャンスがなかった。
慌てた僕は、即、Jimmyの仕事先にEメールを送った。
「金曜、6時からBrokeback Mountainの映画チケットがまだ買えるんだけど大丈夫?」
いつもはすぐにJimmyから返事が返ってくるのに、今日は30分たっても返事がない。痺れを切らした僕は、Jimmyの返事を待たないまま、チケットを2枚購入。
「チケット2枚、もう買ったから」
という速報メールを出しておいたら、Jimmyから夕方、「Groovy!」という一言メールが返ってきた。
この映画、全米で議論を巻き起こすほどの話題になってます。監督は、ゲイ映画『Wedding Banquet』や、アカデミー賞受賞作の『Crouching Tiger, Hidden Dragon』、以前ここでも紹介した『Ice Storm』、そしてSF映画の『Hulk』なんかも手がけている今、最も多彩な才能を開花させている監督。彼自身は台湾人で、ストレート。だけど、なぜかゲイ映画を2本撮っている。
今回の『Brokeback Mountain』は、ピューリツァー賞を受賞した短編小説が原作。ワイオミング州で、ひと夏、羊の群れの番をすることになった2人のカウボーイたちの純愛を描いている。映画評論家たちも大絶賛。NY Timesの記事によると、この映画の最後は、涙が止まらなくなるようなエンディングなのだとか。運良く試写会で観たという知人からは、「ティッシュと、隣に手を握れる人を連れて行くように」というアドバイスまであった。
火曜の夜にギクシャクしてしまったJimmyとの関係だけど、旅行前に、感動のゲイ浪漫映画を二人で観ることで仲直りできるか?!(その前に木曜夜にまた会いますが・・・。)
今週末は忙しかった~。先週末、あれだけJimmy宅で時間をもてあましたというのが信じられない。
Friday:
金曜夜はJimmyと普通にレストランで夕食を食べた。だけど、これまでになく会話がすごく盛り上がった。トピックは何かと言うと、仕事。実は、Jimmyと僕は仕事が同じ業界のため、業界用語とか最近のビジネス・トレンド、追っかけているテーマなんかが同じ。なので僕が仕事上知り合った人をJimmyに紹介するなんていう話にもなりつつある。色気ない話だけど、この晩はJimmyと仕事について面白いディスカッションができてよかった。
Saturday:
昼過ぎに、僕とJimmyは久々に「20代の集い」の知り合い10人くらいと合流して映画『The Chronicles of Narnia』を観にいった。映画自体はC+ってぐらいでイマイチ。
20代の集いでかつてよくつるんでいた中華系アメリカ人Benや、ハワイとオーストリア育ちのRyan、ロシア人のVictor、MIT卒業のアフリカ系アメリカ人Tonyなどなど、懐かしい人たちと半年振りくらいに再会した。きっかけは、BenがEメールで誘ってくれたということ。ちょうどJimmyとその映画を今週末観にいく予定だったというのもあって、距離を置いていた20代の集いのグループに久々に参加した。
だけど、6ヶ月以上も姿を見せなかった僕。何でいまさらっていうのもあって、幽霊が帰ってきたみたいな雰囲気。しかもJimmyっていう年上の恋人を連れてきてるし。Benは、同じアジア人として僕を運命共同体として親身に思ってくれている反面、逆にライバル心を持っているのが言動に見え隠れ。だけどカトリック教徒のBenは、そうした不穏な心内を持っていながらも、表面上は平静を装って僕とJimmyに親切に接してくれた。
映画を観終わって、僕とJimmyは二人だけで映画館を立ち去ることにした。というのも、この夜、水球チーム主催のクリスマスパーティーがあり、それに二人で参加することにしていた。立ち去る時、20代の集いの人たちには一応、挨拶をした。そしてJimmyと二人で数歩歩きかけたところで、Tonyが僕に声をかけてきた。
「Hey、久しぶり。5分くらい時間ある?もしかして急いでる?最近、全然、集まりに来ないから、どうしてたのかと思ってたんだ。いつも、『Tyはどうしたの?』ってみんなに聞いてたんだ」
このTony、僕が20代の集いに通っているときから、アタックを仕掛けてきてた、、、。
この日もJimmyが僕の隣にいるにもかかわらず、僕にまくし立てるように話すTony。半分、Tonyに引っ張られるようにしてみんなのところに戻る羽目になった。
幽霊の再来。
みんな何を話していいか分からず、Jimmyも何を話していいか分からず、嫌な沈黙。Tonyは、残ったポップコーンをRyanに投げつけ始めた。緊張のあまりその場をもてあまして子供じみた行動に出たTony。彼の心の置き場のなさが目に見えて、みんなも居心地悪い雰囲気。
20代の集いに来る人たちは、だいたい自分たちと同じ年代にしか興味なかったり、内気なタイプが多い。なので、Jimmyは一人取り残されて僕の隣で沈黙している。そしてついにJimmyが、「もう行こう」と催促してきた。僕たちは映画館のロビーに輪になってたむろする状態で、グループの一人からも、「なんで僕らはまだここにいるの?」と痺れを切らした声も聞こえ始めた。
それを機会に僕らは出口にノロノロ動き始めた。そして僕とJimmyは、みんなにじゃあねと告げて映画館を出た。
出たとたんに、Jimmyは、「みんな、あの年寄り誰って感じで見てたよね」と本音をポロリとこぼした。僕はそんなことなかったと思うのだけど、平均年齢25歳くらいのグループの中で一人40代というのは、確かに肩身が狭かったかも。20代の集いのメンバーに対面するのをそれなりに楽しみにしていた風なJimmyだったけど、かなり失望した模様。
Sunday:
先週ブランチを一緒に食べたJohnとGreggが、この晩、自宅マンションでクリスマスパーティーを開いた。日曜朝、Jimmyは、
「TyはJohnとGreggのこと好きじゃないんだよね」
と言ってきた。その言葉の裏には、「だから彼らのクリスマスパーティーには行きたくないよね?」っていう気持ちが隠されていた。僕は、「彼らのことは好きじゃないけど、もしJimmyが僕に一緒に行って欲しいんだったら行ってもいいよ」と言った。Jimmyは、そういう返事のされ方が好きじゃないっていうのは僕も分かっていた。なので、Jimmyは僕に「これは君の選択だから、自分の意思で決めるべきだよ」なんて予想通りのことを行ってきた。
結局、この会話は結論の出ないまま別の話題にすり替わっていた。そしていつのまにか、Jimmyの中で、僕はこのパーティーに行くことになっていた。
2つのマンションの壁をぶち抜いたような広いリビングに、子豚の丸焼きや、フォアグラのパテ、ドリンクを注いでくれるケータリング・スタッフと、かなりゴージャス。30名くらいゲイばかりが集まった。そこはゲイバーと変わらない風景。年齢層は、やっぱりJohnとGreggの年齢を反映していました。なので、ここでも一人アジア人でしかも年齢も10~20歳他の人より低い僕は、文字通り異色。
