
赤羽台の台地の南側の縁。道路脇に3棟だけ残っているYの字型の団地。昭和30年代に建てられた団地でよくあるこのデザインに見覚えがある方も多いかと思われます。

このタイプを「スターハウス」と言います。4~5階建ての建物の1フロアに3つ部屋があり、それぞれが中央にある階段から120度の角度で突き出しています。
この建物の存在意義は二つあります。ひとつには少しでも採光と風通しの良い部屋を作ろうとした結果生まれたデザインであること、
もう一つは同じ形の直方体が漫然と並ぶだけで単調になる団地の景観に変化を生み出す効果を求めて。
(このように景観的にアクセントをつける目的で建てられたものを「ポイントハウス」と呼びます。)

ただの直方体の集合住宅でもそれが建てられた1960年代においては未来的な憧れの住宅でしたが、スターハウスはその中でも特に象徴的な未来でした。


赤羽台団地でもスターハウスが建てられたのは赤羽駅に一番近い高台の端。
当時は周辺にこれより高い建物はもちろんありませんので、スターハウスがずらりと並んだ姿は駅や下の道からとてもよく見えたはずです。

スターハウスの間取りの例。明るく風通しも良かったが全方向が窓になるため家具などの配置がしにくいという声もあったとか。

スターハウスは全国の公団住宅や社宅に数多く作られましたが、面積当たりの個数が少なく、形状が複雑で建設コストも嵩んだために1964年を最後に作られることはなくなりました。
古い団地が次々と取り壊されていく中で、日本に残るスターハウスの数も徐々に減少しつつあります。赤羽台でも2019年3月現在で残っているのは42~44号棟の3つのみ。
この3棟に関しては日本建築学会が昨年保存活用に関する要望書を提出しています。一部転載します。
独立行政法人 都市再生機構
理事長 中 島 正 弘 様
UR 都市機構赤羽台団地の既存住棟(41、42、43、44 号棟)の
保存活用に関する要望書
(前段略)
赤羽台団地はこのように戦後日本の団地の名作として知られていましたが、(略)建替えが進められております。
その中で敷地の東側と南側には竣工当時の建物が複数残されておりますが、これらについても建替えの計画が進み、貴重な歴史的建築が失われつつあることを危惧しております。
建替えが着手されていない街区の中で、歴史的価値の高い住棟群が状態良く残る場所が、南東の崖線沿いに位置する三角形の敷地です。
ここにはポイント型住棟(スターハウス)3 棟(42〜44 号棟)と標準型北入り住棟1棟(41 号棟)が残り、竣工当時の赤羽台団地の風情と景観を現在に伝える重要な場所となっています。
他の団地でもスターハウス 1 棟が保存された事例はあると仄聞しておりますが、3 棟がオリジナルのまま残るのは希少な事例になります。
赤羽台団地は昭和の時代のわが国の住生活環境を示す文化資源といってよいものです。貴下におかれましては、上記のポイント型住棟を中心とした 4 棟を保存し利活用されることで、
わが国の貴重な文化資源の保存に貢献することをご理解いただき、よりよい活用計画の策定をご検討下さいますよう、お願い申し上げる次第です。(略)
一般社団法人 日本建築学会
会 長 古 谷 誠 章
「文化資源」「歴史的建築」という言い方をしていますが、確かに未来の人から見れば残れば「遺産」になるのは間違いないでしょう。
さてどうなることか。ゆるく見守っていきましょう。とりあえずまだ3つ残っている段階で写真を獲れたことを良しとします。
私が住んでいたのは普通の長方形でしたが、友人が住んでいて
遊びに行ったことがあります。
確かに家の中が明るかったですね。
まさかあれが文化資源になる日が来るとは思いませんでしたが。
スターハウスという言葉を聞いたのは最近です。
子供の頃はは「星型アパート」って言ってました。
https://www.ur-net.go.jp/aboutus/press/lrmhph000000zic3-att/ur2019_press_0719_akabanedai.pdf