アメリカGAYライフ American Gay Life by an expat Japanese

新ブログに引越!My new blog http://gayjapaneseexpat.blogspot.com/

怒涛

2006-08-26 14:15:07 | 旅行・外国
長期休暇をとる前って、怒涛の日々だよね。締め切りを前倒ししてプロジェクトを終了しないといけないし、休暇中、緊急事態が発生しても上司がとりあえず応急措置をできるように準備を整えてから出発しないといけないから忙しさ×4って感じ。リフレッシュするために休暇を取ってるのに、休暇を取る体制を整えるのですでに疲れてしまってる・・・。本末転倒ですよ、まさに。

しかも、最近、昔付き合ってた人と再会することが多くて、デービッドのみならず、ティムっていう3年くらい前にちょびっと付き合った人とも再会したんだよねぇ。むこうは「あれから変わったんだ」と言ってるけど、僕にしてみると本質は変わってなかったんだよねぇ。それに、久々に再開して、僕のちょっとした一言で猛烈に傷ついたりして、自制心がないというか、とても傷つきやすい屋さんな一面が前より性質悪くなってたし。ウィリアムとも最近すれ違いが多くって、もう会わないことにしたし(ジミーと別れた数日後に、ウィリアムのほうから「どうしてる?」っていう連絡が来て、それ以来、ウィリアムとはなんだかんだダラダラ続いてた)。今日、メールでサヨナラしました。

ジミーとも、今日、2ヶ月ぶりくらいにメールで連絡を取った。僕のほうから。水球チームのウェッブ掲示板で、「扁桃腺の切除手術をするから9月前半まで練習にいけない」っていうメッセージをジミーが書いていたから。なんか心配になって、励ましのメールを出しておいた。扁桃腺だから大した手術じゃないのはわかっているけど、それでも手術でしょう?そのことを知って、何も連絡をしないっていうのは心がとがめてしまって。「お大事に」というメールを仕事中に出したら、即、ジミーから返事があって、「レーザー手術だから大したことないよ」とのこと。僕は特にそれには返事をしませんでした。何を言ってよいかわからなかったし。それにこれから僕は長期休暇に入るわけだし。

怒涛に仕事をこなしている中、90%くらい稼働中の脳みその端っこ10%くらいで考えたことというのが、「人って、基本的にカップルになるようには作られていないのかもな」ということ。これまで何十人ってつきあったけど、デートするには問題ありすぎの人があまりにも多い。デービッドしかり、ティムしかり、ウィリアムしかり、ジミーしかり・・・。そして僕もその部類に入るのかも?なんて思い始めたり。僕って、相手にたくさん求めてしまうタイプなんだよね。でも冷静に第3者になって考えてみると、そんな母親だけが持つような手放しの愛って、あかの他人に期待するもんじゃないよね。ま、それだけじゃなくて、性格に問題のある人があまりにも多すぎるというのが僕の経験なんだけど。

はぁ・・・。こんなに落ち込んだ状態で長期休暇。環境かえて気晴らしできることを期待して行ってきます。ついでにスペイン語も上達させて。そうそう、ガイドブック読んでいたら、メキシコって食べ物と治安にとても注意しないといけないって書いてあった。おなか壊したらヤダなぁ~というのも今晩ブルーになった原因の一つ。トラブルに巻き込まれないように注意しながら楽しんできます。

自分を知るということ

2006-08-21 15:00:48 | ゲイ事情
「窓際に座る?」と言いながら、その反対側の窓が見える席の背もたれに一旦、手を置くデービッド。でもとっさに思い直して背もたれから手を離し、その席を僕に譲った。

これは観劇した後、二人で近くのレストランに行ったときのこと。結局、僕が内側で窓の外の景色が見える席に座ったけど、その後も、デービッドは納得いかない様子。

「90度椅子をずらして、窓と平行にする?そうすれば二人とも外が見える」と、かなりしつこい。

しかも、このレストランは内装もしっかりとしたやや高めのお店。観劇後で10時を回っていたこともあり、店内にはほとんどお客さんがいなかったけれど、勝手に座席のレイアウトを変えたりするのなんて非常識。

窓の外が見える席に座りたい、だけど今晩はタイに譲ろう。だけど、やっぱり窓の外が見える席に座りたい、っていうデービッドの葛藤・・・まるでお子様。


劇が始まる前の数分間、僕らが話をしていたときも、デービッドは自分のことしか話さない。僕らが別れた直後、僕はヨーロッパ旅行へ、そしてデービッドはタイランドとカンボジアへ旅行に行っていた。そのことを覚えていた僕は、その旅行がどうだったか聞いてみた。そうしたらノンストップで自慢話。

