猫と千夏とエトセトラ

ねこ絵描き岡田千夏のねこまんが、ねこイラスト、時々エッセイ

お外はつまらにゃい!―ちゃめがうちに来た理由―(前篇)

2007年03月14日 | 
 6年くらい前、実家に一匹のサビ猫が来るようになった。眼光鋭い雌猫で、あまり人に馴れてはおらず、触ろうと手を伸ばすと爪を出す。気が強いらしく、外猫のちゃぷりと喧嘩になって、ちゃぷりは耳の端っこをぱっくり切り裂かれてしまった。
 サビ猫はしばらく外猫用のえさを食べに通っていたのだけれど、そのうち、家の誰かが、サビ猫のお腹が大きいことに気がついた。子猫が生まれたら問題である。捕まえて手術することもできないし、困ったなあ…と言っているうちに、サビ猫は、お産のために姿を隠した。
 しばらくして、サビ猫は三匹の子猫を連れてきた。茶トラ、縞ぶち、黒である。たいてい家の庭に遊んでいて、お母さんにくっついたり、兄弟三匹がひとかたまりになっていたり、それは可愛いので、生まれたら困るなんて言っていたことはすっかり忘れて、みんなしょっちゅう庭へ出て行っては、親子の様子を眺めていた。 子猫たちを馴らそうと思って、私は竿の先にネズミのおもちゃをぶら下げて、庭へ出て行った。リュウノヒゲの細長い葉のあいだをくぐらせるようにネズミを動かすと、つくばいの陰から、まず茶トラがたまらなくなって飛び出した。たよりない両腕をいっぱいにひろげてネズ公めがけて飛び掛り、猫パンチを繰り出しては後ろに飛び退る。
 茶トラの次に出てきたのは縞ぶちで、茶トラよりは慎重に、ネズミにちょっと手を出した。一番臆病なのは黒猫で、おそるおそる、物陰からでてくるのだけれど、いったんネズミを捕まえれば、ぎゅっとくわえこんで、ちょっとやそっとでは離さなかった。
 こんなふうに、私は子猫たちと遊びはじめたのである。(つづく)