浅井久仁臣 『今日の中東』

1971年のパレスチナ初取材から、30有余年中近東を見続けてきたジャーナリストが独自の視点をお届けします。

イラク大統領 英軍完全撤退の動きにけん制

2007年05月12日 | Weblog
 イラクのタラバニ大統領は11日、訪問先の英国でブレア首相と会い、間もなく首相の座を退くブレア氏を「親友であり、偉大な指導者」と褒め称えた。

 タラバニ氏は首脳会談の後、記者団に対してまずはブレア氏への高い評価を述べた後、駐イラク英軍への賛辞を並べ立て、さらに、「(英軍には)まだあと1,2年はいて欲しい」と次期首相と目される労働党のゴードン・ブラウン氏にメッセージを送った。

 英政府は、対イラク戦争の開始時には約45000人の兵をイラクに送ったが、国内世論の圧力に屈する形で毎年のように兵を撤退させてきており、今年末までには約10分の1にまで減らす予定にしている。

 タラバニ大統領はそういう流れの中で、新生イラク軍が自立できるにはまだ時間がかかるとして英国政府に完全撤退を思い止まるよう迫ったと見られている。

 同大統領はその後、ケインブリッジ大学で講演、イラク軍が後1,2年すれば自立できるとの見通しを強調した。

 タラバニ氏の今回の動きは、恐らくイラクからの軍の撤退を視野に入れている労働党政権に対するけん制であろう。ブレア氏率いる労働党は支持を急激に失っており、ブラウン氏が後継者として首相の座に付いた場合、国民の多くが反対している英軍のイラク駐留を継続させるかどうか、微妙な状況にあるからだ。

 しかし、イラクにおける同盟軍の存在が意味を成さなくなっているのは誰の目にも明らかで、ブラウン政権になれば撤退の時期が早められる可能性もある。そうなると、ブッシュ政権はますます窮地に追い込まれることになるだろう。

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