Daily Bubble

映画や歌舞伎、音楽などのアブクを残すアクアの日記。のんびりモードで更新中。

松井今朝子が面白い。

2007-11-06 22:28:02 | book
もともと、ライトな時代小説は好きでした。
畠中恵さんの「しゃばけ」シリーズとか、夢枕獏さんの「陰陽師」シリーズとか。
西條奈加さんの「金春屋ゴメス」を読んだのをキッカケに()ちょっと時代小説でも読んでみるかと思ったものでしたが、夏の暑さに読書熱が下がりここに来てまた読み始めました。

西條さんの「烏金」は、現代に江戸の街を再現したゴメスシリーズではなく、もっと忠実に江戸時代を再現した良質な時代小説でした。「ゴメス」みたいなインパクトはないものの、人情と建前とがきっちり描かれていてさわやかな読み応えでしたよ。

畠中さんの「まんまこと」もまた「しゃばけ」シリーズとは違い、江戸町人を捌く名主の息子を主人公にした謎解きのスタイルを取っていますが、淡く切ない恋心をさらりと乗せてあって、印象的なラストでした。

で、松井今朝子さん。
「家、家にあらず」「仲蔵狂乱」「一の富」「二枚目」と、何も考えずに選んで読んでみましたが、どの小説もタイプが違っていて面白い。
「家、家にあらず」は奥御殿に奉公した同心の娘が覘いた家と女の確執を、緻密な文章と構成で描いていて、女流作家ならではの視点なのかな。
「仲蔵狂乱」はぐいぐいと読み手を引き込む強烈な力を持った傑作。宮尾登美子さんの「きのね」が昭和の歌舞伎界を物語った最高傑作だとしたら、「仲蔵狂乱」は江戸天明記の歌舞伎界を描ききった最高傑作と言えるんじゃないかしら。これは、読まないと損します。歌舞伎好きもそうじゃない人も、ぜひぜひご一読。
「五段目」の斧定九郎を現在の形に作り上げた名優・仲蔵の全てを描いているんじゃないかと錯覚してしまうくらい、凄い小説だと思います。
「一の富」と「二枚目」はぐっとくだけた軽い読み物。歌舞伎の狂言作家の弟子が遭遇する事件を描いています。成せそうで成さない恋や、どこか冷めた視点は「烏金」や「まんまこと」に通じるのかな。

松井さんの作品はまだ未読のものがたくさんあるので、これからが楽しみ。さて、次は何を読もうかしら。
そして、読みつくしてしまったら…。
どなたか、オススメの小説がありましたら、教えてくださいな。

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