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Full-Tone

女性建築士・ふるとちかこの徒然なるままに

最近読んだ本

2023-06-09 18:47:50 | 最近読んだ本

教誨 著:柚月 裕子

まず、とても重い内容の物語。

【教誨】と言う言葉をはじめて知りました。

「教えさとすこと」だそう。

矯正施設で行われる、刑事収容施設法の第68条を法的根拠とする、教誨師と言う人が存在する。

物語は、ふたりの幼女、内ひとりは自分の子供を殺した女性の死刑が執行されるところから始まる。

その遺骨と遺品の受取人に指名された遠縁の女性が、死刑囚の生前を辿って行くことで、

死の間際に残した言葉の真相に近付いて行く。

暴かれていく、家族関係、生い立ち、周囲からのいじめ。

それらが事件を引き起こすまでの心情にどう影響したのか、読み解くことになりました。

「約束は守ったよ。褒めて」

受取り手のいない遺骨を受け取った因果から、主人公が結末を選ぶ姿が逞しい。

 

読み進むと、モデルとなった事件があったように思い出す。

調べてみると、秋田児童連続殺人事件。

脚色はされているだろうけど、しっかり取材された物語の様。

犯罪はもちろんいけない。

けれど、毒親やネグレクト、いじめが、世の中にはびこる罪が犯罪を生むことになる様な構成なのかも。

@ふると


最近読んだ本

2023-06-08 13:58:39 | 最近読んだ本

川のほとりに立つ者は 著:寺地 はるな

なぞ解き的な、展開で進む物語。

概要をどう記してよいやら…。

カフェ店員の清瀬は、数か月会っていなかった婚約者(?)の松木が意識不明の重体と連絡を受ける。

怪我をする前後数日間と、会わなくなった数か月前の出来事とが、交錯する。

この先、どうなるの?

読み進むにつれ、登場人物の人となりがよく分かると共に、

些細な擦れ違いから生まれる誤解や思い込みが、運命の流れを変えてしまうと感じる。

色んなことをきちんと判断する力を問われているような気がする一冊でした。

@ふると

 

 


最近読んだ本

2023-05-23 21:18:09 | 最近読んだ本

こはくの前足と共に

月の立つ林で 著:青山美智子

著者の作品は、2冊読んだことがあったけれど、この一冊はかなり染みました。

本屋大賞ノミネート作品って、頷けます。

5つの短編が納められていて、それぞれの主人公は直接接点がない。

ある人もいるんだけど、そうとは気づかずそれぞれ暮らしている。

同じポッドキャストを聞いていると言う共通点で繋がっている。

そして、孤独感と言うか、疎外感というか、劣等感と言うか、そんな感情を抱いていることも共通点。

それぞれが置かれた場所で、孤独感から脱却する場面がね、泣ける。

ひとりでいることと、孤独を感じることは別なんだってことなのよ。

いつも誰かにサポートされて、誰かを支えて、見えないところで繋がっている。

装丁にも描かれている、竹林。

そして、月の満ち欠けも、気持ちの切り替えとか、やり直しとか、例えられているんだろうな。

架空のポッドキャストなのだけど、聞いてみたくなる。

それも、この一冊の魅力かもしれません。

 

しばらくぶりに読了できて、途中ウルウルしちゃって、特に最後の短編の中の言葉が刺さりました。

「あせったり、しんどい思いをしながらじゃなくて、

  幸せな気持ちで作られたものをみんな待っているんじゃないかな」

この主人公とは立場も状況も異なるけれど、依頼された仕事を下りる展開になってしまってね。

まさに、この言葉の示す通り。

私が楽しんでないと、いい建物ができませんよ。

よい判断だったんだと思う。

そして、今頂いているお仕事を、楽しく進めるのだ!

@ふると


最近読んだ本

2023-02-17 23:34:30 | 最近読んだ本

汝、星のごとく 著:凪良ゆう

しばらくお休みしてた、「最近読んだ本」

何冊か図書館から借りてきていたものの、読了できなかったのです。

そんな中で、なんだか引き込まれてしまったのが、この物語。

とは言っても、実は数週間前に読了。

 

それぞれの家庭で、いろんな事情を抱えている高校生の男女が、

出会い、恋をして、大人になって、いろんなことを経験して別れて…。

その十数年間の物語でした。

色んな人が色んな事情を抱えていて、立ち直ろうとしたり、それを邪魔する物があったり。

理不尽だな~と思ったり、いやいやその選択は無いだろうと思ったり。

でも、ちょっといい人間関係のあり方が描かれていて。

そんな生き方や暮らし方ができたらいいなぁと、思ったしだい。

読んだ人にしか、分からない。

この作家さんの世界観なのだろうな~。

@ふると

 

