本日は、料理の技法である"スフェリフィケーション(Spheriflcation)"を取り入れたカクテルをご紹介致します!
今回紹介のスフェリフィケーション・カクテルは、「パールズ・スプモーニ(PEARL'S SPUMONI)」です
オーダーから全ての作業を含め6分(このカクテルにしては早い提供時間かと思います)はかかるカクテルです。
「スフェリフィケーション」とは"球体のソース"の意味で、単純にフランス語で"球体"の意味を指す「スフェール-Sphere(英語ではスフィア)」と呼ぶこともあります。
真珠状に作るスフェリフィケーションを使用したカクテルは"パールズ・カクテル"とも呼ばれます
スフェリフィケーションを作る方法は幾つかあります
ピューレや液体を凍らせてベジタブル・ゼラチンで覆たり、アルギン酸ナトリウム溶液を、カルシウム溶液に潜らせて膜を作る方法などが有名です。
「パールズ・スプモーニ」のカンパリ・パール・スフェリフィケーションを作るには、食品添加物のアルギン酸ナトリウムと食品添加物の乳酸カルシウムが必要です。
カルシウム溶液は、塩化カルシウムを使用する例も多いのですが、作ったスフェリフィケーションを水で洗っても塩気が残り気になるので、ここでは乳酸カルシウムを使用致します。
塩気を利用したいスフェリフィケーションを作る場合や、お料理ものには塩化カルシウムが効果的かと思います。
大きさは、真珠状や卵黄状など様々な大きさで作ることが出来ます。
両方とも潰すと液体が流れる様に作ります。
特に小さな粒は、幾つかの原因でゼリー状になりやすいので研究が必要となります。
アルギン酸ナトリウムは、液体に溶かそうとすると写真上の様にママコ(大きな固まり)となり、スプーンで攪拌してもなかなか溶かす事は出来ません。
アルギン酸ナトリウム水溶液の作り方の基本は、液体にアルギン酸ナトリウムを加え、容器にラップして一晩冷蔵庫で保存してからかき混ぜると溶けます。
もっと早く混ぜる場合は、マグネティックスターラー・プロペラ型攪拌機や、ブレンダー等の攪拌能力のあるものを使用します。
アルギン分子の効果的な分散法は、写真上のブレンダーの様に強攪拌によるものや、砂糖や塩など、ダマにならない成分と粉末混合したものを水中に分散させる方法、アルコール混合による分散法などがあります。
作りたいものにより、研究課題が出来るかとおもいます。
出来上がったゲル(GELはドイツ語でジェルの意味で、とろみのある液体を料理の世界でこの様に呼びます)は、ここではパール状にしなければならないのでドレッシング入れの容器に入れます。
作りたてのゲルは空気が入り見た目が美しく、ドリンクに浮きやすくなります。
パールズ・スプモーニは、完成でカンパリ・スフェリフィケーションを浮かせたいのと、見た目も保ちたいので短時間の空気抜き(完全に空気抜きしたものを使用する場合は3時間くらいかかります)が必要ですが、空気抜き時間は2分くらいです。
その2分の間に水に乳酸カルシウムを溶く作業を行います
カルシウム溶液が出来たら、ドレッシング容器のフタを閉め、ここまでで3分程です
カンパリ・ゲルを乳酸カルシウム溶液に落とすと、ゲルがカルシウムに反応して膜を貼り真珠状の形になります!
カンパリ・スフェリフィケーションは、数分間乳酸カルシュウム溶液に浸すと、膜が厚くなりゼリーになってしまいます
一本の試験管型グラスに使用するカンパリ・スフェリフィケーションの数は40個です!
40個は、25~30秒で落とし引き上げます!
1分くらい浸してしまうとゼリー化してしまいますので、粒をスピーディーに落す練習も必要です。
3本分なので120粒作ります!
120粒は、100秒くらいで揃えなけえば失敗となります。
カンパリ・スフェリフィケーションは、水でよく洗います。
ここまででトータル5分の作業です!
出来上がりは美味しそうなイクラです!
ちなみにイクラはロシア語で"小さくて粒々したもの"です。
カンパリ・イクラとか言った方が解りやすいのですが、その名前でお客様に説明ををると気持ち悪るがられる事があります
因みに写真上右が、5分仕上げのもので、左は一晩かけて空気抜きして作ったものです。
左の方が透明感があり美しいのですが、近くで見ないとあまり違いが解りません。
という事でカメラを近づけて、明るさ調整をして比べやすく撮影してみました。
左の一晩ものは、確かに空気は全然入らず美しいのが解ります。
つやつやした本当のイクラの様です!
右の5分仕上げものです。
確かに細かい気泡が入っているのが確認できます。
少しつやつや度が落ちますが、全然使えるレベルの仕上がりかと思います。
因みにこんな実験もしました。
作ったスフェリフィケーションは、お湯にも強いです!
溶けずに形は残りますが時間と共に色抜けして、お酒が抜けてしまいます。
話はカクテルの仕上げに戻ります。
試験管グラスに、冷やしたグレープフルーツ・ジュース、カンパリ・スフェリフィケーション、トニック・ウオーターを注ぎます。
軽くマドラーで攪拌します。
ここでも5分仕上げと一晩仕上げを比べてみました。
写真右の5分仕上げは、気泡が残るので綺麗に玉が浮きます。
左の一晩仕上げは、沈んでしまいます。
一晩仕上げのカンパリ・スフェリフィケーションで完成させると、イメージしている完成度になりませんでした。
トニック・ウオーター多めなら、玉が浮くかもしれないと思い、試してみましたが浮きません。
という事でカクテルバー・マルソウでは、完成までで6分仕上げの方法を採用致しました!
最後にお好みのボブズ・ビターをフロートして完成です!
ビターがお好きでない方はそのままお楽しみ頂けます。
お飲み頂き、口の中でカンパリ・スフェリフィケーションを割って頂きますと、スプモーニが出来上がります!
アルコール度数は、とても低いです。
3口での飲めるのでショート・ドリンクでしょうか?
シューター・カクテルにもなりますね!
面白いカクテルとなっておりますので是非お試し下さい!