あなたはここにいなくとも 著:町田その子
話題になっていた…図書館で数か月予約待ちの一冊。
5つの短編が納められている。
人生経験を積んだ色んなおばあちゃんが登場する。
ここにいないおばあちゃんが、人生を切り替える道しるべになっている感じ。
とても読み進めやすい1冊。
言葉の言い回しとか、表現とか、特徴がある。
ストーリーはそれぞれ違うんだけどね、年末に読んだ「さざなみのよる」に空気感が近い。
そのバケツでは水はくめない 著:飛鳥井千砂
タイトルに惹かれて、借りてきた図書館本。
急速に意気投合した、仕事仲間であり女友達。
読み始めた時には、サクセスストーリー的な展開なのかと思いきや、さにあらず。
少しずつ歯車が狂って、片方は精神的に追い込まれていく。
もう片方は、友人を追い詰めていくことで、不思議なパワーを発揮して行く。
実は、途中からかなり引き込まれてしまった。
何故なら、2人は、時にはかつての私、そして、今の自分。
今では付き合いのないあの人、今でも身近な友人、かなりオーバーラップしちゃった。
この物語の人間関係に近い経験をしている人、意外とに多いと思う。
この他に、パワハラ・セクハラのリアルな描写があったり。
遠距離恋愛の彼が、なんともいい存在感だったり。
このまま、映画とかにできそうなくらいの濃さでした。
著者の本、はじめてでしたが、他の作品も読んでみたい。
@ふると
忘備録的な記録。
夜空に浮かぶ欠けた月たち 著:窪美澄
とある町のメンタルクリニックとカフェとを舞台に、ちょっと悩みを持つ人たちが織りなす物語。
短編集なので読み易い。
最初の短編、ちょっと共感し過ぎて、ヤバかった。
さざなみのよる 著:木皿泉
三姉妹の真ん中、ちいねえちゃんが病に侵されて亡くなる。
彼女と家族の物語。それぞれにスポットを当てた短編で繋がっている。
途中、物語の核心を突く、名言があって、なんかいい。
作者は、ご夫婦ユニットなんだそう。
@ふると
草を褥に 著:大原富枝
朝ドラの主人公のモデルとなった、牧野富太郎氏の伝記とも言える小説。
史実を忠実に書かれているよう。
ドラマでは脚色されているのかな・・・と、思うところも多々。
読みにくいんだけれど、富太郎とすえこさんのやり取りしたお手紙がそのまま掲載されていて、
質屋のこと、高利貸しの取り立てのこと、朝ドラに登場する場面が如実に。
それでも、朝ドラはかなり贔屓目に脚色されているのだろうと、推察することも多々。
そのまま描いたら、場合によっては、非難されちゃうかも。笑
もしかしたらちょっと付き合えないタイプかもと、感じる場面もあるのだけど、
恨まれることが無く、好かれる人だったらしい。
草花への止めることない好奇心、自分の好きを突き詰めた、そのエネルギーが、とにかくスゴイ!
東京と高知に、資料館があるらしいので、行ってみたいな。
余談だけど、牧野富太郎と森鴎外は懇意にしていたらしい。
私の大好きな、画家・藤田嗣治は、父親が森鴎外とつながりがあったらしい。
そんな、背景を知ると、昔も著名人のコネクションって侮れない。
@ふると
四十歳、未婚出産 著:垣谷 美雨
タイトルに惹かれて、借りてきた図書館本。
タイトル通り、未婚の女性が思いもよらない経緯で妊娠してしまう。
年令的にこれが出産の最後のチャンスと、悩みながらも産む方向で進んでいく。
主人公の女性を取り巻く、会社の事情、社会の様子、色々盛り込まれていて展開していきます。
イケメン部下、パワハラ上司、元不倫相手、色んな立場の人が登場して、
不利な状況になったり、味方が現れたり。
人種差別、不登校、ハラスメント、少しずつ色々考える機会になるかも。
親子兄弟、友人の関係が築かれていてこその物語かも。
著者の本は初めてですが、とても読み易い。
@ふると
教誨 著:柚月 裕子
まず、とても重い内容の物語。
【教誨】と言う言葉をはじめて知りました。
「教えさとすこと」だそう。
矯正施設で行われる、刑事収容施設法の第68条を法的根拠とする、教誨師と言う人が存在する。
物語は、ふたりの幼女、内ひとりは自分の子供を殺した女性の死刑が執行されるところから始まる。
その遺骨と遺品の受取人に指名された遠縁の女性が、死刑囚の生前を辿って行くことで、
死の間際に残した言葉の真相に近付いて行く。
暴かれていく、家族関係、生い立ち、周囲からのいじめ。
それらが事件を引き起こすまでの心情にどう影響したのか、読み解くことになりました。
「約束は守ったよ。褒めて」
受取り手のいない遺骨を受け取った因果から、主人公が結末を選ぶ姿が逞しい。
読み進むと、モデルとなった事件があったように思い出す。
調べてみると、秋田児童連続殺人事件。
脚色はされているだろうけど、しっかり取材された物語の様。
犯罪はもちろんいけない。
けれど、毒親やネグレクト、いじめが、世の中にはびこる罪が犯罪を生むことになる様な構成なのかも。
@ふると
川のほとりに立つ者は 著:寺地 はるな
なぞ解き的な、展開で進む物語。
概要をどう記してよいやら…。
カフェ店員の清瀬は、数か月会っていなかった婚約者(?)の松木が意識不明の重体と連絡を受ける。
怪我をする前後数日間と、会わなくなった数か月前の出来事とが、交錯する。
この先、どうなるの?
