浅井久仁臣 『今日の中東』

1971年のパレスチナ初取材から、30有余年中近東を見続けてきたジャーナリストが独自の視点をお届けします。

死者に鞭打つ米マスコミ

2004年11月16日 | Weblog
 全米で多くのマスコミがアラファト前議長の死を差別的に扱い、米国民に反パレスチナ感情が生まれるのではないかと心配されます。在米アラブ人差別防止委員会(ADC)は12日、具体的にTV番組での発言を取り上げ、警鐘を鳴らしました。
 まず槍玉に上がったのは、MSNBCTVの週末人気番組「Imus in the morning」で、司会者がアラファト氏を「臭い」「ねずみ」「ビー玉のようなくりくり目」とくさし、調子に乗ったゲストの一人にいたっては、「葬式に集まった群衆は、けだものだ」「あまりに非衛生だから(当局は)ヘリコプターから(群集に)石鹸を蒔いたのさ」とまで酷い表現を使っています。同じMSNBCのほかの番組でも司会者が「アラファトは近代テロリズムの父。9.11のゴッド・ファーザーだ。(死去は)厄介払いだ」と手ひどくこき下ろしました。それに対して、ゲスト出演していたパレスチナ駐米代表が反論を試みると、ゲストの一人が「カネはどこだ?」とアラファト前議長が私腹を肥やしているとの報道(この一つ前の記事参照)をさして黙らせてしまいました。
 またCNNでも「アメリカン・モーニング」の司会者が「(アラファト氏が)民衆の金を騙し取ってきた」と決め付けました。
 アラファト氏の訃報をイスラエル人の中には踊って喜ぶ人たちがいました。その姿をアメリカのメディアは揃って伝えましたが、それを見たパレスチナ人がどんな気持ちになるか考えて報道したでしょうか。あの映像は、和解派のパレスチナ人でも見るに耐えないものです。あの映像と、9.11に喜ぶパレスチナ人とを同根に置くわけにはいきませんが、どちらも相手方を煽る強烈な映像であることに違いはありません。両者の幸せを願うのであれば、このような映像は控えて欲しいものです。
 





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