Jimmy以外の人と2、3人、話をしたけど話題が盛り上がるわけでもなく。一人、壁に掛けられた高価そうな絵画やタペストリー、クリスマス用の内装、ツリーなどを興味津々に眺めて時間をつぶした。不幸中の幸いは、ホスト役のJohnもGreggも他のゲストの対応に大忙しだったということ。彼らとあまり話をする機会はなかった。そしてパーティー後半、Jimmyも知り合いとの挨拶を終え、一人椅子に座っている僕の隣に戻ってきた。なのでパーティー後半は、Jimmyと二人でディープな話をすることに。
Jimmyの祖父はイギリスからNYに移民してきたということ、そして母親はカナダ人ということは、ずっと前に聞いていた。だけど、母親がカナダ人ということで、Jimmyは簡単にカナダ国籍が取れるらしい。これで思い出したのが、Brian。彼も父親がカナダ人なので、アメリカ国籍を持ちながら、カナダ国籍もその後取得していた。
「カナダだと僕たち結婚できるね。カナダに移民するんだったら、やっぱりバンクーバーだよね。移住するんだったら、その前に下見にいかないとね」
なんて話し出すJimmy。あんまり冗談のようには聞こえなかったんだけど・・・。
Friday:
金曜夜はJimmyと普通にレストランで夕食を食べた。だけど、これまでになく会話がすごく盛り上がった。トピックは何かと言うと、仕事。実は、Jimmyと僕は仕事が同じ業界のため、業界用語とか最近のビジネス・トレンド、追っかけているテーマなんかが同じ。なので僕が仕事上知り合った人をJimmyに紹介するなんていう話にもなりつつある。色気ない話だけど、この晩はJimmyと仕事について面白いディスカッションができてよかった。
Saturday:
昼過ぎに、僕とJimmyは久々に「20代の集い」の知り合い10人くらいと合流して映画『The Chronicles of Narnia』を観にいった。映画自体はC+ってぐらいでイマイチ。
20代の集いでかつてよくつるんでいた中華系アメリカ人Benや、ハワイとオーストリア育ちのRyan、ロシア人のVictor、MIT卒業のアフリカ系アメリカ人Tonyなどなど、懐かしい人たちと半年振りくらいに再会した。きっかけは、BenがEメールで誘ってくれたということ。ちょうどJimmyとその映画を今週末観にいく予定だったというのもあって、距離を置いていた20代の集いのグループに久々に参加した。
だけど、6ヶ月以上も姿を見せなかった僕。何でいまさらっていうのもあって、幽霊が帰ってきたみたいな雰囲気。しかもJimmyっていう年上の恋人を連れてきてるし。Benは、同じアジア人として僕を運命共同体として親身に思ってくれている反面、逆にライバル心を持っているのが言動に見え隠れ。だけどカトリック教徒のBenは、そうした不穏な心内を持っていながらも、表面上は平静を装って僕とJimmyに親切に接してくれた。
映画を観終わって、僕とJimmyは二人だけで映画館を立ち去ることにした。というのも、この夜、水球チーム主催のクリスマスパーティーがあり、それに二人で参加することにしていた。立ち去る時、20代の集いの人たちには一応、挨拶をした。そしてJimmyと二人で数歩歩きかけたところで、Tonyが僕に声をかけてきた。
「Hey、久しぶり。5分くらい時間ある?もしかして急いでる?最近、全然、集まりに来ないから、どうしてたのかと思ってたんだ。いつも、『Tyはどうしたの?』ってみんなに聞いてたんだ」
このTony、僕が20代の集いに通っているときから、アタックを仕掛けてきてた、、、。
この日もJimmyが僕の隣にいるにもかかわらず、僕にまくし立てるように話すTony。半分、Tonyに引っ張られるようにしてみんなのところに戻る羽目になった。
幽霊の再来。
みんな何を話していいか分からず、Jimmyも何を話していいか分からず、嫌な沈黙。Tonyは、残ったポップコーンをRyanに投げつけ始めた。緊張のあまりその場をもてあまして子供じみた行動に出たTony。彼の心の置き場のなさが目に見えて、みんなも居心地悪い雰囲気。
20代の集いに来る人たちは、だいたい自分たちと同じ年代にしか興味なかったり、内気なタイプが多い。なので、Jimmyは一人取り残されて僕の隣で沈黙している。そしてついにJimmyが、「もう行こう」と催促してきた。僕たちは映画館のロビーに輪になってたむろする状態で、グループの一人からも、「なんで僕らはまだここにいるの?」と痺れを切らした声も聞こえ始めた。
それを機会に僕らは出口にノロノロ動き始めた。そして僕とJimmyは、みんなにじゃあねと告げて映画館を出た。
出たとたんに、Jimmyは、「みんな、あの年寄り誰って感じで見てたよね」と本音をポロリとこぼした。僕はそんなことなかったと思うのだけど、平均年齢25歳くらいのグループの中で一人40代というのは、確かに肩身が狭かったかも。20代の集いのメンバーに対面するのをそれなりに楽しみにしていた風なJimmyだったけど、かなり失望した模様。
Sunday:
先週ブランチを一緒に食べたJohnとGreggが、この晩、自宅マンションでクリスマスパーティーを開いた。日曜朝、Jimmyは、
「TyはJohnとGreggのこと好きじゃないんだよね」
と言ってきた。その言葉の裏には、「だから彼らのクリスマスパーティーには行きたくないよね?」っていう気持ちが隠されていた。僕は、「彼らのことは好きじゃないけど、もしJimmyが僕に一緒に行って欲しいんだったら行ってもいいよ」と言った。Jimmyは、そういう返事のされ方が好きじゃないっていうのは僕も分かっていた。なので、Jimmyは僕に「これは君の選択だから、自分の意思で決めるべきだよ」なんて予想通りのことを行ってきた。
結局、この会話は結論の出ないまま別の話題にすり替わっていた。そしていつのまにか、Jimmyの中で、僕はこのパーティーに行くことになっていた。
2つのマンションの壁をぶち抜いたような広いリビングに、子豚の丸焼きや、フォアグラのパテ、ドリンクを注いでくれるケータリング・スタッフと、かなりゴージャス。30名くらいゲイばかりが集まった。そこはゲイバーと変わらない風景。年齢層は、やっぱりJohnとGreggの年齢を反映していました。なので、ここでも一人アジア人でしかも年齢も10~20歳他の人より低い僕は、文字通り異色。
Jimmy以外の人と2、3人、話をしたけど話題が盛り上がるわけでもなく。一人、壁に掛けられた高価そうな絵画やタペストリー、クリスマス用の内装、ツリーなどを興味津々に眺めて時間をつぶした。不幸中の幸いは、ホスト役のJohnもGreggも他のゲストの対応に大忙しだったということ。彼らとあまり話をする機会はなかった。そしてパーティー後半、Jimmyも知り合いとの挨拶を終え、一人椅子に座っている僕の隣に戻ってきた。なのでパーティー後半は、Jimmyと二人でディープな話をすることに。