デービッドのフランス人の知り合いがバンコクで働いていて、彼のゴージャスな家に泊まったとか、グッチやプラダなんかのブランドものがアメリカで買うより安かったからショッピング三昧だったとか。一方的な自慢話を聞かされ、辟易する僕。それにまったく気がつかずに話し続ける彼。

まったく変わってないなぁ~ホントに。ま、「三つ子の魂百まで」という言葉があるけど、人間って、根本では変わらないらしいね。変わるんじゃなくて気がつくんだって。「気づき」が人の行動を変えるようになるっていうのを物の本で読んだことがある。だけど、デービッドって、自分の行為が相手にどう受け止められているかとかまったく気がつくことがなさそう。

デービッドの自慢したがり症はかなり深刻。

レストランでも、去年転職した先の仕事をかなり気に入っているということも延々と聞かされた。だけど、デービッドがその仕事を好きという大きな理由が、給料がいいから。大会社の顧問弁護士のポジションで、今、担当している案件が7億5,000万ドル(約800億円)の売買契約についてなのだとか。

「昨日、会社の副社長から電話がかかってきてさー。契約方針を変更することにしたから、契約書を書き直してくれないかって言われたんだ」とニヤニヤしながら自慢げ。

この高めのレストランに入るときも、入り口のメニューを見ながら、デービッドは僕に、

「少し高いけど、君はここでもいい?」と聞いてきた。もちろん、自腹だから僕が払える料金か聞いてきたわけ。僕は、

「大丈夫。払えるからここにしよう。デービッドはここで大丈夫?」

「ちょうど今日、今月の給料が出たところだからOK」

あんただったら、給料日じゃなくてもこれくらい簡単に払えるだろー!とドつきたくなった、まじ。自分の会社がいかに大会社でやってる仕事も大金がからむものかを自慢する彼ですが、支払いに関してはケチケチ度はまったく変わりなし。一人15ドルの観劇チケットも当然、割り勘だった。

しかも、夕食時、仕事の話が流れに流れてクレジットカードについてになった。するとデービッド、

「僕、1万ドル単位のクレジットカード・ローンを抱えてるんだよ、実は」とのこと。それに対して、僕はすかさず、

「でもそれって、利子が0%のやつでしょ?」と言ってやった。

「え?何で知ってるの?僕、もう話したことがあったっけ?」

ケチなデービッドが何十%もある年利を払ってまでクレジットカード・ローンなんて組むわけがない。しかも、ジミーも同じように年利0%のクレジットカード・ローンを使っていた。この二人、実はとても似てるかもしれない・・・。


帰りの車の中で映画について話していたとき、意見の食い違いが(また)あった。するとデービッドは運転しながら、

「僕ら、この映画についてまた大議論を繰り広げるわけ?」と、警戒メッセージを発してきた。

僕が三行半を突きつけた理由について、デービッドなりに考えてはいたんだろう。確かに、デービッドとはあまりに議論が絶えなかったというのが僕が愛想をつかした最大の原因の一つだけど、すべてじゃない。デービッドはとにかくお子様。①自慢話好き、②たちの悪い議論好き、③思いやりに欠ける言動、そして④ケチ。②については「気づき」があったようだけど、残りについては絶望的。

僕の家はデービッドの近所なのに、結局、自分の家に直行して僕の家の前で降ろしてくれなかったし!ブー・ブー、失格!ジミーですら、ちゃんと僕の家の前までいつも送ってくれたのに。しかも犯罪が増える夏の週末夜ということも一切、考慮なし。だめ男君の烙印10個くらいヤツの背中に押してやりたい。

デービッドのマンション前で別れるとき、饒舌なデービッドらしからず無口になった。なので僕のほうから、

「今晩は誘ってくれてありがとう。じゃ、おやすみ」と言った。デービッドも「お休み」と言って僕らは握手をして別れた。


ヤツは一生一人の人生だね。あんなのに付き合うのは時間のムダ!誰も相手にしてくれないから僕に1年ぶりにお声がかかったっていうのが僕の読み。たぶん、的中。もう勝手にやってくださいよ。ホントに。ただ可愛そうなのが、誰もデービッドにどこが欠点かっていうのを言わないんだろうね。僕が別れ際に何が理由かを言おうとしたときも、「whatever, whatever」ってまったく聞く耳持たなかったからね。プライドが高い人ほど、「気づき」がなくって改善の余地がないんだろうな。まことにオメデタイ。


