ぶらりドリブルの旅

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DAZN観戦 2019年J2リーグ第17節 大宮アルディージャvs京都サンガFC

2019-06-13 12:24:37 | サッカー視聴記(2020年以前)

※前回の大宮の記事はこちら(13節・山口戦)
※前回の京都の記事はこちら(12節・横浜FC戦)

堅い戦いで上位をキープし、自動昇格圏を伺わんとする大宮。
4節・山形戦での敗戦を最後に以降負け無しでここまで来ていますが、最近の戦いは4戦連続で引き分けと成績的には勢いが鈍っている現状。
失点数を減らす事が上位キープへの近道で、現に山形・水戸・甲府・京都・柏と上位陣には試合数>失点数のチームが多数顔を並べています。

大宮もそのうちの一チームとして君臨していますが、反面得点力は前年よりダウン。
2節・琉球戦で3得点を挙げながら、4失点で敗戦したのを契機にまずは守備陣を最整備する事を目指したのでこれは避けられない事だったのでしょう。
おまけに前年J2得点王の大前は、今季はコンディションが整わないのかスタメン出場の機会が減少。
そのため1トップのポストプレイを主軸にした攻撃が今季の仕様ですが、それは今季から就任している高木琢也監督の十八番。
自身前年まで指揮を執っていた長崎からファンマを獲得し、長崎時代と同じサッカーを展開する土壌を整えたのは何より大きかった。
縦ポンによるカウンターサッカーと聞こえは悪いですが、シンプル故選手に迷いが無くなるという効用はJ2を勝ち抜くには何より有効です。

この日の相手は、今季同じく迷いの無いサッカーを見せる京都。
ただしパスサッカー・ポゼッションスタイルを主体とした、今季の大宮とは真逆の中身のサッカーを展開しています。
ショートパスの連続で敵陣を切り裂くそのクオリティは、今やJ2内では屈指のレベルにまで達していると思われる京都。
サイドで躍動する仙頭・小屋松といった選手の知名度も上がって来ました。
このサッカーの色をどう消していくかがこの日の大宮の勝利のカギとなるでしょう。

大宮は前節・福岡戦で初スタメンを飾った吉永を引き続き起用。
登録上はフォワードですが、この日は京都の右サイドハーフである仙頭と何度もマッチアップする場面が目立ったようにポジションは左ウイングバックでした。
前半3分、安藤のロングパスで裏に抜け出そうとした仙頭に対し冷静に対応、反則を受けて相手の攻撃の芽を摘みます。
逆に前半10分の大宮の攻撃では、三門の縦パスに走り込んだ吉永と仙頭が競り合い、仙頭を倒してしまい反則をとられる場面も。

こうした吉永のバチバチいく姿勢もあり、いつものようにサイドで主導権を握れない京都。
安藤や石櫃が強引に縦パスを入れてはカットされるというらしくない場面も散見します。
先日故障から復帰した宮吉もリーグ序盤の調子は戻っていないという印象で、思うようにポストプレイも成功しません。
そして前半23分には、リズムを掴めない仙頭・小屋松両者のサイドを入れ替える事態に。

大宮は組織立った守備でキッチリと京都のストロングポイントを消しにかかりました。
守備時は5-3-2のブロックを崩さず、しかもそのブロックを高めに配置。
コンパクトな陣形はショートパスを多用する京都にとっては非常にきつく、ボールを下げると前線がすかさずプレスをかける。
いつものファンマの1トップでは無く、2トップを採用したのもプレスを掛けやすくするためでしょう。
思うようにビルドアップも進まないため、いつもよりロングパスで活路を開く場面が目立っていた印象を受けました。

そしてそのロングパスも、大宮側はラインを高くする事で「誘っていた」感が強かった。
大宮の守備を打開するどころか、読まれてカットされるかオフサイドになるか、はたまた長すぎてゴールラインを割るかの三択になっていました。
結局京都のファーストシュート(一美)は、仙頭と小屋松がポジションを代わった後の前半24分まで待つ事となりました。