Jimmyの祖父はイギリスからNYに移民してきたということ、そして母親はカナダ人ということは、ずっと前に聞いていた。だけど、母親がカナダ人ということで、Jimmyは簡単にカナダ国籍が取れるらしい。これで思い出したのが、Brian。彼も父親がカナダ人なので、アメリカ国籍を持ちながら、カナダ国籍もその後取得していた。
「カナダだと僕たち結婚できるね。カナダに移民するんだったら、やっぱりバンクーバーだよね。移住するんだったら、その前に下見にいかないとね」
なんて話し出すJimmy。あんまり冗談のようには聞こえなかったんだけど・・・。
アメリカに在住の皆さん、そちらの天気はどうですか?僕が住んでいる街も、この寒波に襲われて、1ヶ月早い真冬の気温。寒いー。最高気温で0度とか。芯まで冷えるってこういうことを言うんですよね。今日も会社帰りにバスを待っていたら、そのバスが来ない!どうなってんねん!こんな日に限って。なので歩いて帰ってしまった・・・。後悔。鼻水たらたら。
こんな日くらいは水球もお休みしようって思ったのだけど、Jimmyから「そこを頑張って来ると、練習後に満足感が得られるんだよ。それに、一旦プールに入ると、外の寒さなんて関係ないし」と電話越しに説得されてしまった。もうJimmy目当てに通ってる。つらい~こういう状態って。休みたくても休めない・・・。このジレンマ、どうすればいいんでしょうか。
今晩、体育館に入るやいなや、凍えきった僕のメガネは湿気で曇って何も見えない状態。マフラーで湿気をぬぐってプールを見ると、さすがの今日は来てる人が少ない。試合できる人数じゃない。なので、水泳やゴールをシュートする練習をして終わった。
練習後、いつもの恒例でJimmyと夕食に行ったのだけど、だいたい練習前に軽く食事を済ませている僕は、デザートとか軽いものしか食べない。それに、外食しすぎると食費がかさむので、貧乏人としてはなるべく自宅で食べたい。それなのに、Jimmyは、今晩も僕に、「何が食べたい?」と聞いた。僕が「何でもいいよ。だって僕は軽く食べてしまってるから」と答えると、「いつもデザートとかしか食べないよね」ってなんか批判的意見。
付き合い始めて1ヶ月たって、少しずつ互いのことが分かってきて、今、また探り合ってる状態。特に先週は地味+難所を乗り越えた週末でした。
結局、僕はJimmyが夕食を食べているのをそばで見ながら、ドリンクだけを飲んでました。食事中だったけど、しかもレストランの中だったけど、10時過ぎでお客もほとんどいなかったので、僕はJimmyに、「またあの軍服を着て見せてよ」ってお願いした。
実は、Jimmyは色々な「衣装」を持っていてそれを着せて見せてくれるのが好き。たまに僕に「これ着てみて」ってお願いしてくることもあるけど・・・。アメリカには軍関係の制服なんかの古着を売ってるお店があって、そこでJimmyも調達してきたらしい。で、これがJimmyによく似合ってるんだ。前回、Jimmyがそれを着せて見せてくれた晩、そのまま僕たちはソファーで映画を観て終わってしまった。僕を驚かせるつもりで衣装替えしたJimmyも、ちょっと肩透かしをくらってたかも。
それが今晩、僕のほうからあれをまた着てとお願いしたものだから、Jimmyは嬉しかった様子。「そういう風に言ってくれなきゃ僕も分からないから」と言っていた。
あんまり言い過ぎると注文の多いヤツって思われるけど、やっぱり言わないと分からないこともあるんだよね。コミュニケーションのバランスって微妙。言い過ぎず、少なすぎず。僕たちの場合、ちょっと慎重になりすぎて、口数が少なくなり気味だったからなぁ。マジで、たまに何を話していいかわからなくなってた。何か下手なことを言うと雰囲気を壊しそうで。もう少し自分らしさを出していいんだよね。それで相手に嫌われたら、それは合わないってことだから我慢して長続きさせてもしょうがないし。(あ、またDavidの記憶が・・・。)
Jimmy宅はワイヤレス・インターネットを敷設している。なので、僕が、
「今週末は僕のラップトップをもって行っていい?インターネットに接続できるよね?だってJimmyのPCだと日本語のサイトやEメールが読めないから」と聞いてみた。すると、Jimmyは、
「日本のゲイのポルノサイトもそれで見れるね」
っていう回答。これまで、Jimmyはそういうサイトに接続したことがあって、だけど日本語が文字化けして全く表示されなかったのだとか。もちろん肝心の「映像」はばっちり見たらしいのだけど。やっぱり、そういうのに興味があるだ、Jimmyは。ま、僕と付き合うくらいだからそうなんだろうけど。なぜか「へぇ~」と思ってしまった。
こんな日くらいは水球もお休みしようって思ったのだけど、Jimmyから「そこを頑張って来ると、練習後に満足感が得られるんだよ。それに、一旦プールに入ると、外の寒さなんて関係ないし」と電話越しに説得されてしまった。もうJimmy目当てに通ってる。つらい~こういう状態って。休みたくても休めない・・・。このジレンマ、どうすればいいんでしょうか。
今晩、体育館に入るやいなや、凍えきった僕のメガネは湿気で曇って何も見えない状態。マフラーで湿気をぬぐってプールを見ると、さすがの今日は来てる人が少ない。試合できる人数じゃない。なので、水泳やゴールをシュートする練習をして終わった。
練習後、いつもの恒例でJimmyと夕食に行ったのだけど、だいたい練習前に軽く食事を済ませている僕は、デザートとか軽いものしか食べない。それに、外食しすぎると食費がかさむので、貧乏人としてはなるべく自宅で食べたい。それなのに、Jimmyは、今晩も僕に、「何が食べたい?」と聞いた。僕が「何でもいいよ。だって僕は軽く食べてしまってるから」と答えると、「いつもデザートとかしか食べないよね」ってなんか批判的意見。
付き合い始めて1ヶ月たって、少しずつ互いのことが分かってきて、今、また探り合ってる状態。特に先週は地味+難所を乗り越えた週末でした。
結局、僕はJimmyが夕食を食べているのをそばで見ながら、ドリンクだけを飲んでました。食事中だったけど、しかもレストランの中だったけど、10時過ぎでお客もほとんどいなかったので、僕はJimmyに、「またあの軍服を着て見せてよ」ってお願いした。
実は、Jimmyは色々な「衣装」を持っていてそれを着せて見せてくれるのが好き。たまに僕に「これ着てみて」ってお願いしてくることもあるけど・・・。アメリカには軍関係の制服なんかの古着を売ってるお店があって、そこでJimmyも調達してきたらしい。で、これがJimmyによく似合ってるんだ。前回、Jimmyがそれを着せて見せてくれた晩、そのまま僕たちはソファーで映画を観て終わってしまった。僕を驚かせるつもりで衣装替えしたJimmyも、ちょっと肩透かしをくらってたかも。
それが今晩、僕のほうからあれをまた着てとお願いしたものだから、Jimmyは嬉しかった様子。「そういう風に言ってくれなきゃ僕も分からないから」と言っていた。