さて、僕の夏はこれから。来週からメキシコへスペイン語を勉強に行ってきます。ついでに、日ごろのしがらみから距離を置いて、ゆっくりとした時間を感じに。

■ ■ ■新作映画情報■ ■ ■



昨日観た、新作映画、「Little Miss Sunshine」が、笑えて、泣けて、新鮮だった。ゲイのおじさんが登場するっていうことに興味ひかれて見に行ったのだけど、それとは別のところで予想以上の出来栄え。

ポンコツのフォルクス・ワーゲン(VW)のバンでロード・トリップをする家族の物語。それぞれ挫折を味わい、家族としての絆がとぎれそうになっている状態を、ポンコツで壊れかけのVWが象徴的に表現している。家族のメンバーは、文字通り、それを一緒になって押して前に進もうとする。「人生は苦しいもの。だけど苦しいときにこそ人は成長する」っていうそのメッセージに、胸がきゅんとなった。

D Day2

2006-08-16 13:54:28 | 人生・哲学
2週間ぶりの水球練習で、クタクタに疲れた身で家についたら、僕の携帯電話に見知らぬ番号から電話がかかっていた。留守録を聞いてみたけど、何のメッセージも残されていない。また間違い電話かなと思って夕食の準備をジェームスとしていたら、また同じ番号から電話がかかってきた。夜の10時を回ろうとしているこの時間に、また同じ番号から電話。おかしいなと思って、電話に出ることにした。

「はろー?」

「はろー。デビッド」

そう、この声の主は、あのケチケチ弁護士のデービッド。ちょうど去年の今頃、ニューヨークに旅行に一緒に行ってたような記憶が蘇ってきた。なんか、あれから1年以上の月日が経っている様な気がする。

「えー、ものすごく久しぶり。元気?」と答えてみる。

「元気だよ。そっちは?昨日自宅に電話したんだけど、女性が出てきて・・・」

「え?自宅って?ああ、自宅の電話番号は解約しちゃったんで、今はこの携帯電話しか使ってないよ」

「ああ、そうなんだ」

とちょっとぎこちない会話が続くこと数分。その後、互いの生活について多少アップデート。デービッドは去年転職が決まった職場がとても気に入っているとのこと。

「電話したのがね、今どうしてるかなと思って。去年の今頃、ちょうどニューヨークに行ったよね。すごく楽しかったから、思い出しちゃってさ。また再来週、ニューヨークに行くつもりなんだ」

「へぇ。そうなんだ。ま、ニューヨーク楽しんできてよ」とちょっとつっけんどんな僕。

「もちろん」とデービッド。

流れる沈黙・・・。

「今、水球の練習から帰ったところで、これから夕食なんだ」

「そうなんだ。悪かったね」と言うデービッドだけど、電話を切る気配がない。そこで僕のほうから、

「じゃ、ね」と言って促すと、デービッドも、

「じゃ」

で僕らは電話を切った。

傍で僕の会話を聞いていたジェームスは、

「今の、デービッドからでしょう?」とすかさず聞いてきた。僕がデービッドと話をしている最中に、ソファーでくしゃみしてるし。あんた、これが真剣な恋人相手だったら許せないかもよ。ま、デービッドだったからよかったけれど。

「そうそう、あのデービッドから。1年ぶりだよ。どこの風の吹き回し?」

そういいながら、おなかがすいてきたのでかに玉丼を作って食べていた。するとまた僕の携帯電話に電話が。

「あーまたデービッドからだ」と僕。

「もう出るなよ、そんな電話」とジェームス。あんた、これが自分だったら絶対に出てるでしょう?ヤダね。他人のこととなると冷たくなるんだから。

デービッドがなんでまた電話かけてきてるのかは予想がついたけど、電話に出ることにした。だって30分前に話をしたばっかりで、これで出なかったら寝つきがわるくなっちゃうじゃない?しかもデービッドはご近所に住んでるわけだし。

「はろー?」なんて、相手が誰だか分かってるのに知らないような振りした声を出してしまった。

「はろー。またデービッドだけど」

「なんでしょう?」

「去年のニューヨーク旅行、楽しかったって言ったよね。また今度、劇とかショーとか一緒に見に行けないかなと思って」

「・・・」

「もし嫌だったらそういってもらっていいから」

「いや、興味あるよ」と僕。

ってなわけで、今週金曜日、スティーブ・マーティン脚本・演出の劇を一緒に見に行くことになりました。当然割り勘で!ホントに変わってなーい。デービッドってやっぱダメ男君だね。あんた、1年ぶりに付き合ってた相手を誘い出しておいて割り勘はないでしょう?モルモン教徒だからこんなにドケチなのかなぁ?

