オベロン会ブログ

英米文学の研究会、オベロン会の専用ブログです。

11月のオベロン会報告

2009-12-06 | 左り馬
今年は暖冬と言われていますが、
昼間の暖かさも、会が終わる時刻になると
冬の風が吹きとばしてしまったような気がします。


会場の国際文化会館を出て
鳥居坂を下る足元もすっかり暗くなる季節になりました。

このような頃合いになると、学事も忙しくなる「繁忙期」ですが
その合間をぬって伊達恵理さんが

「探求の変容:'The Seeker' から At the Hawk's Well へ」

のタイトルでご発表してくださいました。
予告より踏み込んだテーマとなっております。

あまり知られていない初期の作品 'The Seeker' は
一人の老騎士が、魅惑的な「声」にとりつかれ
その主を求めて遍歴するという劇詩です。
その後のイェイツの作品に通じる象徴性や、
Femme fatale である魔女のモチーフが見られることを、
原文を読みながら解説してくださいました。

これらのモチーフは、At the Hawk's Well に受け継がれつつも、
'The Seeker' の老騎士が体現していた役割は
At the Hawk's Well の二人の登場人物、騎士クーハランと老人に
それぞれ描き分けられ、「探求」の意味も変容していることが読み解かれました。


この二つの作品に見られる登場人物の役割の変容には、
イェイツがアイルランド文芸復興運動を強く意識し、
詩人の在り方や、詩作に対する態度の変化が作用しているようです。

能の影響が強く反映された作品として知られている
At the Hawk's Well ですが、劇詩人イェイツという観点から
'The Seeker' と併せて考えることで新たな視座を提供してくださいました。


イェイツの作家としての成熟を見るのみならず、
ロマン派的特徴や、同時代の作家が描くモチーフとの関連、
牧歌の伝統(前回のご発表ではイェイツのパストラル・エレジーに触れて下さっています)、
聖杯伝説、政治性など、
イェイツの背後に広がる文学観と世界観に
参加者一同おおいに盛り上がり、
イェイツの作品に 'possessed' された一時でした。

今回もありがとうございました!

さて、次回は平成21年最後のオベロン会です。
普段より一週早く、12月19日(土)、
14時から国際文化会館西館4階のセミナールームにて開催されます。
どうぞご参加下さい。

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