 


最近読んだ本

2022-12-25 19:18:42 | 最近読んだ本

財布は踊る 著:原田ひ香

ヴィトンの長財布が、数奇な運命をたどって、色んな人の手に渡って行き、

手にする人の運気が下がったり、上がったり。

その時々に財布に巡り会う人々のお金にまつわる物語。

お金の使い方と、人との繋がりを考えさせられる1冊です。

ヴィトンの長財布を持ちたいと長年切望している、主人公ともいえる女性が、

やっと手にして間もなく手放さなければなるんですけど、

そして紆余曲折の末、拘りが無くなっていく、巻き返しが面白かったのです。

お財布だけでなく、何かしらの物事に執着してしまうところが、自分と重なる部分もあったりしました。

この方の作品は、お金にまつわる物語が多いようですね。

文章が読みやすいのですが、今回は登場人物が多くて、後半迷っちゃった。

因みに、青森出張の行きかえりで読めてしまった!

@ふると


再読

2022-12-04 19:08:58 | 最近読んだ本

月の満ち欠け 著:佐藤正午

この作品が直木賞を受賞した時、図書館から借りて読んで、あまりに感動して、

その後、中古でしたが購入してしまったと言う。

お薦めの本を聞かれると、必ずお話する一冊です。

映画化されて、一昨日公開になったので、もう一度再読。

今回読むのは4回目。

かなり切ないのだけど、魂を揺さぶられる物語でもあるのです。

ストーリーの背景としてなんだけど、

主人公は八戸出身で、ある時期、家族で住んでいたところが、千葉市稲毛。

私が八戸出身で、大学時代に稲毛に住んでいて。

八戸や稲毛の描写がリアルにあるわけではないのですが、

更に、登場人物に建築士がいたりして、妙な共通点があって。

何とも言えない不思議な感じを手伝っているのかも。

愛と奇跡のストーリーなのですが、

予告で、あの方があの役と知ってからの再読は、読み進む中でも映像化しちゃっている。

まるっと原作のままではないだろうけれど、早く映画を観たい。

いつになるかな…。

@ふると


最近読んだ本

2022-11-03 17:43:52 | 最近読んだ本

図書館本。

この頃、写真を撮らないで返却しちゃっているので、忘れちゃっているのもある気がする。

犬のかたちをしている物 著:高瀬隼子

夜に星を放つ      著:窪美澄

55歳からのハローワーク 著:村上龍

ひよどりとみかん    著:近藤史恵

無人島のふたり     著:山本文緒

 

「ひよどりとみかん」

近藤史恵さんの文章は読みやすくって、すいすい入ってくる。

そして、更に美味しそうなのですよ。

お料理や食肉のこと、山のこと狩猟のこと、たくさん取材して書かれたんだろうけど、

まるでそう言う人たちを見ているかのように、映像化してしまう。

 

「無人島のふたり」は昨年亡くなられた山本文緒さんが、余命宣告を受けてから亡くなる直前まで綴った日記。

大波にさらわれて、ご主人と二人で無人島に流されてしまったの様と例えられたタイトル。

内容は、闘病記と言うのでもなく、ただ日常、今日一日を過ごせた記録。

余命4ヶ月、120日、それ以上生きることが目標と、書かれているのを読んで愕然とした。

冷静に、こんな風に書けるって、作家の生き様なのかな。

山本文緒さんの著書は、直木賞受賞作の【プラナリア】を読んだ記憶があるくらい。

昨年話題になった、【自転しながら公転する】は借りたけれど、読み終えられなかった。

再度、借りて読む。その他も読んでみよう。

@ふると

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最近読んだ本

2022-08-15 15:17:29 | 最近読んだ本

【砂に埋もれる犬】 著:桐野夏生

貧困と虐待。

愛情の無い中で生まれ、育ち、思春期を迎えた少年が主人公。

ネグレクトと言われる、育児放棄、育児怠慢、児童虐待の描写が続く重い内容の一冊でした。

食事も十分でなく、社会のルールも身についていない。

それどころか、入浴や歯磨きのやり方を知らない。

学校へ行けば、いじめや仲間外れ。

偶々知り合った方が里親となって引き受けてくれるけれど、

今までの生活とのギャップに生じる感情のねじれ。

そうこうする中で、犯罪になってしまう行動を抑えきれない。

やり場の無い感情に何とか手を差し伸べてあげられないものか...。

500ページからなる厚い本で、苛立ちを覚える場面もあったけど、桐野ワールドに引き込まれ、3日で読破。

信じがたい描写が続くけど、綿密な取材に基づいてて、実際にあることなんだろうね。

あの結末は、これからに希望がある終わり方なのか?

