Daily Bubble

映画や歌舞伎、音楽などのアブクを残すアクアの日記。のんびりモードで更新中。

迷走する子羊たち

2007-02-28 22:17:54 | diary
4月から、我が部署の秘宝S係長が外部機関へ出向することになりました。帰ってくればそれなりのポストが用意されているらしいという噂の、悪くない話のようです。
その壮行会を開催することになり、何か記念品を渡そうということになりました。

幹事(40代女):アクアちゃん、何か記念品のアイディアある?
私(30代女):予算はどれくらいですか?
幹:3,000円から5,000円くらいかなぁ。
私:うーん、水戸までクルマで通うって言ってましたよね?通勤グッズとかはどうですか?
幹:いいね!快適クルマグッズって言ったら、やっぱりムレ防止背もたれとかかな?
私:えっ!
幹:駄目?
私:…多分。

予想外のアイテムに少し引いてしまった私…。
隣のNさん(50代女)に救いを求めました。

私:何か、お祝いに相応しい通勤グッズってありませんか?
N:うーん、ガム1年分とかは?
私:ええっ!!
N:じゃあ、フリクス1年分は?
私:…幹事さん、どうですか?ガムとフリスク…。
幹:それはちょっとねぇ…。
私:ですよねぇ。
N:じゃあ、若手の意見を聞いてみようか。

困ったNさん、我が部署最年少(!)20代(30へのカウントダウンを始めているけれど)のTくんに救いを求めることに。

N:Tくん、髭伸ばすの?
私・幹:ええっっ!!!
N:ちょっと、朝から気になっててね。
T:いえ、時間がなくて…。明日はちゃんと剃ってきます。

結局、Tくんの意見は聞かずに終了。

幹:どうしよう、アクアちゃん。
私:えっと、じゃあ課長に聞いてみましょうか!
幹:そうだね、年もTくんよりは近いしね。

そんな訳で課長(50代男)に最後の望みをかける私と幹事の先輩。

私・幹:課長、S係長に何か記念品を送りたいんですけれど、課長だったら何を貰ったら嬉しいですか?
課:そうだなぁ。俺、最近買ったのはCDだな。
幹:CDかぁ。通勤にいいかもしれませんね。誰のですか?
課:いやー、昔のニューミュージックってやつだな。2枚組の。ツタヤに置いてなくて取り寄せてもらったんだよ。
私:で、誰のCDなんですか?
課:いやー、言わせるなよ恥ずかしいからよぉ。
私:……。
幹:あのー、S係長の音楽の趣味とかって、課長分かりますか?
課:あぁ?知らないなぁ。

課長が買ったCD、なんなのか分かりませんがこんなのかなぁ、と勝手な想像。
ちなみに、課長のマウスパッドはみなみこうせつです。

結局、私と幹事の先輩とで話し合った結果、無難に名刺入れかハンカチにしようということになりました。
4月以降、こんな迷える子羊たちをちゃんと導いてくださいね神様

小淵沢 何もしない旅

2007-02-26 00:44:05 | trip
先週末、小淵沢へ行ってきました。
生憎の雨模様でしたが、のんびりゆっくりと電車に揺られ、なあんにもしない休日。

iPodからは先ずビョークとUAが流れ、そのうちにThe Radio Dept。初仕事の割には、なかなかの選曲ですよ。
映画『マリー・アントワネット』の公開に先立ってRadio Deptを買ったのに、まだ映画を観てません。音楽だけで満足してるね、私。今週こそは観に行きたいぞ。

さてさて、向かったのは小淵沢のリゾナーレ
以前から気になっていたこのリゾートホテルは、森の中にある静かで大人な雰囲気を持つ場所でした。お部屋はホテル等とレジデンス棟に分かれていますが、私たちはレジデンス棟の2階テラスを取りました。
お部屋でしばらくぼんやりしてから、レジデンス棟のあるピーマン通りのお店を探索。ここにはインテリアショップや洋服屋さんやカフェが並び、器やら家具やら帽子やらバッグやらをじっくりと見てまわることができます。干支にちなんだ雛人形が素敵でした。
ピーマン通りのショップもそれぞれが個性的で面白かったけど、居心地がよく長居してしまったのは、ブックス&カフェ。絵本、旅、デザイン、料理、ガーデンなど興味を惹かれるラインナップを、ソファや机に座ってじっくりと読む(選ぶ)ことができます。アルネやフウチも揃っていました。