逆に大宮の攻撃は、いつものようにファンマのポストプレイ能力をふんだんに生かしてのカウンター重視。
彼が収めたボールを茨田・三門ら中盤がゲームメイクしチャンスを作ります。
先制点は前半12分。
奥井がカットしたボールをファンマが右サイドでキープ、彼からパスを受けた茨田がエリア内に送ると、奥抜がワントラップで右に展開しそのままスライディングシュート。
技ありのシュートが見事左サイドネットに突き刺さりました。

ボールキープはするものの攻撃の糸口を中々掴めない京都。(前半はポゼッション66%ながらシュートは3本)
打開するにはスーパーなプレイが必要、傍らからそんな事を考えていた矢先の前半25分でした。
福岡のパスカットから左サイドで攻撃を開始、魅せたのは仙頭でした。
ゴールに向かってのドリブルから、一美とワンツーして一気にダイレクトシュートまで持っていきます。
このシュートが大宮DF・菊地の股下を抜けて綺麗にゴールに突き刺さり、同点となります。

しかしその後は大宮のペースに。
前半29分、奥抜が自陣からドリブルで疾走して吉永に渡し、ペナルティエリア内からシュート。(DFがブロック)
32分には三門がパスカットしてすかさず縦パス、石川がスライディングで際どく繋ぎ、左サイドから奥抜がクロス。
エリア内のファンマが胸トラップし、左足でシュートしますがミートせずGK清水がキャッチ。
「良い攻撃は良い守備から」の格言通り、1失点したものの守備の形はしっかりと作れたのが功奏したのかチャンスを量産します。

そして勝ち越し点は前半39分、京都・仙頭の同点弾をさらに凌駕するシュートでした。
ゴールキックをファンマが頭でトラップして収めたまではいつも通りですが、ここから京都のお株を奪うショートパス攻勢。
左サイドから順繰りに中央→右サイドへと展開し、最後は奥井がクロス。
ファーサイドで吉永がヘッドで折り返し、京都DF・安藤ががクリアしたボールをエリア内で拾った三門はバックパス。
するとそこに河面が走り込み左足を思い切り振り抜くと、これがゴール左上を突き刺す弾丸シュートに。
まさにスーパーゴールの一言で、勝ち越しに成功した大宮。

そのまま前半を終えて迎えた後半。
一転して京都が相手陣内でペースを掴む場面が目立ちます。
後半8分に、この日執拗に縦パスを狙う傾向が強かった石櫃を庄司と交代させたのも、「自分たちのサッカーを取り戻せ」というベンチのメッセージだったのでしょう。
福岡が石櫃のポジション(右SB)にシフトしたものの、結果的に中盤が一枚厚くなったという印象を受けました。
後半15分には、大宮GK・塩田のフィードを安藤がカット、その後庄司が大宮選手に囲まれボールを失いかけるも再び安藤が繋ぎます。
このボールを受けた宮吉はエリア内に走る一美にラストパスを送ったものの、ダイレクトで放った一美のシュートはゴール左に外れます。

これが後半最初のシュートとなった京都、反撃の期待を抱かせましたが直後の17分でした。
茨田が京都陣内でカットした後石川→奥抜と繋がり、奥抜はファンマへスルーパス。
ファンマはファーストタッチで京都DF・本多をかわしてGKと一対一を作り、最後はちょっと浮かせたシュートでGKの上を通す心憎いゴール。

2点差をつけられた京都は、後半20分に田中マルクス闘莉王を投入(黒木と交代)。
同時に再び仙頭と小屋松がポジションを入れ替わり、3バックにシフトするなど弄ります。

その甲斐あってか以降はシュートを増やす京都。
22分、一美→重廣→仙頭→重廣→福岡と渡り、最後は仙頭がエリア手前やや左側からシュートもGK塩田がパンチングで防ぎます。
40分にはコーナーキックからファーサイドで闘莉王がボールキープし、最後は福岡がシュートするもこれもGK塩田が触って、尚ゴールに向かうボールを石川がヘディングでクリア。
この2つとも決まっていれば……という展開にはしましたが、結局得点を奪う事は出来ず。

京都の前年からの変貌ぶりは賞賛に値してやみませんが、J2も日程の半分が見えて来た頃合いで、この試合のようにそろそろ相手側の対策という要素が脅威となってくるでしょう。
それを乗り越えていけた時に、J1昇格への道が初めて見えてくるはずです。

