浅井久仁臣 『今日の中東』

1971年のパレスチナ初取材から、30有余年中近東を見続けてきたジャーナリストが独自の視点をお届けします。

入植地撤退報道の見方

2005年07月21日 | Weblog
 イスラエル入植地のガザ撤退が来月に予定される中、ここ数日、撤退反対グループが大規模なデモを仕掛けています。欧米のマスコミの中には、「居住権を奪われた被害者」であるかのような論調で報道しているところもあります。
 しかし、皆さんに確認しておいて頂きたいのは、ガザはパレスチナ固有の領土であるにもかかわらず、イスラエル軍の保護の下で入植者グループが強引に入植地を作り続けてきたということです。また、イスラエルは、「入植者を守る」「“テロ攻撃”を未然に防ぐ」という“大義(にはなりえないことですが)名分”を前面に押し出し、軍事占領をしてきました。全世界を震撼させた「自爆テロ」が誕生したのは、紛れもなくこの入植地と軍事占領が原因ですが、その原因よりも悲惨な現象のみに世界の耳目が集まり、「パレスチナ人は野蛮」と決め付ける声も出てきてしまいました。
 ガザからの入植地撤退がどう進められるかは、今後の中東和平の行方を占う試金石と言っても過言ではないでしょう。入植地はガザだけではなく西岸地区にも存在します。というよりも、西岸地区にほとんどが作られています。パレスチナ側にとっては、ガザからの撤退も重要ですが、西岸地区全土が完全に自分の手に戻されなければ、中東和平はありえないという立場です。それは、当然と言えば当然の話です。突然、外地から「ここはユダヤの約束の地だ」と、大挙してユダヤ人が押し寄せてきてイスラエルを一方的に建国して、それまで住んでいた先祖伝来の土地の半分以上を奪ったのです。西岸とガザは、パレスチナ人にとって、譲歩に譲歩を重ねた上で最後に残された「祖国」なのです。なのに、その祖国も、軍事占領下、様々な理由をつけられて強制的に土地を奪われ、そこに入植地を作られてきました。
 イスラエルにすれば、ガザからの撤退でもめればもめるほど、欧米諸国の同情を買う事が出来、次に控える西岸地区の入植地問題を有利に進められるのです。ですから、間違っても、ガザの入植者への同情や理解はしてはならないのです。
 

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