お腹がすいたらカフェでお茶とケーキ、寒くなったらお風呂、喉が渇いたらお酒。
そんなふうにだらだらと何にもしないで、ただただぼんやりとするには最適のホテルでした。

お風呂は、昨年12月にオープンしたばかりの森の中にあるきれいなお風呂。
半露天のお風呂は森の冷たい空気に晒された肌を、熱いお湯が温めてくれます。
露天風呂は混浴なんですが、えいやっと混浴着を羽織って進むと、空には揺れる木々と光る星。誰もいない森の中で熱いお湯をひとり占めして見上げる空は格別です。

お風呂に入って、ご飯を食べて、お酒を飲んで、身も心ものんびりリラックスしたら、最後の仕上げはトリートメント
私は「コンフォートコンフォート」というプログラムにしましたが、セラピストの方の丁寧なトリートメントにより、心も体もゆるゆると伸びていきます。

2日目の朝は、昨日とは打って変わっていいお天気!
八ヶ岳もくっきりと白い峯を青い空に映し出していました。

この日もまた、お風呂に入って、ご飯を食べて、本を読んで、お店を覗いて。
アイスリンクもオープンしており、子供たちが滑っていました。
ゆるゆるたらたらと過ごしていたら、プールに入る時間がなくなってしまいました。それはまた、次の機会ということに。

何もしない旅は、これにて終了。
何もしていないので、これといった写真も無いのですがよかったら↓からアルバムをご覧ください。


雨降りFLY

2007-02-22 23:11:39 | diary
明日はどうやら全国的に雨のようです。
せっかくの旅行なのになぁ、とボヤいてみる。
近場の一泊温泉旅行だけど、ここしばらくお出掛けしてなかったので、お菓子を詰めたリュックサックを枕元に置いて寝付けない子供のように浮かれています。

切符、オッケー。
カメラ、オッケー。
音楽、オッケー。
本、オッケー。
着替えも水着も化粧品も、オッケー。

ハナレグミの『うららかSUN』も連れていきますよ♪

HIGH WAY スッとばせ
ごきげんな旅路へ
口ずさむんだ OLD ROCK & ROLL BAND
なつかしき あのBGM

ウララカ ウララカ

旅の準備は ALL RIGHT

iPod shuffle購入

2007-02-22 00:12:57 | diary
仕事帰りに電気屋さんに寄りました。
ナノかシャッフルか、シルバーかグリーンか。さくっと悩んで、結局予定通りシャッフルのシルバー購入。
クルマ生活だから、通勤時は使わないので何より小さくてお手頃なシャッフルにしましたよ。

iTuneもさくさく行けますね。
とりあえず、UAとくるりを入れてみました。
明日はRadio Deptとベルセバでも入れようかな。

旅行向けのナイスな音楽、どなたか教えてくださいな♪

春風/くるり

2007-02-20 00:36:01 | music
去年の夏に出たくるりのベスト”Tower of Music Lover”を引っ張り出して聴いています。
今年は春が早いようなので、『春風』が聴きたくなるのです。

揺るがない幸せがただ欲しいのです

と始まる『春風』は、当たり前のようにそこにあって何かの拍子にふと気付く幸せを、何気なく掬い取ってお皿によそったようなじんわりと温かなくるりの秀作のひとつだと思います。
「はっぴいえんど」を彷彿とさせる楽曲もまた素敵。

遠く汽車の窓辺からは春風も見えるでしょう

と歌われたら、この曲を連れて旅に出たくなります。
いえ、ちょうど旅に出る予定なのでどうやってこの曲を連れて行こうかと悩んでいますよ。
iPod、買ってもいいかなぁ(というか、実はナノかシャッフルか悩んでいる私…)。

『春風』はコチラでちょこっと試聴できますよ。
あ、旅気分に駆られますからね!ご注意を(笑)。

昨日の出来事

2007-02-18 20:58:16 | diary
歌舞伎座へ行きました。
「仮名手本忠臣蔵」を通して観ようと。
お茶を飲んで、お菓子を食べて、ゆるゆる、ゆるゆる、ゆるゆるゆるゆる……、と。
忠臣蔵的世界観は苦手だ、と勝手に思い込んでいましたが「仮名」ですからね。大層面白い一日を過ごしました。そんな訳で、昨日日記。

