※前回の山形のテキストはこちら(第11節・福岡戦)
首位戦線での戦いを続けている山形。
その姿は「自分たちのサッカー」を貫く事よりも、とにかく泥臭く結果を求めているといった印象で、この日もそうでした。
福岡戦以降、13節・千葉戦でこそ3得点で逆転勝利と印象深い試合を演じましたが、それ以外の試合ではひたすらロースコアの我慢の試合が続きます。
その千葉戦の最中、ディフェンスリーダーの栗山が顎を骨折してしまうアクシデントが発生。
それにも関わらず欠場は一切せず、根性でフル出場を続けている栗山。
彼と、同じくDFの熊本とGKの櫛引の3人が全試合フル出場。
同じくDFの松本も4~5節に欠場したのみでその他14試合はフル出場と、ディフェンスのメンバーはほぼ固定されている今季の山形。
一方で攻撃陣の形作りには苦労している印象で、特にジェフェルソン・バイアーノの起用法に難儀しているのでしょうか。
13・14節とベンチスタートでしたが、途中出場で2戦とも得点したバイアーノ。
ここに来てスーパーサブでの方が印象に残る活躍が目立っています。
スタメンだとその脅威故か、相手に警戒され続けるため中々結果を出せない。
逆に途中出場だとスイッチを入れ替えるのに大変効果的で、相手もそれに合わせるのに頭を悩ませる事うけあいです。
得点力を誇る助っ人がベンチを温めるというのはそんなメカニズムなのでしょうが、一方でそんな起用法ばかり続けていると不満を持たれてしまい、対立・移籍に発展してしまう恐れもある。
特にバイアーノはJリーグの策略によって独自のゴールパフォーマンスを禁止されてしまった状況だけに、現在の心理状態が気になるところです。
この日はスタメンのバイアーノ。
1トップである彼の脇下を固める2シャドーは井出・坂元という形が出来つつありますが、得点力は今一つ伸びずにここまでを戦っている山形。
しかし前半6分、早くも先制します。
右サイドで得たフリーキック、中村のクロスにバイアーノが頭で合わせてネットを揺らします。
いかにも堅守のチームらしい「セットプレーから一閃」のゴールですが、いきなり結果を残したバイアーノ、これで今後のスタメン定着への道筋は出来上がったでしょうか。
その後は一転して鹿児島のペースに。
ドリブル・ワンツー・サイドチェンジを織り交ぜて山形ゴールに迫ります。
前半15分、中原からのロングフィードを受けた左サイドバック・富成がファーサイドへクロス。
これを牛之濱が折り返すも、山形GK・櫛引がキャッチ。
20分には五領が中央をドリブル突破、パスを受けた藤澤がミドルシュート。(GKの正面)
31分はボランチ・八反田の縦パスを受けた五領が左へパス、牛之濱が左サイドからエリアに進入してシュート。(枠外)
経験値では相手に圧倒的に劣ったクラブながら、ボールを支配してチャンスを作ります。
攻勢を強める鹿児島。
今季初めてJ2の戦いに足を踏み入れたクラブであるのは周知の通りで、2014年に地元・鹿児島のクラブ(FC KAGOSHIMAとヴォルカ鹿児島)が実質合併して出来た、地元の想念が詰まった(と思われる)クラブ。
琉球・鹿児島と、日本南端の2クラブが揃ってJ2入りを果たした事で前年までの常識が通用しなくなっている。
特に琉球はホームでの無敗記録が現在も継続中という具合に、相手にとってアウェイでの戦いは鬼門であり、移動距離・気候も敵になってしまう。
初めての舞台を迎えるにあたって、琉球・鹿児島ともに監督を交代する手をうってきました。
琉球はJ3優勝の功労者・金鍾成(キムジョンソン)氏の契約満了に伴い、J1・J2での監督経験も数多持つ樋口靖洋氏を招聘(前年はJ3・YSCC横浜監督)。
一方の鹿児島も契約満了による三浦泰年氏の退任までは琉球と同様ですが、新監督にはなんと前琉球の監督だった金氏が就任します。
禁断の移籍、と言うのは大げさですが、琉球でJ3優勝という功績を評価しての人事だったのでしょう。
そんな鹿児島の今季の戦い、開幕戦・徳島戦はド派手な打ち合いを4-3というスコアで勝利したものの、その後は低迷。
7試合連続無得点という状況にも陥ってしまうなど攻撃陣は停滞、残留争いラインでの戦いを余儀なくされています。
最近では前年J1の柏相手に金星を挙げるなど泥沼からは脱却しているものの、初のJ2残留に向けては予断を許さない状況です。
未だ全日程の折り返しにすら達していないJ2リーグですが、残留を目指す新米チームの前半の戦略としては、目に見える結果つまり勝ち点を積み上げて安全圏に留まるか。
あるいはチームの駒を揃えてチーム力の向上に邁進し後半に備えるか。
前者を採る事が出来なかった鹿児島、狙いたいのは後者。
前半は1-0で折り返し、後半も鹿児島の攻勢はそのままで開始。
後半3分、相手のクリアを砂森が拾い、細かいパス回しから藤澤がミドルシュートも枠外。
6分には五領が右サイドからクロスを上げ、ファーサイドで水本がヘディングしますがこれも枠の外に外れます。
しかしここから鹿児島はペースダウン。
それもビルドアップの時点でパスミスが相次いだ事でピンチを招き続け、11分から3連続でコーナーキックを受けるなど山形の時間帯に。
すかさず後半14分に鹿児島は酒本と韓勇太(ハンヨンテ)を交代。
その3分後には田中奏一を入れ(富成と交代)、流れを引き戻しにかかります。
フレッシュな選手を入れたのが功を奏したか、相手のペナルティエリア手前で反則を受ける場面も目立ち始めます。
24分・27分といずれもフリーキックのチャンスを得ますが生かせず。
逆に27分の方はGK櫛引のロングフィードからカウンターを受け、バイアーノがエリア内でボールを収めた所倒れるという危ない場面も。(ここはノーファール)
完全に攻勢の鹿児島・カウンターの山形という図式が出来上がったゲームとなり、後半33分に鹿児島は最後のカードとしてニウドを投入(中原と交代)。
4月に途中加入し9節以降出場を重ねているこのニウド。過去には札幌・ヴェルディでJ2経験を持つ選手であり、前年はJ3・福島で6得点をマーク。
彼が中盤に入る事により、それまで1勝1分(6敗)だったチームの調子も上向き加減となり実に良い補強となっています。
ブラジルのニウド・北朝鮮の韓と多国籍な選手に、J1経験もある八反田・酒本・堤(この日は未出場)を従来のメンバーに織り交ぜながらチーム力の底上げを図る。
今季の鹿児島の補強策からフロントの思考を纏めると大体こんな感じでしょうか。
その後の展開は、鹿児島は韓のポストプレイ・ニウドのフリックなどを織り交ぜつつ度々シュートまで持っていきますが、あと一歩が遠くノーゴール。
アディショナルタイムには山形・阪野(バイアーノと交代出場)にコーナーフラッグ付近で大分時間を使われて攻め手を欠き、1-0のまま最後はニウドのシュートがブロックに阻まれた所でタイムアップ。
チーム力の上昇という点では内容面で成果が見られたこの試合の鹿児島ですが、J2残留を果たすにはもう一つ決定的な力が欲しい所でしょう。