アメリカGAYライフ American Gay Life by an expat Japanese

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映画三昧(総集編)

2004-11-28 04:59:07 | Weblog
この4連休を締めくくるにふさわしい映画を観た。タイトルは、『Before Sunset』。もともと、9年前に日本でも公開された『Before Sunrise』の続編。インディーズ映画ながら、異例のヒットとなり今回の続編が作られることになった。

ストーリーは単純で、ヨーロッパを旅行するアメリカ人の若者(Ethan Hawk)と、フランス人女性(Judie Delpy)が、列車の中で知り合いになり、夜が明けるまでの半日をウィーンで過ごすというラブストーリー。別れ際に、ウィーンの駅で、6ヵ月後に同じ場所で会おうという約束をして前作は終わり。果たして二人は再会したのか・・・というのは観客の想像に任せられた形だった。

それから9年後、二人がパリで再会するシーンから続編は始まる。タイトルの通り、今度は、日没までの数時間しか二人には与えられていない。

映画の中で、一番印象に残ったのが、二人がなぜ9年前に駅で別れる時、電話番号や連絡先を交換しなかったかを話すシーン。Judieは、「私達、若かったから単にバカだったのよ」なんて冗談を言いながら、真剣な顔付きになって、「若い頃は、気の合う人なんてこの後、山ほど出会えると思っていたのよ。本当は人生の中でそんな人に出会えるのは数少ないのに」、なんてドキッとさせられるセリフがあった。

『マディソン郡の橋』とかロマンチックな映画がお好みの人にはお勧め。

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TurkeyとKinsey

2004-11-27 04:56:20 | Weblog
ゲイにとって恐ろしい季節がやってきた。そう、ホリデー・シーズンの到来。

26日(木)はアメリカは感謝祭で休日でした。毎年、11月の最終木曜日と決まっていて、その翌日の金曜日も休み。だいたい、水曜日の午後あたりから一般のアメリカ人はこの感謝祭休暇に突入する。(ちなみに、カナダでも感謝祭があるのだけど、アメリカより1ヶ月早い10月に行われる――冬が早く来るからか?このカナダでの1ヶ月早い感謝祭を知らないアメリカ人は非常に多い。悲しいながら、いかにアメリカ人が自分の国以外のことについて無知、というか無関心かということの一例)

さて日本人にとって馴染みの薄い感謝祭。端的にどんなものかというと:

・家族で集まる日――日本のお正月みたいなもの。だけど、1ヵ月後の12月にはクリスマスがあって、これも家族で集まる日。だから帰省するのは11月か12月のどちらかにする人もいる。それに、クリスマスはキリスト教徒の祭日だけど、感謝祭はそういう宗教色がないので、クリスマスよりもPC(politically correct)な休日と言えます。ちなみに、クリスマスと大体同じ時期、ユダヤ教の休日「ハニカ」があり、結局、12月末はみんな(色々な宗教)にとってのホリデーになっている。

・とにかく交通渋滞の日――日本では、年末でも最近は「分散傾向」になって交通渋滞も緩和されているみたいだけど、感謝祭の休日は週末を入れて普通4日間しかなく、その間にアメリカ国民の相当数がまさに「民族大移動」をするから、空港も高速道路も大渋滞する。

・七面鳥を食べる日――おせち料理みたいに、この日に食べる物が伝統的に決まっている。メインは七面鳥(turkey)で、中にパンやりんごなど、それぞれの家庭によって色々なスタッフィング(詰め物)をしている。それにグレービー・ソースとクランベリー・ソースをかけるのが決まり。それと、グリーン・ビーンズ(サヤインゲン)、マッシュポテト、デザートはパンプキン・パイというのもお決まり。300年前に編み出された料理なので、質素。(おせち料理も伝統的なものは質素だよね。)なので、そんなに美味しいと唸るものではない。けど、これで育ったアメリカ人にはご馳走と映るみたい。アメリカ人は、これと同じ物をクリスマスにも食べます。よく飽きないなーと思うのだけど・・・。でもやっぱりアメリカ人もこの料理には飽きるみたいで、クリスマスには「ハムを食べる」という習慣もある。

で、なぜこれがゲイにとって恐ろしい季節かというと、街から人影が消え、退屈極まりない季節だから。家族にカミング・アウトして受け入れられて、恋人もいるゲイならこの季節を満喫するのだろうけど、そんなゲイは少数派(のはず)。そうだとしても、やはり家族の日なので、子供のいないゲイ・カップルにとってはどこかセツナイ季節なのです。(最近は、ゲイのカップルでも子育てするという人たちが増えつつあるみたいですが。)