あんまり言い過ぎると注文の多いヤツって思われるけど、やっぱり言わないと分からないこともあるんだよね。コミュニケーションのバランスって微妙。言い過ぎず、少なすぎず。僕たちの場合、ちょっと慎重になりすぎて、口数が少なくなり気味だったからなぁ。マジで、たまに何を話していいかわからなくなってた。何か下手なことを言うと雰囲気を壊しそうで。もう少し自分らしさを出していいんだよね。それで相手に嫌われたら、それは合わないってことだから我慢して長続きさせてもしょうがないし。(あ、またDavidの記憶が・・・。)
Jimmy宅はワイヤレス・インターネットを敷設している。なので、僕が、
「今週末は僕のラップトップをもって行っていい?インターネットに接続できるよね?だってJimmyのPCだと日本語のサイトやEメールが読めないから」と聞いてみた。すると、Jimmyは、
「日本のゲイのポルノサイトもそれで見れるね」
っていう回答。これまで、Jimmyはそういうサイトに接続したことがあって、だけど日本語が文字化けして全く表示されなかったのだとか。もちろん肝心の「映像」はばっちり見たらしいのだけど。やっぱり、そういうのに興味があるだ、Jimmyは。ま、僕と付き合うくらいだからそうなんだろうけど。なぜか「へぇ~」と思ってしまった。
山と海、2つも選択肢が用意されていると思ったのに、取らぬ狸の皮算用。結局、Jimmy宅で無為に今週末を過ごす羽目になった。ビーチに家を持っているカップルは予定を変更して金曜夜にこの街に戻ってきたのでキャンセルに。山に家を買ったという知人からは連絡がなく、しかも今週末は寒波が押し寄せて雪。道が凍結して戻れなくなることを心配したJimmyが、今週末はじっとしてようという決断を下した。
<金曜夜>
寒波に襲われたこの日、Jimmyがここ10年以上通っているというAAミーティングに参加した。駅を乗り換えるのが面倒だったので、僕はJimmy宅へのお泊りセットの入ったバッグを担いで、極寒の風が吹き付ける中を一駅分歩いた。AAミーティングが開かれる教会につくと、Jimmyが入り口の階段で僕を出迎えてくれた。Jimmyにhugしながら、彼の頬に僕の頬をつけて挨拶。まるでイヌイットが鼻をこすり付けて挨拶するさながらの雰囲気。Jimmyの頬の暖かさが、僕の冷たくなった頬を通して伝わってくる。
AAミーティングは教会の半地下で開かれていた。既に多くの人が集まっていて、コーヒーにパンケーキを食べている。壁際には、古着が女性用、男性用、靴、シャツ類、ズボン類というように分類されている。そしてスピーチする人用に壇が設けられていて、その場しのぎで用意されたような様々な椅子やソファーが4列に並べられていた。
僕はJimmyに連れられて部屋の奥まで行った。するとそこには、この晩、Jimmyが一緒に夕食を食べたというGaryがいた。テレビ局に勤めているというだけあって、丹精な顔立ち。年齢は30代後半くらい?さらさらの髪におしゃれなシャツ。門歯の間に隙間があるのが玉に傷だけど、かなり男前。
「初めまして」
と挨拶を交わす僕ら。だけどそれ以上、会話が続かない。
ざっと部屋を見回したところ、Garyみたいにハンサムな人はほとんど皆無で、90%が50代~60代またはそれ以上の年齢層。彼らの目線が新参者の(しかもアジア人の)僕にグサグサと刺さってくるのが分かる。中には、"Hi"と声をかけてくれる人もいたけど60代じゃ、ね・・・。もっとJimmyみたいなタイプがいるのかと期待した僕が間違いでした。
スピーチは、二人の50代風の人たちが行った。二人ともアルコール依存症から立ち直ろうと禁酒してから10年以上経つという。だけど、その禁酒のきっかけになった話に入ると、笑いに混じって深刻な話も飛び出してきた。例えば、一人の人は、大学卒業まじかにアルコールのせいで手首を切って自殺未遂をしたという話をした。もう一方の人は、当時、好きだった人に酔ったまま電話をかけた際、相手から「酔いが醒めてから電話して」と言われたのがきっかけだったらしい。
そして二人の話に共通していたのは、とにかく自分に正直になるということ。自分の弱さを認めること。ウソをつかないこと。強がらないこと。
ゲイは、性に目覚める年齢のころから、自分が同性を好きということを隠すということに慣れて成長する。「彼」を「彼女」に置き換えて話をするのが常習的になってくる。この晩、スピーチをした一人は、自分があまりにウソをつくことに慣れて生きてきたということを淡々と語った。職場であることを知っているかと聞かれ、知らないと応えると自分が無知に思われるのではないかと恐れて、「知っている」と応えてしまったり、他愛もないことでウソをついてしまうという、そういう側面が自分にはあるということを赤裸々に語った。
そして二人とも、AAミーティングを通して自分と正直に向き合うことで、自分がアルコール依存症で、それにより人生のコントロールがきかなくなっているというのをようやく受け止め、克服することができたという。
これを聞いて、僕はアルコール依存症じゃないけど、自分に正直になる、素直になる、見栄を張らない、っていうことが幸せな人生を送るためには大切なんだなぁって改めて思いました。
最後に、全員で手をつないで輪になって、AAミーティングで決められている12か条(?)か何かをみんなで唱えて解散でした。
Jimmyをはさんで僕とは反対側に座っていたGaryは、手際よくおしゃれなマフラーをクビに巻いて身支度を調えている。僕は、"Nice meeting you"と言ってGaryと握手をした。Garyも満面の笑みで、「じゃ、僕はこれで帰るから」と僕らに言った。そのはち切れんばかりの笑顔が、どことなくギコチナイGary。僕の勘では、GaryはJimmyに気があると読んだ。後で聞いたところ、GaryはJimmyと同じマンションに住んでいて、これまでマンションですれ違うだけの関係だったとか。それが、GaryもこのAAミーティングに2ヶ月くらい前から参加するようになったのだとか。怪しいぃ~。
結局この晩、僕らは何もせず、教会から一直線でJimmy宅に戻ってきて静かな夜を過ごした。
翌土曜日も、特に何もしなかった。こんなに何もせずにJimmyと二人で過ごした週末は初めて。
僕はてっきりビーチか山へ行くものだと思っていたから、本も何も持ってきてなかったので暇なことこの上なし。Jimmyもとうとう暇をもてあましたようで、テレビに僕の子守をさせて、自分は寝室でPC相手にトランプゲームを始める始末。僕がトイレに行くので寝室を横切ったら、あわててゲームの画面を消して、まじめなエクセルシートを開いていた。Jimmyも罪悪感感じてるのが分かって、こっちも気まずい雰囲気。そんな沈んだ雰囲気のまま、土曜日は過ぎていった。
* * *
