アメリカGAYライフ American Gay Life by an expat Japanese

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再会

2006-03-30 15:48:44 | 恋愛・結婚
ジミーと再会を果たした。この水球に戻ってくるのも1ヶ月以上ぶり。まだ時差ぼけから戻らない身体では辛い。だけどあと2週間でペンシルバニア州のミラースビルで対外試合があるために、チームのみんなは真剣そのもの。僕が1ヶ月ぶりに戻ってきたなんて覚えている人がいるわけでもなく、容赦がない。ジミーは僕に話したい風なそぶりを見せているけど勇気がなくて話しかけられない感じ。僕も、コンタクトレンズをはずしてよく見えないボヤケタ視界の中でジミーの姿を認めるものの、あえて積極的に近づくわけでもなく・・・。

だけど練習に没頭するうちに、ゴールへのシュート練習のとき、ジミーと前後の立ち居地になってしまった。それでもよく見えてない僕に対して、ジミーは、「ハイ」って声をかけてくれた。僕もそれに返事を返した。

僕とジミーのぎこちない距離感を感じ取ったのか、水球に常連のチームメート数人が、いつになく僕に話しかけてきてくれた。しかも、今日、キャッチボールの練習をしたのは、キャプテンのマークだったし。今までマークとキャッチボールしたことは一度もなかったのに。ジーンも僕に手ほどきしてくれたりして。そんなにジミーと僕の距離感って傍目にはバレバレなんでしょうか?

着替えているときも、僕はずっとマークやマイケルとお話していた。そして、着替え終わって、ジミーが手持ち無沙汰な様子で僕の前を前後する。一応、東京で買ってきた「チョコレート栗大福」のお土産を持ってきていたし、特にジミーを無視しているわけでもなかったので、僕はジミーに話しかけて一緒に体育館を出た。

その出たところで、ジミーが唐突に話し始めた。

「明日はマンションのテナント・ミーティングがあってその準備に忙しいから今晩は帰る」

「えぇッ?だって僕が出張から戻ったら話をするって言ってたじゃん。それがもうジミーの決断なわけ?」

「今日は帰らないといけない。2時間も話をしている時間はないんだ」

「そんな2時間も話すつもりなんて僕の方にもないよ。とりあえずジミーの車まで歩こう」といって僕らは歩き始めた。

「送っていこうか?」と聞いてくれるジミー。そんなことより、話すことがないっていうジミーの態度がとても冷たい。

「ジミー、話すことがないって、もうそれが決断なわけ?」

「10日間ちょっと会わなかったけど、あのことがあって、10日間、時間があいて、これでまた関係が復活できるって保証できない。あんな辛い思いするのはもう耐えられない」

この後、延々と15分くらい議論が続いた。結局、ジミーが言ったことは、

・今日から即、関係をやりなおすのは尚早
・僕が変わらないとまた同じ繰り返しになる。それは僕の方で自力で解決するべき
・だけどまだジミーは僕に惹かれる気持ちはあって、またいつか寄りを戻すことになるかもしれない
・だからとりあえずオープンな関係になる。将来のことは誰も予測できない。オープンな関係になって様子を見る
・その間に僕が別の人を見つけてしまってもそれはしょうがないこと。ただ僕に幸せになって欲しい
・ただ、互いをリスペクトするような行動を取ること

ジミーがこうした意見を言う間にも、僕の方から次のような意見を言った。

・オープンな関係っていう定義が不明。今の時点でジミーが僕と付き合えないと思うのだったら、それはこの関係は終わるということ。それだったら僕は別の人を探すと思う
・ジミーが言っていることは、単にまた傷つくのを恐れているだけに聞こえる
・それにすべて僕に問題があるという発言は自省心がないし不正確。僕が過去につきあったボーフレンドに対してこんな怒り方をしたことはなかった。僕の怒りのトリガーを引いたのはジミーであって、ジミーの方にも何らかの問題があるはず
・関係を続けるために、二人協力してセラピーとか受けるべき
・僕もまだジミーに惹かれているのは事実

なんか僕ら二人って、平行線をたどっているよねぇ・・・。ベルリンの壁の表側と裏側を延々と交差することなくたどっていっている感じ。だけど、一つ、僕の意見を聞いてジミーが訂正したことがある。それは、ジミーがアルコール依存症というのが原因で僕らの関係に問題が生じているのかもしれないということ。僕が気づかないところで、ジミーのあの性格はアルコール依存症に起因しているのかもしれない。なので、ジミーは僕に、アルコール依存症を恋人に持つ人たちのためのグループ・カウンセリングを紹介してくれた。それは『エモーション・アノニマス』と呼ばれているらしい。

このときジミーが言ったのが、「ブログを書いたり自省して自分を変えようと思ったり自己セラピーするっていうのも一つの手だけど、最後にはやっぱり人と交わらないと自分の気持ちの奥深いところを見つめることはできないよ」というもの。なんで突然ブログの話が出るのか?前々から気づいていたけど、ジミーは僕がこのブログをつけていることを知っている。確実に。理由は、以前、僕がジミーのパソコンでこのブログをつけていたことがあるから。ジミーは日本語は読めないけど、僕のブログには英語で書いているところもあるし、名前は全部英語表記だから、だいたい僕が何を(誰について)書いているかは想像がついているはず。(なので今日のブログは全部日本語表記にした!)