ハッピーエンドがよかったな~。

@ふると


最近読んだ本

2022-07-16 15:00:34 | 最近読んだ本

【星を掬う) 著:町田そのこ

「52ヘルツのクジラたち」でも似たような感覚で読んだのだけど、

登場人物たちが、何かしらの、そして結構深い傷みの過去を抱えていて、かなり切ないくなる。

文章だけでも、DVの場面とか、認知症の症状とか、

リアルに感覚が伝わってくるし、時には顔を背けたくなる描写もあったり。

物語ではあるけれど、おそらくかなりの取材されていて、

フィクションではないことも書かれているのだろう。

それにしても、悲惨な事情を抱えた女性たちが、集合しちゃうのって、どーなのかしら?

現実的でない様にも感じたけど、隔離シェルター等では、もっと神経を使うのかもしれない。

そして、センシティブな問題を抱えた人が、身近にいたら、私はどうするのだろう。

まず、気付けるのか。

手を差し伸べることができるか。、

些細な事でも、加害者側にならないようにしよう。

色んなことを考えながら読んでしまった。

締めくくりは皆幸せに書かれているけど、私だったら、トラウマになってなかなか立ち直れないな。

 

町田さんの作品は、文章が読みやすいですね。

そして、普段あまり使わない漢字が登場するのだけど、

ルビふってほしいような、勘で読んで合っているか確かめるのも楽しいような。

@ふると


最近読んだ本

2022-07-12 10:33:21 | 最近読んだ本

【青と赤のエスキース) 著:青山美智子

一組のカップルの30数年間にわたる軌跡と奇跡を紡いだ一冊。

そこにずーっと「青と赤のエスキース」が関わって行く。

「青と赤のエスキース」なる物を見てみたい!

エスキース、あるいは、エスキス。

下絵と言う意味のフランス語。

建築学科に入学して初めて知った単語。

そして、現在は大学で非常勤をしていることもあり、今でも身近な単語。

下書きでもなく、ラフスケッチでもなく、下絵。

いったん、成果品に近い物を下絵として完成させる。

有名な画家さんの物だと、それさえも高額になるらしいよね。

さて、この物語でも「青と赤のエスキース」を描いた画家さんは、少しずつ世に認められていくのよね。

資産(?)としての価値が上がって行くことよりも、

一枚のエスキースが色んな場面で大切な要素となって、長い時間の間に大切な物になっていく。

「青と赤のエスキース」が引寄せる、軌跡と奇跡に納得の物語でした。

@ふると

 


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2022-06-03 15:16:56 | 最近読んだ本

スモールワールズ 著:一穂ミチ

図書館からお借りした1冊。またしても写真撮り忘れ。

6つの短編が納められてて、いずれも意外な展開。

本屋大賞ノミネート作品と言うだけあって、引き込まれました。

実は、一度借りて、全部読めなかったので、再度借り。

読み終えられなかったストーリーが気になったのです。

ざわっとくる怖い結末あり、うるっとする結末あり。

私は【魔王の帰還】と【適量】の2つの物語が好き。

もしかしたら、それぞれの物語に繋がりがあったのかもしれないと思って、

読書関連のサイトを覗いたら、やはり伏線回収されているらしい。

マジか!?

と言うわけで、再読したい。

けれど、予約している本は次々回ってくる、購入した本もある。

そうこうするうちに、こんな気持ちも忘れてしまうのだろうな。

@ふると


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2022-05-14 13:04:54 | 最近読んだ本

