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映画や歌舞伎、音楽などのアブクを残すアクアの日記。のんびりモードで更新中。

三越歌舞伎「傾城反魂香」

2007-10-28 00:16:41 | kabuki
三越歌舞伎に行ってきました。初・三越劇場でしたよ。
以前、三越をお買い物中に「デパートの中に劇場があるなんて不思議ー」とぼんやり思っていましたが、そこに足を踏み入れるなんて想像してもいませんでした。
その三越劇場。客席数516席の小さくてクラシカルな雰囲気のある味わい深い劇場でした。大理石の柱にグリーンの壁、天井にはステンドグラス。
短い花道が舞台下手の壁沿いに、上手舞台隣には義太夫の床が客席のすぐ横にありました。で、緞帳が上がると、定式幕。パリの老舗デパート・サマリテーヌに、突然歌舞伎の舞台が現れたみたいな不思議な感覚でした(すっごい横道ですが、サマリテーヌが2005年に閉店していた、というのを今知ってびっくりしました。一度行っただけですが、デパート内のレストランでセーヌ川を眺めながらいただいたランチはとても素敵だったのに…)。
三越劇場については、コチラ

すでに興行は終わってしまいましたが、三越歌舞伎の感想をすこし。

「傾城反魂香」というお芝居は、あまり好きじゃありません。吃音であることが大きな障害であるにも拘らず絵師として頑張る又平は偉いぞ的なところからどうも気に食わないんです。まぁ、それはそれとして横に寄せておくことにして拝見しました。

序幕
「近江国高嶋館の場」
お話の発端は、お殿様お気に入りの絵師・四郎二郎(笑也さん)が銀杏の前(春猿さん)に見初められますが、家老・道犬(猿也さん)らの計略により銀杏の前は連れ去られ、四郎二郎は柱に縛り付けられながらも自分の肩を裂いて血で虎を描くと絵の虎が飛び出てきて……という、まぁそれだけのお話。
笑也さんの四郎二郎はさわやかで素敵だし、春猿さんの銀杏の前も華やかで可愛かったけど、この二人が入れ違ったらそれも面白そうだなぁと思って拝見しました。色気のある二枚目と清楚なお姫様で、こちらもお似合いになるんじゃないかしら。
この場の功労賞(?)は絵から飛び出してきた虎でしたね。猿也さんたちを相手の立ち廻りは走ったり立ち上がったり大活躍。足で体を掻く仕草の可愛らしさや賢い様子にニコニコでした。
「同 塀外竹薮の場」
こちらの場は、連れ去られた銀杏の前を守るために四郎二郎の弟子・雅楽之助(段次郎さん)が大奮闘。
すっきりと端正な姿も素敵でしたが、死を決してからの気の流れが変わったような立ち廻りの凄まじさに圧倒されました。
舞台も劇場も小さい分だけ、役者さんの息づかいがもろに感じられて非常に面白かったです。江戸の芝居小屋の規模はこんなふうなのかな、と想像しましたよ。

二幕目
「土佐将監閑居の場」
25分ほどの休憩を挟んで二幕目。
お芝居の冒頭に出て来る虎は、四郎二郎の描いた虎だったんですね。
先ず、修理之助(弘太郎さん)がすっきりと品の良い武家の出の若い絵師といった風情でよかったです。表面だけじゃなく、性根がきちんと入っていてね。
でも、やっぱり笑三郎さんのおとくが素敵!夫思いで情が厚く、明るくてけな気で。右近さんの又平も若くてとぼけた味がおかしくて、とてもいい夫婦でした。
最初に書いたように、「ども又」の設定は好きになれないけれど、障害を持つことが一人前ではないと認識されていた時代に立ってみると、又平の苦悩は計り知れず、自由に動かない口に手を当てて苦しみ嘆く又平がリアルに浮き上がってきて、言いようのない悲しみを覚えました。
そして、苦しむ又平に寄り添い優しく手を撫でるおとくがとてもとても素敵で、羨望の眼差しでこの若い夫婦を眺めてしまいました。
最後は、銀杏の前を救うために又平夫婦は出立しますが、このときは花道を行くのではなく、客席中央の通路を通っての引っ込みとなりました。
チョコチョコと動く又平と夫を気遣う優しいおとく、右近さんと笑三郎さんのカップルは持ち前の明るさと清々しさでとてもとても大満足でした。
銀杏の前は無事に救出できたかしらね?


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2 コメント

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おそるべしおもだか屋 (Sa)
2007-10-28 22:20:50
実はね、今までみた吃又の中で、ワタシはイチバンつぼにはまった夫婦でした。
今まではどうにもぴんと来なくて~一所懸命又平を、そして、おとくを演じているのは分かるんですが、どうにもわざとらしい。今回の右近さんと笑三郎さんはすとんと落としてくれたなあと思いました。(右近さん、ひと皮むけたなあなんておそれおおくも思いました)

それにしてもおもだか屋、芸達者が多いですよねえ。ひとえにご尽力・ご努力を感じます。
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ベストカップル♪ (アクア)
2007-10-31 00:56:02
おもだかやさんの又平夫婦、最強でしたね!
私も以前に見たものよりずっとしっくり来たんです。観劇歴が浅いからかなぁと思っていたんですけど
チラシを見たときに「若い又平だなぁ」とぼんやり思っていたんですが、お芝居を観てその若さがすごく生きているなぁと楽しくなりました

12月の歌舞伎座でどんな鬼女たちに会えるのか、今からワクワクしています。
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