それで結局この晩、ジミーの車の中で交わした議論の結果は、友達関係になるということ。ジミーは、それで様子を見て、また信頼関係を取り戻せるようだったら寄りを戻してもいいと思っているみたい。だけど僕は、この晩のジミーの意思決定を先延ばしにする姿勢や、またあんな傷つく思いをしたくないっていう弱気になっているのを目の当たりにしてもどかしい思いが募るばかり。もうそれだったら友達って割り切って別の恋人見つけたほうが互いに時間と気力の節約になるというもの。僕って気短なんです・・・。ダメダメ、これを直していかないといけないんだよねぇ。でもジミーみたいに頑なな人は稀。

僕が「ジミーにも問題があるはず」と指摘して、ジミーも開き直ったのか、少し本音を言った。

「ちょうど前回、同じ体験をしていたから、そのときの気持ちと重なってショックが倍増していたかもしれない」

すかさず僕は、「あの行動は誤るよ。だけど、ジミーが言う通り、ちょっとオーバー・リアクションだったんじゃない?あれは僕がとった行動のせいだけじゃなくて、その過去の記憶も引きずっていたからショックが大きくなってたんだと思うよ」と言った。

僕が責める立場にはないけれど、1回連絡を無視したくらいで「僕と僕らの関係を見捨てた」なんて言うなんて、ちょっとドラマ・クイーン的。東京で会った元カレのロバートにこのジミーのセリフを言ったら、同じように「ちょっとドラマ・クイーンじゃない?」って言ってた。本当に好きなんだったら、冷静になって、数日後に「まだ怒ってる?」とかいう連絡が欲しい。それが出来ないなんて、僕とは合わない。(あぁ・・・こんな女王様みたいなことを書いたらものすごく高飛車な人だと思われそうだけど・・・。あ、弁解の余地なしですね。はい。だけど、ボーイフレンドは打たれ強くて懐の深い人でいて欲しい・・・。)

堂々巡りを繰り返すジミーとの議論に精神的に疲れた僕は、「じゃ、友達関係ね。わかった」と言って車を降りようとした。すると、ジミーは、「今週末、どこか行く?映画とか?」

おいおい、、、マジで僕らは友達になるんですか。手のひらを返したように友達関係に戻れるとは思えない。でも、先入観でそう思っている僕だけど、ジミーとは友達関係のほうがうまく行くのかもしれない。まだ互いに惹かれあう気持ちは残っているけど、それが良い緊張関係になるとか。惹かれあうけど友達関係になるっていうのも悪くないかも。ジミーだけが男じゃないし。

車から降りる直前、ジミーにハグをしようとしたら、ジミーが僕の唇に軽くキスをしてきた。本当に僕ら、友達になるのぉジミー?

『凱旋』帰国

2006-03-29 11:13:45 | ゲイ事情
1年ぶりに帰国すると、なにもが新鮮。最初は、JRの窓口で成田エクスプレスの切符を買うことすら、少し緊張してしまった。飛行機の中では、思わず日本人のスチュワーデスさんに英語でドリンクを頼んでしまったりして、「あ、すいません。りんごジュースください」なんて日本語で言い直したり。でも、僕はやっぱり日本生まれで日本育ち。到着から24時間もすると徐々に東京生活の頃を思い出して、迷路のような地下道もヒョイヒョイと人を追い越して歩けるまでに。リハビリの成果。

仕事もとりあえず問題なくこなし、先週金曜には、学生時代からのゲイ友と新宿で再会。紀伊国屋書店で待ち合わせしたのに、なぜか新宿西口に出てしまった僕。「ゲッ!」と思ったときは既に時遅く、僕の切符は改札に吸い込まれ、会社帰りの人ごみでごった返す新宿西口に放り出された僕は、まさに迷子の子供。10年前は新宿近くに住んでたのに・・・。すっかり東京生活に慣れたと思って安心していたのに、まだリハビリ段階は終わっていなかったみたい。しょうがないので、巨大な新宿駅をぐるっと半周し、南口経由で東口へ到着した。約束の時間から遅れること約7分。

相変わらずの友人と再会し、居酒屋へ。日本ってやっぱりいいよねぇ~。居酒屋ですら内装がキレイ。室内なのに入り口あたりには石が敷かれた庭園風なデザインが施され、そこに水がうっすらと張られている。料理だって、量じゃなくて質。盛り付けも気が利いていて食欲をそそる。しかもこの晩、掘りごたつ風のカウンター席に座った僕らは、目の前で作業しているカッコいい板前さんをほぼ独占状態。板前さんなのに僕らに飲み物のオーダーを聞いてくれる親切ぶり。「もしかして?」「いやいや、単なる接客サービス」「でもここは新宿よ」などとおばちゃんのようになってしまう僕ら。

「もう少し頻繁に日本に帰ってきたいなぁ」なんて友達に漏らした僕。すると僕の友人は、

「たまに帰ってくるから、いつも『外専』帰国だよね」

凱旋帰国と、僕が外専だっていうのを掛け合わせた冗談。でも日本に戻って、こうしてカッコいい日本人の板前さんに目うつりしたり、僕って100%外専じゃないんだなぁって久々に発見。最初の恋人は日本人だったし(当然?)。

その後、二人で久々の二丁目に。それもこの晩は金曜。仲通りをとりあえず練り歩いてみたけど、夏の盛り上がりに比べると人は少なかったかな。だけど金曜夜だし、新装開店のお店があったみたいで、半裸状態の店子が交差点ではしゃいでたり、相変わらずの風景だった。だけど、ビックス・ビルの裏手の角にあったArty Fartyは移転し、今、更地になった場所を見て時の流れを微妙に感じたり。

