猫と千夏とエトセトラ

ねこ絵描き岡田千夏のねこまんが、ねこイラスト、時々エッセイ

猫草とこきゅこきゅ

2007年03月19日 | 
 ときどきみゆちゃんは草を食べて吐き出すけれど、あまり毛づくろいに熱心なほうではないからか、出てくるのはくちゃくちゃになった葉先と胃液ばかりで、毛玉が含まれていることはない。実家のネロなんかは、威風堂々たる外見には似合わず神経質な猫なので、しょっちゅう体を舐めて、毛玉をためている。
 以前は、「猫ちゃんの元気草」という名前で売られている麦の種を買って、専用ケースで育てていたのだけれど、手入れの行き届いていない家の庭にはところどころに葉のしゅんと長い雑草が生えており、みゆちゃんはそれを好んで食べるので、ちかごろでは麦は蒔いていない。
 庭へ行っていたみゆちゃんが、家の中に駆け戻ってきたかと思うと、変な顔をして、こきゅっ、こきゅっと体を前方に波立たせはじめた。このこきゅこきゅは、草を吐き出す前触れで、こきゅこきゅから吐くまでのあいだには、わずかだけれど猶予があるから、あわててそこらにある新聞紙なんかをつかんで、みゆちゃんの顔の前に広げるのだけど、まさにというときになって、急にぷいと顔の向きを変えて、結局じゅうたんの上にやってしまう。どうせなら、家の外で吐いてきてくれればいいのに、なぜか部屋に入ってくるのである。
 みゆちゃんが好んで食べる庭の草は、いったい何の植物なのだろうと思っていたのだが、夏になって、その疑問は自然に解けた。尖った草のあいだから伸びてきたのは、エノコログサの穂だったのである。猫草になったり、猫じゃらしになったり、エノコログサは、まさに猫のための植物である。