言葉の旅人

葉🌿を形どって、綾なす色彩に耽溺です。

「夢」:僧正遍昭のいい訳

2007年05月01日 | Weblog
 夢に見ゆやと ねぞ過ぎにける
          (良峯 宗貞=僧正遍昭)
 〔いや、もしかしたらあなたに夢の中で逢えるかもと思っていたら、つい寝過ごしてしまいましたんですよ〕

 これは、「拾遺和歌集」にある気の利いた女との遣り取り場面である。

 (女)人心 うしみつ今は たのまじよ
 〔約束したのに貴方は丑三つ時=午前二時になっても来ませんでしたね。人心の薄情さというものがよ~く分かりました。もう今となっては頼みにはしませんわ。〕

 という、女からの誘いの歌に答える形式の、軽妙な洒脱の世界である。

 それにしても、真夜中に人目を忍んで女の所に通って行くってのは、時と場合によってはハラハラドキドキか?!

 深夜、車のライトをそっと点滅させて合図をし、足音を消す為に靴を脱いで家に近づき、そっと空けてくれた戸から恋する女の元に辿り着いた喜びと興奮は如何ばかり…。と思えばそういった感じか。
 情熱の行方は、現実との差異が大きければ大きい程劇的になるのだ。
 ん~、小説にするには想像力が膨らまないのでね。