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『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦

2008-02-20 22:31:00 | book
芥川賞や直木賞を始めとして文学賞といわれる賞は、実にたくさんありますね。泉鏡花賞、江戸川乱歩賞、日本ファンタジーノベル大賞、すばる文学賞……(詳しくはコチラ)。
ちょっと前までは文學界新人賞が私の感覚と合っていましたが、本屋大賞が出来てからは、こちらに注目するようになりました。
その2007年本屋大賞で2位になったのが森見登美彦さんの『夜は短し歩けよ乙女』。
森見作品は『きつねのはなし』しか読んだことがありませんでしたが、怪しく不思議な雰囲気に満ちた『きつねのはなし』とは全く異なるカラフルでポップなラブストーリーが、とにかく愉快で可愛くてころころ笑って楽しみました。

内容は、こんな↓です(Amazonから)。
私はなるべく彼女の目にとまるよう心がけてきた。吉田神社で、出町柳駅で、百万遍交差点で、銀閣寺で、哲学の道で、「偶然の」出逢いは頻発した。我ながらあからさまに怪しいのである。そんなにあらゆる街角に、俺が立っているはずがない。「ま、たまたま通りかかったもんだから」という台詞を喉から血が出るほど繰り返す私に、彼女は天真爛漫な笑みをもって応え続けた。「あ!先輩、奇遇ですねえ!」…「黒髪の乙女」に片想いしてしまった「先輩」。二人を待ち受けるのは、奇々怪々なる面々が起こす珍事件の数々、そして運命の大転回だった。天然キャラ女子に萌える男子の純情!キュートで奇抜な恋愛小説in京都。

恋する女の子に近づくべく外堀を埋め立て続ける純情男子と、彼の愛する「黒髪の乙女」との一人称により物語られる総天然色の摩訶不思議な愛すべきお話。
一歩間違えたらストーカーじゃないかと思えるくらいに、ひたすら「黒髪の乙女」を追いかける「俺」。あんまり彼女を追いかけ続けていたから、とうとう黒髪の乙女の後ろ姿に関する世界的権威になってしまう「俺」。
その純情硬派な彼の存在にまったく気付かず、京都の夜を、古本市を、学園祭を真っ直ぐに闊歩する乙女。

物語は4章からなり、二人の恋愛を(というか、純情男子の一方的な片思いを)軸に、まるで目の前に映像が広がるような確かな文体で、不思議な現実感を伴ったわくわくさせられるお話が展開されます。

第1章の「夜は短し歩けよ乙女」では、「黒髪の乙女」は夜の先斗町を舞台に怪しく魅力的な登場人物とぞくぞく遭遇します。彼らはみんな普通じゃなくて、とびきり変です。あちらこちらでバッタリ出会う人たちは、少しずつ少しずつ不思議な糸で結ばれていて、最後には大団円を迎えるのですが、その鍵となるのが「李白さん」という正体不明な人物(人かどうかは不明です、笑)。
夜の先斗町ですからね、そこにはどうしたってお酒は不可欠。「黒髪の乙女」はとある理由から李白さんと飲み比べをするのですが、その対決シーンが楽しくて楽しくて、その場にいて二人を眺めている気分になります。
『千と千尋の神隠し』の油屋にいるような、『ハウルの動く城』のハウルの部屋にいるような、色彩と音に溢れた『パプリカ』の世界観が、圧倒的な力で押し寄せてきます。

小説を読んでいる間、楽しくて楽しくて早く次の章を読みたいんだけど、読み終えてしまうのがもったいないような、とても幸せな時間をもらいました。
この小説、読まなくちゃ損です。ぜひぜひ、この明るく楽しく幸せな時間をお過ごしください。
オススメ度☆☆☆☆☆


web KADOKAWA 『夜は短し歩けよ乙女』特設サイト


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