そして日曜朝。ビーチに家を持っているというカップルのGreggとJonとブランチを取ることになった。ゲイエリアの一角にあるレストランで待ち合わせ。僕らが到着したとき、既に二人はテーブルについていた。Jonは40代前半、Greggは30代後半という感じ。Jonは父親から引き継いだビジネスがあるらしく、働かなくても収入がある身。GreggはAetnaという保険会社に勤めている。JonがハズバンドでGreggがワイフっていう役割分担の模様。
Jimmyも物静かで、あんまり会話らしい会話も弾まなかったのだけど、ちょうどJonとGreggはオーストリアやハンガリー旅行から帰ってきたらしく、その話を聞かされた。Jimmyによると、この二人、よく外国旅行に行ってはサウナ通いをしているらしい。セックス好きで、Jimmyも彼らとの3Pに何度も誘われているとか。この日も、やっぱりその話になった。
「Jimmy、今度、僕たちがセックスしているところビデオに撮ってよ」とJon。
「3脚があれば事足りるんじゃない?」とうまく交わすJimmy。
「だけど、要所要所でズームアップして欲しいじゃん」としつこく食い下がるJon。
「そういえば、Jimmyのビデオテープってあったよね。あの巨根の持ち主、名前なんて言ったっけ?Ty、そいつはね、とってもデカイの、あそこが。しかも、3000人くらいとやってんの。で、Jimmyもね、そいつとセックスして、掘られちゃってんのよ。しかもそのビデオテープがあんの。あ~、見てみたい。Jimmyがヤラレテルところなんてイケルわ」とGregg。
「実は、昔付き合ってたブルーノがそのテープを見つけて大変だったんだ」とJimmy。隠すどころか、その後の裏話まで披露してる・・・。
「まだそのテープあんの?」とGregg。
「・・・いや、もうない」とJimmy。
僕のハンバーガーを食べる手がいつの間にか止まっていた。Jimmyの正面に座っていた僕は、Jimmyの目を見つめる。少し当惑したように僕を見つめ返すJimmy――。
その後会計を済ませて僕らはJonとGreggと分かれた。まだ昼の1時を少し過ぎた時間。だけど、いつも通り、日曜午後はそれぞれ自由な時間を過ごすことになっている。レストランまで乗ってきたJimmyの車のトランクには、既に僕のお泊りセット・バッグが積まれている。僕が想像したとおり、そのまま、Jimmyは僕を自宅まで送ってくれた。その道すがら、僕はJimmyに切り出した。
「あの二人、Jimmyのことよく知ってるみたいだね」
「まあね。もともと、Jonはあの水球チームに来ていて知り合ったんだ。Jonも2年くらい水球に通ってたんだよ。だけど、激しいスポーツだし、Jonには合わなかったみたい」
「へぇ~。それでも2年も続いたなんてすごいね」
僕のアパートについて、「じゃまた火曜日に」と言って僕らは別れた。
* * *
僕はこの週末がいかに退屈だったかということ、そしてこの日のブランチで僕が何を聞かされたか、Jamesに話をした。そして、もうJimmyとの関係も長くないかも、っていう不安を正直に話した。Jimmyのことはすごく好きだけど、よく考えてみるとあんまり共通点がない。食べ物の好みも正反対だし、Jimmyとの会話ってどこか他人行儀だし、Jimmyのジョークもよく分からん。なので笑えない。
そしてJimmyとのセックスも、それほどいいってもんでもない。その人のことが好きだったら、どんなセックスも良いって信じてたたけど、そうじゃないんだっていうのが今回わかった。それに、多くのゲイが、セックス・フレンドは欲しいけど、恋人は欲しくないっていうのも身にしみて分かった。恋人って簡単にできるもんじゃなくて、たとえ相思相愛でも、根本部分で相手と合わないっていうこともある。それに、好きな相手と一緒にいることが逆にストレスになることもある。相手がどれくらい自分のことを好きなんだろうっていうのでも不安になるし、相手の過去を突然知らされて嫉妬と不安に襲われることもある。今日、まさに僕はそれを体験した。Jimmyの過去を収めたビデオテープの存在・・・。
Jimmyと知り合ってちょうど1ヶ月。だんだんJimmyのことが分かってきて、だんだん先が見えてきた。
* * *
こんな話をしていたら、Jimmyから携帯に電話がかかってきた。
「何してた?」
だけど、Jimmyは僕と無駄話をするためだけに電話をかけてくることはないと知っている僕。何か目的があるのだろうと聞いていると、
「今晩、映画でも観にいかない?」とのお誘い。
あれ?また火曜日にって今日の昼過ぎ別れたはずなのに。でもまいっか。どうせ僕も暇だし。僕たちは、"Walk the Line"という映画を観ることにした。Joaquin Phoenixが主演の映画で、実在したカントリー・ミュージシャン、Jonny Cashの話。
号泣。
あんなに最後に涙が出た映画は『マディソン郡の橋』以来。僕はストーリーを知らずに観にいっていたことや、今日あった出来事を引きずっていたこともあって、映画自体には期待していませんでした。だけど、一旦、映画が始まると引き込まれてしまった。最後に、氷のように閉ざされた女性、ジューンの心を氷解させるシーン、そして約束を果たして改心したJonny Cashの人生が字幕で書き出され、結ばれたジューンとJonny Cashのデュエット曲が流れ始めたときには、僕はぬぐってもぬぐいきれないくらい、涙があふれ出て止まりませんでした。
僕が号泣しているのを見て、Jimmyは、
"It's OK. It's a love story"っていうふうに、「泣いてもいいよ」っていう感じの慰め(?)を言って僕の肩をさすってくれた。
そして「あの二人はソール・メートを見つけたんだね」って言ったJimmyの言葉に、「僕らもあんな風になれればいいね」っていうJimmyの想いを読み取ったと思ったのは、単なる僕の思い込みだったのだろうか。
映画館を出ても、真っ赤に目を(多分)腫らした僕を、物珍しそうに見る人たちがいたけど、僕がこの映画を観たと知ったら納得してくれると思う・・・。といいつつ、僕の周りで見ていた若い女性たちは涙も見せずにさっさと映画館を去っていましたが・・・。でも、Jimmyも今年見た映画の中で最高だったって言ってたもん。Joaquin Phoenixは間違いなくアカデミー賞主演男優賞だっていうことも。彼、取りますよ、きっと。
* * *
良い映画を観終わって、一泣きして、僕もすこしスッキリ。だけどJimmyの車に乗って走り始めると、やっぱり今日起きた出来事が心に引っかかっているのが分かる。切り出したいけど、せっかくの映画の余韻が台無しになる・・・。このままJimmyが僕のアパートまで送ってくれるんだろうなと思っていたら、「デザートでも食べる?」というJimmyの提案。まだ夜10時くらい。
二人で僕の近所の喫茶店に入った。そこは、去年、Brianとのデートでアップル・サイダーを飲んだお店。実は、去年のこの時期、Markともここでアップル・サイダーを飲んでいる・・・。3度目の正直と出るか、これまでのジンクスを踏襲すると出るか・・・。
