武蔵野つれづれ   第3の生活を自由人として

中国での体験記を記して参りましたが2012年の秋に帰国しましたので、これからは武蔵野での生活を徒然なるままに書きます。

第65話 習近平新体制

2012-11-19 23:46:07 | その他の中国都市

 共産党大会で習近平体制となった。今回の大会で驚いたのは、初日に江沢民が胡総書記と温家宝首相の二人を両脇に従える恰好でセンターポジションを取ったことである。こんなにも長老とは強いものかと、中国の保守体質に改めて驚いた。

 胡政権の10年で確かに経済は拡大した。しかし、これは中身的には前任者の朱熔基の敷いたレールに乗って外資が投入されただけで、胡の業績は何も無いとの評価もある。

 一方、政治・経済改革は全く進まなかった、というより悪化した。高級官僚は利権を貪って海外に蓄財し、格差は広がった。年収2~3百万円の地方書記クラスが数百億円の海外資産を持つことが珍しくないと報じられる有様である。人民の政治参加・三権分立(特に司法の独立)などの民主化は進んでいない。ただインターネットの普及により、人民の不満は無秩序ながら大きなうねりとなる可能性が出てきて、当局が民衆の不満を無視できなくなってきた。

 不満は、政治腐敗が根源であり、派生して経済格差・民意無視・環境破壊に及ぶ。不満の主対象である、政治の腐敗を断ち切るには、社会構造の透明化が何より必要である。

 透明でない事例を体験から紹介する。私の指導する中国の某メーカでは、従業員の雇用契約上の給料は地方政府が定める最低賃金(地方によって異なるが月額1~1.6万円程度)ギリギリに設定されている。理由は、会社が負担する社会保険額は給与に比例するので、経費削減のために名目上の給与を低く申告するためである。もちろん実際は世間相場並みにもらっているので、生活上は大した問題はないが、失業保険を受け取る場合や将来の年金では不利になる。ほとんどの民間企業でも同じことをやっているらしい。別にここで暴露記事を書くつもりはない。中国人なら誰でも知っている公然たる不実記載の違反行為である。皆が知っていてもどうすることもできないこの種の不正義は山ほどある。そこに、この国の本質的な問題点がある。

  国民に普遍的な情報がゆきわたり、社会的不正義は憚られることなく告発できるように表現の自由が担保されるような「普通の国」に早くなってもらいたいと切に願う。