私が真剣に観るようになったのは1962年だったかもしれません。
それまでは、映画の価値観も考えずに手当たり次第に観たものでした。
観たい映画の選定は、どんな俳優が出演しているか、その映画の宣伝文句、雑誌などによる前評判、友人の感想などでした。
また、アカデミー賞や各種映画祭の受賞、優秀映画鑑賞会推薦なども参考にしていました。
それに、ポピュラー音楽が好きだったこともあり、映画主題歌がヒットすればそれに釣られることも多々ありました。
早い話、単なる映画好きの一人で、映画は娯楽のひとつでした。
そんな折、出会ったのがキネマ旬報の過去のベストテン一覧表、そして飯島正先生著の『フランス映画史』による映画理論でした。
時も同じく、ATGが発足し非商業的な芸術作品の配給が開始されました。
映画に対するそれまでの価値観が一変することになりました。
私にとって、映画への目覚めです。
『野いちご』『尼僧ヨアンナ』『ウンベルトD』など映画史に名を残す名画と接することができたのです。
(イングマール・ベルイマン監督 『野いちご』より)
これまで見てきたアメリカ映画に代表される、ストーリー中心で起承転結が明確 なおかつ勧善懲悪、スターをヒーローに仕立て上げるハッピーエンドというパターンに虚しさを感じることになります。
とは言うものの、娯楽映画を否定するわけではありません。
ただ、芸術味の深いリアリズム映画に対して、より興味を持っているということなのです。
また、映画の本質を知りたくて、その歴史についても興味をいだくようにもなっていきました。