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『ショートソング』枡野浩一

2007-10-22 21:34:05 | book
7月6日が何の日かは知らないけれど、随分以前は百人一首はほぼ暗記していた(させられた?)という、まるっきり試験対策な短歌知識しかないワタクシです。コンバンハ。
で、「7月6日はサラダ記念日」と胸を張って答えることのできる方はすでにお読みになっているかもしれませんが、『ショートソング』を読みました。

著者の枡野さんも書かれているように()、青春小説の王道を行く甘くて苦くてすこし酸っぱくてとびきり楽しい小説でした。

小説は、イケメンハーフなのに気弱で自身の無い大学生・国友くんと天才歌人でプレイボーイのメガネ男子なデザイナー・伊賀さんの日常が短歌を中心に短い文章で綴られています。
二人のキャラクター設定も楽しいけど、小説の中に登場する短歌たちが実にいきいきとしていて面白い。。
5・7・5・7・7(字余りもあるから、正確には違うけど)という短い言葉でその瞬間の空気とか記憶とかをザクッと切り取る感性の凄さに、ノックアウトですよ。
で、その短歌がまた小説にまあるく収まっているんですね。
最近短歌をまるで知らない私には、「あれ、短歌ってこんなに剥き出しでいいの?写真よりも生々しいよ」なんて思ってしまう歌もざくざく出てきて、結構動揺してしまいましたよ。下ネタ全開だしね。
でも、その若い短歌たちが無敵にいろんな色の光を放っていて、どれもこれも愛おしい。

その中から、なんとなく好きな歌たち。
・好きだった雨、雨だったあのころの日々、あのころの日々だった君(枡野浩一)
・あきらめた夢のひとつもある方が誰かに優しくなれる気がする(柳澤真実)
・なんだっていいから自身が持ちたくて毛糸洗いをアクロンでする(仁尾智)
もっとドラマティックでハラハラする歌もたくさんあってなかなか強烈だけど、今日の気分はこんなんでした。

「携帯小説」として連載されていたようなので文章は短くて読みやすいし、とにかくクスクスと笑いっぱなし。
私的ツボは、瞳さんのエッチDVDを巡る国友くんと伊賀さんの噛み合わない(表面は噛み合ってるんだけどね)会話。いやー、可笑しかった。国友くんは真実を知ったらどう反応したのかな?
イケメン国友くんがツタヤでエッチビデオとサンボマスターを借りるのにも笑わせられました。
吉祥寺が舞台で、実在するカフェもたくさん出てきます。茨城住まいの私には、2つくらいしか分からなかったのが残念。

伊賀さんはね、酷いオトコなんですよ。どこまでも強気なプレイボーイで、女の子は自分と付き合うためにあるって思ってるみたいな。で、飽きて捨てることに何の罪悪感も抱いていないような。
私の周りにはプレイボーイな友達なんていないから聞けないけれど、プレイボーイな人がいたら聞いてみたい。こんなオトコをどう思う?酷い奴でしょ。
でもね、小説ではちゃんとオトシマエ付けてくれてます。
だって、そこはほら「青春小説」ですからね、だいじょうぶです。
あ、最後の短歌も「だいじょうぶ」で始まっています。気になるでしょ?


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