問わず語りの...

流れに任せて

映画『日本海大海戦』

2021-12-17 09:39:50 | 映画

 

【皇国の興廃この一戦にあり、各員一層奮励努力せよ!】

 

※ネタバレ多々あり

 

 

Z旗が掲げられ日本の命運を賭けた、大日本帝国連合艦隊と、ロシアバルチック艦隊との一大決戦が始まる。映画は比較的淡々とした展開で、過剰なドラマチック仕立てのないところがいい。それでも演者の上手さ、演出の上手さ故か、ドラマに引き込まれ見入ってしまう。思った以上に、

良い映画でした。

 

旅順港封鎖作戦に果敢に挑む広瀬中佐(加山雄三)や、バルチック艦隊の情報を得ようと画策する日本のスパイ、明石大佐(仲代達矢)など、多角的なドラマを展開させながらも、わかりやすく見せていく。

後に映画『203高地』でも描かれる、旅順要塞攻略戦での日本兵の屍の山。乃木大将を演じる笠智衆の演技は、過剰な感情表現をせず、ちょっとした表情の動きで、その内面の苦悩を見せる。さすが名バイプレーヤー!

主人公、東郷元帥を演じるは、日本が世界に誇る大スター、三船敏郎。その古武士の如き意思の強さと、死なせてしまった部下たちへ思いを寄せる優しさと、敵敗将に示す心からの敬意など、東郷元帥の人となりを淡々と演じており、これは三船さん自身の上手さもあるでしょうが、やはり名匠丸山誠治監督の手腕でもありましょう。

 

印象的だったのはラストシーン。靖国神社を後にする東郷元帥。道行く人々はその姿に、まるで神を見るかの如く、立ち止まって一礼する。東郷元帥はそれに応えることもなく、伏し目がちに静かに歩いていく。

勝ってなお驕ることなく、勝ってこその恐れ、畏れを知る。

これが真の武将というもの、なのでしょうか。

 

さてさて、見どころは多々ありますが、私としてはやはり、円谷英二特技監督による特撮は、この映画のハイライトであります。旗艦・三笠のミニチュアは、一番大きなもので全長約6メートル近くあり、それ以外の艦船のミニチュアも大小様々、3メートル級のミニチュアだけでも42隻もあったとか。これらのミニチュアを当時東洋一の広さを誇った、「東宝特撮大プール(4000㎡)」に浮かべての撮影は実に壮観!CGでは見られないミニチュア特撮独特の迫力があります。いいねえ、大好きだ!

ちなみに三笠の6メートルのミニチュアは、長らく個人所有で保管されており、状態も比較的良好だったようです。このミニチュア、現在は福島県須賀川市(円谷英二特技監督の故郷)に建つ、「須賀川特撮アーカイブセンター(館長・庵野秀明)」に保管・展示されております。

特撮にも様々な工夫が見られ、この時代の砲弾の爆発力を表現するため、通常の爆薬の他、水中での爆発によって起こる水柱の表現に、圧搾空気を水中から吹き上げる方法を行っています。これは通常の爆薬を使ったのでは、水柱が高く上がり過ぎて、この時代のものには合わないから、ということだったんですね。細かいこだわり、こういう職人気質。やっぱり

好きだな。

 

我が国の命運を賭けた一戦。日露戦争に散った多くの先人たちあってこそ、今の私たちの暮らしがある。毎度毎度同じことばかり申し上げ恐縮ですが、やはり

忘れてはいけない。しっかりと伝えていかなければならない。

日本のために命を散らしたすべての英霊方に、感謝と敬意と哀悼を込めて

合掌。

 

この映画の撮影(1969年)から1年も経たぬ1970年1月、特撮の神様、円谷英二監督が逝去されました。68歳でした。

これを契機として、東宝の特撮部門は大幅に縮小されます。映画産業の斜陽は拍車がかかるばかりで、予算が嵩む特撮映画は敬遠される傾向にあったのです。

 

かつて世界に誇った東宝特撮も、時代の波には勝てなかった......。

 

 

コメント (2)
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