新しい場所に移ったArty Fartyにも行ってみた。初めてじゃないけど、この2階に移転したのは僕がアメリカに移り住んでから。この晩はワイン飲み放題ってことだったけど、僕と友達は大人しくドリンク1杯を注文し、既に込み合っている店内で端っこに陣取って狭いダンスフロアを観察。

いやはや、あまりに若い子ばっかりで驚きました。スーツ着ている人もいたけど、顔は幼い20代前半。白人、黒人の人もいたけど、基本的に20代前半。彼らは日本にどういうステータスで来てるんでしょう?あの政府派遣の英語教師として学校で働くというJETプログラム?それにしても若すぎ。たまにフケ気味の白人男性もいたけど、90%近くが20代前半だった。しかも若い女性も何人か見かけた。だけどダンス・ミュージックがうるさくて、久々に再会した友達とも会話しにくい環境。なので僕らは次の懐かしの場所、GBへと移動した。

地下にあるGBは昔のまま。店員さんだって、数人、新しい人が入っているけど、少なくともそのうちの2人は昔のまま。客層は、昔より一層、高齢化が進んでいる印象でした。若い子はArtyやDragonに行って、年寄りがGBに集まる?みたいな住み分けが進んでいる模様。それに、GBって昔からそうだったけど、基本はハッテン・バー(ハッテン場)だからね。そういう雰囲気が店内に流れてる。もちろん若い子もいたけど、ちらほらってところ。しかもこの晩、僕が頼んだドリンクがミント味の緑のリキュールのソーダ割り。まずい。二口飲んでギブアップ。お店の雰囲気も十分満喫したので僕らはZipへ。

Zip。僕らが大学生の頃は開店したてのおしゃれな熱帯魚バーでした。だけどなぜかあまり人が集まらないみたいで、ArtyやGBみたいに週末、満員電車状態っていうのに遭遇したことがない。今もあるのかなぁ?と不安になりながら行ってみたら、ちゃんとあの鉄の扉は健在でした。中に入ると20人くらいはいたかなぁ。店員さんも一人、見覚えがある人だったし。熱帯魚はさすがに世代交代してクマノミはいなくなっていたけれど。カクテルの種類が多くて圧倒。しかもスパゲッティーまでおいているゲイバーっていうのが、とても二丁目的・・・。ここはArtyより客層が少し上かな。この晩は20代前半から30代前半の日本人ばかりが・・・あ、途中で60代風の白人おじさんも入店したけど。そう、僕もここで年寄りオヤジに声をかけられ閉口した思い出が・・・。

二丁目ってアメリカやヨーロッパとは違う日本のゲイ文化だなぁと観光客になって満喫。


久々の東京ではしゃぎ気味の僕は、アメリカに残してきたものをすっかり忘れてしまっていた。そう、Jimmyとこの出張中に互いに考えをまとめようっていうことになっていた。だけどそんなゆっくり考えられる時間も気分的余裕もない。とりあえずJimmyに東京に到着したことと東京の様子をEメールで伝えたけど、いまだにJimmyからメールが来ない。今日は電話メッセージも残したのに返事がない。「一方が連絡したらそれに返事を出すのが恋人間の礼儀」なんて説教していたJimmyなのに、言った先から自分で実践してない。ま、今の僕らが恋人かというとかなりグレーだけど・・・。元カレRobertが言ったように、worst scenarioを予期しておいたほうがよさそうな気配。

二人だけのAAミーティング

2006-03-19 14:48:50 | ゲイ事情
とりあえず、Jimmyとの再会を果たした。近所のコーヒーショップで、平日の夜、3時間以上も議論を繰り返した。縮まった距離もあれば、埋まらなかった溝もある。

僕からまる1週間、連絡がなかったことがいかに心に深い傷になったかをJimmyから何度も詰め寄られてしまった。ゴメンしか言えなかったけど、最後には「なにをすれば許してくれるの?」と開き直ったことを言ってしまった。すると、Jimmyからは、

「実は、去年、10ヶ月間つきあった25歳のWillyが、同じように僕の連絡を一切無視するやりかたで別れていったんだ。そのときも傷ついた。今回、そのときの記憶が蘇ってきて、一層、辛かった」

なんていう過去の傷を語ってきた。それは僕の責任ではないけれど・・・。僕は、こんなふうに相手への連絡を突然絶つということはJimmyに対してが初めて。だけど、Jimmyには過去に同じようなことをした人がいる。「それって、Jimmyのコミュニケーションに問題があるからじゃない?」とJimmyに聞いてみた。すると、

「君はWillyと僕の関係を全く知らない。知らない人に、勝手に想像でモノを言って欲しくない」

と叱られてしまった。それをフォローするかのように、

「だけど、君のことを好きだから、余計に1週間無視され続けたことが辛かった。付き合い始めた頃、まさかこんなに好きになるとは思わなかった。You swept me off my feet」

と、スィートなことを言うのだけれど、でもそれを聞く僕にとっては、罪悪感を根こそぎ引き起こされる思い。もちろん、僕も、なぜ、僕がああいう態度に出たか、Jimmyには理解できるか聞いてみた。けれど、いくら説明しても、やっぱりJimmyの想像では理解できなかった。

