鳥海山近郷夜話

最近、ちっとも登らなくなった鳥海山。そこでの出来事、出会った人々について書き残しておこうと思います。

1971年の映画 初恋

2020年01月21日 | 兎糞録
客はもうとうに散ってしまった。時計が零時半を打った。」(神西清訳)で始まるツルゲーネフの「初恋」の映画化されたものです。邦画のチャラい方ではありません。
 映画「初恋」ズィナイーダを演ずるドミニク・サンダ、良かったですねえ。話の内容は興味ある方文庫本で読んでください。神西清訳が良いと思います。東京の学校の最初の英語の授業のテキストがこの「初恋」の英訳本だったというのも奇妙な縁です。これがきっかけで、その後ツルゲーネフを読み、二葉亭四迷の露語訳の格調高さに驚き、二葉亭四迷の全集を求め読むという事までなりました。二葉亭は「初恋」を翻訳していませんが「片恋」は翻訳しています。なんといっても「猟人日記」の中の「あひびき」の翻訳初稿は最高です。それからゴーゴリ、レールモントフ、チェーホフ、ドストエフスキー 一直線です。翻訳本ですがすべて全集まで買ってしまったほどですから。何千冊かの本は資源ごみとして処分してしまいましたがこれらは最後まで取っておきます。

 さてこの時、だれと一緒に観たのか、男一人でこういう映画観に行くはずもないのですが、隣にいたのが誰だったか全く記憶にありません。植草甚一おじさんではないけれどその時『映画だけしか頭になかった』 んですね。
 当時市内には映画館が五軒あったと思います、こんな小さな街に。洋画専門、大映、東宝、日活などそれぞれ専門に上映していました。そのほかにも市民会館でも映画が上映されることもありました。しかし今となってはこの街に映画館は一軒もありません。
 この映画はおそらく洋画専門の映画館で観たのでしょう。洋画専門の映画館入り口の回転ドアー、入るのが苦手でした。みんなスイスイ入っていくのに。

 また、そのころ映画館は禁煙になっていません。(列車もバスも、飛行機も禁煙にはなっていませんでした。)映画館というと紫の煙がゆらゆらと立ち上る向こうのスクリーンが今でも思い起こされます。
 そのころ映画は二本立て、三本立てが普通で、この映画と同時上映されたのは何だったか。カンタベリー物語とロング・グッドバイのどちらかだと思ったのですが、初恋と公開時期が合いません。そうするとカンタベリー物語とロング・グッドバイが同時公開だったか。東京で映画館に入った覚えもないし、帰省した時に観たのか、それらすべての映画館がなくなってしまった今では上映記録など調べようもありません。上映記録というと映画「砂の器」で丹波哲郎演ずる刑事が映画館主役渥美二郎に問い合わせる場面がすぐに浮かんできますが。

 そして70年代もっとも記憶に残っているのがロバート・アルトマンの「ロング・グッドバイ」です。(翻訳本は村上春樹はつまらないです。)
(海外版Blu-Rayのジャケですので国内版と異なります。)
 ラロ・シフリンのテーマ曲が全般にわたって流れます。冒頭の猫のシーンから一気に魅了されます。評価、評論することは嫌なのでその辺は評論家気取りの方にお任せします。映画も音楽も論ずるために観たり聴いたりするものではないと思っていますので。

 そういえば、映画「砂の器」も70年代、スター・ウォーズも70年代の作品でした。ジャズも映画も70年代というのは一つのピークだったようです。「砂の器」の吉村刑事役、社会的にはいい地位にいますが人間としては最低なことが全国民にさらされてしまったようです。
 余談ですが、今西巡査部長が施設にいる本浦千代吉に成人した息子の写真を見せ、千代吉が震える手で「そんな人、知らねえ!」と声をあげ大声で泣き叫ぶ場面は圧巻です。中居正弘広や玉木宏の「砂の器」じゃ駄目ですよ。観るならあくまでも野村芳太郎監督の「砂の器」です。Blu-Ray購入しなくてもAmazon Prime Videoで見ることが出来ます。

追記
 そうです、そうです。この映画の初めの方で今西巡査部長と吉村刑事が羽後亀田への出張の帰りに本荘から乗る列車が急行鳥海でした。後年、食堂車は無かったと思いますが。
 列車に詳しい方のブログを拝見した所、映画の車両は気動車ではなく、当時羽越線を走っていなかった電車車両のようです。したがって映画に用いられた映像の車両は急行鳥海とは違うようです。

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