AAミーティングで教わったように、自分の気持ちを偽るのはよくない。我慢していても、結局それは長続きしない。なので、僕は思い切って僕の疑問をJimmyにぶつけることにした。
「Jimmy、僕たちが出会ってからちょうど1ヶ月が経つね。これまでのところどう思う?」
「どう思うって?今までのところとっても順調なんじゃない?」
「僕って、Jimmyの期待に応えてる?」
「AAミーティングでもよく言うことだけど、『期待』するとうまく行かないんだよ、何事も」
「だけど、Jimmyにもwantsとneedsがあるでしょう?」
「そりゃ、あるね」
「そのwantsとneedsを、僕は満たしてる?」
「うん。君はsmartだし他者への思いやりもあるし、多様性に対して寛容だし」
「僕が意味してるのはそいういうことじゃないんだけど・・・」
「じゃ、どういうこと?」
「今日のブランチで聞いた話のこと。Jimmyって、たまにfuckされたい?」
「あ、あの話」といいつつ、Jimmyの目が左右に泳いでいるのが分かる。
「そう、あのビデオテープの話」
「あれは過去の話だよ。あれもやったこれもやったっていうやつ(I have done this, done that--英語のお決まり表現。特に、ゲイの間では、「性的に何でも過去にやっちゃいました」という意味)」
「もし、Jimmyがそうして欲しいと思ってるんだったら・・・」
「僕はこれまで、相手にお願いされたときに「許可して」そうさせたことはあるけど、自分からそういうムードになったことはないよ」
なんか言い訳がましい気もしたけど、一応、Jimmyがそういうんだったら・・・。と僕はこれ以上聞き返すことはしなかった。だけど、ビデオテープに撮ったというのは、また違う話だと思うんだけど、あっちの話を追求するのに精一杯で、ビデオテープに撮ろうといったのがどっちのアイディアだったかというのは聞きそびれてしまった。
その代わり、僕はそれがいつの出来事だったのかを聞いた。
「あれは確か、、、1992年とか1993年」
「えー、そんなに10年以上も昔のことなの?なのにGreggとJonはそんな昔のことを切り出してたわけ?」
「そうだよ」
「Jimmy、僕もAAミーティングで正直になるのが一番だって学んだから言うんだけど、あのGreggとJonって僕は好きになれない。僕がJimmyの友達だったら、絶対にそんな過去の話を恋人を前にして話すことはしない。GreggとJonは、僕に対する尊敬っていうものがなかった。ゴメンね、Jimmyの友達なのは分かっているけど、それが僕が今日、感じたことだから」
Jimmyは何も言わなかったけど僕が言わんとすることは納得してくれたみたい。静かにうなずいてくれた。
あのBrianと一緒に飲んだアップル・サイダーを片手に、僕はJimmyととことん話し合った。Jimmyには、これまで5人の「ハズバンド」がいるということや、Jimmyの「ハズバンド」の定義は、1年以上付き合った人だということ。その5人のうちの一人は、JimmyのEメールを盗み見ていたというのが原因で別れることになったということや、別の一人は、Jimmyを親のように見ていて、Jimmyに人生を決めて欲しいと思っていたっていうくらい自立心がなかったので別れたとか。そして5人とも、Jimmyと同じくらいの年齢だということ。そして何を隠そう、Jimmyは今月、44歳になる。(そんなに老けてるように見えないの、それが。やっぱりハンサムは得だよねぇ)
僕みたいに10何歳も年下っていうのとは付き合ったことある?って聞いてみた。すると、実は、僕と出会う1ヶ月前の10月、11ヶ月間付き合ったという25歳の人と別れたところだったとか。Jimmyってもっと一人身期間が長いのかと思いきや、自分より20歳近く若い25歳と11ヶ月も付き合ってたんだ。せっかく立ち直りかけていたのにこれにはまたもやショック。
自宅アパート前での別れ際、「もしまだ秘密があるんだったら、僕を驚かせないように話してね」ってお願いした。一瞬、Jimmyが沈黙。
「あー、今、ちょっと回想したでしょう?」と突っ込む僕。
「何が君にとって秘密になるか、僕には分かりようがないじゃないか」
「想像するとわかるでしょ。何が僕にとって気になるかって」
「・・・」(←無言のJimmy)
まだまだ前途多難だけど、とりあえず1回目の難所はどうにか乗り越えたみたい、僕たち。
<金曜夜>
寒波に襲われたこの日、Jimmyがここ10年以上通っているというAAミーティングに参加した。駅を乗り換えるのが面倒だったので、僕はJimmy宅へのお泊りセットの入ったバッグを担いで、極寒の風が吹き付ける中を一駅分歩いた。AAミーティングが開かれる教会につくと、Jimmyが入り口の階段で僕を出迎えてくれた。Jimmyにhugしながら、彼の頬に僕の頬をつけて挨拶。まるでイヌイットが鼻をこすり付けて挨拶するさながらの雰囲気。Jimmyの頬の暖かさが、僕の冷たくなった頬を通して伝わってくる。
AAミーティングは教会の半地下で開かれていた。既に多くの人が集まっていて、コーヒーにパンケーキを食べている。壁際には、古着が女性用、男性用、靴、シャツ類、ズボン類というように分類されている。そしてスピーチする人用に壇が設けられていて、その場しのぎで用意されたような様々な椅子やソファーが4列に並べられていた。
僕はJimmyに連れられて部屋の奥まで行った。するとそこには、この晩、Jimmyが一緒に夕食を食べたというGaryがいた。テレビ局に勤めているというだけあって、丹精な顔立ち。年齢は30代後半くらい?さらさらの髪におしゃれなシャツ。門歯の間に隙間があるのが玉に傷だけど、かなり男前。
「初めまして」
と挨拶を交わす僕ら。だけどそれ以上、会話が続かない。
ざっと部屋を見回したところ、Garyみたいにハンサムな人はほとんど皆無で、90%が50代~60代またはそれ以上の年齢層。彼らの目線が新参者の(しかもアジア人の)僕にグサグサと刺さってくるのが分かる。中には、"Hi"と声をかけてくれる人もいたけど60代じゃ、ね・・・。もっとJimmyみたいなタイプがいるのかと期待した僕が間違いでした。
スピーチは、二人の50代風の人たちが行った。二人ともアルコール依存症から立ち直ろうと禁酒してから10年以上経つという。だけど、その禁酒のきっかけになった話に入ると、笑いに混じって深刻な話も飛び出してきた。例えば、一人の人は、大学卒業まじかにアルコールのせいで手首を切って自殺未遂をしたという話をした。もう一方の人は、当時、好きだった人に酔ったまま電話をかけた際、相手から「酔いが醒めてから電話して」と言われたのがきっかけだったらしい。
そして二人の話に共通していたのは、とにかく自分に正直になるということ。自分の弱さを認めること。ウソをつかないこと。強がらないこと。