ま、いずれにしても後腐れがないからいいけれどね。あくまで割り勘。僕らはプラトニックな単なるオ・ト・モ・ダ・チってね。これでまた会話の最中に議論を吹っかけてきたりしたら、あんた3度目のチャンスはないからね!って口に出しては言わないけど、僕の心の中ではしっかり刻み込まれてます。


余命10分?

2006-08-13 03:52:02 | 人生・哲学
「人生が、残り10分だったら何をする?」

この手の質問って、僕が小学生の頃にはやった「究極の選択」なんかで出てこなかったっけ?もう一つ、小中学生の頃に誰もが一度はどこかで聞いたことのある質問が、「人間は、唯一○○する生き物である」というもの。

この「○○」に当てはまることなんかを、学校の道徳や倫理とかの授業でやらなかった?

・ 人間は、唯一、言葉を話す生き物である
・ 人間は、唯一、服を着る生き物である、などなど

これの派生系として、「ヒトはパンツをはいたサル」なんていうのもどこかで聞いたことのあるフレーズ。

どこかで聞いたことのあるこれらの質問を目にしたのが、最近読み始めた本、『Stumbling on Happiness(幸福へのめぐり合い)』(著者のダニエル・ギルバートは心理学者)。

著者のダニエル君は、「人間は、唯一、将来について考える生き物である」って言ってるんだな。冒頭で、「残りの人生が10分しかなかったらどうする?」という質問を投げかけているのも、人間がいかに将来を考えずにはいられない生き物かっていうことを逆説的に問いかけているっていうワケ。ま、人には時間軸の感覚が鋭いってことなんだけど、未来だけじゃなくて過去を振り返ったりもするよね。チンパンジーが、幼少期を思い出して懐かしがるなんてあんまり想像できないから、過去を振り返るっていう行為もかなり人間的なんだけど、ある研究では、過去、現在、未来の中で、人は未来について考える時間が一番多いらしい。

「これって、モロ僕に当てはまってる・・・」って、本屋で立ち読みしながら2ページ目までしか読んでいないのに、この時点ですでに胸を鷲掴みされた思い。僕って人生設計とか日頃からよく考えてるし、「来年の今頃、僕は何をしてるんだろう・・・」ってふと思い出したように考え込む一瞬があるし。このブログでも1月1日に、モロ、人生設計しちゃってるし・・・。それに週末なんかになると、「土曜日は午前中にこれをして、午後にはあれをして・・・」なんて計画をいつも立ててる。

ダニエル君は、うろたえる僕なんかお構いなしに、さらに畳み掛けるように説明を続ける。

そもそも、なんで人って将来の自分について考えるのが好きなのか。これにもダニエルは明確な答えを用意してるんだな。しかも心理学者なので、実験結果つきで!

ある被験者に、高級フランス料理店の無料夕食券が当たりましたって言って、「いつレストランに行きますか?」っていう質問をしたらしい。今すぐ?今晩?それとも明日?って聞いたのだけど、被験者のほとんどが、だいたい1週間後の日程を選んだんだって。おいしい料理をすぐ食べられることができるのに、なんで少し先延ばしするのか?ナゾだよねぇ~。

これって、経済学の基礎を根本から覆してると思うんだけど。大学の『マクロ経済概論』なんかでは、初回の授業で、「明日飲むビールよりも、今飲むビールのほうが『効用(utility)』が高い」なんて教わったけど、この実験の結果からすると、明日飲むビールのほうが満足度が高いってことになる。

この「少し先延ばしする」っていう行為は、高級フランス料理店で無料で食事ができるっていう具体的な将来を想像することで得られる恍惚感を、より長く楽しむっていうことらしい。すごく納得。僕って、おいしいものを後で食べるタイプだから・・・。逆に先に食べちゃう人っていうのは、どういう理由からなんだろうね。将来についてあんまり考えないのかな?兄弟が多い家庭で育って、残しておくと取られちゃう可能性があるから、最初に食べとくってこと?ま、とにかくこの実験によると、被験者のほとんどが、具体的な幸せは先延ばしする傾向にあると出たらしい。

これをダニエル君は、さらに一刀両断に切り込んだ分析をしてる。人が、こんな風に将来の楽しい自分を想像することが好きな理由、それは、往々にして実際に経験するよりも、想像の中で幸せな自分を想像するほうが楽しいからだとか。

またとある実験をしたらしいのだけど、そこで、被験者は、最近一目惚れした人について、彼・彼女をデートに誘う自分を想像してみるように指示された。そのとき、自分の頭の中で、より具体的にバラ色のデート・シーンを想像した人ほど、実験後の数ヶ月以内に実際にその意中の人にアプローチする率が低かったという結果が出たらしい!

