(感想2もあります)
前巻で、ようやく霧島透子の正体が、咲太の大学の友人である美東美織であることが判明。
咲太は、翔子とともに美織を説得し、事態の収集を図ろうと麻衣のもとへ。
美織と、亡くなった霧島透子との関係は、霧島透子が残した楽曲“Turn The World Upside Down”の秘密のメッセージに気づいた翔子によって、歌詞を行単位で最後からリバースすることで、
「君に出会わなければよかった」
で終わる歌詞から
「君に出会ってよかった」
で終わる歌詞へと入れ替わり、透子が美織に伝えたかった気持ちがちゃんと伝わってきた。
この歌詞のリバースは、なるほど、これは一本取られた!やられた!と軽く興奮w
同時にそのひっくり返した歌詞を2番として歌った美織が、本物の霧島透子であると世間からも「認識」され、自分のことを霧島透子だと思い込んでいた麻衣も正気に戻り、これにて一件落着。
・・・のはずだったのだが、それでも元には完全には戻らない世界に直面し、では、だれがこの「世界改変」の首謀者か? ってことになったわけだけど。
いや、もうその答えはひとつしかなくて。
全ての元凶は、世界の観測者である「梓川咲太」であった。
しかも、この世界の「梓川咲太」が最強の改変能力をもつ観測者であることが判明。
まぁ、実態は、ウサギのキグルミを着た別世界の咲太が、咲太が告げたことで判明したのだけど。
(えーと、正直、この「種明かし」はあまり巧くないし美しくもないと思ったので、もしかしたら、このことについては別途書くかも。)
そこからは、咲太が思春期症候群のことを忘れろ、なかったことにしろ、とそのキグルミ咲太に言われたことへの応答として、長いエピローグが始まっていく。
要するに、前巻の感想4で書いた、この世界は咲太が作り出したものだった、ということとほぼ同じ種明かしだったということ。
ちょっと抜粋しておくと
********************
そうすると、俄然気になるのは、この物語のタイトル。
「青春ブタ野郎は、XXXXの夢を見ない」
で、青春ブタ野郎とは双葉による命名で咲太のことだから、要するに、
「咲太はXXXXの夢を見ない」
ということになって、つまりは、個々の物語は全て「咲太の夢」で、正確には、物語の最初で起こったような奇っ怪な夢のことだけど、それは咲太自身の関与によって解決される。
(中略)
なので、素直に、これまでの物語が全て咲太の見る夢と考えると、量子力学的摩訶不思議現象も含めて全てが上手く、というか、都合よく解釈できる。
だって、全部が夢オチになるのでw
さすがにそれはないと思いたいのだけど、根本的なところで、どうして物語のそもそもの発端で、咲太だけがバニーガールになった麻衣を「認識」できたのか、という話になる。
あれは、麻衣の思春期症候群が引き起こした事件だってことで決着はついたはずだけど、それにしたってどうして咲太だけが認識できたのか?
