新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

学生さん向け:骨髄腫の話

2014-11-04 12:00:00 | 研修医、医学生さん向け

さて、時間があるので11月4日分という感じで記事を作っておきます。コメントの返信がないことに関してはご容赦をお願いします。

 

さて、先日から作り始めました学生、研修医向けという記事です。

 

メジャーな疾患群の中ですべてまとめてではなくて、疾患を理解するきっかけになればという感じで書いていきます。ちなみにここで出てくる学生は、今までの数年間にこんな答えを返してきた学生がいたなぁというところをミックスしておりますので、こんな答えをするのが普通の医大生と思わないでください(笑

 

ということで、骨髄腫のさわりのところです。ではでは・・・

当院、血液カンファの端っこで来る広げられている漫才(?)の始まり始まり・・・

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アン:「さて、今の患者さんは多発性骨髄腫の患者さんです。骨髄腫ってどんな疾患」

学生A:「どんなといわれても、いろいろありますので」

アン:「ほうほう。確かにいろいろあるので、一つ一つ聞いていくけど、何の腫瘍ですか?」

学生A:「骨髄球の腫瘍です(と、最近いった学生さんがいました。久々に衝撃を受けました)」

アン:「・・・えと、さっき白血病の話をした時に芽球とか前骨髄球とか出てきたよな。骨髄球は前骨髄球の後の分化段階なんだが、それが増えると?」

学生B:「あの、形質細胞の腫瘍です」

アン:「そうだね。形質細胞の腫瘍だ。形質細胞はどこで増えるんだっけ?」

学生A:「リンパ節です」

アン:「もしかすると、すごい頭がいいのかも知れないが(plasmablastic lymphomaという疾患もあります。形質細胞はB細胞の最終分化段階で、Bリンパ球はリンパ節から骨髄に来ているので・・・・どこで増えるかと言われると・・・です)、さっきの答えを聞く限りではたぶん見当はずれなことを言っている気がする(汗」

学生ら:「・・・・」

アン:「いや、この病気を診断するときどうするんだっけ?」

学生B:「骨髄穿刺をします。そこで形質細胞が増えていたり、単一性(monoclonality)をチェックしたりします

アン:「そうすると、増えている場所は?」

学生B:「骨髄です」

アン:「そう。骨髄腫は骨髄球ではなくて(まだ引っ張る)、形質細胞が腫瘍化して骨髄中で増える病気です。もちろん、髄外増殖というのもあるけど、それは学生が覚える必要性ない。それを覚えるなら、今から言うことを覚えてくれ。で、骨の中にある骨髄で増えた形質細胞によってどんな症状が出てくるんだっけ?」

学生C:「CRABです」

アン:「CRABってなに?」

学生A:「貧血と高カルシウム血症と・・・・」

学生B:「腎障害と骨病変です」

アン:「そう。骨髄は骨の中にありますが、この中で形質細胞は腫瘤形成しながら増えてきます。そのため、場所によっては形質細胞100%なんてところもある。ちなみに、骨の中で腫瘤形成しながら増えてくる形質細胞の腫瘍ですが、骨を溶かしながら増えてきます。そうすると骨がもろくなって、骨折しやすくなります骨を溶かしながら増えてくると、骨の中に合ったカルシウムが血中に溶けだして、高カルシウム血症になる。」

学生ら:「なるほど」

アン:「腎機能障害だけど、起こしやすいのはなんだっけ?」

学生C:「BJP型です」

アン:「正しいけど、正確ではないな。BJP型といわれるとIgGやIgAなどを出していなくてBJPだけ分泌していることになる。正確にはIgG型でもBJPを出していれば起こる可能性がある(もっと正確に言うと、国際医療センターの三○先生たちは、剖検例で直接浸潤もしていると報告していたと思いますが、学生が知る必要はないです)。BJPって何?」

学生C:「軽鎖です。ライトチェーン

アン:「そうね。軽鎖のmonoclonalなやつ。軽鎖って小さいでしょう?一般にはIgGとかは糸球体を通過しないじゃない。糸球体の選択指数とかで分子はIgGが来るじゃない。IgGは通過しなくても軽鎖は分子量が少ないから通過しうるのよ。そうすると障害起きそうじゃない?(正確にはこんな話だけではないのですが、学生さんにはこれで十分です)」

