私のなかのチャーチルというのは
とてつもなく尊敬する政治家。
だけど、なんというかすげえ独裁感があり独裁(好き勝手に政治をしたいという意味ね)をしたいんだけども、民主主義があるからしぶしぶ独裁はしないんだ的な、ふてくされた切れ者というイメージがあるw
そのチャーチルがヨーロッパ統合のために動いていた話を中心に、
なぜチャーチルはヨーロッパ統合の父になれなかったのか、というのを語るのかと
思ったのだが。。。。。
読んでみると、本書の大部分は、現在EUの父とされるグーデンホーフと、
チャーチルの思惑の違いをひたすら描いていくのに費やされている。
書簡の長い引用も多く、ちょっと疲れる。
んでチャーチルの思惑がはずれて、フランスが西ドイツと組んで独自に実務的に
石炭と鉄鋼の共同管理=シューマンプランが始まるのが、かなり後半で出てくる。
ここでチャーチルとイギリスはヨーロッパ統合の動きから除かれ、むしろ反対する立場の
ようにおちいってしまう。
本書ではそれをチャーチルが大英帝国の再度の復活を望み、ヨーロッパ統合は外部の(米国を背景としたイギリスの)リーダーシップでやり遂げるべき、と考えていたとする。
シューマンプランはむしろ小さなことから一つ一つ取組み、ドイツの暴走が再び起きない仕組みをつくるということから始まる。チャーチルの思惑では先が見えないことを感じ取ったから。
だから結局チャーチルはヨーロッパ統合の父にはなれないままだったと。
この結論にもってくるのに、ひたすらグーデンホーフとのやり取りを述べている。
これが長過ぎる。
新書なんだからもっとダイジェストでよかったんでないの?と。
が、そのチャーチルの思惑というのは面白く、いかにもチャーチルらしくて
なるほどと思う。
だが、と。
それで本書は今のEUの危機には、外部のリーダーシップが必要だ、とする。
なぜ?
なぜそこにいきつく?
チャーチルの思惑が正しければ、それでいい。
だけどチャーチルの思惑は、結局ヨーロッパ大陸の人々には先が無いものと見切られたのだから、ここでチャーチルの考えていた外部からのリーダーシップ、というのは解決策になるようには思われない。
外部からのリーダーシップがあればEUの拡大、膨張は止められたのか?
そうは思えない。
だって拡大膨張は冷戦下の西側の戦略と、冷戦崩壊による西側の勝利(というか経済的豊かさが際立ったことで)で、東側を吸収する形で行われたのだから。
それは外部のリーダーシップどうのこうのとはあまり関係が無い気がする。
外部のリーダーシップがあったとしてもそうなる時代の流れ。
いや、そもそも米国という巨大な外部がいたとも思える。
で、その結果が今。
今のEUの危機はどうだろう。
各国でユーロを導入するしない、危機国の貨幣価値が暴落する、それを外部のリーダーシップで解決できるのか?
なるほど、チャーチルは各国の国家の主権を一部手放すことには反対していたとある。
つまりEUがここまで国家の主権を少しずつ切り取ってきたことが、現在のEUの危機に
つながったとすればたしかにそうだろう。
だけどだからといって、国家の主権を残したままにしていたら、外部のリーダーシップを受け付けることも無いのではないだろうか?
