勤労感謝の日、念願の
武相荘へ行って来ました。
茨城から東京へ出て、新宿から小田急に乗り、鶴川駅で降りてバスで5分ほど。程よく田舎で、駅から畑が見える風景に少しホッとしました。とても空気が冷たく寒い休日でしたが風の冷たさが気持ちよく、背筋をぴんと伸ばして白洲正子さんが過ごした家に行けるという嬉しさを詰め込んでバスを降りました。
受付で入館料を払って奥へ進むと、白壁に蔦が映える茅葺屋根の住宅が現れます。
「写真で見たままだ!」と当たり前のことに感激する私たち。
ひっそりと庭の片隅に佇む石仏が素敵です。
丁寧に、しかし少しあそびのある庭の石畳。”シック”という言葉がよく似合うなぁ。
白洲邸にあると、金魚やめだかたちも特別に感じてしまう。我が家のめだかちゃんのおうちにも睡蓮を入れてあげようか。
武相荘の中は写真撮影ができないのですが、土間、囲炉裏端、奥座敷、書斎と正子が暮らした様子の一端を伺うことができます。詳しくは、武相荘のHPの「邸内の道しるべ」をご覧ください。
内容はその季節ごとに変わるようですが、奥座敷に掛けてあった栗が描かれた黒の紬(?)が素敵でした。
お軸は熊谷守一で「ほとけさま」。味わい深い書に嬉しくなってしまう。守一さん、好きなんです。凄く凄く突き抜けた人で、めちゃめちゃに苦しく救われない生活の中で途方も無く明るい絵を描いた人。「好きな言葉は『青蠅』」なんですよ、守一さん。それを知っただけで凄く好きになってしまいました。そして、正子さんも守一が好きだったってことを後に知ってまたまた嬉しくなってしまいました。
書斎もまた非常に興味深く拝見しました。正子さんが愛した本がおそらく当時のまま本棚に納められており、時間があって手に取ることが許されるのなら(棚のまわりは立ち入り禁止なので、遠目に眺めることしかできない)一日中でも本棚にへばりついていたいと思わせられるような魅力的な場所でした。南方熊楠や西行法師、仏像についての本を見つけては(つまりは私も興味がある分野)、ふふふっと頬を弛ませていました。
ギャラリーでは『武相荘―秋~次郎と正子の暮らし』展と特別展示「白洲次郎~占領を背負った男」が開催されていました。
実は、白洲次郎という人についてまったくと言っていいほど興味も知識もなかったんですが、この特別展示を見てとても心を惹かれました。
ウィキペディアで見ると、正子よりも次郎の方が多く紹介されているんですね。なんたって、日本国憲法の成立に関わった日本で始めてジーパンを履いた男(!)ですものね。しかも、ハンサム!遺言が「葬式無用、戒名不用」っていうのも素敵です。日本語よりも英語を使うときの方が饒舌で、夫婦間でも時折英語で会話していた、なんてエピソードににやにやしてしまいます。
私が勝手に決め付ける日本一シックな夫婦ナンバーワンは、間違いなくこのお二人です。
個々として自立していて、その上で愛し合っている夫婦。いいなぁ。
後日、我が家ではシックとは程遠い会話が交わされました。
私「武相荘に行って来たよ」
妹「何それ?居酒屋?」
私「違うよ、白洲正子と白洲次郎のおうちだよ」
妹「ふーん、どこにあるの?つくば?」
私「東京の町田だよ。もともとは農家だったのをおうちにしたんだよ」
妹「で、誰なの?マサコとジロウって。漫才師?」
私「……」
私が訪れたとき、武相荘の屋根はかなり傷んでいて危険な状態にさえ見えたんですが、12月から1月に掛けて葺き替え作業を予定しているそうです。ヘルメットを着用して作業の様子も見られるようですよ。
雪化粧をした武相荘もまた秋とは違う表情を見せてくれるんでしょうねぇ。