ゲイは、性に目覚める年齢のころから、自分が同性を好きということを隠すということに慣れて成長する。「彼」を「彼女」に置き換えて話をするのが常習的になってくる。この晩、スピーチをした一人は、自分があまりにウソをつくことに慣れて生きてきたということを淡々と語った。職場であることを知っているかと聞かれ、知らないと応えると自分が無知に思われるのではないかと恐れて、「知っている」と応えてしまったり、他愛もないことでウソをついてしまうという、そういう側面が自分にはあるということを赤裸々に語った。
そして二人とも、AAミーティングを通して自分と正直に向き合うことで、自分がアルコール依存症で、それにより人生のコントロールがきかなくなっているというのをようやく受け止め、克服することができたという。
これを聞いて、僕はアルコール依存症じゃないけど、自分に正直になる、素直になる、見栄を張らない、っていうことが幸せな人生を送るためには大切なんだなぁって改めて思いました。
最後に、全員で手をつないで輪になって、AAミーティングで決められている12か条(?)か何かをみんなで唱えて解散でした。
Jimmyをはさんで僕とは反対側に座っていたGaryは、手際よくおしゃれなマフラーをクビに巻いて身支度を調えている。僕は、"Nice meeting you"と言ってGaryと握手をした。Garyも満面の笑みで、「じゃ、僕はこれで帰るから」と僕らに言った。そのはち切れんばかりの笑顔が、どことなくギコチナイGary。僕の勘では、GaryはJimmyに気があると読んだ。後で聞いたところ、GaryはJimmyと同じマンションに住んでいて、これまでマンションですれ違うだけの関係だったとか。それが、GaryもこのAAミーティングに2ヶ月くらい前から参加するようになったのだとか。怪しいぃ~。
結局この晩、僕らは何もせず、教会から一直線でJimmy宅に戻ってきて静かな夜を過ごした。
翌土曜日も、特に何もしなかった。こんなに何もせずにJimmyと二人で過ごした週末は初めて。
僕はてっきりビーチか山へ行くものだと思っていたから、本も何も持ってきてなかったので暇なことこの上なし。Jimmyもとうとう暇をもてあましたようで、テレビに僕の子守をさせて、自分は寝室でPC相手にトランプゲームを始める始末。僕がトイレに行くので寝室を横切ったら、あわててゲームの画面を消して、まじめなエクセルシートを開いていた。Jimmyも罪悪感感じてるのが分かって、こっちも気まずい雰囲気。そんな沈んだ雰囲気のまま、土曜日は過ぎていった。
* * *
そして日曜朝。ビーチに家を持っているというカップルのGreggとJonとブランチを取ることになった。ゲイエリアの一角にあるレストランで待ち合わせ。僕らが到着したとき、既に二人はテーブルについていた。Jonは40代前半、Greggは30代後半という感じ。Jonは父親から引き継いだビジネスがあるらしく、働かなくても収入がある身。GreggはAetnaという保険会社に勤めている。JonがハズバンドでGreggがワイフっていう役割分担の模様。
Jimmyも物静かで、あんまり会話らしい会話も弾まなかったのだけど、ちょうどJonとGreggはオーストリアやハンガリー旅行から帰ってきたらしく、その話を聞かされた。Jimmyによると、この二人、よく外国旅行に行ってはサウナ通いをしているらしい。セックス好きで、Jimmyも彼らとの3Pに何度も誘われているとか。この日も、やっぱりその話になった。
「Jimmy、今度、僕たちがセックスしているところビデオに撮ってよ」とJon。
「3脚があれば事足りるんじゃない?」とうまく交わすJimmy。
「だけど、要所要所でズームアップして欲しいじゃん」としつこく食い下がるJon。
「そういえば、Jimmyのビデオテープってあったよね。あの巨根の持ち主、名前なんて言ったっけ?Ty、そいつはね、とってもデカイの、あそこが。しかも、3000人くらいとやってんの。で、Jimmyもね、そいつとセックスして、掘られちゃってんのよ。しかもそのビデオテープがあんの。あ~、見てみたい。Jimmyがヤラレテルところなんてイケルわ」とGregg。
「実は、昔付き合ってたブルーノがそのテープを見つけて大変だったんだ」とJimmy。隠すどころか、その後の裏話まで披露してる・・・。
「まだそのテープあんの?」とGregg。
「・・・いや、もうない」とJimmy。
僕のハンバーガーを食べる手がいつの間にか止まっていた。Jimmyの正面に座っていた僕は、Jimmyの目を見つめる。少し当惑したように僕を見つめ返すJimmy――。
その後会計を済ませて僕らはJonとGreggと分かれた。まだ昼の1時を少し過ぎた時間。だけど、いつも通り、日曜午後はそれぞれ自由な時間を過ごすことになっている。レストランまで乗ってきたJimmyの車のトランクには、既に僕のお泊りセット・バッグが積まれている。僕が想像したとおり、そのまま、Jimmyは僕を自宅まで送ってくれた。その道すがら、僕はJimmyに切り出した。
「あの二人、Jimmyのことよく知ってるみたいだね」
「まあね。もともと、Jonはあの水球チームに来ていて知り合ったんだ。Jonも2年くらい水球に通ってたんだよ。だけど、激しいスポーツだし、Jonには合わなかったみたい」
「へぇ~。それでも2年も続いたなんてすごいね」
僕のアパートについて、「じゃまた火曜日に」と言って僕らは別れた。
* * *
僕はこの週末がいかに退屈だったかということ、そしてこの日のブランチで僕が何を聞かされたか、Jamesに話をした。そして、もうJimmyとの関係も長くないかも、っていう不安を正直に話した。Jimmyのことはすごく好きだけど、よく考えてみるとあんまり共通点がない。食べ物の好みも正反対だし、Jimmyとの会話ってどこか他人行儀だし、Jimmyのジョークもよく分からん。なので笑えない。
そしてJimmyとのセックスも、それほどいいってもんでもない。その人のことが好きだったら、どんなセックスも良いって信じてたたけど、そうじゃないんだっていうのが今回わかった。それに、多くのゲイが、セックス・フレンドは欲しいけど、恋人は欲しくないっていうのも身にしみて分かった。恋人って簡単にできるもんじゃなくて、たとえ相思相愛でも、根本部分で相手と合わないっていうこともある。それに、好きな相手と一緒にいることが逆にストレスになることもある。相手がどれくらい自分のことを好きなんだろうっていうのでも不安になるし、相手の過去を突然知らされて嫉妬と不安に襲われることもある。今日、まさに僕はそれを体験した。Jimmyの過去を収めたビデオテープの存在・・・。
Jimmyと知り合ってちょうど1ヶ月。だんだんJimmyのことが分かってきて、だんだん先が見えてきた。
* * *
こんな話をしていたら、Jimmyから携帯に電話がかかってきた。
「何してた?」
だけど、Jimmyは僕と無駄話をするためだけに電話をかけてくることはないと知っている僕。何か目的があるのだろうと聞いていると、
「今晩、映画でも観にいかない?」とのお誘い。