あちらにいる鬼 著:井上荒野

だいぶ前、満島ひかりさん主演の映画【夏の終わり】を観た。

昨年大往生された、瀬戸内寂聴さんの私小説が原作でした。

あの時は、主演とモデルのギャップが結びつかず(笑)、創作の物語のように観たのだった。

さて、この一冊。

今秋映画が公開されると言うので、図書館からお借りしました。

寂聴さんと、不倫関係にあった小説家の男性と、その妻との模様を

小説家の娘が執筆したと言う、センセーショナルな物語。

先日読み終えた【奇跡】とは、全く異なる不倫の顛末。

源氏の世から、好奇なネタではあるけれど、ほんと、色々。笑

「不倫は文化」的な発言をされた方がいましたけど、今になって、その意味を理解できたかも。

現実では認められない関係なのに、文学や映画・ドラマでは美しく描かれて、心を掴んでしまう。

著者は、生前の寂聴さんにこの物語を読んで頂いて、お墨付きをもらっているらしい。

納得のストーリ―だし、小説家ってスゴイ職業だな~と。

読んでいて感じたことは、それぞれが人としての愛を貫いただろうこと。

文中「私たちの男」という言葉が出てくるんだけど、それくらい魅力的な殿方だったのかも。

何であれ、著者が両親と寂聴さんをリスペストしていることが伺える。

というか、そうでなければ、こうは書けないでしょう。

【夏の終わり】を改めて観たいと思ったけど、残念ながらプライムビデオでは配信されていない。

実は、不倫相手を別の作家さんだと思い込んでいたので…、レンタルかな。

井上荒野さんの記事1

井上荒野さんの記事2

@ふると


最近読んだ本

2022-05-07 10:54:31 | 最近読んだ本

やがて海へと届く 著:彩瀬まる

図書館からお借りした一冊。恒例の写真、撮り忘れた。

コピーを見て「消えた親友」が、何年か後に戻って来るお話なのかと思って、前情報もなく観た映画。

実は映画の展開がちょっと腑に落ちなかったのだ。よい映画だったのだけど。

エンドロールで、原作が彩瀬まるさんと知ったことで、どんな描写なのか、読んでみようと思ったしだい。

大学入学当初からの友人、真奈とすみれ。

物語は、卒業して、働いている真奈の姿から始まる。

ひとり旅が好きなすみれが、偶々訪れていた先で、東日本大震災に遭遇し、

津波にのみ込まれてしまったらしい。

事あるごとに、ここにいない「すみれ」を呼ぶ真奈。

戻ってくるかもしれない、忘れてはいけない、色んな思いが交錯して、

先に進めない思いが伝わってくる作品でした。

映画では読み取れなかった、真奈の背中を押してくれる出来事と、

その先の真奈の思いや行動が、すみれに届いたんだなって感じる結末。

「やがて海へと届く」その意味を深く感じました。

原作の登場人物と、映画のキャスティングが絶妙。

読みながら映像が重なる感じが、結果よかった。

@ふると


最近読んだ本

2022-05-07 10:22:06 | 最近読んだ本

古本食堂 著:原田ひ香

急逝した滋郎さんの古本屋を迷いながらも引き継いだ妹・珊瑚さんと、

珊瑚さんの大姪となる美希喜さんの物語。

年の離れた二人の女性を中心に、色んな人が関わってほっこりするストーリーです。

珊瑚さんと美希喜さん、名付けたのは滋郎さんという共通点がある。

文学と言うか、本が好きな家系の方たちで、

古本屋を舞台に色んなジャンルの本が登場して、

その全部は読みたいとは思わないんだけど、興味が沸いて調べてみたり。

更には神保町のグルメも登場するので、それだけでも東京へ行きたくなったり。

劇的な展開ではないんだけど、その先が気になってあっという間に読破。

古本は興味が無かったけど、魅力的な神保町を知りました。

映画化して欲しいと言うか、私の中では、キャスティング出来ちゃってる。

と言うくらい、めちゃくちゃ素敵な物語です。

そして、美希喜さんと珊瑚さんのこの先の人生も書いてください。

読んだ人だけ想像できる、美希喜さんママのガッツポーズ。

余談ですが、大叔母という存在が幼いころからいない私。

読み始めは、人間関係の整理がおぼつか無いスタートでした。笑

@ふると


最近読んだ本

2022-04-30 18:31:28 | 最近読んだ本

東京ディストピア日記 著:桜庭一樹

コロナ感染が徐々に進む東京での暮らしを事細かに記した、一年間の日記。

先日「少女を埋める」を読み終えて、著者の作品を続けて読んでみたくなりました。

本当は、「赤朽葉家の伝説」と思い、図書館から借りて来たんだけど、

しょっぱなから展開について行けず、返却しちゃった。

さて、「東京ディストピア日記」

「少女を埋める」に近いタッチで綴られているので、こちらは入って行きやすい。

たった、2年ほど前のことだけど、色々忘れている社会の移り変わりを

納得しながら、思い出しながら、改めて気づきながら、読みました。

あくまでも、著者の日記なんだけど、日々の記録と共に、

詳細な世の中の動きを書きとめられているので、

コロナ禍の記録として、一冊持っていてもよさそうな気さえしています。

とは言え、この先の展開が気になる内容の書物とは異なるので、途中飽きて来ちゃうかも。

・・・「ゴメンナサイ」

それでも、これは続編が出版されそうな予感。

@ふると