読み進むにつれ、登場人物の人となりがよく分かると共に、
些細な擦れ違いから生まれる誤解や思い込みが、運命の流れを変えてしまうと感じる。
色んなことをきちんと判断する力を問われているような気がする一冊でした。
@ふると
こはくの前足と共に
月の立つ林で 著:青山美智子
著者の作品は、2冊読んだことがあったけれど、この一冊はかなり染みました。
本屋大賞ノミネート作品って、頷けます。
5つの短編が納められていて、それぞれの主人公は直接接点がない。
ある人もいるんだけど、そうとは気づかずそれぞれ暮らしている。
同じポッドキャストを聞いていると言う共通点で繋がっている。
そして、孤独感と言うか、疎外感というか、劣等感と言うか、そんな感情を抱いていることも共通点。
それぞれが置かれた場所で、孤独感から脱却する場面がね、泣ける。
ひとりでいることと、孤独を感じることは別なんだってことなのよ。
いつも誰かにサポートされて、誰かを支えて、見えないところで繋がっている。
装丁にも描かれている、竹林。
そして、月の満ち欠けも、気持ちの切り替えとか、やり直しとか、例えられているんだろうな。
架空のポッドキャストなのだけど、聞いてみたくなる。
それも、この一冊の魅力かもしれません。
しばらくぶりに読了できて、途中ウルウルしちゃって、特に最後の短編の中の言葉が刺さりました。
「あせったり、しんどい思いをしながらじゃなくて、
幸せな気持ちで作られたものをみんな待っているんじゃないかな」
この主人公とは立場も状況も異なるけれど、依頼された仕事を下りる展開になってしまってね。
まさに、この言葉の示す通り。
私が楽しんでないと、いい建物ができませんよ。
よい判断だったんだと思う。
そして、今頂いているお仕事を、楽しく進めるのだ!
@ふると
汝、星のごとく 著:凪良ゆう
しばらくお休みしてた、「最近読んだ本」
何冊か図書館から借りてきていたものの、読了できなかったのです。
そんな中で、なんだか引き込まれてしまったのが、この物語。
とは言っても、実は数週間前に読了。
それぞれの家庭で、いろんな事情を抱えている高校生の男女が、
出会い、恋をして、大人になって、いろんなことを経験して別れて…。
その十数年間の物語でした。
色んな人が色んな事情を抱えていて、立ち直ろうとしたり、それを邪魔する物があったり。
理不尽だな~と思ったり、いやいやその選択は無いだろうと思ったり。
でも、ちょっといい人間関係のあり方が描かれていて。
そんな生き方や暮らし方ができたらいいなぁと、思ったしだい。
読んだ人にしか、分からない。
この作家さんの世界観なのだろうな~。
@ふると
財布は踊る 著:原田ひ香
ヴィトンの長財布が、数奇な運命をたどって、色んな人の手に渡って行き、
手にする人の運気が下がったり、上がったり。
その時々に財布に巡り会う人々のお金にまつわる物語。
お金の使い方と、人との繋がりを考えさせられる1冊です。
ヴィトンの長財布を持ちたいと長年切望している、主人公ともいえる女性が、
やっと手にして間もなく手放さなければなるんですけど、
そして紆余曲折の末、拘りが無くなっていく、巻き返しが面白かったのです。
お財布だけでなく、何かしらの物事に執着してしまうところが、自分と重なる部分もあったりしました。
この方の作品は、お金にまつわる物語が多いようですね。
文章が読みやすいのですが、今回は登場人物が多くて、後半迷っちゃった。
因みに、青森出張の行きかえりで読めてしまった!
