瓢簞舟の「ちょっと頭に浮かぶ」

こちらでは小説をhttps://kakuyomu.jp/works/16816700427846884378

笑いと真理

2017-10-11 18:51:16 | 随想
ふと「だくだく」を思い出して考える。

落語、というか笑い話はときに真理を突く。笑いに徹したらどうしてもそうなるのである。


「だくだく」をご存知ない方のためにあらすじをWikipediaから拝借。





男(『だくだく』では八五郎)は引越しをしたが、前の長屋でたまった家賃を工面するため(あるいは、かついでいくのが面倒くさかったため)に家財道具の一切を古道具屋に売ってしまった。男は壁、床、天井一面に白い紙を貼り、近所に住む画家に、豪華な家具や日用品、そして眠る猫を細密に描いてもらう。さらに男は「用心のため、武芸の心得があるように見せたい」と希望し、長押に掛けた1本の槍を描いてもらう。

男が留守にしている間、泥棒が男の部屋を物色にやって来る。眠る猫(の絵)を見て「番犬がいない証拠だ」と早合点した泥棒は、夜ふけを待って男の部屋に忍び込む。

泥棒はたくさんの豪華な家財道具(の絵)を見て驚喜し、タンスの引き出しを開けようとするが、絵なので開くわけがない。ここで男が泥棒に気づくが、面白がって寝たふりをしつづけ、ひそかに泥棒の様子を観察する。

驚きながらも男の事情を悟り、同情しつつあきれた泥棒は「このまま帰ったのでは面白くない。この男が、ものがある『つもり』で生きているなら、こっちも盗んだ『つもり』になって帰ろう。一反風呂敷を広げた、つもり。風呂敷の中にタンスの中身をぶちまけた、つもり。金庫を開けた、つもり。1億円ばかり盗んだ、つもり。風呂敷の両端を縛り、背負って立ち上がろうとして立ち上がらない、つもり」とつぶやきつつ、孤独なパントマイムを始める。

泥棒の粋に感じ入った男が「1億も盗まれては、黙ってはいられない」と、ここで起き上がり、「袴の股立ちを取った(=すそを引き上げた)、つもり。たすき十字に綾なした、つもり。長押の槍に手をかけて、石突きをトンと突き、りゅうとしごいて泥棒のわき腹めがけてブツーッ! と突き立てた、つもり!」そこで泥棒が、

「ううむ、無念。血がだくだくと出た、つもり」






ナンセンスな笑いに徹したら思いがけず「色即是空 空即是色」を浮かび上がらせてしまうような作用が笑い話にはある。
隠された真理が現れると私たちは笑うしかない。
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