「大序」は、儀礼的なところが好き。「とざい、とざーい!」の声を聞くとそれだけでわくわくしてしまう。
口上人形の「いかにも」お人形なのも、楽しいね。
直義(信二郎さん)の気品、師直(富十郎さん)の狡猾さ、若狭之助(吉右衛門さん)の若さ、塩冶判官(菊五郎さん)の公正さ、顔世御前(魁春さん)の美しさが様式的に分かりやすく表されていて、素敵。

幕間。
後ろの席のオジサマが、「なるほどねぇ、なるほどねぇ」とずっと一人で納得していましたよ。イヤホンガイドに頷いているんだろうけど、お芝居中は止めて欲しい。何がなるほどなのか、気になるじゃない。まさか、サクラじゃないよねぇ。

三段目、四段目は2時間20分程の長い長い幕。
富十郎さんのいやらしさ・狡さが上手いなぁ。ねちねちだらだらといびりながらもふざけていないから、尚更いやらしいね。
扇ヶ谷塩冶判官切腹の場は菊五郎さん渾身の演技。
がらーんと広い間がまた、家臣たちの遣る瀬無い心を映しているようで悲しいよ。
若侍たちと由良之助(幸四郎さん)の緊迫したやり取りが良かった。若侍たちのみなさんの気迫がよかったなぁ。
一人で舞台に立つ幸四郎さんもよかったなぁ。

幕間。
たまたま昨日は「二の酉」だったんですね。幕間にお稲荷様をお参りしました。
1階東側の赤いカーテンで覆われた外側にお稲荷様があるんですね。歌舞伎座HPにも載ってたんだわ。
紅白の白玉が入ったお汁粉とお神酒をいただいて、ほくほく。思わずお神酒を飲み干すところだったよ。飲酒運転はまずいよ、と一口だけ。

道行は、梅玉さんの勘平と時蔵さんのお軽。憂鬱な勘平と、嬉しそうなお軽。
浮かれた明るい春の野と、お神酒のせいでうとうとうと。翫雀さんの記憶がないぞ。

夜の部までのお散歩は、お弁当を求めて三越へ。
チキンと野菜がたっぷりのサラダを買って、引き返す。

夜の部も、3階席から。しかも、昼の部よりさらに観づらい。
五段目、六段目の先ずのお楽しみは、梅玉さんの定九郎。
うーんと、梅玉さんにはやっぱり貴公子的なお役が似合うと思うのです。
与市兵衛の権一さんが実にはまってましたね。
でもこの幕で光っていたのは、東蔵さんの源六。江戸っ子の気風がトトントトンと畳み掛けるようなリズムに乗って、気持ちがいい。東蔵さんは年増女がいいな、と思っていたけどこういうお役ももっと見てみたい。
菊五郎さんは、25日間二度も切腹をするんだなぁ。残されたおかや(吉之丞さん)が哀れ。



幕間。
なぜか無性にドーナツが食べたくなり、歌舞伎座を出たら雨。
プロントに駆け込んでドーナツとコーヒーを頼んだら、コーヒーの持ち帰りはNGとのこと。プロントを出て、コンビニへ。ドーナツもコーヒーも見つからず。。やけになって、スタバへ。本日のコーヒーが「ルワンダ」だったので嬉しくなる(先日、『ホテル・ルワンダ』を観たところで、なんとなくの親近感♪)。でも、ドーナツが…。お砂糖がたっぷり掛かったドーナツなのね。私が求めたドーナツは、オールドファッション系のざくざくしたやつだったのに。結局、コーヒーだけ買って歌舞伎座へ。
ソファを確保して、チキンのサラダを食べようと取り出したところ…。
お箸がない。。。保冷材はいいから、お箸が欲しかったよ。。。。
結局、家から持ってきたバナナのシフォンケーキとコーヒーの夕ご飯。泣。友達が作ってくれたシフォンケーキはふんわりしっとりと美味しかったけど、ドーナツとサラダが食べたかったのよ。

