浅井久仁臣 『今日の中東』

1971年のパレスチナ初取材から、30有余年中近東を見続けてきたジャーナリストが独自の視点をお届けします。

危うい停戦合意

2006年11月28日 | Weblog
 イスラエルのオルメルト首相は27日、ガザの武装グループの人質(イスラエル兵)と引き換えに、イスラエルが拘束しているパレスチナ人活動家の多くを釈放する用意があることを表明した。

 この発言は、イスラエルの「建国の父」ベングリオン氏の記念式典で行なったもので、前日にガザで停戦を成立させているだけに内外の注目を集めた。

 これは、イスラエル側の手詰まり感を見せたようなものである。これまで、どのようなことがあっても恩赦なり人質の交換はないとしてきたイスラエル政府だけに、イスラエル国内では首相の真意を測りかねている。また、イスラエル兵を拉致したと言われる武装組織も話が具体的でないとして回答は明らかにしていない。

 オルメルト氏はさらに、イスラエルが“凍結”しているパレスチナ側への関税や消費税(イスラエルが代行徴収している)の送金を再開する意向を明らかにした。これは、ただ凍結と言うよりも、当然パレスチナ側が手にしなければならない金で、イスラエル側が交渉に使う筋合いのものではない。

 この発言を一番喜んだのは、今年初めから給料が滞ったまま放置されているパレスチナの公務員であろう。彼らの給料の多くはこの金でまかなわれているからだ。

 イスラエル側主導の今回の和平の動きは、今のところ、イスラエル、パレスチナ双方とも国民レヴェルでは朗報と受取られていない。それは、この停戦合意に多くの矛盾・問題点があるからだ。今朝のイスラエル各紙でさえ懐疑的な論調が目立つ。

 昨夜もまた、パレスチナ武装組織の放ったロケット弾がイスラエルに着弾した。幸いにして犠牲者は出ていないが、これを見ただけでも今回の停戦が危ういものであることが分かる。

最新の画像もっと見る