去年は、そんなゴーストタウンからオサラバしたくて、カナダのバンクーバーに1週間旅行した。カナダでは平日なのでお店や美術館も開いている。しかも、アメリカは休日で帰省する日なので、アメリカからの観光客がぐっと減って、ホテルや航空券も割安だった。2年前はマイアミから出発するカリブ海のクルーズに行った。3年前は・・・何していたか覚えていない。

今年は、久々に自宅で過ごした感謝祭。理由は単純で、夏に2週間もヨーロッパ旅行に行って散財してしまったから。今はちょっと貯蓄モード。その理由を抜きにしても、やっぱりそうとう憂鬱でした。レストランなんて90%が閉まっていたし、天気も悪くて陰鬱。友達もほとんどが実家に帰ってしまって、ナイナイだらけ。今日は連休の中日だけど、たまった洗濯でもしようか。なんか、せっかくの休暇というのに、早く終わって欲しいような欲しくないような。

とにかく安上がりのエンターテインメントということで、映画三昧の日々。

* * *

ひとり「つまらなーい」と不平不満をぶつぶつ言っていますが、よくよく考えるとこれは実家に帰っても同じかも。正月なんて実は退屈で、正月を迎えるまでの年末の気忙しさや準備段階が一番楽しい。それに、アメリカは日本みたいに隠し芸大会や紅白歌合戦みたいなテレビ・イベントがほとんどなくて、クリスマスの日はバチカンのミサを実況中継してたり、お正月も普通に平日の昼メロが放送されてたり、肩透かしこの上なし(あえて挙げると、大晦日の花火大会の実況中継くらい)。そう、やっぱりホリデーを楽しいものにするためには、一緒にいたいと思える人とゆったりとした時間を過ごすこと、これが何物にも代えがたい幸福感をもたらしてくれるんだよねぇ、なんてひとりごつ。

今のところそんなsignificant otherのいない僕は、映画を観ることで少しでもフェスティブな気分になろうと、感謝祭当日、元カレ(今は家族のような存在)と話題作の『Kinsey』を観にいきました。(日本にいたら、『ハウルの動く城』を観てたと思う。早くアメリカ上陸して欲しい。)

『Kinsey』は、間違いなくアカデミー賞の有力候補になる作品。数年前の『ビューティフル・マインド』と似てなくもない(主人公が大学教授(科学者)で、その妻とのやり取りが多いという点で)。主人公、Alfred Kinseyの半生を描いた作品なんだけど、このKinsey、1940年代に、人間の性活動について科学的な見地から膨大な数の人にインタビュー調査を実施して、統計的な報告書『Kinsey Report』を発表している大学教授。

当初は動物学者としてスズメバチの研究をしていたのだけど、Kinsey本人が結婚したときに直面した妻とのセックスの問題をきっかけに、人間の性行動について研究のテーマをシフトしていく。そして、Kinsey自身、自らをバイセクシャルと認め、同性愛についても正面から調査対象にしている(この映画の脚本家がゲイなのは言わずもがな)。映画の中でも、男性研究助手とのセックス・シーンがある。

映画『Kinsey』の興味深いところは、やはりKinsey自身の個性。動物学者から出発していて、何事も科学的であることにこだわる。男の研究助手とセックスをした直後、妻に対して隠し事はしたくない、という理由で浮気を伝える。そのときKinseyが言ったのが、「同性愛という性活動は自然界では普通に見られることで、人間界でおいてのみ、倫理や道徳という桎梏によってそうした『はみ出た』性行動を抑制しようとしている。そうした社会的なしがらみを取り除き、真に自然な人間の性行動を研究している自分が、自らの同性愛の側面を隠し立てするのは欺瞞でしかない」というセリフ。これに対して、悲しみに泣く妻は、「あなたには愛というものがないの?そうした社会の桎梏は、お互いに傷つき、傷つけられるのを防ぐために人間が考え出した自己防衛のための仕組みじゃないの」と反論する。それにKinseyは、「愛は数字で測ることができない。測ることができないものは科学ではない」と言う。

第一線の科学者としての冷めたところと、時には自分の性行動や父親との確執で悩む人間的な姿という、両極端な2面性が、彼の特異な個性を象徴している。映画の中で、Kinseyは、異性愛と同性愛を0から6段階に割り振っている。0だと完全に異性愛者、そして6は完全に同性愛者。Kinseyは、自分をレベル3と判断している。