その説明って実はされていない。
だから、一番単純な解答としては、いやそれは咲太が見た夢で、咲太が一年先輩の桜島麻衣と特別な関係になりたいと思ったから、というのが一番もっともらしくなる。
それなら、ランドセルガールを生み出したのも咲太だった、で済むから。
**************
・・・という具合に書いていたのだけど、大体こういうことだった。
まぁ、美東美織についてひとつアクロバティックだったのは、彼女が全ての可能世界に同一人物として存在できる、いわば「特異点」となる存在で、本来なら彼女は、すべての可能世界をそれと意識することなく渡ることができたはずなのだけど、それを、この世界の(唯一の)観測者である「梓川咲太」が認識してしまったから、美東美織がいられる世界がこのひとつに限定されてしまった、ということらしい。
つまり、
美東美織は、全可能世界で同一性を維持できる「特異点」
梓川咲太は、その認識によって世界を固定させる「観測者」
という「異常者」どうしだったということ。
だから、最終的な事態の解決のための、美織は、すべての可能世界を渡り、霧島透子を救う、すなわち、美織が霧島透子の正体であるという「身バレ」をしにでかけなくてはならなくなり、
咲太は咲太で、自分にとって都合よい部分だけをパッチワーク的にかき集めた形で改変されたままで留まっている世界を、それぞれのパーツをそれぞれあった世界に戻しつつ、「#夢見る」を咲太が見る前の世界に戻さなくてはならない。
で、結局、咲太がしたことは、思春期症候群のことを「忘れる」のではなく「思い出にする」ことで、つまり、自分にとって、「今とは地続きになっていない世界」として観測し直すことで、元に戻すことだった。
この過程を、本巻の半分以上を使う長いエピローグとして描かれることで、読む側もそういうことかなあ、と(論理ではなく)心情的に、パフォーマティブに追認させられた、って感じかな。
つまり、ある夢からハッと即座に覚醒する!ってことではなく、ダラダラと夢の部分を整理して、夢=思い出と現実の間に線を引いていったという感じ。
要するに、咲太とともに読者もここまでの全巻の内容を振り返りながら「思い出にする」過程を経験して終わり、という感じ。
なので、正直に言えば、歯切れはあまり良くはない。
なんとなくわかったようでわからないような終わり方。
ランドセルガールにしても、どうやら「世界の観測者たる梓川咲太」を支援するプログラムに人型のイメージが与えられたような存在だったみたいだしw
ということで、ともあれ、終わった。
正直、まだ全然、感想の言語化ができていないし、シリーズ全体に対しても言いたいことはあるけど、とはいえ、まだ考えがまとまっているわけではないので、それは、多分、後で書くと思う。
たとえば、この最終巻のヒロインが、麻衣でなく美織だったことの意味は何なのかな?とかね。
「ディアフレンド」は美織のことで、最後の方の描写だと、むしろ咲太は、他の可能世界に旅立った美織との再会を心待ちにしているように見えて、そこから美織は、麻衣とも翔子ちゃんとも違う、咲太にとってかけがえのにない大事な人、って感じがするんだよね。
こういってよければ、美織は、咲太の半身のような存在。
それは「特異点」と「観測者」という、この可能世界SFにおける「対」のような存在に思えるから。
なんだろうな、『化物語』でいえば
梓川咲太 → 阿良々木暦
桜島麻衣 → 戦場ヶ原ひたぎ
牧之原翔子 → 羽川翼
美東美織 → 忍野忍(キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード)
って感じかな。
それぞれ、余人に代えがたい存在であって、恋人とかパートナーとかいう言葉でひとつにくくることができないような、かけがえのない存在である。
で少なくとも、最終巻である本巻を見る限り、ちょっと面白いのは、美織の存在感が一番大きく、次点が翔子ちゃん、で、麻衣が実はほとんど活躍していなかった。
まさに釣った魚には餌をやらない的な希薄な存在感に麻衣がなっていたことは、最終巻だけにちょっと意外だった。
麻衣が、咲太に、大人になれ、って言ったのも、これまでの流れからすると意外。
もっと素朴に、麻衣は、咲太にベタ惚れで、むしろ麻衣が咲太に依存していたように見えていたから。
特に大学生編からは。
なのでちょっと、麻衣に対する心理描写が最後は足りないかなと、思った。
翔子ちゃんはあんなに魅力的に、むしろ蠱惑的に描かれていたのにねw
やっぱり、作者は、翔子ちゃんのほうが麻衣よりもお気に入りなんだな、って思ったものw
それから、結局、咲太が「大人になる」ことの象徴が、スマフォを持つことだったというのも、阿良々木くんの「友だちはいらない、人間強度が下がるから」と似たようなことを、物質として象徴するものだったんだな、というのにはちょっと笑ったw
とまれ、そんな感じで、全然書き尽くしている感じがしないので、また書きます。
とりあえず、読後直後の感想?はこんな感じで。
あー、でも終わっちゃったなぁ。
結構、脱力感とか、喪失感がある。
やっぱり気に入っていたんだな、この物語って思うよw
いいよね、青春SF!
