浅井久仁臣 『今日の中東』

1971年のパレスチナ初取材から、30有余年中近東を見続けてきたジャーナリストが独自の視点をお届けします。

イラクでの人質の釈放を求める声

2005年12月09日 | Weblog
 11月26日にバグダッドで武装組織に誘拐された4人の外国人の釈放を要求する声が、パレスチナで高まっています。
 人質になっているのは、74歳の英国人、54歳の米国人、そして41歳と32歳のカナダ人です。4人は全て人権擁護組織「CPT(キリスト教徒平和仲裁団)」のメンバーで、イラクで人権活動をしており、誘拐されたこの日も、米軍やイラク警察に拘束されているイラク人の人権について話し合うため、イスラーム宗教者グループとの会議に出かけるところでした。
 4人の内3人が以前パレスチナ自治区で「人間の盾」として人権擁護活動をしていたところから、パレスチナ社会では4人の釈放を求める動きが出ています。
 パレスチナで有名な宗教者、イクレマ・サブリ師は、
「人質になっている人たちは、パレスチナの側に立ち、我々を(イスラエル軍の手から)守ってくれた」と、直ちに釈放するよう武装組織に訴えています。他にも、3人が活動をしていた地域の市長や住民の代表がアピールを出しています。
 「正義の剣旅団」を名乗るグループは6日、人質を写したヴィデオ・テープをTV局に送りつけ、「米英に拘束されている仲間全員を8日までに釈放しなければ4人を殺す」と発表しています。釈放期限はその後、10日に延期されました。
 武装組織は4人をスパイとしていますが、CPTは中東地域、特にパレスチナでは長年にわたり人権擁護活動を行なってきた実績のあるグループです。特に、2000年9月に始まったインティファーダ(民族蜂起)では、ISM(国際連帯運動)と共にパレスチナ人住民をイスラエル軍から守る役割を果たしてきました。私も現場では彼らの姿をよく目撃していますが、活動家達の平均年齢が高く、若いイスラエル兵を諭す役割を担っています。しかし、いくらグループとしても個人としても豊富な経験があるからといってイラクにアメリカ人やイギリス人を送り込んだのは、イラクの状況を考えると、適切な判断とは言いがたいですね。

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