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入国審査

2004-11-18 04:55:43 | Weblog
9・11のテロ以降、ますます厳しくなるばかりのアメリカ入国審査。今年から、アメリカに入国する外国人は、人差し指の指紋認証と、顔面写真を撮られるようになった。まだそれだけならいいけど、アメリカ国内を飛行機で旅行するときなんかも、空港で荷物検査を受けるとき、明らかに非白人の外国人というだけで、特別なセキュリティ・チェックを受けさせられることがある。勿論、空港職員は、「あなたはランダム・チェックで選ばれたので、あちらで手荷物検査を受けてください」なんて言うけど、外国のパスポートを持っているから引っかかったのは一目瞭然。僕はそのとき、「白人のアメリカ人の男性(当時のカレシ)」と旅行していたのだけど、同時にチェックインしたのに、彼は引っかからずに僕だけが「ランダムの」手荷物検査に引っかかった。一思いに、「あなたはアメリカ人じゃないので手荷物検査を受けてください」といわれたほうがよっぽどましなのに。

先日のNYタイムズでも、アメリカがだんだん外国人(特に有色人種)にとって魅力のない国になっていることを示す記事が掲載されていた。それによると、2003年と比べて、今年は、中国人学生によるアメリカ大学院への志願者数が45%、そしてインド人学生が28%減っているのだとか。ビザも取りにくくなったし、卒業してもそのままアメリカに残って仕事をしにくい環境になっていること、そしてアメリカそのものが、外国人を歓迎しない雰囲気になっていることが挙げられると思う。

不満はこれくらいにして、入国審査で僕が経験した面白い話を一つ。これは、去年の6月なので9・11テロ以降の話。既に入国審査は厳しくなっていた(はず)。僕はオランダ出張から戻って、アメリカで入国審査を受けた。審査官は、明らかに中国系アメリカ人のおじさん。40がらみで、英語にかなりの中国語の訛りがある。同じアジア人だから審査もラクだろうと思っていた。確かに、審査自体は通常どおりで問題なく終わったのだけど、この審査官のオヤジ、僕のパスポートを見て日本人と分ると、鉛筆と紙を取り出して、「銀座」と漢字で書き始めた。そこに行ったことがあるというのだ。話し好きのオヤジだなぁと思いながら、受け答えしていると、住所と連絡先を聞いてきた。一応、そこは空港の入国審査のブース。背後には、入国審査を待つ人の長蛇の列。だけど、一応これも厳しくなった入国審査の一環かとも思え、住所と電話番号を伝えた。すると、「今度、点心を食べにいこう。いいお店しってるから」。ちょっと驚きだったが、入国を拒否されてはたまらないという思いから、アジア人スマイルを振りまき「Oh yeah」なんて適当に返事をしておいた。

そして翌日、なんと、そのオヤジから自宅に電話がマジでかかってきた。絶句。そのときはあまりに驚いてしまって、「ごめんなさい。その日は都合がつかないからまたこんど」なんて、適当なことをいってごまかしておいたら、また翌日電話がかかってきた。これは、はっきり断らないと、ストーカーまがいのことをされたらたまらない、と思い、2回目の電話ではっきりとお断りした。

これって、職場だったらセクハラだよね?それにしても、入国審査中にアジア人男を引っ掛けようとする中国系アメリカ人オヤジ。非常識だし恥知らずもいいとこ。これって、国務省の入国管理局みたいなところにクレームつけたら、失職ものなんじゃないかと思うんだけど。

でも、それ以降も、僕は入国審査の時は、なるべく有色人種の審査官、できれば中年以上の男性を(可能であれば)選ぶようにしています。白人、女性、しかも若いというのは最悪。審査が一番厳しい印象がある。(でもやっぱりこれは僕がゲイだから?)

もう一つ面白い体験。バンクーバーの空港でアメリカ入国審査を受けたときのこと。そのときは、若くてカッコいい系の白人男性が審査官だったのだけど、そのにこりともしない審査官が僕に質問をしている最中、中年女性の審査官が突然僕達のブースにやってきて、僕の審査官に対して、「50ドル借して。今度返すから。今日、賞金額が何ミリオンもある宝くじが締め切りなの。それを買わなくちゃ」と言った。僕は、一応、入国審査の途中だったので、黙ってそのやり取りを聞いていたのだけど、このオバサン、僕に悪いと思ったのか、「彼、私の息子なのよ。邪魔してごめんなさいね」なんて謝ってくれた。これまで、プロフェッショナルに笑いもせず、まじめに僕の審査をしていたこの青年も、彼のお母さんの登場によってイメージ台無しというか、相当恥ずかしかったみたいで、その後は質問が一つもなく、僕のパスポートにボンボンとスタンプを押して入国許可を出してくれたのでした。

