瓢簞舟の「ちょっと頭に浮かぶ」

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読書メモ(保坂和志 その2)

2024-07-28 09:49:29 | 本の話
ある場所である人がかつていろいろなことを感じたり考えたりしたことを物質的に確かめることは可能なのか、と保坂和志は登場人物に考えさせているわけですが、文庫の解説を書いている石川忠司はトーマス・ベアデンによればそれは可能であるとスカラー波の話をしています。
スカラー波ってなんですか? で、調べてみる。以下、Wikipediaより。

スカラー電磁波(スカラーでんじは)は、ニコラ・テスラが発見したというテスラ波をもとにトーマス・ベアデン(1930年 -、サイコトロニクス協会、ニコラ・テスラ協会に所属)が「Gravitobiology: A New Biophysics(1991年)」で提唱した(仮説的な)電磁波の一種。その名の通り方向の概念を持たない。ただし具体的な実証はなく、もっぱら疑似科学において使用されている用語。

仮説で実証もされていないので疑似科学扱いになってるようです。石川忠司もそれは承知していて、仮にこの仮説を小説の登場人物が知っていたらどのような反応をするか。それを考察するためにスカラー波を持ち出しています。その石川忠司の解説も興味深いのですが、ここでは踏み込みません。話がズレるので。

スカラー波にしろアカシックレコードにしろ、そんなものを仮定してでも見たり考えたりしたことがこの世に記録される、と考えたくなるものなんでしょうね、人っていうのは。あるいは記録されると考えたくなるっていうより消え去ることが耐えられないのかもしれませんが。

似たようなことは誰も考えるらしく、以前触れたムック本「五十嵐大介」の長沼毅の寄稿にも書かれています。
長沼毅は五十嵐大介「海獣の子供」と藤崎慎吾「ハイドゥナン」を比較しながらキーワードとして記憶をあげる。「海獣の子供」からは以下の台詞を引用。

わたしたちの言った事した事は、風が水に皺を刻むように この世界に痕跡を残す。
世界のどこかに永久に記憶された、わたしたちのした“事”
ふとした瞬間にわたしたちは出会うのだ。過去や未来の、“誰か”の記憶に

「海獣の子供」は読みましたがこういう台詞があったことは忘れてましたね。
「ハイドゥナン」からは生物と無生物が成層圏からマントルまで広がる情報“雲(クラウド)”をつくり、様々な記憶を共有。そして琉球のユタはその“雲”につながっているという設定を引用してます。「海獣の子供」「ハイドゥナン」ともに世界に刻まれた記憶について。

ここにユングの集合的無意識を持ち出すと記録されるっていうより共有される記憶ってことになるでしょうが、記録されるから記憶になるわけで、その記憶に誰でもアクセスできるなら共有ってことになるので、話はズレているようでやはり同じところをぐるぐるまわっています。


この話はもう少しつづきますが、今回はこのあたりで。
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