これって、まさに僕じゃないですかぁ。ゲイ・バーなんかで「うっわー、イケテル」なんて人を見かけると、だいたい、「あんな人と付き合ったらどんな感じだろう」なんて考えちゃうわけですよ。モンモンと。だけど奥手なもんだから、絶対に自分からは声をかけないっていうパターン。あれって、イイ男を見かけて、その人とのハッピーな自分を想像しちゃうから、それを壊したくないっていう心理が働いてアプローチできなくなってるんですかね。ヤバイッスよ。ダニエル君、僕の心をかなりお見通しみたい。

一方、人ってネガティブな将来予測もしちゃうじゃない?そこもダニエル君は抜かりなく説明してますよ。例えば、定期健診でレントゲン写真を撮ったとき、「もし影が映っていて、ガンですなんて言われたらどうしよう・・・」なんて悪い方向に考えちゃうことってあるよね。あれって、悪いシナリオをイメージしておくことで、本当にそれが現実となって現れたときに「あ、やっぱり・・・嫌な予感が的中」っていう心的プロセスを経るから、受ける心的ダメージを少なくすることができるんだって。これはいまさら言われなくても、意識的に「最悪の状況」を想定しておくってことは誰もが普通にやってるよね。例えば、ゲイ・バーに行く前から、「きっと今晩もイイ男からは声かけられないんだろうなぁ」ってネガティブな予測をしておくこととか。

いずれにしても、この将来を予測しようという脳内の働きは、少しでも将来のことを自己制御しようという人間ならではの欲求だってダニエル君は言ってる。実際、定期健診の結果なんて人がコントロールできることじゃないよね?それにゲイ・バーでイイ男に出会えるかどうかなんて、実際に行ってみないとわからない。だけど、本当の結果を知る前に、「ガンかも?」「イイ男にはきっと今晩も出会えない」って想像することで、まだ知りえない将来を、自分の意思でコントロールしているっていう錯覚に陥ってるっていうわけ。

極端に悪い将来を想像することや、一目惚れした相手に、話しかけるつもりもないのにバラ色のデートを想像するっていう行為って、「正しい将来予測」じゃないじゃない?極端に悪い方向や良い方向に考えちゃってて、「現実的な」正しい将来予測じゃない。なのに、人ってそういう非現実的な将来を予想することで、「自分は自分の将来を自己制御できてる」って思っちゃってるところがまさにオメデタイわけで、錯覚に陥ってるわけなんだなぁ。ここまで読んで、いまさらながら僕ってオメデタイ人間だったんだって凹みました。

だけど、ダニエル君によると、将来のことを極端に良い・悪い方向に考えてしまうことがなくて、結構、正確に自分がコントロールできること、できないことを考えられる人たちがいるらしい。それは、うつ病と診断された人たちなのだとか。

うつ病と診断された人たちへの治療法として、前頭葉の一部を切除するなんていう、まさに『羊たちの沈黙』のハンニバルみたいなことを発見したお医者さんがいたらしい。この治療法、確かにうつ病には効果てき面だったらしいのだけど、大きな副作用があったのだとか。それは、将来について計画するっていう能力が完全に欠如してしまうということ。前頭葉の手術を受けた患者は、知能的には問題はなくって、普通に会話もできるし記憶テストでも問題ないという結果が出てるらしいのだけど、とにかく先のことについて考えられなくなってしまうのだとか。

1981年に交通事故に遭って、前頭葉の一部に障害を負ったために、このうつ病の手術を受けたのと同じ状態になった人(イニシャルがN.N.。当時30歳)がいた。彼に心理学者がインタビューをしたときの会話は次のようなものだった。

心理学者: 明日は何をする予定ですか?

N.N.: わかりません。

心理学者: 私の質問を覚えていますか?

N.N.: 私が明日何をするつもりかということですか?

心理学者: はいそうです。それについて考えようとするときのあなたの心的状況について説明していただけますか?

