鳥海山近郷夜話

最近、ちっとも登らなくなった鳥海山。そこでの出来事、出会った人々について書き残しておこうと思います。

白女ノカッチ

2022年08月31日 | 鳥海山

  白女ノカッチshirome-no-katti、ふしぎな名前です。今となっては行くことも出来ないので地図の上で想像するのを楽しみます。

 手元にある地図、資料の中では池昭「山と高原地図 鳥海山」の裏面「鳥海山頂上付近」の地図に登場するだけです。1976年~1999年版すべてに記載されています。ただし注意する点は、池昭地図には、池昭さんが勝手に命名した地名が載っているともききましたので、個人で命名しただけのものかもしれないということです。中島台口に書いてある極殿岩もそうかもしれないという話もあります。笙ヶ岳の岩峰(がんぽう)もかつては中岳と呼ばれていたそうですがいつのまにか岩峰です。確かに岩は目立ちます。横文字の名前がつくよりはいいですけど。


昭文社 山と高原地図 鳥海山 1976 鳥海山頂上付近 より

 白女ノカッチは上の地図右方。黒点は汚れではなく地図に記載されているものです。ということは一つの場所を示しますね。白女(しろめ)とは、なんとなく想像つくとは思いますけど遊女のこと。白女といえば遊女以外の意味はありませんので女の子が生まれた時にご自分の娘さんに白女と名前を付けるのは止めましょうね。ここでは別の意で使っているのかはわかりませんが他の意味ですといっても無理です。仏教用語で東に司る、西を浄めると書けば厠以外の事を意味しないと同じです。うちに来る和尚さんの檀家がお子さんにそんな名前を付けたそうで、さすがに和尚さんもそのことは言えなかったそうです。

 ではカッチとはなんでしょうか。「飯豊連峰地名考 」という面白いものがります。このおかげでカッチというものを想像することが出来ます。

 同考によれば、「カッチ」は水源地を指し、川の上流源頭や湧水の始まりのような地点を意味することが多く、「川内、甲子、河内」などと表記することが多い、とのこと。又、上高地の地名なども語源をたどると「上カッチ」の意味で用いられて釆たカッチからの転靴であろう、ということです。さらには、「現在はカッチの意味が重要視されず。山頂名となっている。」「山頂付近をカッチと呼ぶことが多い」ともあります。

 全国的に見ても貉山カッチ、焼峰のカッチ、小幽沢カッチ等カッチとつくところは何か所かあるようです。どのような地形かはもちろん行ったことはありませんし、画像も無いのでわかりませんが、小幽沢カッチの説明では「カッチとは、マタギの言葉の沢の奥地という意味」とあります。白沢(シラソ)は何本かの沢が集まって一本の流れになっていますがそのうちの一本の水源地が白女ノカッチと名付けられたのではないでしょうか。もう少し考えてみると白沢(シラソ)の水源という意味で白沢(シラソ)ノカッチだったのが間違って白女ノカッチと書かれたのかもしれません。片仮名でシラソノカッチと書いたつもりが白沢を知らない人からシラメノカッチと読み間違えられ、それが白女ノカッチと書かれてしまったということも考えられます。ソとメの読み間違い、どうです、考えられませんか。

 ※大江進さんからは、「むき出しの白っぽい露頭のことだったような」というコメントをいただいておりますので水源というより点なのかもしれません。いずれにしても確認に行く技術も体力も残っていませんのでどなたか挑戦してみてください。ドローンは無し、自分の足で。

 ついでながら荒木沢(アラキソ)にある滝を洞吹の滝dou-sui-no-taki これはひどい名です。「ほら吹き」をもじっただけというのですから。これは自分が命名したと自慢するオヤジからききました。このオヤジも「ブリキの喇叭」と陰で呼ばれる「ほら吹き」オヤジでしたが。

 


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