それと、この機会に、またオープン・リレーションシップのことを聞いてみた。

「去年のJimmyの誕生日前夜に議論したことだけど、やっぱりJimmyはいつか誰か他の人とセックスしたいって思ってるんでしょ?」

「僕のこれまでの経験からいって、この先、一生、君一人としかセックスしないっていうのは現実的じゃない。僕もこの年齢だからね。これまでの僕が、今後、そう変わるとは思えない」

「これまで僕と付き合い始めてから、他の人とセックスした?」

「いいや」

「じゃ、いつ頃になったらしたいって思うようになりそう?」

「1年後か2年後か・・・」

とても現実的で、ある意味、自分のことをよく理解しているJimmyだから、冷静にこういう恋愛関係にとってセンシティブな話題も悪気なく正直に話す。でもそれを聞く僕は耳をふさいでしまいたい衝動に駆られる。僕だって、この先何十年もJimmyとだけしかセックスしないかって言われたら分からないけど、今の時点で、「1年後か2年後には誰か他の人とセックスする」なんてことは言わない。そういうときが来れば来るもの。今から、その時期を予想することなんてしない。

こういう僕だから、相手にも、とりあえず今の気持ちとしては僕のことをとても好きで、他の人とセックスしたいと思うなんて、(今のところは)考えられないって言って欲しい。それがいかに世間知らずで根拠のない言葉かなんていうのは、僕だって分かってる。人の気持ちなんて時間とともに変わってしまうものだから、僕への想いがどれくらい保証されるか、なんていう理不尽なことは僕だって聞かない。だけど、「今のところは」という部分を括弧書きにしても、そういうことを言って欲しい。こういう僕の考え方って、Jimmyには理解されないみたい。Jimmyの超現実的な恋愛観との間に、グランドキャニオンよりも深い隔たりを、この晩、改めて感じてしまった。


これから僕が1週間以上出張で不在にするけど、その間、互いに考えをまとめようということになった。だけど、この晩の3時間の議論を経て、僕の中では、時間をかければかけるほど、Jimmyとはやっぱり長続きしないだろうなぁ、、、という思いが強くなる気がする。

最後に、Jimmyから、

「君が不在の1週間、インターネットで恋人探しなんていうことはしないから」

と、僕を安心させるようなことを言ってきた。僕の中では、依然としてJimmyのことを好きという気持ちが確固として残ってはいるけれど、埋まらない溝の深さを目の当たりにして、僕もJimmyみたいに恋愛に対して現実的な考え方をせざるを得ない状況に追い込まれてきている。

===
僕が出張から戻って、Jimmyと再会するとき、どちらが先に気持ちを伝えるのか?というのが最大のクエスチョン。別れるか続けるか、どちらにしても、両方が同じ決断をすれば簡単。だけど、一方が続けたいと思って、もう一方が別れたいと思ったとき、どの順番で聞けばいいんだろう。きっと、続けたいって思っているほうは、まず先に相手の気持ちを知りたいって思うだろうな。だけど、相手の気持ちに合わせるっていう考え方もあるから、その場合は相手の出方をまず見てっていうことになる。う~ん・・・やっぱり先に気持ちを言うのは得策じゃないよねぇ。かといって、Jimmyが先に気持ちを伝えてくるとは限らないし。

失ったものに興味なし(1)

2006-03-12 10:59:54 | 恋愛・結婚
沢山の励ましのコメント、ありがとう。自分で「もう終わってもいい」って思ったから取った行動だったのに、時間がたつにつれて優しかったJimmyのことばかりを思い出してしまって、気分がどん底にまで落ち込んでしまった週末――。それとは逆に、一足早い春の訪れで桜や桃の花が一気に開花し始めた。今日、日曜は、起床するとすぐにいてもたってもいられなくなって、Jimmyの家へ行くことを決意した。その道すがら、冬から一気に春に衣替えした街中を手をつないで歩くカップルの後ろ姿が、一層、僕の気持ちを重くする。

* * *

最後にJimmyと会ったのは、3月9日(木曜日)の水球。実は3月3(金)、4(土)、5(日)の週末にかけて高熱を出した僕は、自宅で一人、汗まみれになりながらうなっていた。金曜日には会社を休むほどに発症してしまった奇妙なカゼで、体力をかなり奪われてしまった。この間、なぜか昼間は熱が下がり気味になるというパターンで、土日の昼はだるい身体を引きずりながらも、Jimmyと近所のお店で昼食を食べた。月曜にはどうにか出社したのだけど、その翌日の火曜日は、大事をとって水球はお休みした。だから、その週末からJimmy宅にお泊りもしてないし、一緒にいる時間がとても少なくなっていた。President's Dayの週末にRehoboth Beachに行った楽しい思い出が、皮肉にも最後になってしまった・・・。

だけど、すれ違いは僕の熱のせいだけじゃなかった。病気のときって、気持ちがとても弱くなる。誰かにそばにいて欲しいって思う。僕も、週末、一人でベッドに横になって病気と格闘している間、Jimmyにそばにいて欲しいって思っていた。だけど昼を食べ終わると、次の用事があるからって僕をアパートまで送って帰るJimmy。「もうちょっと一緒にいてよ」とお願いしてみたけど、「次の約束が入ってるんだ」ってあっけないくらいに機械的な返事を残して帰ってしまった。その約束というのは、AAミーティングで発表を控えているというGearyとの事前打ち合わせ。Jimmyに傍にいて欲しいっていう気持ちが、だんだんとJimmyへの鬱憤に変わっていった。