あれ?また火曜日にって今日の昼過ぎ別れたはずなのに。でもまいっか。どうせ僕も暇だし。僕たちは、"Walk the Line"という映画を観ることにした。Joaquin Phoenixが主演の映画で、実在したカントリー・ミュージシャン、Jonny Cashの話。
号泣。
あんなに最後に涙が出た映画は『マディソン郡の橋』以来。僕はストーリーを知らずに観にいっていたことや、今日あった出来事を引きずっていたこともあって、映画自体には期待していませんでした。だけど、一旦、映画が始まると引き込まれてしまった。最後に、氷のように閉ざされた女性、ジューンの心を氷解させるシーン、そして約束を果たして改心したJonny Cashの人生が字幕で書き出され、結ばれたジューンとJonny Cashのデュエット曲が流れ始めたときには、僕はぬぐってもぬぐいきれないくらい、涙があふれ出て止まりませんでした。
僕が号泣しているのを見て、Jimmyは、
"It's OK. It's a love story"っていうふうに、「泣いてもいいよ」っていう感じの慰め(?)を言って僕の肩をさすってくれた。
そして「あの二人はソール・メートを見つけたんだね」って言ったJimmyの言葉に、「僕らもあんな風になれればいいね」っていうJimmyの想いを読み取ったと思ったのは、単なる僕の思い込みだったのだろうか。
映画館を出ても、真っ赤に目を(多分)腫らした僕を、物珍しそうに見る人たちがいたけど、僕がこの映画を観たと知ったら納得してくれると思う・・・。といいつつ、僕の周りで見ていた若い女性たちは涙も見せずにさっさと映画館を去っていましたが・・・。でも、Jimmyも今年見た映画の中で最高だったって言ってたもん。Joaquin Phoenixは間違いなくアカデミー賞主演男優賞だっていうことも。彼、取りますよ、きっと。
* * *
良い映画を観終わって、一泣きして、僕もすこしスッキリ。だけどJimmyの車に乗って走り始めると、やっぱり今日起きた出来事が心に引っかかっているのが分かる。切り出したいけど、せっかくの映画の余韻が台無しになる・・・。このままJimmyが僕のアパートまで送ってくれるんだろうなと思っていたら、「デザートでも食べる?」というJimmyの提案。まだ夜10時くらい。
二人で僕の近所の喫茶店に入った。そこは、去年、Brianとのデートでアップル・サイダーを飲んだお店。実は、去年のこの時期、Markともここでアップル・サイダーを飲んでいる・・・。3度目の正直と出るか、これまでのジンクスを踏襲すると出るか・・・。
AAミーティングで教わったように、自分の気持ちを偽るのはよくない。我慢していても、結局それは長続きしない。なので、僕は思い切って僕の疑問をJimmyにぶつけることにした。
「Jimmy、僕たちが出会ってからちょうど1ヶ月が経つね。これまでのところどう思う?」
「どう思うって?今までのところとっても順調なんじゃない?」
「僕って、Jimmyの期待に応えてる?」
「AAミーティングでもよく言うことだけど、『期待』するとうまく行かないんだよ、何事も」
「だけど、Jimmyにもwantsとneedsがあるでしょう?」
「そりゃ、あるね」
「そのwantsとneedsを、僕は満たしてる?」
「うん。君はsmartだし他者への思いやりもあるし、多様性に対して寛容だし」
「僕が意味してるのはそいういうことじゃないんだけど・・・」
「じゃ、どういうこと?」
「今日のブランチで聞いた話のこと。Jimmyって、たまにfuckされたい?」
「あ、あの話」といいつつ、Jimmyの目が左右に泳いでいるのが分かる。
「そう、あのビデオテープの話」
「あれは過去の話だよ。あれもやったこれもやったっていうやつ(I have done this, done that--英語のお決まり表現。特に、ゲイの間では、「性的に何でも過去にやっちゃいました」という意味)」
「もし、Jimmyがそうして欲しいと思ってるんだったら・・・」
「僕はこれまで、相手にお願いされたときに「許可して」そうさせたことはあるけど、自分からそういうムードになったことはないよ」
なんか言い訳がましい気もしたけど、一応、Jimmyがそういうんだったら・・・。と僕はこれ以上聞き返すことはしなかった。だけど、ビデオテープに撮ったというのは、また違う話だと思うんだけど、あっちの話を追求するのに精一杯で、ビデオテープに撮ろうといったのがどっちのアイディアだったかというのは聞きそびれてしまった。
その代わり、僕はそれがいつの出来事だったのかを聞いた。
「あれは確か、、、1992年とか1993年」
「えー、そんなに10年以上も昔のことなの?なのにGreggとJonはそんな昔のことを切り出してたわけ?」
「そうだよ」
「Jimmy、僕もAAミーティングで正直になるのが一番だって学んだから言うんだけど、あのGreggとJonって僕は好きになれない。僕がJimmyの友達だったら、絶対にそんな過去の話を恋人を前にして話すことはしない。GreggとJonは、僕に対する尊敬っていうものがなかった。ゴメンね、Jimmyの友達なのは分かっているけど、それが僕が今日、感じたことだから」
Jimmyは何も言わなかったけど僕が言わんとすることは納得してくれたみたい。静かにうなずいてくれた。
あのBrianと一緒に飲んだアップル・サイダーを片手に、僕はJimmyととことん話し合った。Jimmyには、これまで5人の「ハズバンド」がいるということや、Jimmyの「ハズバンド」の定義は、1年以上付き合った人だということ。その5人のうちの一人は、JimmyのEメールを盗み見ていたというのが原因で別れることになったということや、別の一人は、Jimmyを親のように見ていて、Jimmyに人生を決めて欲しいと思っていたっていうくらい自立心がなかったので別れたとか。そして5人とも、Jimmyと同じくらいの年齢だということ。そして何を隠そう、Jimmyは今月、44歳になる。(そんなに老けてるように見えないの、それが。やっぱりハンサムは得だよねぇ)
僕みたいに10何歳も年下っていうのとは付き合ったことある?って聞いてみた。すると、実は、僕と出会う1ヶ月前の10月、11ヶ月間付き合ったという25歳の人と別れたところだったとか。Jimmyってもっと一人身期間が長いのかと思いきや、自分より20歳近く若い25歳と11ヶ月も付き合ってたんだ。せっかく立ち直りかけていたのにこれにはまたもやショック。
自宅アパート前での別れ際、「もしまだ秘密があるんだったら、僕を驚かせないように話してね」ってお願いした。一瞬、Jimmyが沈黙。
「あー、今、ちょっと回想したでしょう?」と突っ込む僕。
「何が君にとって秘密になるか、僕には分かりようがないじゃないか」
「想像するとわかるでしょ。何が僕にとって気になるかって」
「・・・」(←無言のJimmy)
まだまだ前途多難だけど、とりあえず1回目の難所はどうにか乗り越えたみたい、僕たち。