@ふると
月の満ち欠け 著:佐藤正午
この作品が直木賞を受賞した時、図書館から借りて読んで、あまりに感動して、
その後、中古でしたが購入してしまったと言う。
お薦めの本を聞かれると、必ずお話する一冊です。
映画化されて、一昨日公開になったので、もう一度再読。
今回読むのは4回目。
かなり切ないのだけど、魂を揺さぶられる物語でもあるのです。
ストーリーの背景としてなんだけど、
主人公は八戸出身で、ある時期、家族で住んでいたところが、千葉市稲毛。
私が八戸出身で、大学時代に稲毛に住んでいて。
八戸や稲毛の描写がリアルにあるわけではないのですが、
更に、登場人物に建築士がいたりして、妙な共通点があって。
何とも言えない不思議な感じを手伝っているのかも。
愛と奇跡のストーリーなのですが、
予告で、あの方があの役と知ってからの再読は、読み進む中でも映像化しちゃっている。
まるっと原作のままではないだろうけれど、早く映画を観たい。
いつになるかな…。
@ふると
図書館本。
この頃、写真を撮らないで返却しちゃっているので、忘れちゃっているのもある気がする。
犬のかたちをしている物 著:高瀬隼子
夜に星を放つ 著:窪美澄
55歳からのハローワーク 著:村上龍
ひよどりとみかん 著:近藤史恵
無人島のふたり 著:山本文緒
「ひよどりとみかん」
近藤史恵さんの文章は読みやすくって、すいすい入ってくる。
そして、更に美味しそうなのですよ。
お料理や食肉のこと、山のこと狩猟のこと、たくさん取材して書かれたんだろうけど、
まるでそう言う人たちを見ているかのように、映像化してしまう。
「無人島のふたり」は昨年亡くなられた山本文緒さんが、余命宣告を受けてから亡くなる直前まで綴った日記。
大波にさらわれて、ご主人と二人で無人島に流されてしまったの様と例えられたタイトル。
内容は、闘病記と言うのでもなく、ただ日常、今日一日を過ごせた記録。
余命4ヶ月、120日、それ以上生きることが目標と、書かれているのを読んで愕然とした。
冷静に、こんな風に書けるって、作家の生き様なのかな。
山本文緒さんの著書は、直木賞受賞作の【プラナリア】を読んだ記憶があるくらい。
昨年話題になった、【自転しながら公転する】は借りたけれど、読み終えられなかった。
再度、借りて読む。その他も読んでみよう。
@ふると
株式会社松本工務店とのコラボ公開中 シンプルハウスMK
【砂に埋もれる犬】 著:桐野夏生
貧困と虐待。
愛情の無い中で生まれ、育ち、思春期を迎えた少年が主人公。
ネグレクトと言われる、育児放棄、育児怠慢、児童虐待の描写が続く重い内容の一冊でした。
食事も十分でなく、社会のルールも身についていない。
それどころか、入浴や歯磨きのやり方を知らない。
学校へ行けば、いじめや仲間外れ。
偶々知り合った方が里親となって引き受けてくれるけれど、
今までの生活とのギャップに生じる感情のねじれ。
そうこうする中で、犯罪になってしまう行動を抑えきれない。
やり場の無い感情に何とか手を差し伸べてあげられないものか...。
500ページからなる厚い本で、苛立ちを覚える場面もあったけど、桐野ワールドに引き込まれ、3日で読破。
信じがたい描写が続くけど、綿密な取材に基づいてて、実際にあることなんだろうね。
あの結末は、これからに希望がある終わり方なのか?
ハッピーエンドがよかったな~。
@ふると
【星を掬う) 著:町田そのこ
「52ヘルツのクジラたち」でも似たような感覚で読んだのだけど、
登場人物たちが、何かしらの、そして結構深い傷みの過去を抱えていて、かなり切ないくなる。
文章だけでも、DVの場面とか、認知症の症状とか、
リアルに感覚が伝わってくるし、時には顔を背けたくなる描写もあったり。
物語ではあるけれど、おそらくかなりの取材されていて、
フィクションではないことも書かれているのだろう。
それにしても、悲惨な事情を抱えた女性たちが、集合しちゃうのって、どーなのかしら?
現実的でない様にも感じたけど、隔離シェルター等では、もっと神経を使うのかもしれない。
そして、センシティブな問題を抱えた人が、身近にいたら、私はどうするのだろう。
まず、気付けるのか。
手を差し伸べることができるか。、
些細な事でも、加害者側にならないようにしよう。
色んなことを考えながら読んでしまった。
締めくくりは皆幸せに書かれているけど、私だったら、トラウマになってなかなか立ち直れないな。
町田さんの作品は、文章が読みやすいですね。
そして、普段あまり使わない漢字が登場するのだけど、
ルビふってほしいような、勘で読んで合っているか確かめるのも楽しいような。
@ふると