12月3日 師走の慌ただしい週末
仕込みの合間を掻い潜って 京都コンサートホールへ行ってきました
キエフ国立フィルハーモニー交響楽団
指揮 ニコライ・ジャジューラ
イヴリー・ギトリス & 川畠成道
ヴァイオリン2大協奏曲
メンデルスゾーン・チャイコフスキー
ドヴォルザーク 交響曲第9番 「新世界」
川畠成道氏の演奏は何回か聴いていますが
イヴリー・ギトリス氏の名前は あんずっこの勉強不足で存じませんでした
忙しくて 演奏会のパンフレットもろくに見ずにきたので
なんの予備知識もなく 会場に入りました
さて 最初は 川畠氏のメンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲
略して メンコン
・・・・・なんかなー
この曲に対して あんまり思い入れがないのでしょうかね
きっちりお仕事こなしているといった感じ
シャンプーのCM曲なんか弾けるかー! (古いなぁ・・・あたし)てな感じかな
あまりに有名で 耳にタコな曲なので 仕方ないかな
さて15分の休憩
次の曲のため ステージには 楽団員がすでに座って指揮者と 演奏家を待っている
が、
これがなかなか出てこない・・・・
5分近く待たされただろうか
だんだん会場が ざわつき始めた
ステージでは イラチなメンバーが 足をどんどん踏み鳴らして催促してる
と、ようやく登場
・・・!?
なんなんだ このジイサンは!
腰は ほぼ65度に曲がり ヨタヨタと
指揮者に 介護されるように よろよろ出てきた
手に持つ弓は 杖替わりである
大丈夫かいな このジイサン
これが イヴリー・ギトリス?
もつんかいな 最後まで・・・
ジイサン ステージの真ん中まで出てくると
コンサートマスターには ちょいと軽く握手
んでもって お隣りのファーストヴァイオリンの若くてきれいなオネエサンの手をとると
キスをしてるではないか!
それだけではない!
準備された椅子にドスンと座るや いきなり音の確認に ギーギー弾き始めるではないか
おまけに 弓を振り上げて 指揮者に向かってなにやら喚いている
前列の聴衆からは 笑いが起こっている
いったい 何が始るんだ・・・・・
第一楽章の主題が始り やがてジイサンがカデンツァ風に入ってきた
えっ!!!
なんやこの演奏は・・・
初めて聴く演奏である
こんな弾き方ありなんか???
これは 「癖」なんてもんじゃない
あまりに強烈な個性
音大の試験なら 一次で落とされそうな演奏である
あんずっこの筆力では このジイサンの演奏を表現するには無理がある
一度聴いたら
良くも悪くも
決して忘れられない演奏なのだ
いっぺんに心を鷲摑みにされるか
逆に 嫌悪を催すか どちらかである
あんずっこは どうやら前者であったようだ
ステージの真ん中まで よたよた腰の曲がったままでてきたジイサンは
演奏が始まるやまさしく別人であった
思いがけないところで激しいアタック
叩きつけるような奏法
テンポは崩す
アドリブはあり
ときおりはしょる
指揮者泣かせである
これって 評論家風に云えば 「大胆な解釈」と表現するんであろうか
とにかくやりたい放題
鉄腕アトムの 御茶ノ水博士のようなヘアスタイル
よれよれの燕尾服
ズボンの裾は 踏んづけて転ばぬ為か
脚絆のように 縛りつけている
演奏も 風貌も 半端ないんである
第三楽章
第1主題による華やかで熱狂的フィナーレで終わった
気が付くと 立ち上がって
頭上で大きく拍手をしていた
昨日まで肩から上に上がらなかった左腕があがっていた
なにやら 鼻の奥が ツーンとしていた
あー 年の瀬に 凄い演奏家に出会えた
どこのジイサンだか知らんが
少し早いクリスマスプレゼントを贈られた気持ちになった
たった一度の演奏で
ぞっこん惚れ込んでしまったようだ
アンコールは 「浜辺の歌」
先ほどまでの 叩きつけるような激しさとは打って変わって
慈しむような 静かで情愛に満ちた演奏であった
後日談
帰宅して 早速このジイサンについて調べてみた
なんと1922年イスラエル生まれ(89歳!!)
12歳でパリ音楽院を首席で卒業した後は
世界中で 著名な演奏家と共演を重ねる
世界的なヴァイオリニストでありました
なんと有名な親日家で
この御年で 今年3月に起きた東日本大震災では
被災地を訪れて慰問 チャリティーコンサートも行っている。
知らぬこととはいえ
このような著名で貴重な演奏家を
ジイサン呼ばわりしていまいました
イブリーさん
ごめんなさい
そして あんずっこの性格上
おそらく初めで最後のスタンディングオベーションさせた
素敵なあなたに乾杯です
どうか
どうか
これからも お元気で
マエストロ