学生ら:「なるほど・・・」

アン:「貧血に関しては白血病と違って、ニッチをすべて押さえているわけではないので、血小板減少は来ないわけ。だから正確には骨髄抑制というべきかはわからないけど、貧血が来るというのは覚えておいてね(推測というか、個人的には造血障害ならば先に血小板が低下するはずです。赤血球だけが障害されるとすれば、赤血球の文化に影響を与える因子が出ているのか、グロビン(ヘモグロビンのうちのヘムではないほう)産生を抑えているのかと思っていますが、これまた学生さんには不必要。というか、研究している人いるのかなぁ?)」

学生ら:「は~い」

アン:「ちなみに骨髄腫は今の現状では完治させることができない病気です。そうすると早期発見、早期治療しても…治らない。むしろ症状もなかったのに治療して障害だけ残ったりしたら、患者さんのメリット少ないでしょう?だから、症状が出たとき・・・すなわちDurie and Salmon分類でⅠ期には手を出さないわけだ。(ちなみに、先月新しい基準が論文に出てきたようなので、しばらくすると治療適応に変更が加わると思います)」

アン:「ちなみに他の症状は?」

学生ら:「えと、アミロイドーシスとか抵抗力が低下するとか?」

アン:「アミロイドーシスを調べるための染色法は?」

学生A:「Congo red染色です」

アン:「国家試験的にはそれでOK。ちなみに症状はどんなのがあるんだっけ?」

学生B:「いろいろありますが、心機能障害とか不整脈とか・・・・」

アン:「いろいろって、今心臓しか出ていないぞ?」

学生C:「神経障害とかもあります。」

アン:「そうね。ちなみに皮膚とか、直腸とか、胃や十二指腸から生検することが多いのですが、腸管で障害が起きると便秘や下痢になったりします。腎臓にも障害が来ることが良くあります。国家試験にはせめて臓器くらい覚えておくといいよ」

学生:「・・・・」

アン:「ちなみに、抵抗力が下がるといったけど、どんな感染が増えるの?」

学生:「細菌とか、ウイルスとか・・・」

アン:「漠然としているな(汗。治療に伴って帯状疱疹とか起きている患者さんいるよね。そういうのもあるけど…・。国家試験的にはあまり出さないと思うので、思いつくまま答えてみなよ」

学生ら:「敗血症、肺炎、脳炎、腹膜炎・・・・」

アン:「本当に思いつくまま答えているな(汗。そうね~小児科領域で原発性免疫不全の患者さんとか習わなかった?」

学生:「病気は習いました(習ったっけ…という人間あり)」

アン:「原発性免疫不全で液性免疫不全の患者さんには一般にIgGを700mg/dlくらいまで上げるはずです。その為の治験もやっていると思うよ。それで増えるのは気管支炎や肺炎です。骨髄腫も正常な免疫グロブリンは作れないからね。けど、骨髄腫ではそういう臨床研究はされていないので、免疫不全みたいに正常なグロブリンをいくつまで上げましょうなどということは言われていない。ちなみに免疫グロブリンがかかわりそうな菌は?

学生:「緑膿菌」

アン:「はずれではないが、それどこから出てきた?」

学生:「発熱性好中球減少症の菌だから・・・」

アン:「そうか・・・。答えは莢膜を持っている菌。莢膜はちなみに持っている菌の方が病原性が一般的には高い(肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、髄膜炎菌など)。緑膿菌は普通は日和見感染の菌だから外してほしいのだが・・・。もっと簡単に言うとワクチンのある菌

学生C:「ワクチンですか?」

アン:「だって、ワクチンをうって、抗体を作って体を守らせようとしているんでしょう。そう考えれば、それができなくなったら大変でしょう。もう次の患者始まっているからここまで」

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だいたい、時間の関係でまずはここまで、次に治療とかになりますね。

 

こんなのを25~30名程度の患者さんでやっております。

 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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それでは、また

 

コメント
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