ま、テロ以降厳しくなっている入国審査だけど、こういう「憎めない人たち」が多くいるのもアメリカならではです。

いい男

2004-11-17 04:55:06 | Weblog
またまたご無沙汰してました。ちょっと仕事のほうが立てこみ始めて・・・(言い訳)。なんか、久々に自分のウェッブサイトに戻ってきて、「はてさて、前回は何を書いてたんだっけ?」なんて読み返してみたら、かなり重~い話だったので自分でもびっくり。Brianとは、なんとか模索しながら友達関係を続けてるけど、まだ適当な距離感がつかめていないかな。それに、周りの人間が気付いてきちゃって、もう友達になると決めた僕達なのに、周囲はそう見ていないところが居心地悪い。

あーそれにしても、心ときめく男が回りにいない!友達同士で「どんなヒトが好み?」なんて聞くと、だいたい「タイプなんてない。好きになったヒトがタイプ」なんて、ぶりっ子の新人タレントみたいなセリフを言ってくる人がいるけど、タイプがあるなんて全然恥ずかしいことじゃないよね。でも、やっぱり自分が好きなタイプを他人に知られるのって、ちょっと恥ずかしいのは何故なんだろう・・・。ガイセンも、一種のタイプだね、そういえば。

僕も自分のタイプを考えていたら、浮気性(ウソ)の僕なので、いくつか惹かれるタイプが思いつく。だけど、最近見かけてうっとりしてしまった二人がいる。一人は、アメリカ人の歌手で、Jim Brickman

たまたま、今日、ウェッブでクリスマス・ソングのCDを探していたら見つけた。写真を見たとたんに、「い、いける・・・」って感じで瞳孔が開いちゃいました。そして、このJim Brickmanを見て思い出したのが、朝のCNNヘッドライン・ニュースのニュース・キャスター、Thomas Roberts

朝、寝ぼけ眼で、うっとりしながら見てます。基本的にはローカル・ニュースを見てるのだけど、それがCMになると、即、CNNヘッドライン・ニュースにして、Thomas Robertsを眺める日々。ニュースの内容なんて頭に入ってこない。寝起きだしね。

でも、この二人、似てると思いません?確実に、僕のタイプです。

Brianちで夕食

2004-11-10 04:52:31 | Weblog
前回の報告をつづった直後、Brianからまた電話が。まるで昨晩、何もなかったかのように無邪気な声で「What’s up?」と聞いてくるBrian。土曜の夕方6時半を回った頃の電話で、これからコーヒーでも飲まないというお誘い。Brianが指定してきたコーヒー店は、Brianの自宅のすぐそば。僕のアパートから歩いて20分くらいの距離。夏時間が終わって日没が1時間早まっていることもありすっかり辺りが暗くなっていた。しかもコーヒーを飲みたい時間でもない。迷ってはっきりしない返事を繰り返す僕に、Brianが、その後、僕のアパートで夕食を作って食べようという、Brianの「計画」を恥ずかしそうに伝えてきた。てっきりコーヒーを飲むだけだと思っていた。Brianの、本音を「小出し」にしか言わない性格がこんなところでも出ている。それに、前回の報告をつづり終えて、一人物悲しくなっていた僕は、またBrianの誘いに乗ることでどういう結末が待ち構えているかも考えないまま、寒くなってきた夜風のために厚めに服を着て家を出た。

Brianとのコーヒーの後、すぐそばにある無機農薬野菜なんかを取り扱っている有名食材店Whole Foods(日本で言う紀伊国屋とか三浦屋)で、ペンネ・パスタ、トマト・ソース、レタス、赤ワイン、レトルトのバター・スクォッシュ・スープ(パンプキン・スープみたいなもの)なんかを買い揃えてBrianのアパートへ。

狭い――これがBrianのアパートに着いたときの印象。日本の6畳一間の広さ。部屋の隅にはベッド代わりにマットレスが敷かれ、反対側にテーブルと2脚のいす。床にはCDが散乱。そして一番、異様だったのが、おそらくこの部屋で一番、高価と思われるエスプレッソ・マシーン。まだぴかぴかに光沢を放つエスプレッソ・マシーンと、そばに散らばるコーヒー豆の粉。3ヶ月前に引っ越してきたばかりとはいえ、かなりの乱雑ぶりの部屋と、周りから浮き立っている高級エスプレッソ・マシーン。キッチンも2畳程度の広さのところに、冷蔵庫とガスコンロだけはアメリカ式にどでかいのが置かれて、3分の2くらいのスーペースを取ってしまっている。「だから汚いって念押ししておいたでしょう」と言うBrianの声には、悪気とか申し訳ない感じが全くない。むしろ、僕がやってきたことを楽しんでいる感じで、鼻歌でも歌いだしかねない雰囲気。

