Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

5月のポトラッチ・カウント(1)

2024年05月18日 06時30分00秒 | Weblog
 「昨年4月の四世市川左團次の逝去から1年。今年の「團菊祭五月大歌舞伎」では、一年祭追善狂言として『毛抜』を上演します。『毛抜』は二世市川左團次が復活した左團次家に大切に受け継がれている演目。今回は、長男の男女蔵が左團次の当り役である粂寺弾正を、そして孫の男寅が錦の前を勤めます。

 歌舞伎座・五月大歌舞伎の昼の部の2つ目の演目(1つ目は舞踊なので割愛)は、歌舞伎十八番の内「毛抜」である。
 何といっても主役は粂寺弾正なのだが、この役を務める男女蔵氏が完璧である。
 何よりヴィジュアルが「弾正」だし(失礼!)、セリフも身のこなしもイメージ通りなのである。
 「毛抜」は、いわゆる「お家騒動」の物語である。

 「小野春道の屋敷では、家宝である小野小町が歌を認めた「ことわりや」の短冊が盗み出された上、息女錦の前は、髪の毛が逆立つという奇病にかかり、婚約者文屋豊秀との婚礼が先延ばしになっていた。そこへ文屋豊秀の家臣粂寺弾正が来訪する。手にした毛抜が踊り出すことなどから、姫の奇病の真相を突き止めた弾正は、悪人から小町の短冊も取り戻し、意気揚々と引き上げていくのだった。

 江戸時代の「イエ」は、たくさんの「イエ」が入れ子構造を成しており、藩主の「イエ」に家臣の「イエ」が組み込まれるシステムとなっていた(カイシャ人類学(5))。
 この入れ子構造を破壊する企てが、いわゆる「お家騒動」である。
 これには様々なヴァリエーションがあるが、「毛抜」は、藩主の「イエ」(小野家)を、家老:八剣玄蕃(やつるぎげんば)が乗っ取ろうとしたというお話である。
 この場合、藩主の「イエ」の”ゲノム”を絶やすことが目標となることが多い。
 入れ子構造の効果で、上位の「イエ」が崩壊すれば、下位の「イエ」がそれにとって代わることになるからである。
 そこで、玄蕃は、小野家の”ゲノム”を根絶やしにすべく、当主:小野春道の娘:錦の前を髪の毛が逆立つという奇病にかからせて、文屋豊秀との縁談を破談にしようとしたのである。
 ここで注目すべきは、”ゲノム”は、西欧とは異なり、母(女性)方のものでもよいとされている点である。
 婿養子に「イエ」の当主たる資格を認めるというのは世界的に見て珍しいものであり、ヨーロッパでは完全に排除された方法なのである(カイシャ人類学(6))。
 ところが、玄蕃は、「イエ」乗っ取りに失敗し、弾正の一太刀であえなく最期を遂げる。
 以上の次第で、「毛抜」のポトラッチ・ポイントは、「イエ」乗っ取り失敗の代償として玄蕃が命を失ったこと、また、口封じのため忍びの者が玄蕃によって殺害されたことから、10.0ポイント(1人の人命を5.0とする):★★★★★★★★★★。

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