いまそれこそ各国は自分たちの権利が侵されること、に対して猛烈な反発を示しているではないか。
ギリシャではドイツの強烈な財政改革の要求に怒り、
ドイツはギリシャに国民の税金から大量の資金を投入するのを怒っている。
チャーチルのヨーロッパ統合なら
たしかにEUのいまの危機は起こらなかっただろうが、それはもう結果論でしかなく、今のEUの危機を救う類のものでもない。
なるほどだから「亡霊」なのか。
実体の無い、もう役に立つことのない考えという意味で。
チャーチルは好きな政治家だ。
だけどこの人が今生きていてもEUの危機を解決させることはできない。
それこそ時間を戻せるなら別だが、それによって失うEUの姿もあるだろう。
EUの危機がクローズアップされるのは、それだけEUが世界に影響力をもつほどに
WW2から復活できた、とみることができないか。
チャーチルの方法では、そうはなれなかったのではと思う。
EUの今の危機は無かったかもしれないが、EUがここまで影響力を持つ存在にも
なれなかったのではないかと思う。
今回も長くなった。切る。
とてつもなく尊敬する政治家。
だけど、なんというかすげえ独裁感があり独裁(好き勝手に政治をしたいという意味ね)をしたいんだけども、民主主義があるからしぶしぶ独裁はしないんだ的な、ふてくされた切れ者というイメージがあるw
そのチャーチルがヨーロッパ統合のために動いていた話を中心に、
なぜチャーチルはヨーロッパ統合の父になれなかったのか、というのを語るのかと
思ったのだが。。。。。
読んでみると、本書の大部分は、現在EUの父とされるグーデンホーフと、
チャーチルの思惑の違いをひたすら描いていくのに費やされている。
書簡の長い引用も多く、ちょっと疲れる。
んでチャーチルの思惑がはずれて、フランスが西ドイツと組んで独自に実務的に
石炭と鉄鋼の共同管理=シューマンプランが始まるのが、かなり後半で出てくる。
ここでチャーチルとイギリスはヨーロッパ統合の動きから除かれ、むしろ反対する立場の
ようにおちいってしまう。
本書ではそれをチャーチルが大英帝国の再度の復活を望み、ヨーロッパ統合は外部の(米国を背景としたイギリスの)リーダーシップでやり遂げるべき、と考えていたとする。
シューマンプランはむしろ小さなことから一つ一つ取組み、ドイツの暴走が再び起きない仕組みをつくるということから始まる。チャーチルの思惑では先が見えないことを感じ取ったから。
だから結局チャーチルはヨーロッパ統合の父にはなれないままだったと。
この結論にもってくるのに、ひたすらグーデンホーフとのやり取りを述べている。
これが長過ぎる。
新書なんだからもっとダイジェストでよかったんでないの?と。
が、そのチャーチルの思惑というのは面白く、いかにもチャーチルらしくて
なるほどと思う。
だが、と。
それで本書は今のEUの危機には、外部のリーダーシップが必要だ、とする。
なぜ?
なぜそこにいきつく?
チャーチルの思惑が正しければ、それでいい。
だけどチャーチルの思惑は、結局ヨーロッパ大陸の人々には先が無いものと見切られたのだから、ここでチャーチルの考えていた外部からのリーダーシップ、というのは解決策になるようには思われない。
外部からのリーダーシップがあればEUの拡大、膨張は止められたのか?
そうは思えない。
だって拡大膨張は冷戦下の西側の戦略と、冷戦崩壊による西側の勝利(というか経済的豊かさが際立ったことで)で、東側を吸収する形で行われたのだから。
それは外部のリーダーシップどうのこうのとはあまり関係が無い気がする。
外部のリーダーシップがあったとしてもそうなる時代の流れ。
いや、そもそも米国という巨大な外部がいたとも思える。
で、その結果が今。
今のEUの危機はどうだろう。
各国でユーロを導入するしない、危機国の貨幣価値が暴落する、それを外部のリーダーシップで解決できるのか?
なるほど、チャーチルは各国の国家の主権を一部手放すことには反対していたとある。
つまりEUがここまで国家の主権を少しずつ切り取ってきたことが、現在のEUの危機に
つながったとすればたしかにそうだろう。
だけどだからといって、国家の主権を残したままにしていたら、外部のリーダーシップを受け付けることも無いのではないだろうか?
いまそれこそ各国は自分たちの権利が侵されること、に対して猛烈な反発を示しているではないか。
ギリシャではドイツの強烈な財政改革の要求に怒り、
ドイツはギリシャに国民の税金から大量の資金を投入するのを怒っている。
チャーチルのヨーロッパ統合なら
たしかにEUのいまの危機は起こらなかっただろうが、それはもう結果論でしかなく、今のEUの危機を救う類のものでもない。
なるほどだから「亡霊」なのか。
実体の無い、もう役に立つことのない考えという意味で。
チャーチルは好きな政治家だ。
だけどこの人が今生きていてもEUの危機を解決させることはできない。
それこそ時間を戻せるなら別だが、それによって失うEUの姿もあるだろう。
EUの危機がクローズアップされるのは、それだけEUが世界に影響力をもつほどに
WW2から復活できた、とみることができないか。
チャーチルの方法では、そうはなれなかったのではと思う。
EUの今の危機は無かったかもしれないが、EUがここまで影響力を持つ存在にも
なれなかったのではないかと思う。
今回も長くなった。切る。
チャーチルの亡霊: ――危機のEU (文春新書) | |
クリエーター情報なし | |
文藝春秋 |
この作品の一番の傑作はチャーチルとグーデンホーフがやたらスケールの大きな高尚さを競ってる時に、結局は実務的なシューマン・プランにやられてしまうという点ですね。
少し名前が出てきたベルギーのスパークについて触れてくれたらもっと面白かったかもですが。