鳥海山近郷夜話

最近、ちっとも登らなくなった鳥海山。そこでの出来事、出会った人々について書き残しておこうと思います。

九月の鳥海山

2022年08月31日 | 鳥海山

 凍死寸前は気持ち良くなるって本当ですね。あれからかなりの年月が経っているというのに、今でも九月の遭難の夜を思い出します。

 快晴の日でも九月の夜ともなればかなり冷え込みます。山では何が起こるかわかりません。雨具、防寒具、懐中電灯、予備食糧等々お忘れなく。


白女ノカッチ

2022年08月31日 | 鳥海山

  白女ノカッチshirome-no-katti、ふしぎな名前です。今となっては行くことも出来ないので地図の上で想像するのを楽しみます。

 手元にある地図、資料の中では池昭「山と高原地図 鳥海山」の裏面「鳥海山頂上付近」の地図に登場するだけです。1976年~1999年版すべてに記載されています。ただし注意する点は、池昭地図には、池昭さんが勝手に命名した地名が載っているともききましたので、個人で命名しただけのものかもしれないということです。中島台口に書いてある極殿岩もそうかもしれないという話もあります。笙ヶ岳の岩峰(がんぽう)もかつては中岳と呼ばれていたそうですがいつのまにか岩峰です。確かに岩は目立ちます。横文字の名前がつくよりはいいですけど。


昭文社 山と高原地図 鳥海山 1976 鳥海山頂上付近 より

 白女ノカッチは上の地図右方。黒点は汚れではなく地図に記載されているものです。ということは一つの場所を示しますね。白女(しろめ)とは、なんとなく想像つくとは思いますけど遊女のこと。白女といえば遊女以外の意味はありませんので女の子が生まれた時にご自分の娘さんに白女と名前を付けるのは止めましょうね。ここでは別の意で使っているのかはわかりませんが他の意味ですといっても無理です。仏教用語で東に司る、西を浄めると書けば厠以外の事を意味しないと同じです。うちに来る和尚さんの檀家がお子さんにそんな名前を付けたそうで、さすがに和尚さんもそのことは言えなかったそうです。

 ではカッチとはなんでしょうか。「飯豊連峰地名考 」という面白いものがります。このおかげでカッチというものを想像することが出来ます。

 同考によれば、「カッチ」は水源地を指し、川の上流源頭や湧水の始まりのような地点を意味することが多く、「川内、甲子、河内」などと表記することが多い、とのこと。又、上高地の地名なども語源をたどると「上カッチ」の意味で用いられて釆たカッチからの転靴であろう、ということです。さらには、「現在はカッチの意味が重要視されず。山頂名となっている。」「山頂付近をカッチと呼ぶことが多い」ともあります。

 全国的に見ても貉山カッチ、焼峰のカッチ、小幽沢カッチ等カッチとつくところは何か所かあるようです。どのような地形かはもちろん行ったことはありませんし、画像も無いのでわかりませんが、小幽沢カッチの説明では「カッチとは、マタギの言葉の沢の奥地という意味」とあります。白沢(シラソ)は何本かの沢が集まって一本の流れになっていますがそのうちの一本の水源地が白女ノカッチと名付けられたのではないでしょうか。もう少し考えてみると白沢(シラソ)の水源という意味で白沢(シラソ)ノカッチだったのが間違って白女ノカッチと書かれたのかもしれません。片仮名でシラソノカッチと書いたつもりが白沢を知らない人からシラメノカッチと読み間違えられ、それが白女ノカッチと書かれてしまったということも考えられます。ソとメの読み間違い、どうです、考えられませんか。

 ※大江進さんからは、「むき出しの白っぽい露頭のことだったような」というコメントをいただいておりますので水源というより点なのかもしれません。いずれにしても確認に行く技術も体力も残っていませんのでどなたか挑戦してみてください。ドローンは無し、自分の足で。

 ついでながら荒木沢(アラキソ)にある滝を洞吹の滝dou-sui-no-taki これはひどい名です。「ほら吹き」をもじっただけというのですから。これは自分が命名したと自慢するオヤジからききました。このオヤジも「ブリキの喇叭」と陰で呼ばれる「ほら吹き」オヤジでしたが。

 


池昭さんの山と高原地図

2022年08月28日 | 鳥海山

 池昭さんの「山と高原地図 鳥海山 1976」を見ていると飽きることを知りません。裏面の山頂付近の地図がまた一段と面白い。長年の間に記述はだいぶ変わっていきますが。この地図の1986年版を見ると、あっ、なんだ「破方口」がちゃんと載っているではないか、と今頃気づきました。1976年版には破方口は記載されていません。1976以降1986年版迄の間のものは所有していませんのでいつから載ったか始まりはわかりません。