そそくさと脱ぎ捨てられたジーンズやTシャツをクローゼットに押し込み、テーブルで食事ができるようにスペース作りに奔走するBrian。僕も手伝おうと、スープを鍋に注ぎ温めることから始めた。そしてBrianが、サラダ用に、ビネガーとオリーブオイルを混ぜてと僕に頼んできたので、Brianに渡されたタッパ・ケースにトボトボと液体を注ぎ、フォークを使って体全体を揺らせながら一心にミックスをする僕。後ろからそれを見ていたBrianが、「Your butt is shaking(お尻が揺れてる)」って掴んできたりして、なんか楽しい雰囲気に。

アメリカの大学の学食に良く出るような、気の抜けた味のパスタだったけど、Brianが一生懸命、作ってくれたことのほうが嬉しくて、ほとんど完食。大学時代、音楽を一時専攻していたというBrianは、センスの良いCDを多く持っていて、ムード抜群のJazzなんかを選曲してかけてくれた。そのときBrianが言ったのが、「I know the Japanese like jazz」。どこから仕入れた知識なのか相当根拠のない発言だったけど、赤ワインの酔いが回っていた僕は、確かに日本人はJazz好きかも?なんて何でも信じてしまいそうになっていた。

そして、Brianのアパートに入ってから、いけないいけないと思っていたのに、二人で床に敷かれたベッド代わりのマットレスで寝転びながら、デザートのアイスクリーム・タイムへ。

クッキー・アンド・クリームのアイスクリームを食べ終え、空になったカップをフロアに置いて、ゴロンとマットレスに横になった二人。その頃にはすっかり赤ワインのボトルも空になってテーブルから寝そべっている僕達を見下ろしていた。

ムードとしては、最高潮。だけど、前日の夜の会話がお互いの脳裏によみがえってきているのは確実。そんな中、Brianが口火を切って言った。

「なんで今晩、うちに来たの?」

誘っておいてこのセリフはないだろうと思うのだけど、確かに、僕はBrianに恋人としての魅力を感じていないのに、なんでBrianの家に来たのだろう。とっさに僕が応えた。

「もう一度、昨晩の話のことを確認したかったから」

Brianは、「なるほど」って言って納得した様子。だけど、とBrianが続けたのが、「昨日、話したように、僕は多分、君が求めるようなsexをできないと思う。今ここで試してみることもできるけど・・・でも、もし相手のことが好きだったら、sexのウケもタチも関係ないんじゃない?それに、今までデートしてくれたっていうことは、ある程度、僕のことに魅力を感じてるわけだよね?それとも、可愛そうと思ってチャリティーでデートしてたわけ?」

だんだんBrianの質問が攻撃的になってくると同時に、僕の本心を突いてくる。今25歳で2年前にゲイに目覚めたばかりのBrianが、僕にとって物足りないというのが本当の原因じゃなくて、Brianが、結局は僕にとって「性的に」魅力がないことが問題。そこをはぐらかして、Brianが僕より年下で経験も浅くて、多分、性的にも相性が会わないということを一番の問題のように話してきた僕は、ある意味、Brianにウソをついている。このウソの理由は、はっきりBrianに「性的に魅力を感じない」と言えないからなんだけど、そのまた理由は、Brianを傷つけてしまいそうで怖いから。そう、結局は、Brianが勘付いたように、僕はある意味、チャリティーでデートしていたことになる。でも、ここまで時間をかけてデートを重ねてきた今になって、チャリティーでデートしてましたなんてとても言えない。

かなり苦しんでいるBrian。こうなることは大方予想がついていただけに、居心地の悪い僕。だけど、Brianのことがある意味すごく好きな僕が、土曜の夜をBrianと過ごしたかったことは事実で、料理も食事もとても楽しかったのも事実。

「これってすごく変。オカシイ・・・」、マットレスに横たわり僕の隣りでもだえるBrianを横目で見ながら、僕は何もすることができない。手で顔を覆い、「変、変、変・・・」と繰り返すBrianを、隣りに添い寝しながら片手で抱きしめたら、いつのまにかBrianとキスをしていた。

「もし友達になるんだったら、僕達、もうキスしちゃダメだよ」って言うBrian。「そうだね」と答える僕。

「家に帰るの、タクシー捕まえたほうがいいよ、あぶないから」というBrianの言葉を合図にして、僕は帰る準備を始めた。乾いたコンタクトレンズで、僕はもう目を開けているのが精一杯の状態になっていた。

夜中の2時半、Brianは、アパートの出口で僕がタクシーに乗り込むまで見送ってくれた。