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DAZN観戦 2019年J2リーグ第17節 水戸ホーリーホックvsアビスパ福岡

2019-06-11 19:16:03 | サッカー視聴記(2020年以前)

※前回の水戸のテキストはこちら(9節・甲府戦)
※前回の福岡のテキストはこちら(11節・山形戦)

試合前にウェブ上・地方テレビではこんな事件が起きていたので、
水戸側の怒りの鉄槌が炸裂したような結果になった。

そんな冗談は置いといて。
首位の座を伺わんとしている水戸、11人中7人が23歳以下という若いメンバーで挑んだこの試合。
センターバックでキャプテンの細川(34歳)が故障離脱、その代役にンドカ・ボニフェイス(ナイジェリアとのハーフ・23歳)が選択された事で平均年齢も大きく低下中。

しかしこの日の最大の懸念は、「水戸の心臓」とも評されるボランチ・前寛之が累積警告で出場停止な点でした。
前節の山口戦で兄・貴之との兄弟対決を演じたかと思ったら、双方イエローカードを貰って今節出場停止になるという事態になってしまいました。
その前の代役には、同年齢(23歳)の平野を同じポジションで起用します。

さて試合の方は、立ち上がりからややオープンな展開に。
いきなり水戸がコーナーキックを2連続で得たり、福岡・石津がシュートを2本放ったり。
水戸はやはり駒落ちによる強度の低下が拭えないのか、福岡の方は故障から復帰した、攻撃面ではオールマイティな存在の石津が躍動します。

そして前半10分、CB・吉本のロングパスを頭でトラップした石津。
左サイドバックの輪湖とともに左サイドを抉り、クロスを上げると飛び込んだのは松田。
頭で合わせたシュートが水戸GK・松井の手を弾いてゴールに吸い込まれました。
長身のヤンドンヒョン・城後がエリア内に居た所、裏をかいた格好となった見事な先制点。

その後は水戸ペースに。
14分に敵陣で茂木がインターセプト、すかさずスルーパスを送るも黒川は反応できず。
15分にも敵陣での浅野のカットから、中盤でパスを回してから縦パスで崩そうとするも通らず。
しかしこの直後にも敵陣でボールを奪った水戸、平野から浅野にボールが渡ると、浅野はドリブルで中央突破してからミドルシュート。
三度目の正直、という相手のパス回しを封じてからの豪快なゴールで同点に追いつきます。
これで中盤での優位性を植え付ける事に成功した水戸、以降は強度の低下を完全に忘れさせるような試合を展開します。

こうなると福岡側は1トップのヤンドンヒョンが孤立してしまい、それをサポートするためなのかトップ下の城後がフォワードの位置に上がる場面が目立つようになります。
そして中盤が4人になってしまい、4-4-2である相手・水戸とのミラーゲームのような格好となると、尚も中盤で水戸側が有利になってしまうという悪循環。

この試合から監督を交代し(ファビオ・ペッキア氏→久藤清一氏)、仕切り直しを図る福岡。
コーチから昇格という人事は千葉と同じですが、千葉・江尻篤彦氏と違い、Jリーグで指揮を執るのは初めてである久藤氏。
最初の試合なので、少なくとも「何をしたいのか分からない」という状況には陥りたくない。
早めに自分のサッカーをチームに植え付けるのか、それとも先に勝ち点を稼ぐ事を優先とした采配を見せるのか。
現在の福岡の順位を見るや、J2残留すら覚束なくなっている危急存亡の秋。
時間的猶予も、もうすぐ日程の半分が迫っているという状況であまりありません。

試合から消えつつあるヤンドンヒョン、前半も終わり際になると、ボールを受けにサイドに流れる場面が散見されます。
一方水戸の2トップ・村田と黒川ですが、それぞれアイデンティティを持ったしっかりとした動きが目立ちます。
村田は最前線からあまり動かず、ポストプレイヤーとしてどっしりと構える。
黒川はほとんどセカンドトップのような動きで、様々なポジションに位置取りを変えて中盤の攻めをサポートする。