そして久々に行った水球が3月9日(木)。体力が落ちていたせいでとても疲れたことや、Jimmyに対する疑念が鬱積していた僕は、夕食はなしにして自宅に戻りたいとJimmyに言った。自宅前で車から降りようとする僕に、「明日か今週末、なにか興味ありそうなイベントがないか、見ておいて」と言い、Jimmyは僕に地元のコミュニティー誌を手渡した。このとき僕は、なんで僕が調べないといけないわけ?と反論しそうになっていたけど、とりあえず雑誌を受け取った。先週、病気で欠勤したこともあり、僕は、重要な仕事の締め切りを1件かかえていた。だからこのときも、Jimmyに、今週末は、ずっと仕事をしないといけないということ、だけど、もしJimmyが気にしないのだったらJimmyの家にいつも通りお泊りしながら仕事をしたいと思っていることを伝えた。

Jimmyは、「パートナーになるんだったら、結局、一緒にいてもそれぞれ別のことをできるような関係にならないといけないからね」と言った。Jimmyに対して、先週から冷え冷えとしてきた僕の気持ちを、全く察知していないJimmy。僕は、「実は、それについて今週末、Jimmyと話しておきたいことがあるんだ」と付け加えた。「Okay。。。じゃ、じっくり今週末、その話をしよう」とJimmyは言った。


そして翌日10日(金)、僕は会社で昼間に小一時間かけて金曜夜に、Jimmyと一緒に楽しめそうなイベントを探した。僕は、自分がPrincess(我侭な恋人)になりたくないという気持ちと、Jimmyがそういう受身的な恋人を嫌っているというのを知っていたから、僕は一生懸命、二人で楽しめるイベントはないか探した。だけど直前になって予約が取れそうなものもなく、僕の仕事が終わる時間が遅いこともあって、映画くらいしか考え付くものはなかった。

だけど、僕が僕ら二人のために楽しいイベントを積極的に探したという事実をJimmyに伝えたい気持ちがあったので、調べたウェブのリンク先なんかも貼り付けてJimmyに仕事中、Eメールを送った。観たい映画も2つ、TransamericaGood Nigh, and Good Luckを挙げておいた。

すると、即、JimmyからEメールで返事があり、僕が調べたイベントには何のコメントもなく、ただ、

「Good Night, and Good luckはもう見た。いい映画だった。Transamericaは夜7時10分と9時からがある」というもの。

忙しい業務の合間に、Jimmyのために一生懸命、ウェッブ上を検索した僕の努力に対して、一切、ねぎらいの言葉がない。フツフツと溜まっていく僕の不満。だけど、僕は、

「じゃ、Transamericaね。7時10分のでいいよ」と返事した。すると、またすぐに

「じゃ、7時頃に映画館で」というJimmyからのEメール。

だけど、前回、同じように金曜の夜にTransamericaを見に行こうとして、チケットが売り切れていたことがあった。だから、僕は、

「事前にオンラインでチケット買っとかなくていい?」と聞いてみた。それに対するJimmyの返事が、

「もしそうしたいんなら君が買えば(You could buy them)」。

この一言メッセージを目にしたとき、僕の我慢が限界に達した。会社のオフィスでパソコンを前にして、一瞬、血の気が引いたかと思うと、カッとするような火照りに襲われた。今にして思うと最初に感情的になったのは僕の方。だけど、僕にもそれなりの理由があったと思っている。

僕は、感情にかられたまま、またメールを出した。

「You could buy them?なんでそんなに受身的なわけ?」

これに対してJimmyも反逆してきた。

「君は僕を『受身的』って決め付けているけど、『買っとかなくていい?』っていうことが『買っておいて』を意味してたんだったら、最初っから『買っておいて』って言えばいいじゃないか」

「『買っとかなくていい?』は『買っておいて』っていう意味じゃないよ。互いに自分のぶんだけオンラインで買うっていうことを考えてた。だけど、これまでにもJimmyってこういうことあったよね。今週末、話をしたいって言ってたけど、それってまさにこういうことだった。でももうその必要はない」

僕は、ボーイフレンドに愛情表現を沢山してほしいし、その一つが相手の積極性だと思っている。たとえば、この金曜夜のことだって、僕にすべてを押し付けてしまうんじゃなくて、「こういうイベントもあるけど」とかJimmyに提案して欲しかった。なのに、Jimmyは、「もしそうしたいんなら君が買えば」っていうような無神経なことを言ってきた。しかも、それがここしばらく続いていた。

実は、このメールを書いていたとき、「もうこれでおしまいだね」とか、「Jimmyって僕のこと本当に好きなの?愛情が感じられない」とか、かなり直接的なことを書いていた。だけど、10秒間、考え直して、関係の終わりを匂わす表現は消しておいた。ただ、「でももうその必要はない」って言うことで、今晩も含めてJimmyとは今週末、会うつもりのないことを僕なりに言ったつもりだった。

このメールを送ってからしばらくして、Jimmyから長いメールが返ってきた。かなり時間をかけて丁寧に書かれたメールだったけど、内容は、すべてJimmyの立場を弁明するものばかり。「オンラインでチケットを別々に買うのはいい考えじゃない。一方が買えない危険性があるから。それに、これまで、映画を見に行くときに、先に到着してた方がチケットを買うのは、並ぶ時間の節約になるから、云々」

じゃ、なんで「僕が買っとく」じゃなくて「君が買えば」なわけ?その点について、Jimmyはまったく触れていない。結局、自分の立場を正当化するためだけの言い訳ばかり。もどかしいメールのやり取りに疲れ、Jimmyの自己防衛的な言い訳にも辟易し、僕は返事を出さずに仕事に戻った。そして溜まった仕事に追われ、この晩、オフィスを出たのは夜9時を回った頃だった。

オフィスからの帰り道、携帯電話の電源を入れると、2件、留守録が入っていた。

1件目、「今、映画館にいる」というJimmyからのメッセージ。
2軒目、「今、もう映画館の中に入った」というJimmyからのメッセージ。

バッカじゃないの。あのメールのやり取りの後に、何の連絡も取らないまま、僕がまだ映画館に行くと思ってたわけ?

