金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

民主主義の賞味期限(3) ノブレス・オブリージュ復活? 帝政への道?

2019-01-29 12:11:48 | 金融マーケット
 民主主義が安定するためには、政治リーダーを輩出する母集団として、ある程度の上層階級の形成が必要であるともに、かれらの存在を国民に是認してもらう前提条件として、ノブレス・オブリージュの精神があると前回述べました。

 実際、19世紀の英国やフランスの貴族の若者たちは、世界各地で発生する紛争に対して、自ら進んで従軍し多数の戦死者を出しています。また、ついこの間まで、アメリカの大統領候補になるためには従軍経験が必須でした。父ブッシュは太平洋戦争でグラマンのパイロットであり、ゼロ戦に撃墜されたにも拘らず、無事生還したエピソードが有名でした。共和党候補になったマケイン上院議員はベトナム戦争時に捕虜になり、長期にわたる拷問を受けたながら、これもまた無事生還した英雄でした。

 しかし、現在の世界各国の政治リーダーや官僚・企業経営者・富裕層はどういう状況でしょうか?
 従軍経験の乏しさはもちろんのこと、資本市場の合理性の帰結として、あまりに行き過ぎた格差拡大を是認するばかりで、「取り残された人々」への配慮に欠ける輩が多数になっています。
 取り残された人々の閉塞感とは、「真面目にコツコツ働き」、「紛争があれば国のために命を懸けて戦い」、「国外で苦労する人々がいれば、積極的に移民として受け入れ」、「それなのに、自分たちは、親よりも子が、子よりも孫が、豊かになっていくことが実感できない」というもの。
 一方で、特権階層ともいえるリーダー層・富裕層には、いざとなったら命を懸けて自分たちを守ろうというノブレス・オブリージュの精神が見えないばかりか、ぜいたくな暮らしをただ満喫しているだけの存在に見える。それなら既存の支配層の言うことなんか信じるものか、ということになっているのだと思います。

 民主主義の賞味期限を延ばしていくためには、時間がかかっても、ノブレス・オブリージュの精神が溢れるリーダー層を育てていくしかありません。それが間に合わなければ、過去の歴史と同様、独裁的な帝政の時代へ向かうことになると思います。
 その時、金融マーケットはいったん「爆死」することになりますので、民主主義の情勢は最大のリスク要因だと認識しておきましょう。

 ちなみに、ポピュリズムにより民主主義が壊れかけている危険地帯は幾つかありますが、我々にとって最も身近な地域が朝鮮半島です。民主主義の最前線が38度線のままか、対馬海峡になるのか、ここは改めてテーマにしたいと思います。


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