そんな役割をこなす村田に、前半終了間際最高のプレゼントが。
45分、右SBの岸田が中央に向けてドリブルしチャンスを作ると、パスを受けた白井がエリア内中央へスルーパス。
右から走り込んだ村田、すかさず左足でシュートし見事左サイドネットネットに突き刺し勝ち越しゴールを決めます。

反撃に出たい福岡、後半立ち上がりも石津を軸にしてペースを掴まんとします。
しかしシュートまでは持ち込めず、逆に後半4分。
ここでもヤンドンヒョンが左に流れてボール回しに参加、その甲斐あって鈴木がクロスを送りますが水戸GK・松井に直接キャッチされます。
すると松井は即前線に送りカウンターを発動させ、ボールを受けた白井が中央をドリブル。
村田→黒川と渡り黒川がクロス、エリア内で村田が受けたもののシュート出来ず。
得点にはならなかったものの、これを契機に以降は完全な水戸ペースに。

後半7分、平野からパスを受けた黒川はドリブル開始。
一気に福岡選手を複数かわしてエリア内に進入しますが、福岡GK・セランテスの飛び出しを受けてシュートは撃てず、逆に倒れた事でシミュレーションの反則で警告。
10分には平野の自陣からのロングパスを、エリア手前で浅野がワントラップ。
この動作だけで福岡DF・篠原を置き去ってエリア内に進入、シュートを撃ちますがこれもセランテスが阻みます。
11分、相手のパスミスからCB・伊藤が上がり右へ展開、サイドに開いた村田からボールを受けた白井がミドルシュート。(左に外れる)
12分にも福岡陣内でボールカット、黒川から左へ展開して浅野がクロス。
これは逆サイドに流れますが、茂木が拾って黒川にパス、これを黒川は一旦スルーして福岡・鈴木を釣ってからシュート。(ブロックされる)

あまりにも怒涛の攻めに追加点は時間の問題という雰囲気となり、迎えた13分。
ンドカが左サイドに展開してからの攻撃、浅野が巧みにフェイントで福岡選手を翻弄し、すかさず白井→志知へと繋ぎます。
浅野のボールキープに振り回された後で福岡側は完全に対応が遅れており、志知のクロスを村田が収めて右に出すと、どフリーの茂木に対し慌ててGKセランテスが飛び出すという絶望的な状況に。
これを難なく茂木がかわしてシュート、DFのブロックをかいくぐってのゴールで3点目。

そしてその2分後の後半15分。(ここもヤンドンヒョンのボールロストで福岡が攻撃権を失った所から始まる)
中盤で村田がポストプレイで送ったボールを黒川が難しい体制ながらスルーパス、前掛かりになっていた福岡DFの裏を取って浅野がGKと一対一に。
浅野はゴール左に冷静に決め、決定的な4点目を取ります。

一気にどん底に叩き落された福岡は後半19分、田邊を石原に交代、3-4-2-1の形にシフトして巻き返しを図ります。(ウイングバックに石原・輪湖、ボランチに鈴木・城後)
しかし4バック→3バックへの変更というのも近代では在り来たりになりつつあり、相変わらずパスを繋げず、散発的な縦パスを送るしかない攻撃が続きます。
やっとウォンドゥジェの縦パス→ヤンドンヒョンがポストプレイ→松田スルーパスで石津抜け出す(オフサイド)という、形らしき攻めが出来たのが後半27分の事。

水戸側も、28分に伊藤のロングフィードを清水(村田と交代で出場)が収めて右サイドでキープし、岸田・平野を交えたパス回しからサイドチェンジ。
ここでも浅野・志知・白井がパスを回してから、最後は平野の縦パスで志知がエリア内からシュート。(DFがブロック)
これが最後のシュートとなり、以降は茂木の交代(37分、平塚が出場)もありペースダウン。

後半32分、福岡のコーナーキックで鈴木がファーサイドへ上げ、松田と平野の競り合いから松田が倒れて審判の笛が鳴り平野の反則となってPKに。
これをヤンドンヒョンが落ち着いて中央に決め1点を返した福岡。