そんな強気の意見を心に思う反面、Jimmyはもしかして僕らのためにチケットを2枚、オンラインで買ってたんじゃないかとか、一人、映画館で僕を待ち続けるJimmyに、とても悪いことをしたっていう気持ちが心をかすめた。だけど、まだこの日のやり取りを鮮明に覚えていた僕は、とてもJimmyに連絡を取る気にはなれなかった。

その後の週末は、締め切りに追われた仕事で身も心も手一杯で、Jimmyに連絡を取るつもりはまったくなかった。だからアカデミー賞も、仕事の休憩時間に一人で見ていた。そしてその頃には、もうこの関係もこれで終わりだなぁなんて冷静な気持ちにさえなっていた。

元カレJamesにも、「もうJimmyとはこれで終わりだよ」なんて話をしていた。Jamesにしてみると、複雑な気持ちだったみたいで、「I'm sorry」とは言ってくれたものの、Jimmyはかなり年上だし、僕にとっていいパートナーとは思っていないというのが本音らしかった。

月曜が締め切りの仕事を追えた後も、四半期末・年度末に入っていたこともあり仕事が次から次へと発生。出張、3件の会議出席、社内打ち合わせなどをこなすことに手一杯で、気がつくと水曜夜になっていた。Jimmyと全く連絡がとれていなかったこと、そして4ヶ月以上もつきあったのにあんな終わり方になったことを後悔しはじめた僕は、またJimmyにメールを出した。

「僕ら、話し合う必要があるよ(We need to talk)。だけど、明日の木曜日は忙しくて水球に行けないけど」

僕のメッセージに、Jimmyは翌日返事をしてきた。

メールボックスにJimmyからの返事が入ってきているのを確認した僕は、それを開く前に身構えた。それにはどんな内容が書かれているのか・・・。僕の心の中では、「じゃ、今週末、OXで会おう」とか前向きな内容が書かれていたら嬉しいなと思う一方、最悪の場合、どんなメッセージなのだろうかということは、僕の想像を絶していた。そして、実際、Jimmyからのメッセージは僕の想像をはるかに超えた最悪のものだった――


「僕には必要ない(Not necessary for me)」


氷のように冷たい返事。もう話す必要すらないっていうJimmyの言葉。僕ら、ちゃんと話してない。あのEメールの喧嘩だって、互いに言いたいことを中途半端に書きなぐって、十分に話合わないまま、僕の方からコミュニケーションを遮断していた。もう話す必要がない?決断を下すにはあまりにもその材料に欠ける。

だけど、このJimmyの冷たい一言に、僕はなにも反論する気力すらおきなかった。

「ごめんなさい。僕らの関係がうまく行かなくなって、本当に残念だと思う。Jimmyとは楽しい思い出も沢山あるし、これからJimmyと一緒にしたいことだって山ほどあったのに。旅行にだってもっと一緒に行きたかった。でも今言えることは、全部ありがとうってことだけ。本当にありがとう」

Jimmyの怒りに満ちたメッセージに対して、僕は逆にお礼のメッセージを出すことで、Jimmyに罪悪感を持たせ、仕返しを期待していたのかもしれない。だけど、これ以外に僕はJimmyに何を言っていいのかわからなかった。もうJimmyとは続かないって思ったし、不満だって、金曜日だけのことじゃない。Jimmyとはコミュニケーションがとても難しくて、付き合い始めてから別れそうにな気持ちになったことが何度かある。

そして、仕事で毎日スケジュールに追われ、Jimmyのことを考える余裕がなかったということも僕のネガティブな気持ちに拍車をかけていた。

そして土曜日。朝、9時過ぎに目が覚め、いつもだったら隣でJimmyがパソコン画面でニュースや株価をチェックしてるのになぁという、いつもの記憶が蘇ってきた。このときには、Jimmyへの怒りは消え、Jimmyの優しかった記憶やJimmyを失うことへの焦燥感が強くなっていた。そして、発作的に僕はJimmyへ電話をした。だけど、Jimmyは電話に出ない。Jimmyの留守録で久しぶりに聞くJimmyの声。もう一度欠けてみるけど、やっぱりJimmyは電話に出ない。週末といえども外出するには早い時間。きっと、僕からの電話だとわかって、Jimmyはあえて出ないんだと思った僕は、留守録にメッセージを残した。

「僕ら、やっぱり話をする必要がある。Eメールで喧嘩して、Eメールで別れるってやっぱりおかしいよ。この4ヶ月が、こんなに簡単に終わっていいの?なんにも意味がなくなってしまっていいの?誤解とコミュニケーション不足が原因なのは明らか」