七段目は、前段と打って変わって明るいお茶屋。三味線の晴やかな音も響いて、嬉しくなる。
そして、仁左衛門さんの平右衛門、玉三郎さんのお軽、吉右衛門さんの由良之助。今の役者さんで最高の配役じゃないかしらね。この3人にうっとりして、笑わされて、泣かされて。至福の一幕。

10分の幕間を挟んで、十一段目。
由良之助(吉右衛門さん)を筆頭に塩冶浪士たちの討ち入り姿が美しい。けど、表門の由良之助チーム(?)に対して、裏門に回る力弥(児太郎くん)チームって、ちょっと差があり過ぎない?大人なのか子供なのかよく分からん。こういうもの?
平八郎(歌昇さん)と喜多八(松江さん)の立ち廻りがリアル。歌昇さん、気合と腰が入っていて素敵!

初めて通して観た「仮名手本忠臣蔵」。「大序」と「七段目」がとりわけ面白かった。
来月は「義経千本桜」だわ♪仁左衛門さんの「すし屋」が楽しみです。


帰り道、ドーナツを諦めきれずコンビニへ。ごくごく普通のドーナツを購入。
今朝、無事お腹におさまりました。



『ヨコハマメリー』

2007-02-16 23:45:54 | cinema
父方の祖母は戦争で夫を失い、嫁ぎ先に居ることも実家に戻ることもできず、幼い子を田舎に置いて東京へ出たそうです。その後縁あって田舎に戻り、後妻として祖父の家へ迎え入れられましたが、先妻の子である伯父や伯母たちとうまく折り合いがつけられず、私が物心付く頃には祖父とともに母屋の裏手にある隠居家で暮らしていました。
祖母は孫の私には大層優しい人でしたが、客観的に見たら気骨のあるお節介が過ぎる人だったのかも知れません。
戦争を知らない私の世代には想像するのも難しいのですが、戦中・戦後の混乱というものは誰もが自分のことに精一杯でその日を乗り切るだけのカネやコメのための奔走したのでしょう。残念なことに、祖母は私に戦争を語ることなく亡くなりました。気丈な人でしたから、自らの苦しみを孫に見せたくはなかったのでしょうか。
敗戦は、男から誇りを奪い、女に生き抜く力を与えたようです。
映画『ヨコハマメリー』を観て、敗戦がもたらした(もしかしたら、私の祖母もその一人だったかもしれない)たくさんのメリーさんやその時代、私の父の世代であるメリーさんの子どもたちなどが次々と脳裏に溢れ、しばらくの間涙を止めることができませんでした。

メリーさんは、かつて横浜に棲んだ異形の娼婦です。
「皇后陛下」とか「きんきらさん」などと呼ばれ、白いドレスに白い帽子、顔も手も白く染めて、下級兵士は相手にしない美しくプライドのある孤高の娼婦だったそうです。40才で横浜に流れ、お婆さんになってもなお街に立ち続けていたそうです。
住まう部屋もなく、ビルの廊下にパイプ椅子をベッドにして寝るメリーさんは、それでも白粉を塗ることを止めず、白いドレスを着続けて横浜の街に立っていました。
田舎住まいの私は、メリーさんに遭ったこともなく、メリーさんがいた横浜もよく知りません。私の知る横浜は、みなとみらい、元町、中華街といったきらきらとした表の部分ばかりで、クレイジーケンバンドによって辛うじて本牧とか長者町とかといった妖しくダークな横浜のイメージを喚起するばかりです。
メリーさんがいなくなった横浜は、かつての猥雑なストッキングを脱ぎ捨てますます新しい横浜像を創っていくのでしょう。それが自然の摂理である以上止めることは適いませんが、少し淋しい気もするのです。「なんとなく悲しい」を内包する街だからこその魅力もあると思うのです。
映画は、メリーさんやかつての横浜を知る人たちへのインタビューを元にメリーさんやメリーさんのいた横浜を丁寧に辿ります。そこには語り手の横浜への郷愁が漂っていて、生きて動いている都市の体温を確実に感じることができます。