その後2枠残していた(遅くないか……)交代カードを切りますが、輪湖→實藤・ヤンドンヒョン→森本と、流れを変える交代とはなり得ませんでした。
若手だらけの水戸とは対照的に、かなり平均年齢が高い福岡。
この2つの交代策も、新顔投入でスイッチを入れるというものでは無く、見慣れたベテランを使っておこうという風に見えました。
経験豊富な選手の力で「とりあえず勝ち点を稼ぐ」事を優先させた起用に久藤氏はシフトしたのでしょうが、それは間違いでは無いものの勝ち点を奪えなければ結果的に間違いとなる諸刃の剣となり得ます。
三國ケネディエブスが故障中な現状、ペッキア氏退任で前川・木戸といった数少ない若手の出場も止まるとなれば、干上がってしまいかねない。

サッカーの内容も、結局この日は最後まで「何をしたいのか分からない」という域を出ていないように映りました。
福岡の明日はどちらになるでしょうか。

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DAZN観戦 2019年J2リーグ第16節 モンテディオ山形vs鹿児島ユナイテッドFC

2019-06-06 16:18:38 | サッカー視聴記(2020年以前)

※前回の山形のテキストはこちら(第11節・福岡戦)

首位戦線での戦いを続けている山形。
その姿は「自分たちのサッカー」を貫く事よりも、とにかく泥臭く結果を求めているといった印象で、この日もそうでした。
福岡戦以降、13節・千葉戦でこそ3得点で逆転勝利と印象深い試合を演じましたが、それ以外の試合ではひたすらロースコアの我慢の試合が続きます。

その千葉戦の最中、ディフェンスリーダーの栗山が顎を骨折してしまうアクシデントが発生。
それにも関わらず欠場は一切せず、根性でフル出場を続けている栗山。
彼と、同じくDFの熊本とGKの櫛引の3人が全試合フル出場。
同じくDFの松本も4~5節に欠場したのみでその他14試合はフル出場と、ディフェンスのメンバーはほぼ固定されている今季の山形。

一方で攻撃陣の形作りには苦労している印象で、特にジェフェルソン・バイアーノの起用法に難儀しているのでしょうか。
13・14節とベンチスタートでしたが、途中出場で2戦とも得点したバイアーノ。
ここに来てスーパーサブでの方が印象に残る活躍が目立っています。
スタメンだとその脅威故か、相手に警戒され続けるため中々結果を出せない。
逆に途中出場だとスイッチを入れ替えるのに大変効果的で、相手もそれに合わせるのに頭を悩ませる事うけあいです。
得点力を誇る助っ人がベンチを温めるというのはそんなメカニズムなのでしょうが、一方でそんな起用法ばかり続けていると不満を持たれてしまい、対立・移籍に発展してしまう恐れもある。
特にバイアーノはJリーグの策略によって独自のゴールパフォーマンスを禁止されてしまった状況だけに、現在の心理状態が気になるところです。

この日はスタメンのバイアーノ。
1トップである彼の脇下を固める2シャドーは井出・坂元という形が出来つつありますが、得点力は今一つ伸びずにここまでを戦っている山形。
しかし前半6分、早くも先制します。
右サイドで得たフリーキック、中村のクロスにバイアーノが頭で合わせてネットを揺らします。
いかにも堅守のチームらしい「セットプレーから一閃」のゴールですが、いきなり結果を残したバイアーノ、これで今後のスタメン定着への道筋は出来上がったでしょうか。

その後は一転して鹿児島のペースに。
ドリブル・ワンツー・サイドチェンジを織り交ぜて山形ゴールに迫ります。
前半15分、中原からのロングフィードを受けた左サイドバック・富成がファーサイドへクロス。
これを牛之濱が折り返すも、山形GK・櫛引がキャッチ。
20分には五領が中央をドリブル突破、パスを受けた藤澤がミドルシュート。(GKの正面)
31分はボランチ・八反田の縦パスを受けた五領が左へパス、牛之濱が左サイドからエリアに進入してシュート。(枠外)
経験値では相手に圧倒的に劣ったクラブながら、ボールを支配してチャンスを作ります。