N.N.: 空白、だと思います・・・なんか眠っているような・・・何もない部屋にいるようで、誰かがその部屋にいって椅子を探して来いって言うんだけど、そこには何もない・・・湖のど真ん中を泳いでいるような感じ。何も支えるものや掴むものがない。

* * *

この前頭葉の一部を失うことで、人はうつ病にならない代わりに、将来計画もできなくなってしまうという発見。す、すごくないですか、これって。不安を感じる部分と、将来について考える部分が、脳内で一緒なんですよ。将来について考えれば考えるほど、不安になるっていうことじゃないですか。幸せという心の状態が、不安を感じないという心の状態だとすると、将来について深く考えずに生活していたら、ハッピーな人生を送れるっていうことですか?

実はこれまでのお話は、まだ本の5分の1くらいまでの内容でしかない。この先、もっと奥の深い議論が実験結果つきで紹介されてるみたい・・・。この先、読むのが怖いけど、読むしかないでしょう。

しかも、ここまで読みながら、「アリとキリギリス」について思い出してしまった。将来の困難に備えて備蓄するアリさんと、将来なんてこれっぽっちも考えずに今を楽しむキリギリス・・・。きっと、ジャドソンが人生を謳歌してハッピーに見えるのは、将来について無駄な想像をすることなく、今の自分を楽しんでいるからじゃないかなぁって思うようになりました。

イソップ童話では、将来に備えずに今を楽しむキリギリスは快楽主義者として批判的に描かれていて、一方、アリさんは「勝ち組」として美化されているけど、アリさんは、実はうつ病患者なのかもしれないなと。どっちの人生がいいかと考えると、人は基本的に冬になったからと言ってキリギリスさんのようにのたれ死ぬことはないことを考えると、アリさんの生き方よりもキリギリスさんの生き方のほうが幸せ度は高いんじゃないかな、なんて。

ってなわけで、僕も今を最大限楽しむ努力をしてみることにしましたよ。単なる錯覚に陥ってるだけの将来計画は考えないようにして。そしたら、なんか、今週はiPodも買っちゃうし、これを機会にノートパソコンも買い替えしちゃったし、これまで買いたかったAdidasとNew Balanceの靴も買っちゃいました。僕に残された人生が10分だったら、ショッピング三昧?(そういえば、そんな映画がありました。『Last Holiday』っていう、クイーン・ラティーファが主演の映画で、医者に余命数ヶ月と宣告されたのをきっかけに、退職金や貯金を全部引き出して豪遊旅行に出るという話。)


かりふぉーるにゃ旅行記 【最終日・日曜日編!】

2006-08-05 12:45:21 | 旅行・外国
日曜、朝食を食べにレストランへ。20分待ちでやっと入店したのがクレープ・レストラン。そういえば、水球の練習後、ジミーとも地元のクレープ・レストランに何度か行ってディナーを共にしたな、なんていうほろ苦い思い出が蘇ってくる。

ブランチの後は、腹ごなしのためにオリンピック・プール、Belmont Plaza Poolへ。

Belmont Plaza Pool
4000 E. Olympic Plaza
Long Beach, CA 90803

LAオリンピックのときに競泳、水球、シンクロなどの競技場だったらしいプール。現在は、一人2ドル50セントで入場できる。


「彼はいくつ?17歳くらいに見えるけど」

プールの建物に入ってすぐのところにある受付へ、ジャドソンが5ドル紙幣を手渡し、僕らが受付を通り過ぎようとした矢先に、受付ボックスの中にいた20代も前半の若者に呼び止められてしまった。

え~保護者同伴じゃないといけないってこと?ジャドソンは僕の保護者には見えなかったわけ?という考えが脳裏をよぎったけど、そういう問題じゃないか。僕が年齢をまったく省みないティーネージャーのようなTシャツと半ズボンにサンダルといういでたちだったのが問題だったんでしょう。

焦るようにジャドソンが「あ、彼はXX歳」と答え、身分証を見せずに納得してもらったけど、もし僕が18歳未満だったらどうなってたわけ?だって両親と一緒じゃなくても、未成年が親戚のおじさんとかの同伴でプールにくることはあるでしょう?何が問題だったの?いまだにナゾ。

しかも、この受付の青年、またさらに質問してくる。

「水着はどういうのもってきてますか?」

ちょっと入場が厳しすぎない?そう思いながら、僕はバッグの中からSpeedoの水着を引っ張り出して見せた。

「ああ、そういうのならいいです」と青年。

「どういうのだったらいけないんでしょうか?」とポイントを突いた質問をするジャドソン。さすが弁護士だけあるなと、傍で聞いていて納得する僕。

「ジム・ショーツで泳ごうとする人たちがいるんですよ」と青年。

あ、なるほど、と納得する僕とジャドソン。

とりあえず受け付けは通過できた。ジャドソンは、その後、「17歳だって?!ちょっとoutrageousすぎるよね」との反応。たしかに、22、23に見られることはあるけど、17歳はちょっと行き過ぎ。かなりアジア人慣れしてない人だったのねと僕は理解しました。(tongue-in-cheekだったのかも。)