(感想2へ)
前巻で、ようやく霧島透子の正体が、咲太の大学の友人である美東美織であることが判明。
咲太は、翔子とともに美織を説得し、事態の収集を図ろうと麻衣のもとへ。
美織と、亡くなった霧島透子との関係は、霧島透子が残した楽曲“Turn The World Upside Down”の秘密のメッセージに気づいた翔子によって、歌詞を行単位で最後からリバースすることで、
「君に出会わなければよかった」
で終わる歌詞から
「君に出会ってよかった」
で終わる歌詞へと入れ替わり、透子が美織に伝えたかった気持ちがちゃんと伝わってきた。
この歌詞のリバースは、なるほど、これは一本取られた!やられた!と軽く興奮w
同時にそのひっくり返した歌詞を2番として歌った美織が、本物の霧島透子であると世間からも「認識」され、自分のことを霧島透子だと思い込んでいた麻衣も正気に戻り、これにて一件落着。
・・・のはずだったのだが、それでも元には完全には戻らない世界に直面し、では、だれがこの「世界改変」の首謀者か? ってことになったわけだけど。
いや、もうその答えはひとつしかなくて。
全ての元凶は、世界の観測者である「梓川咲太」であった。
しかも、この世界の「梓川咲太」が最強の改変能力をもつ観測者であることが判明。
まぁ、実態は、ウサギのキグルミを着た別世界の咲太が、咲太が告げたことで判明したのだけど。
(えーと、正直、この「種明かし」はあまり巧くないし美しくもないと思ったので、もしかしたら、このことについては別途書くかも。)
そこからは、咲太が思春期症候群のことを忘れろ、なかったことにしろ、とそのキグルミ咲太に言われたことへの応答として、長いエピローグが始まっていく。
要するに、前巻の感想4で書いた、この世界は咲太が作り出したものだった、ということとほぼ同じ種明かしだったということ。
ちょっと抜粋しておくと
********************
そうすると、俄然気になるのは、この物語のタイトル。
「青春ブタ野郎は、XXXXの夢を見ない」
で、青春ブタ野郎とは双葉による命名で咲太のことだから、要するに、
「咲太はXXXXの夢を見ない」
ということになって、つまりは、個々の物語は全て「咲太の夢」で、正確には、物語の最初で起こったような奇っ怪な夢のことだけど、それは咲太自身の関与によって解決される。
(中略)
なので、素直に、これまでの物語が全て咲太の見る夢と考えると、量子力学的摩訶不思議現象も含めて全てが上手く、というか、都合よく解釈できる。
だって、全部が夢オチになるのでw
さすがにそれはないと思いたいのだけど、根本的なところで、どうして物語のそもそもの発端で、咲太だけがバニーガールになった麻衣を「認識」できたのか、という話になる。
あれは、麻衣の思春期症候群が引き起こした事件だってことで決着はついたはずだけど、それにしたってどうして咲太だけが認識できたのか?