メリーさんを語る人の一人が、シャンソン歌手の元次郎さんです。彼はシャンソン歌手として活動する傍ら、メリーさんを支援してきました。メリーさんに惹かれるのには、若い頃の元次郎さんが男娼として街頭に立っていたこと、早くに夫を亡くし水商売で育ててくれた母と袂を分かってしまったことなどの悲しい青春の負い目のようなものがあったようです。
売春について考えることはとても難しく、法制上の可否だけでは判断できないことだと思います。身ひとつでできる最も簡単な商売というのは、売春に他ならないからです。もちろん売春行為を容認するものではありませんが、メリーさんや元次郎さんが生き抜いた時代においては必ずしもそれを否定することはできないと思うのです。
話が反れました。
ともあれ、元次郎さんはメリーさんの理解者であろうとし、金銭的にもできる限りの支援をしようとしました。しかし、メリーさんは簡単に心のうちを見せてくれるような人ではありませんし、何の対価も無しにお金を受け取るようなプライドの低い人ではありませんでした。
メリーさんの頑ななプライドは、メリーさんの最大の魅力であり攻撃だったんだと思います。メリーさんのプライドに惹かれ、そして傷付けられる。でも、メリーさんは自らのルールに法り、一人だけで生きていく。白いドレスに白い白粉で武装して、ひっそりと強烈に妖しい光を放って来る日も来る日も横浜に立ち続ける。それは、自由という檻に縛られたかつて美しかった女の姿でした。
白く白く塗りたくった白粉とドレスは、メリーさんのプライドだったのかも知れませんね。
メリーさんを知れば知るほど、どんどん苦しくなっていきます。お腹いっぱいご飯を食べさせてあげたい、ゆっくりと安心して眠れるベッドをあげたい、誰憚ることなく過ごせる部屋をあげたい。そう思った人たちがいた横浜は、すごくすごく素敵な街です。

(ここから先は、これからこの映画を見ようとしている人は読まないでくださいね。)
メリーさんの居なくなった横浜の町は、少しずつ変わっていきます。メリーさんが通ったいくつかのお店は無くなり、別のお店が建ちました。それでも毎日は同じように過ぎていきます。
元次郎さんは癌に身体を蝕まれながらも、かつて失ったお母さんを求めるようにメリーさんの行方を求めます。そして映画を観る私たちもまた。
田舎の老人ホームで「マイウエイ」を歌う元次郎さんはとても末期の癌患者には見えません。顔はつやつやと輝き、まだまだ多くの夢を持っています。
元次郎さんの歌を聴くお年寄りたちに混じって、小柄で品のある美しい顔立ちのメリーさんを見つけたとき、するすると涙が頬を伝います。その姿こそが私たちが心から望んでいたメリーさんなのですから。
にこにこと元次郎さんの歌を聴くメリーさんは、普通のお婆ちゃんです。かつてのような白いドレスと白粉で武装した姿はありません。戦争から50年を過ぎてやっと、メリーさんは平穏を手に入れたのです。元気になったメリーさんは、多くの夢を持ちそこに向かって生きていくのです。元次郎さんや仲間といっしょに。もう、一人じゃないんです。だから、私は安心して泣くことができるんです。ずっとずっと、幸せに泣くことができるんです。

主題歌がまた良くて、渚ようこさんの歌う「伊勢佐木町ブルース」。くぅぅ、たまらないよ。格好いい女は媚びずに凛として色気があるんだわ。


ヨコハマメリー

『えんとこ』

2007-02-14 20:59:36 | cinema
縁あって、『えんとこ』という映画を観ました。
不思議なタイトルは、“縁のあるトコ、遠藤滋のいるトコ”という意味で、重度の障害を持ち一人では生きることのできない遠藤さんを支援・介助する人たちの集まる場であり、遠藤さんの暮らすアパートを指します。
遠藤さんの障害は、脳性麻痺。それに加えて頸椎の変形による神経の圧迫、寝たきりでいることによる障害(全身の筋カ低下、関節の筋肉の拘縮、起立性貧血など)、褥瘡、尿路感染、尿閉など様々な疾患を抱えていますが、それでも頭脳は極めてクリアで自らが社会に与えることのできる役割を冷静に分析し、敢えて一人で生活することを選んでいるんだと思います。

