『誘惑されて棄てられて』 唄:ピノ・フェラーラ
”Sedotta E Abbandonata” Carlo Rustichelli E Pino Ferrara 【YOUTUBEより】
1964年制作、ピエトロ・ジェルミ監督による同名のイタリア映画の主題歌です。
映画は同監督の『イタリア式離婚狂想曲』に次ぐシシリーの俗習を皮肉った艶笑喜劇で、未成年の娘に手を出して
逃げ回る男、家名第一で世間体をかまって狂言誘拐や殺人までたくらむ一族の馬鹿げた醜態を描いています。
物語の説明的な役割を持つ主題歌はイタリアきっての映画音楽作曲家カルロ・ルスティケッリの作曲によるもので、
シシリーの風土を醸し出すような民族色の豊かな仕上がりになっていて、映画の進行と同期しながら狂言回し的な
役割を担っていました。
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映画封切時に『誘惑されて棄てられて』という邦題で紹介されましたので、ポルノ風の安っぽいタイトルだと
思っていたのですが、原題は”Sedotta E Abbandonata”(誘惑と放棄)なので納得せざるを得ませんね。
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【付記】 2018.2.2
この主題歌につきまして「歌詞が物語の説明的な役割を持つもの」と記述いたしましたが
その歌詞内容について映像を確認しながら書き留めてみました。
(金丸美南子 翻訳)
まず、冒頭で
お聞かせしよう
アスカローネ家の物語
嘘偽りのないシチリアの物語
家の名誉がけがされた
若造のペピーノが
姉と妹に手を出した
アニェーゼは行く
苦しみに胸もだえて
司祭様に告白し
罪の許しを請いたいの
そして映画の中ほどの48分経過頃に
絶望と怒りとで
父親は気も転倒
事を知ってからは
夜も眠れない
急げ急げ
不運なアスカローネ
血走った眼で
いとこの忠告を求めた
以上のように劇中ではこの主題歌が狂言回し的に二度流れております。
この「誘惑されて棄てられて」は、私の好きなカルロ・ルスティケリの映画音楽として、ラジオでよく聞いたものです。
ルスティケリ特有の哀愁漂う主題歌として聞いていたのですが、今回Chochinさんの解説により、この映画の題名と内容、歌詞が物語の説明的な役割を持つものと聞いて驚きました。
もし当時、少しでも歌詞の内容が分かっていたら、ロマンチックな曲として聞いていただけに、また違った印象を持ったかもしれません。
知らぬが仏でしょうかね(^^)。
かといって、この曲の演奏を聞きましたが、やはりこの歌唱で聞くのが一番のようです。
ご紹介いただきありがとうございました。
私もルスティケッリの音楽は好むところです。
歌詞の件につきましては同記事に【付記】という形で
紹介しましたのでよろしくお願いします。
この映画、艶笑喜劇と紹介しましたが喜劇であることに間違いはないのですが
実際には笑えない喜劇です。自虐的な嘲笑劇と言った方がよいのかもしれません。
余談ですが
イタリアは宗教的な戒めが厳しく、特に女性の貞操に関しては
独特の法律まで施行されていた名残も風習として多々残っているようです。
そういえば近年まで、結婚式の翌日にベランダからシーツを垂らせて
証明するといった儀式も存在していました。
そんなイタリア人気質を大いに皮肉った作品でした。
コメントありがとうございました。
主題歌の歌詞の内容について、お手を煩わせてしまいました。
狂言回し的、よく分かりました。
イタリアの風習もご紹介いただきました。
翌日のベランダからのシーツの証明・・(^^)。
ありがとうございました。
離婚禁止法や名誉法なと既に廃止されているものも多くありますが
イタリアには独特の法律や風習がまだまだあるそうです。
例えば、映画「ローマの休日」で観たスペイン広場の石段でジェラートを
食べることは法律で禁止されているようです。
重ねてのコメントありがとうございました。