その説明って実はされていない。
だから、一番単純な解答としては、いやそれは咲太が見た夢で、咲太が一年先輩の桜島麻衣と特別な関係になりたいと思ったから、というのが一番もっともらしくなる。
それなら、ランドセルガールを生み出したのも咲太だった、で済むから。
**************
・・・という具合に書いていたのだけど、大体こういうことだった。
まぁ、美東美織についてひとつアクロバティックだったのは、彼女が全ての可能世界に同一人物として存在できる、いわば「特異点」となる存在で、本来なら彼女は、すべての可能世界をそれと意識することなく渡ることができたはずなのだけど、それを、この世界の(唯一の)観測者である「梓川咲太」が認識してしまったから、美東美織がいられる世界がこのひとつに限定されてしまった、ということらしい。
つまり、
美東美織は、全可能世界で同一性を維持できる「特異点」
梓川咲太は、その認識によって世界を固定させる「観測者」
という「異常者」どうしだったということ。
だから、最終的な事態の解決のための、美織は、すべての可能世界を渡り、霧島透子を救う、すなわち、美織が霧島透子の正体であるという「身バレ」をしにでかけなくてはならなくなり、
咲太は咲太で、自分にとって都合よい部分だけをパッチワーク的にかき集めた形で改変されたままで留まっている世界を、それぞれのパーツをそれぞれあった世界に戻しつつ、「#夢見る」を咲太が見る前の世界に戻さなくてはならない。
で、結局、咲太がしたことは、思春期症候群のことを「忘れる」のではなく「思い出にする」ことで、つまり、自分にとって、「今とは地続きになっていない世界」として観測し直すことで、元に戻すことだった。
この過程を、本巻の半分以上を使う長いエピローグとして描かれることで、読む側もそういうことかなあ、と(論理ではなく)心情的に、パフォーマティブに追認させられた、って感じかな。
つまり、ある夢からハッと即座に覚醒する!ってことではなく、ダラダラと夢の部分を整理して、夢=思い出と現実の間に線を引いていったという感じ。
要するに、咲太とともに読者もここまでの全巻の内容を振り返りながら「思い出にする」過程を経験して終わり、という感じ。
なので、正直に言えば、歯切れはあまり良くはない。
なんとなくわかったようでわからないような終わり方。
ランドセルガールにしても、どうやら「世界の観測者たる梓川咲太」を支援するプログラムに人型のイメージが与えられたような存在だったみたいだしw
ということで、ともあれ、終わった。
正直、まだ全然、感想の言語化ができていないし、シリーズ全体に対しても言いたいことはあるけど、とはいえ、まだ考えがまとまっているわけではないので、それは、多分、後で書くと思う。
たとえば、この最終巻のヒロインが、麻衣でなく美織だったことの意味は何なのかな?とかね。
「ディアフレンド」は美織のことで、最後の方の描写だと、むしろ咲太は、他の可能世界に旅立った美織との再会を心待ちにしているように見えて、そこから美織は、麻衣とも翔子ちゃんとも違う、咲太にとってかけがえのにない大事な人、って感じがするんだよね。
こういってよければ、美織は、咲太の半身のような存在。
それは「特異点」と「観測者」という、この可能世界SFにおける「対」のような存在に思えるから。
なんだろうな、『化物語』でいえば
梓川咲太 → 阿良々木暦
桜島麻衣 → 戦場ヶ原ひたぎ
牧之原翔子 → 羽川翼
美東美織 → 忍野忍(キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード)
って感じかな。
それぞれ、余人に代えがたい存在であって、恋人とかパートナーとかいう言葉でひとつにくくることができないような、かけがえのない存在である。
で少なくとも、最終巻である本巻を見る限り、ちょっと面白いのは、美織の存在感が一番大きく、次点が翔子ちゃん、で、麻衣が実はほとんど活躍していなかった。
まさに釣った魚には餌をやらない的な希薄な存在感に麻衣がなっていたことは、最終巻だけにちょっと意外だった。
麻衣が、咲太に、大人になれ、って言ったのも、これまでの流れからすると意外。
もっと素朴に、麻衣は、咲太にベタ惚れで、むしろ麻衣が咲太に依存していたように見えていたから。
特に大学生編からは。
なのでちょっと、麻衣に対する心理描写が最後は足りないかなと、思った。
翔子ちゃんはあんなに魅力的に、むしろ蠱惑的に描かれていたのにねw
やっぱり、作者は、翔子ちゃんのほうが麻衣よりもお気に入りなんだな、って思ったものw
それから、結局、咲太が「大人になる」ことの象徴が、スマフォを持つことだったというのも、阿良々木くんの「友だちはいらない、人間強度が下がるから」と似たようなことを、物質として象徴するものだったんだな、というのにはちょっと笑ったw
とまれ、そんな感じで、全然書き尽くしている感じがしないので、また書きます。
とりあえず、読後直後の感想?はこんな感じで。
あー、でも終わっちゃったなぁ。
結構、脱力感とか、喪失感がある。
やっぱり気に入っていたんだな、この物語って思うよw
いいよね、青春SF!
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