生まれたときに呼吸ができなかったため、遠藤さんは脳性麻痺を持ちました。それでも足にペンを握って大学へ通い学生運動に参加、学園闘争にも加わったそうです。
障害を持つ遠藤さんですから、どうしても他の学生達の手を借りなければならない。そのことについて、常に考え続けてきた遠藤さんが出した結論は、「みんなに手伝ってもらって、やりたいことを堂々とやる」ということでした。
このことは、遠藤さんが生きていく上での大きな指針であるようです。
以下、「えんとこ」のHPから遠藤さんの言葉を引用させていただきますね。

君がいまやりたいことを
まっすぐに人に伝えながら
できないことはみんなに手伝ってもらって堂々と生きてゆきなさい
先回りして
人がどう思うだろうかとか
これはいけないことなのではないかとか
勝手に一人で考えてやめてしまう必要なんかないんだよ


さて。前置きが長くなりましたが、映画のお話。
タイトルのとおり、遠藤さんと「えんとこ」に集まる人たちを3年間に渡って撮ったドキュメンタリーです。映像は粗く音も雑然としており、神経を集中させなければ逃げられてしまいそうな映画ですが、「えんとこ」の放つ力にぐいぐいと捉えられて引きずり込まれるように拝見しました。
一日の大半をベッドの上で過ごし、食事も排泄も私たちが日常的に行うほとんど全ての行動を一人ですることができない遠藤さん。短絡的な私の脳みそでは、すぐに病院やケア施設に入居することを考えてしまいますが、遠藤さんは違います。
東京の比較的大きな通りに面したごくごく普通のアパートに一人で暮らす、ということこそに意味があると考えていらっしゃるんでしょう。普通のアパートですから、階段があり、段差があり、お風呂もキッチンも狭いごくごく普通のアパートです。私にとってはなんの変哲もないアパートですが、そこに暮らすのは重度障害を持つ遠藤さんです。まず、このことに驚きました。

遠藤さんは重度の障害を持っていますから、自分自身では起きあがることもできません。介助を受けて入浴しますが、痩せて小さく、自由に動かすことのできない体を目の当たりにして、衝撃を受けます。それでもちゃぷんちゃぷんと水音をさせてアパートのお風呂に入る遠藤さんは、実に気持ちよく嬉しそうで生きることを心から楽しんでいるような笑顔を見せていました。
そこには、命というものがはっきりと形を目に見えて存在し、そのシンプルで大胆な剥き出しの美しさにハッと息を飲みました。
命は、「生きる」「生きたい」という思いによってかくもきらきらと輝き、前進するものなのです。頑丈すぎるくらい健康な私は、生きるということの素晴らしさを忘れ、無為な日々を送り、でたらめに生活しています。それは、生に対する冒瀆なのだなぁ、と遠藤さんの笑顔に気付かされました。

めまぐるしく福祉行政が変化する昨今では、映画が撮られた当時(1997年頃?)とは「えんとこ」に集まる人たちも変わったことでしょう(本当に情けないことに、私自身地方行政に携わっているにもかかわらず福祉システムについての知識が皆無なのです。あぁ、恥ずかしい…)。この当時「えんとこ」に集まるのは介護や看護の資格を持たない学生やフリーターも多く、その顔ぶれは多彩で面白いのです。
福祉を専攻する学生が多いのは当たり前のことかもしれないけど、中にはテント生活をする男の子(!)も出てきます。彼は髪を長いドレッドにして腕にはたくさんの刺青、夜はパンクバンド(かな?メタルかな?このあたりのジャンルがよく分からん。ごめんなさい)のボーカルとして活動しています。
背が高く痩せたその男の子は、刺青の入った腕で遠藤さんをマッサージし、食事を手伝い、尿瓶の処理をします。
それがすっごいカッコイイんだなぁ。福祉って、人が人を支えるというとても簡単でファンダメンタルなことなんです。刺青の男の子は、本能でそれを分かっているんだろうなぁ。

「えんとこ」には、バンドマンの彼だけじゃなくて実にいろんな人たちが集まります。みんな、遠藤さんの介助をしたり、ただ単におしゃべりしたり、様々に集まっては散っていきます。これまでに1,000人以上の人たちが「えんとこ」を卒業していったそうです。
「えんとこ」に行けば必ず遠藤さんがいる、遠藤さんを取り巻く仲間がいる。そして、遠藤さんにはいろんな夢があり、その夢に向かって堂々と生きている。そのことが「えんとこ」のパワーであり、たくさんの人たちを集めることとなっているんでしょうね。
だって、なにもかも自分ひとりで生きていくことなんて誰にもできないんですから。だから、みんな手伝ったり手伝ってもらったりしながら、やりたいことに向かって進んでいけばいいんです。