着替えを済ませ、どんなカッコいい人たちが泳いでるんだろうってワクワクしながらプールへ――

だけど、僕の期待を裏切って、そこはちびっ子連れの楽園だった。奥の飛び込み台からジャンプしている青年はイケテタけど、それ以外はboo・・・。

チッと心では舌打ちしながらも、久々の水泳を楽しみ、家族連れの中で、小さすぎるspeedoの水着をはいている自分がちょっと恥ずかしくなりながらも、隣のレーンで泳いでいたちびっ子たちの熱い視線を全身に浴びつつ、約40分間、高い天井のオリンピック・プールを満喫した。(このプール、日曜日は2時で終了。)

* * *

プールからジャドソン邸へ戻ると、エレベータが故障していた。やっぱり古い建物は、こういうところで不便が発生する。見た目はゴージャスだけど、ハイ・メインテナンス(high maintenance)ってやつだ。まるで人間関係と同じ。

エレベータのボタンを押した僕らに、声をかけてきた人がいた。

「エレベータ、動いてないっすよ」

185センチくらいの長身でスラットした体型。ブロンドで、見た目、いかにもCali guy。若い女性と一緒にいる。ジャドソンが、

「え、また壊れたの?」と質問すると、

「いや、多分、どこかの階でエレベータの扉を強引に開けたままにしてホールドしてる人がいるんじゃないかな」とのこと。

ジャドソンと僕は、それを聞いて階段で9階まで上ることにした。長身の男性の前を横切りながら階段へ向かう僕ら。泳いだ直後でふくらはぎが張っているところを、9階まで上るっていうのはちょっとしたチャレンジだった。

「なんでもっと下の階の部屋にしなかったわけ?」なんていう無理矢理な不満をジャドソンに投げつつ、僕はブーブー言いながら9階まで身体を引きずって上がっていった。その途中、ジャドソンが、

「今下にいた長身でブロンドの人、ちょうど僕の隣に住んでる人なんだ。学校の先生をしてるらしいんだけど、彼もアジア人の男の子が好きなんだよ」とのこと。

なんでそれをもっと早く言ってくれなかったのぉ~!

女性と一緒だったから、てっきりストレートだと思って見過ごしてましたよ。あ~んもったいないことをした。それだったら、もっと目線を送っておけばよかったと、疲れたふくらはぎで後悔。

「だけど、たまにしか出会わないから、彼がどんなタイプを好きかまではわからないけど」とジャドソン。

「少なくとも、ジャドソンのタイプについては、今日、彼は知ったわけだ」と僕。

* * *

午後の海風が入ってくるベッドルームで、僕らは昼寝をした。そして再び目が覚めたのは夕方4時すぎ。まだ外は明るい。ジャドソンが地図を出してきて僕に見せてきた。

「ここの海岸線をドライブしてみる?」と、地図を指しながら尋ねるジャドソン。

「うん、海岸線のドライブに行こう!」と僕。

まだまだ日差しがきつい中、高台に続く道沿いに、僕らはドライブをした。左手は断崖絶壁。その向こうには太平洋が薄霞の中に広がっている。この地域は、Palos Verdesと呼ばれる。





そしてドライブを続けている途中で立ち寄ったのが、かの有名な建築家、フランク・ロイド・ライトが設計したという Wayfarer's Chapel





まさに丘の上に立つチャペル・・・。手入れされた花壇に花が咲き誇っていて、その先には太平洋の絶景が広がっている。



ちょうどこの日は日曜日。結婚式が開かれる予定みたいで、続々と着飾った人たちが集まってきていた。僕はジャドソンに、

「ここで結婚してくれって言われたら、相手が誰であってもYesって言っちゃう」

とかなりdesperateなコメントを言ってしまった。なんかジャドソンも困惑気味・・・かなり引いてしまっていたハズ・・・。

* * *

実はこの後のドライブ・シーンはあまり記憶にない。確か、スペイン風な建物がある広場に出たところまでは覚えている。だけど、そこで、地図を読みながらジャドソンが、

「1940年代、この近くに母親が住んでたんだ。ちょうど第2次世界大戦中でさ、ある日、沖合いに日本の戦艦が出没して、迫撃砲で攻撃してきたんだってさ」と話してきた。

「へぇ・・・だけど当時、日本の海軍がこんなカリフォルニアまでこれる力はなかったと思うよ。現代でさえ、9・11の世界同時テロはアメリカ政府が意図的に事前情報を見逃して、大惨事を引き起こしたっていうウワサも流れるくらいじゃない。50年以上も前の出来事が、歪曲されて今に伝えられるっていうこともありえるんじゃない」と、ちょっとムキになって反論する僕。

