最高気温22、8度。午後も雨、ポチャポチャと降ってマス。
ヒマにまかせて、旅雑文を書いてしまいました。キョーミない方はトバしてね。
♪6月は蒼く煙って なにもかもにじませている♪
ラジオからユーミンの「雨のステイション」が流れてきた。
雨にけぶる切ない情景が目にうかぶ曲をきけば、
そうだ、はじめての長いひとり旅の初夜は、「雨のステーション」だったなぁ、とナツカシク思い出す。
ある年の夏のはじめ、オートバイに荷物を積んだ僕は、
九州博多の友人宅を目指して、高速をひたすら西へ西へ走っていた。それは、長いソロ旅の初日。
夕刻。関門海峡を渡り、九州に入ると、雨が降りはじめた。
高速を降り、小さな町に入る。短く狭いメイン・ストリート沿いに銭湯を見つけた。
バイクを止め、銭湯から出てきた人に、安い宿か、野宿できるようなところがないか?
と周辺の宿情報を聞いた(テントは持たず、野宿が多い旅だった)。
その人は、「安宿以外に、近くに無人駅があるよ。旅の人が泊まるコトもあるよ」と教えてくれた。
⦅当時の(30年以上前の)田舎町近郊には、泊まれる無人駅(本来はダメだろうけど)がまだあったのだ⦆。
(風呂は後にして)無人駅にゆくと、うす暗いさびれた小さな駅の前に、一台の大型バイクが止めてあった。
先客がいたのだ。ハナシをすると、僕と同じようなルートで旅をしている少し年上のライダーKさんであった。
思わぬ場所で同類に出会えた僕は、ほっと安堵をおぼえた。
なにしろ、はじめてのひとり旅の初夜なのだ。
小雨降る中、Kさんと町まで連れ歩き、風呂に入ったあと、食堂で夕飯を食べながらいろいろなハナシをした。
そして、もう電車も乗客の気配もなくなったがらんとした駅に戻り、小さな酒宴をしたあと、シュラフに包まった。
硬い板の寝床と(蚊取り線香を焚いても)しつこい蚊のコーゲキに、あまり眠るコトができなかった。
翌朝、薄暗いうちに僕が目をさますと、もうKさんの姿はなかった。
切り取った一枚のメモ用紙に、「気をつけてよい旅を!!」と書いてあった。
住所などの連絡先はなかった。ひと言お礼が言いたかったのだが・・・。
駅の外へでると、雨はあがっていた。
速くながれる雲間から、チラチラと見える青空を見ながらひとりごちた。
「さぁ、旅がはじまった。今日は、どんな新しい景色と人と出会うのだろうか」
♪声にさえならなかった あのひと言を 季節は運んでく 時の彼方♪
僕の「雨のステーション」でのデキゴトが、
時の彼方から鮮明に蘇ってくるのは、あのひと言を言いそびれたからだろう。
―はじめての長いひとり旅の初夜を楽しいものにしてくれて― ありがとう、と。
*画像は、ある春の高知旅。