このほかにも寝起きの頭で思いついた気持ちを整理のつかないまま留守録に向かって話し続ける僕。2分くらいしゃべって、切れてしまった。とりあえず、今の気持ちを留守録に残したけど、直接Jimmyと話してないので気分が収まらない。Eメールでも何かメッセージを出そうか思い悩んでいると、JimmyからEメールが送られてきた。

「あの金曜夜に、僕の電話メッセージ2件に対する返事を君がし損ね、そしてそれから1週間連絡をしてこなかったことで、君は、尊敬の全くないやりかたで、僕と僕らの関係を見捨てた。君がこの関係に「幕引き」をする要求に応えるつもりはない。これから先、僕から二度と君に連絡があるとは思わないでくれ」

Jimmyの怒りが、丁寧に選ばれた言葉の端々から伝わってくる。罪悪感に襲われる――。でも、あのとき、僕も怒りに満ちていた。Jimmyなんてもう会う必要ないって思った。だけど、このJimmyからの付き放たれたメッセージを読んで、怒りではなく、Jimmyが体験した悲しみと戸惑い、苦悩が、僕のことのように感じられてしまった。

それから僕は何度もJimmyに電話をした。だけど、もちろん、Jimmyは僕の電話に出ることはない。僕もJimmyと4ヶ月以上つきあって、ある程度彼のことは分かってきたつもり。JimmyがNoといったら、絶対にNo。Jimmyは一度決めたらなかなか変えない頑固者。だけど、Jimmyは言葉をとても慎重に選ぶタイプでもある。Jimmyのメールには、「もう君の事は嫌いだ」とも、「二度と会わない」とも書いていない。それは、やっぱり水球で再会してしまうことを予想してJimmyが言葉を慎重に選んでいるからだと思う。

そのことに気づいた僕は、またJimmyに電話した。「Jimmyから二度と連絡はしない、ってあるけど、僕からJimmyに電話しちゃいけないとは書いてないよね。だからまた電話します」って。

失ったものに興味なし(2)

2006-03-12 10:00:06 | 恋愛・結婚
土曜日は、こんな感じで僕から一方的に電話をして終わった。そして寝る間際、もう一回、JimmyにEメールを出した。それには、僕も慎重に慎重を重ねて、あの日から僕の怒りとそのほかの感情がどんな様子で変化していったか、そもそも、僕がこういう態度に出た理由はなにだったのか、そして、まだ僕はJimmyのことを好きだということを正直に告白した。そして、12月のJimmyの誕生日前夜に、Jimmyから思いもよらないことを聞かされ、家に帰ろうとまで思ったけど、思いとどまったこと、あれ以降、僕にとってはJimmyとの関係はセカンドチャンスだったこと、そして、僕もそのときのJimmyの謝罪を受け入れてセカンドチャンスを与えたのだから、Jimmyも今回、僕らの関係にセカンドチャンスを与えるべきだということを。

一度は100%近くまでJimmyとの関係を諦めかけた僕が、ここまで関係を取り戻そうともがく理由が一つあった。もちろん、Jimmyをまだ好きだという気持ちに気が付いたことが一つの理由だけど、もう一つ、たとえ、Jimmyがこれ以上僕を求めていなくても、ここで僕が何か行動を起こしてこの関係を救う努力をしておかないと、後になってものすごく後悔するだろうということを直感的に分かっていたから。だから、僕は、後で後悔しない分だけの努力はするつもりだった。


今日、日曜日になってもJimmyから僕のメールには返事はなかった。そして後で後悔しないためにも、僕はJimmyの自宅に行ってみることにした。日曜朝、10時過ぎ。今から自宅をでれば、Jimmyのところには11時には到着する。友達とブランチに行っているかもしれないけど、Jimmyが自宅にいる可能性は高い。

予定通り11時ごろJimmyのマンションに到着して、最初に僕が確認したのは駐車場。Jimmyのオレンジ色のメタリック車が駐車している。3階のJimmyのユニットを見上げると、寝室の窓が全開になっている。でも中は暗くてよく見えない。Jimmyが自宅にいる可能性はとても高い。僕は、入り口のインターフォンでJimmyのユニットを呼び出してみた。だけど、やっぱりJimmyの留守録が流れるだけ。もしかしたら、僕が駐車場でうろついているのをJimmyは窓から見ていたのかもしれない。30分、時間をつぶして、もう一度Jimmyのユニットを呼び出してみるけど、やっぱりJimmyは出てこない。

僕は、最後の手段として、同じビルに住む、Jimmyの親友Johnを呼ぶことにした。Johnのユニットを呼ぶと、すぐに彼が出てきた。

「Hi, John.僕、Tyです」

一瞬、僕が誰なのか理解するのに時間を必要とするJohn。だけど、

「あ、Ty。今、ドアを開けるから入っておいで」

1階にあるJohnのユニットは、ビルに入って左に曲がればすぐ。火照るほどの陽気だった今日、60代近いJohnは、上半身裸で僕を出迎えてくれた。

「えーっと。Ty、元気にやってる?」

やっぱりJimmyから僕らの話を聞いているみたい。

「どうにかやっています。Jimmyを呼び出したんだけど、全然出てきてくれなくって」

「ま、座って。水でも飲む?」

「ありがとうございます」

水の入ったグラスを受け取って、僕はチェアーに腰をかけた。Johnは仕事中だったようで、リビングにあるPCの前に再び座って僕の方を向く。

「Jimmyから何か聞いてますか?」と一応、質問をしてみる。

「何かあったということは聞いたけれど。金曜夜に、Jimmyが来てね、ミスコミュニケーションがあったとか、Transamericaがどうだとか、詳しいことは覚えちゃいないんだけど」