「だけど、当時は情報規制も厳しかったから。それに母親が見たって言ってたんだよ」

「そんな事実ともウソともつかないこと言われても。こういうポリティカルな話題って、『事実』と言いながら、巧みに都合のいい『事実』だけを並べて自分の意見や感情が結局はベースになってることが多いでしょう?僕もね、この国に来てから、歴史的事実ですっていう前置きで第二次世界大戦の日本軍の行為がどうのこうのって言われて嫌な経験してきてるんだよ。そういうことを言われても、僕、どう答えて言いかわからない。50年以上昔の日本がしたことを、日本人を代表してゴメンナサイって言えばいいわけ?」

これを言い切った頃には、僕はかなり金切り声を上げていたかもしれない。ジャドソンも、地図を見る手を止めて、

「Well, this conversation won’t go anywhere now….気分を悪くしたのならゴメン。別に悪気があって言ったことじゃなかったんだ」と謝ってきた。

僕も、ハッと我に返って、ジャドソンに敵意を向けていたわけじゃないのに、結果として、ジャドソンと口論になってしまったことに気が付いてバツが悪い。そのまま沈黙する僕たち。だけど、素直に謝ってくれたジャドソンは、さすがジャドソンだなぁと改めて思った。これがデービッドやジミーだったら、ぐちゃぐちゃな口論に発展していたと思う。だけど、一旦壊してしまったその場の雰囲気をどう取り繕っていいか僕にもわからず、車内に張り詰めた沈黙を乗せたまま、僕らは沈む夕日が反射してキラキラ光る海岸線を静かに走っていった。


ケンカ・・・恋人同士で、特に理由もなく口論に発展してしまうのは、性的な不満の捌け口としてケンカが利用されるためだとか。そう言えば、昔、遠距離恋愛していた元カレとフロリダに旅行に行ったとき、ずっと楽しい雰囲気で時間が過ごせたのに、最終日になって互いにイライラのために大喧嘩して泣き別れたことがあった・・・。僕もジャドソンと明日の朝でまたお別れ――


この晩は、通夜みたいだった。僕もジャドソンも、とてもローキー。コメディー映画、『Strangers with Candy』を見たけど、僕らの沈んだ気持ちを盛り上げるには不十分だった。

* * *

「今度来るときは、もっと涼しくて外で色々できるといいね」とジャドソン。また来てもいいの?と、内心、歓喜する僕。そんな気持ちはひた隠しにしながら、

「そうだね。だけどこの週末、とっても楽しかったよ。本当にありがとう」とお礼を言った。

8時30分に、相乗りバン・サービスのスーパーシャトルが迎えにくるまで出勤時間を先延ばしして待ってくれたジャドソン。そして1階まで一緒にエレベータで下りていき、運転手の目も気にせず、長めのハグをしてお別れ。


僕が空港についてから、長蛇の列に並んでようやくチェックインを済ませた頃、携帯電話にジャドソンから連絡があった。

「飛行機は予定通り?」

「うん。空港についてから1時間たつけど、ようやくチェックインが終わったところ。もうエンドレスの列だよぉ~。これからまた長蛇の列に並んで、セキュリティ・チェックを受けるところ」

「Ohmigod!」

最後まで気にかけてくれるジャドソン。その心遣いが嬉しい・・・。きっと他の男にも同じことをしているんだろうなっていう考えが頭をよぎったけれど、それをとがめる立場に僕はない。こんなに楽しい時間は、他の何とも比べようがないくらい、それだけで素敵な時間だった。「もう友達でいるのも辛い!」って僕の方から三行半つきつけて一度は縁を切ったジャドソン。だけど、ちょうど1年後に、「もう1年たったから、考えが変わっているかなと思って」って電話をかけてきてくれたジャドソン。

だけど、ジャドソンに本気で恋愛してはダメだね。心奪われると、とても辛い相手。

アリはキリギリスに恋をしてはいけない――