 新版の地図を作るとき、「口」の文字がかすれているので「破方」と書き「やぶれかた」と読んでしまったのではないでしょうか。他の文献を見ればちゃんと破方口と書いてあるのに、と思って他の版を調べてみたら1991年版以降では破方となっていて口の文字が削られています。現在の地図ではそれを踏襲したのでしょう、よく調べもしないで。

 1991年版山と高原地図 鳥海山、破方口の口の字がきれいに落ちています。

 「白女ノカッチ」(シラメノカッチ)とはいったい何でしょうか。太右衛門沢なんてなんだかいい名前ですね。滝の番号F12からF16まで飛ぶのはいったい何故?なんで名前がないのにF20無名滝。
※Fは沢登りに使う記号F(all)だそうです。F20が無名滝という名前の滝ということですね。池昭さんの地図、なぜかビヤ沢と白沢にだけF記号が載っています。

 蛇石流(じゃいしながれ)の蛇の文字は印刷落ちではなく紙が擦れて消えているだけです。

 河原宿から岩峰の裾に向かう長坂出会いの道はまだこの頃踏み跡程度。ここを歩くと愛宕坂を登っている人から大声で「そこ道間違ってるよ~、こっちだよ~」と声をかけられたものです。「山と高原地図」に道として載るのは平成になってからです。木道が敷かれて荒れる恐れは少なくなっては来ました。利用しておきながら言うのもなんですけどこれ以上新しい道は出来てほしくはないですね。池塘見たさに笙ヶ岳辺りは随分荒らされているようです。また長坂出会いから御浜への道は雨裂が一段とひどくなっているようです。こうなると側の草の上を踏み荒らす人が増えてくるのです。


ふれあい

2022年08月27日 | 鳥海山

 ふれあい、とはお互いにわかったつもりになることです。この辺の言葉でいえば、ふれる=ちょす、互いに何かする=ばっこ。なのでふれあいをこの辺の言葉でいえば「ちょしばっこ」となります。なんだかお医者さんごっこを連想してしまい、しまわないか。

 胡散臭い言葉であるのは間違いないです。(胡散臭い、を兎臭いと覚えて喋っている方がいました。)

 先日新聞にのりインターネットにも載り、Twitterで拡散されたザリガニ放流。こんな催し物で自然と触れ合うなどとたわ言。ふれあいという言葉そのものが虚言なのですから。

 この中にジオパークのロゴとイラストが入ったポロシャツを着て参加したものが何名かいたということですが、ジオパークに真摯に取り組んでいる方からすれば相当な迷惑でしょう。誰が何を着ようが自由ではありますが、mont-bellだけがTシャツで大儲け。イヌワシも酒田市の市の鳥としながらもスノーモービルの入山に対してはスノーモービルとイヌワシの営巣に関しては因果関係はわからないということで行政も地元山岳会も何をするわけでもなし、そのうち自然環境は見る影もなくなりそうです。鳥海山笙ヶ岳にしても池塘見たさに新たに踏み跡が付けられている状況です。

 観光という金儲けのためには自然保護、環境保護などお題目ほどの役にも立たない言葉になっているようです。

 何年か前、ジオパークの登録更新審査の記事が新聞に載っていましたがなんだか観光地巡りしているようにしか見えませんでした。審査料というのはいくらかかるか知りませんが安くはないはずです。維持費用だって馬鹿にならないでしょう。ISOも審査、登録、更新と費用は掛かります。しかしジオパークのようにロゴ、マーク等使い放題ではありません。使用箇所等申請して許可を得なければいくらISO登録事業所だとしてもロゴ、マークは勝手に使用できません。ホームページに使うのも許可が必要、ましてTシャツに使用など論外です。こうしてみるとジオパークというのはかなり緩い規格のようです。漬物や土産物にまでジオパークを謳っていて何のためのジオパーク登録かわかりません。真剣に取り組んでいる方々はどう思っているのでしょう。

 ジオパークの協議会だか執行部だかは知りませんがこういったポロシャツを販売することでジオパークを知らしめ認識を広めようとしたのかもしれません。しかし、このシャツを着て自然、環境保護に逆行するような催し物に参加されてしまうとは思ってもいなかったでしょう。ジオパークの協議会もそこまで考えて使用を制限するべきでしょう。それ以前にジオパークの登録許可元がもっと厳しく制限しないといけないのではないでしょうか。

 

 ところで昭和三十年代でも田圃の水路に行けば日本ザリガニなどもはや見ることがなく、ザリガニといえばあの赤いアメリカザリガニだとみんな思っていたのですからね。日本ザリガニなんて見たことがある人の方が少ないでしょう。動植物から資本にいたるまで、外来危険生物ははびこっています。