えんとこHP

パティシエ アルチザン イタバシ

2007-02-12 23:43:24 | sweets & tea
とろとろと過ごしているうちに三連休もお終い。
お昼寝したり、本を読んだり(「窯変源氏7」読了。)、お習字したり(恐ろしいことに去年の夏から始めた書道は、自覚のないままに二級になってしまったよ。困ったものです。)、お花を買ったり、映画を観たり(ドキュメンタリー映画を2本。どちらもとても良かった!まだ頭と心の整理がつかないのですが近日中に感想を書こう。)、お茶を飲んだりで、あっという間の3日間。楽しい時間は早いものです。

何度か出かけては振られていた結城市の「パティシエ アルチザン イタバシ」のサロンに行ってきました。
お茶の時間には少し遅い夕方に行ったため、お目当ての「スペシャルデザート」(1000円)は終了。こちらはプレートに4種類のデザートが日替わりで出されるもので、友人曰く「4つの味が少しずつ楽しめて、このお値段はとてもお得よ!」。
フルーツとクリームがたっぷりのミルフィーユ(650円)も人気のようですが、お隣のテーブルに運ばれたミルフィーユのボリュームを見て今回は止めました。もっと、お腹を減らしてまいりましょう。

で、私が頼んだのがこちら。小豆のタルトです。

上はふわふわのムースで、下にはお豆がたっぷり。甘さは控えめですが、お豆の風味が豊かでとても美味しい!

友人のは、リンゴのタルト。

お味見させてもらいましたが、リンゴの甘い香りとフィリングのさくさく感が素敵でした♪

他に、お買い上げ40分以内に食べられる人だけしか買えないというモンブランも気になりました。次回は何をいただきましょうか?

『かもめ食堂』

2007-02-10 00:32:02 | cinema
パスコの食パンのCMを見て、「あ、『かもめ食堂』を観てなかった…」とふと思い立ち、DVDを借りてきました。
フィンランドで思いつくものといえば、ムーミンとサンタクロースとサウナくらい。どんな国なのかよく分からなかったんですが、少しシャイで真面目で筋の通った明るい国なのかな(だといいな)、と思います。

主演の小林聡美さんがいいんです。小さいけれどきっぱりと強くて優しくて。背筋がしゃんと伸びていて、彼女のベビーフェイスを見るとどこからか不思議と勇気が湧いてくるような気がします。こういう女性になりたいなぁ、こんなふうに年を取りたいなぁ、と思わせられる女優さんですね。
内容は、ヘルシンキの片隅であまりお客さんの入らない食堂を営むサチエさん(小林聡美)、世界地図に目を瞑って指差した先がフィンランドだったためにフィンランドにやって来たミドリさん(片桐はいり)、テレビでエアギター選手権を見てフィンランドにやって来たマサコさん(もたいまさこ)ら、「かもめ食堂」に集まる人たちの飾らない優しい美味しさを描いた映画です。
取り立てて大きな事件や深い心情といったものはありませんが、ただ日々のうつろいを確かにしっかりと感じられるいい映画だと思います。なんでもない毎日ってとても大事なことで、その日々の積み重ねが一人ひとりの人生になっていくのよね。そして、なんでもない毎日でも、いつか変わっていくのよね。そういった、忘れてしまいがちな小さくて大事なコトを思い出させてくれます。
ラストもね、とてもとても可愛くて嬉しくて、拍手してしまいますよ。
テーブルに並べられる料理がどれも美味しそうで、ゴハンを食べた後なのにおにぎりを握りたくなってしまって困りました。近頃あまり作らない梅と鮭とオカカのおにぎり。海苔でたっぷり包んでね。

私だったらどんなお店を作るかな、と少し真面目に想像してしまいました。
場所はベルギー。名前は「きりん食堂」。メインメニューは味噌汁。あはは、とてもいい加減な想像です。
でも、そんな他愛のない想像をさせてくれる温かで素敵な映画でした。