Jimmyは、きっとJimmyからの視点でしか状況を説明していないだろうと思った僕は、「あの出来事には、2つのストーリーがあって、Jimmyから見た視点と僕から見た視点があると思うんです」と説明をした。一通り僕の説明が済んで、Johnは僕に質問をしてきた。

「それで、Tyはどうしたいわけ?」

「このまま関係を終わらせたくないって思っています」

「私もね、Jimmyについてそんなによく知っているっていうほどじゃないんだよ。そりゃ、長年知り合いだし、気心も知れているけどね。彼は彼なりのissueがあるし、私とは違う価値観もあれば、attitudeだってある。だけど、私もJimmyも、ともにアルコール依存症から回復しようとしている途上だからね。彼には、今、スペースが必要なのは明らかだと思うよ」

確か13年以上、アルコールは口にしていないといっていたJimmy。Johnが言う、「アルコール依存症から回復しようとしている途上」というところが引っかかったけど、きっと、一度アルコール依存症に陥った人は、一生、「回復途上」にあるっていう考え方なんだろうと一人納得をした。

「Jimmyから2通、Eメールを受け取ったんです。それには、『二度と僕から連絡があるとは思わないでくれ』って書いてあったけど、『二度と会いたくない』とか『嫌いになった』とは書いてなかったんです。金曜夜、Jimmyがここに来たとき、なにか言ってませんでしたか?」

「いや、ミスコミュニケーションだとかは言っていたけどね」

「じゃ、関係が終わったとは言ってないんですね」

「Jimmyはね、関係が終わっても終わったなんてわざわざ言うタイプじゃないよ」

「・・・。そうですね。だけど、また来週火曜日、水球があるんです」

「じゃ、そのときは、親切に接してあげることだね。突然飛びかかったりしちゃだめだよ」

「はい。そのつもりです」

「それにTyも、この関係から学ぶことがあったんじゃないの?今、何歳だっけ?君は若いんだから・・・そこにもJimmyとのissueがある気がするけどね。でも、今度からはそんなに簡単に癇癪おこさないようにしないとね」

「はい。もしJimmyと関係が修復したら、二人でカウンセリングに行くつもりです」

にっこりと笑うJohn。

「じゃ、これから家まで車で送ってあげるから。ちょうど、1時15分から市内に行く用事があってね。家の近くまで送ってあげるよ。とにかく、Jimmyには、今、スペースが必要だからね。今日、突然、玄関のドアをノックするなんていうのはいい考えじゃないよ。Eメールとかはね、本当の気持ちを伝えるための手段じゃないよ。手紙とか、カードとか、時間はかかるけど、そういう方法でじっくりとコミュニケーションをとるのがいいんじゃないかな」

「分かりました。ありがとうございます」

この後、Johnの恋人Michaelが出てきて、彼とも少し話しをした。MichaelはそれほどJimmyについては知らない。だけど、もと神父で、今は博士課程で心理学を勉強していて、とてもsympatheticに僕を抱擁してくれて、「きっとうまくいくよ」と励ましてくれた。

そのとき、ちょうど着替えをしながら寝室から出てきたJohnは、「でも、うまく行かないっていうこともありえるからね。Jimmyはね、一度失ったものには興味を示さないタイプだからね(He is not interested in his loss)」


一度失ったものには興味を示さないタイプだからね――


シャツに腕を通しながらJohnが言ったこのさりげない言葉が、すべてを言い当てている気がした。

Johnの車で自宅近くまで送ってもらう道すがら、Johnはなるべく僕を励まそうと、「今日はどうするつもりなの?」とか「悲しい?」なんて聞いてきた。でも、なるようにしかならないと思っていた僕は、

「ま、死ぬなんてことはないですから」

と冗談まじりに空笑いで受け答えをした。そして僕は続けて、

「1週間後くらいに、実は、東京に出張に行くんです。タイミング悪いです」と言った。

「タイミングはね、何がよくて何が悪いかって難しいからね。もしかしたらいいタイミングかもしれないよ」

だけど、僕はこのJimmyとの問題は時間が解決してくれるとは思えなかった。特に恋愛に至っては、Out of sight, out of mind。会わない時間が長くなればなるほど、「会わなくても生きていける」心理状態になる。Jimmyの中で決着が付くことはあっても、僕と関係を取り戻すという気持ちになるとは思えない。

「Jimmyは失ったものには興味を示さないタイプって、的を射ていると思います。それってとてもJimmyらしい」

「ああ、さっき私が言ったことね。もちろんうまくいくことを祈っているけど、Jimmyが『失ったものに興味を持たないタイプじゃない』って私は言えないからね」

「あそこの角で降ります。今日は本当にありがとうございました。貴重なアドバイスを沢山もらって・・・。気分も少し楽になりました」

「それじゃ、元気出してね」

Johnにハグをして、僕は車を降りた。

自宅に帰り、Eメールを確認したけど、もちろん、Jimmyからのメールはなかった。Jimmyが「僕から二度と連絡があるとは思わないでくれ」と言うからには、それなりの覚悟があって言ったことで、そう簡単に撤回しないだろう。

一度失ったものには興味を示さないタイプだからね――