攻勢を強める鹿児島。
今季初めてJ2の戦いに足を踏み入れたクラブであるのは周知の通りで、2014年に地元・鹿児島のクラブ(FC KAGOSHIMAとヴォルカ鹿児島)が実質合併して出来た、地元の想念が詰まった(と思われる)クラブ。
琉球・鹿児島と、日本南端の2クラブが揃ってJ2入りを果たした事で前年までの常識が通用しなくなっている。
特に琉球はホームでの無敗記録が現在も継続中という具合に、相手にとってアウェイでの戦いは鬼門であり、移動距離・気候も敵になってしまう。

初めての舞台を迎えるにあたって、琉球・鹿児島ともに監督を交代する手をうってきました。
琉球はJ3優勝の功労者・金鍾成(キムジョンソン)氏の契約満了に伴い、J1・J2での監督経験も数多持つ樋口靖洋氏を招聘(前年はJ3・YSCC横浜監督)。

一方の鹿児島も契約満了による三浦泰年氏の退任までは琉球と同様ですが、新監督にはなんと前琉球の監督だった金氏が就任します。
禁断の移籍、と言うのは大げさですが、琉球でJ3優勝という功績を評価しての人事だったのでしょう。

そんな鹿児島の今季の戦い、開幕戦・徳島戦はド派手な打ち合いを4-3というスコアで勝利したものの、その後は低迷。
7試合連続無得点という状況にも陥ってしまうなど攻撃陣は停滞、残留争いラインでの戦いを余儀なくされています。
最近では前年J1の柏相手に金星を挙げる
など泥沼からは脱却しているものの、初のJ2残留に向けては予断を許さない状況です。
未だ全日程の折り返しにすら達していないJ2リーグですが、残留を目指す新米チームの前半の戦略としては、目に見える結果つまり勝ち点を積み上げて安全圏に留まるか。
あるいはチームの駒を揃えてチーム力の向上に邁進し後半に備えるか。
前者を採る事が出来なかった鹿児島、狙いたいのは後者。

前半は1-0で折り返し、後半も鹿児島の攻勢はそのままで開始。
後半3分、相手のクリアを砂森が拾い、細かいパス回しから藤澤がミドルシュートも枠外。
6分には五領が右サイドからクロスを上げ、ファーサイドで水本がヘディングしますがこれも枠の外に外れます。

しかしここから鹿児島はペースダウン。
それもビルドアップの時点でパスミスが相次いだ事でピンチを招き続け、11分から3連続でコーナーキックを受けるなど山形の時間帯に。

すかさず後半14分に鹿児島は酒本と韓勇太(ハンヨンテ)を交代。
その3分後には田中奏一を入れ(富成と交代)、流れを引き戻しにかかります。
フレッシュな選手を入れたのが功を奏したか、相手のペナルティエリア手前で反則を受ける場面も目立ち始めます。
24分・27分といずれもフリーキックのチャンスを得ますが生かせず。
逆に27分の方はGK櫛引のロングフィードからカウンターを受け、バイアーノがエリア内でボールを収めた所倒れるという危ない場面も。(ここはノーファール)

完全に攻勢の鹿児島・カウンターの山形という図式が出来上がったゲームとなり、後半33分に鹿児島は最後のカードとしてニウドを投入(中原と交代)。
4月に途中加入し9節以降出場を重ねているこのニウド。過去には札幌・ヴェルディでJ2経験を持つ選手であり、前年はJ3・福島で6得点をマーク。
彼が中盤に入る事により、それまで1勝1分(6敗)だったチームの調子も上向き加減となり実に良い補強となっています。

ブラジルのニウド・北朝鮮の韓と多国籍な選手に、J1経験もある八反田・酒本・堤(この日は未出場)を従来のメンバーに織り交ぜながらチーム力の底上げを図る。
今季の鹿児島の補強策からフロントの思考を纏めると大体こんな感じでしょうか。

その後の展開は、鹿児島は韓のポストプレイ・ニウドのフリックなどを織り交ぜつつ度々シュートまで持っていきますが、あと一歩が遠くノーゴール。
アディショナルタイムには山形・阪野(バイアーノと交代出場)にコーナーフラッグ付近で大分時間を使われて攻め手を欠き、1-0のまま最後はニウドのシュートがブロックに阻まれた所でタイムアップ。
チーム力の上昇という点では内容面で成果が見られたこの試合の鹿児島ですが、J2残留を果たすにはもう一つ決定的な力が欲しい所でしょう。

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