
好き嫌いだけでは言い表せない




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鑑賞してから随分時間がたってしまったけれど、鑑賞中の緊張感と、鑑賞後のなんともいえない重苦しい余韻はよく覚えている
そう、いつ、どこからおかっぱ頭のシガーがキャトルガンをぶら下げて登場するか、と、とにかくずっと緊張しっ放しだった
テーマとか監督の主張とか・・・・そういうものはうまく言い表せない
つまるところ原題の"No Country for Old Men"なんだろうなぁ
などと、わかったつもりになるしかできない
冷酷無比に殺戮を繰り返すシガーと、そんなシガーから必死で逃げるモスと、実像を知らないままシガーを追い続ける保安官
そんな三人が淡々と描き出されている
シガーがKIOSKのおやじにねちねちと絡む様子や、シガーが自分の傷を治療する様子や、モスがダクトにトランクを隠す様子を、執拗なほどに時間をかけて描くかと思えば、モスの奥さんやモス自身については殺される場面すら省略されている
主人公であるはずの保安官は前半殆ど登場しない
シガーのヘアスタイル、下着はブリーフ・・・・・とか・・・
等々、挙げればキリがないほどの、そんな(恐らく)計算し尽くされた構成が、私をやたらと緊張させたのだろうと思う
(今にして思えば・・・・だけど)
アメリカという風土、保安官のたどってきた人生、など私には永遠に理解できるはずもなく、そういう意味ではこの映画を本当に理解することなど無理なのかもしれない
それでも、不気味な緊張感と鑑賞後の虚無感
(その依拠するところが監督のソレとは異なっていたとしても)
私にとっては、心に深く残る作品となった
★おまけ
主人公というのは、作品において登場場面が多くセリフが多い人物のことだと思っていたが、この作品の主人公は保安官だという
そうか・・・・・・
この作品で、観客が一番共感を覚えるとしたら恐らくそれは保安官だ
主人公とは、物語を語りつつ、私達と一緒に物語の中を進んで行く存在なのかもしれない、なんてことをこの作品を観て、初めて感じた
(映画館)