シャープ & ふらっと

半音上がって半音下がる。 それが楽しい、美しい。
思ったこと、感じたことはナチュラルに。  writer カノン

あじさい寺

2006-06-21 13:29:06 | 世の中あれこれ
鎌倉・明月院。
別名・あじさい寺。

ここのあじさいは、「姫あじさい」という、
青い色のあじさいが主である。
したがって、白や紫や赤といった、
色とりどりのあじさいが咲き乱れる、という寺ではない。

だが、全国的に有名なこの寺。
あじさいもだが、参道や門前の佇まいが美しい。
広くもなく、狭くもなく、
二人でしっとり歩くのが、ちょうど良い参道。
階段と坂道が織り成す、花と道の美だ。


どうしてもあじさいが見たいと言ったあなた。
鎌倉の明月院で待ち合わせる約束をしました。
平日の午後でした。
仕事がなかなか終わらない私。
寺の前でひとり待つあなた。

ようやく仕事が終わったのは午後三時。
明月院の閉門時刻も迫っていました。
私は、東京の、会社の前でタクシーをつかまえ、
とにかく鎌倉まで急ぎました。

あなたに会うために、新調したスーツ。
そしてこのタクシー代で、
私の一ヶ月分の給料は、すべて使ってしまいました。
それでも会いたかったあなた。

閉門時間をとっくに過ぎた夕方、明月院に着きました。
私は、降り出した雨の中、
スーツを泥だらけにして、参道を駆け上がりました。

でも、あなたはいなかった。
たぶん何時間も待ったのでしょう。
そして、背中で住職が門を閉める音を聞き、
あなたはこの坂を降りたのでしょうね。

雨に打たれながら、ひとりで歩く私。
その横で、何事も知らなかったように、
ふっくら丸々と、青く咲き乱れるあじさいの花。

また、今年もあじさいの季節がやって来ました。
あれから一度も明月院には行っていません。
私は今、女房とふたりの子供と暮らしています。
明日にでも、
近くの公園に、あじさいを見に行こうと思っています。

あなたの住む街も、
あじさいが美しく咲いているでしょうか・・。



今日も明月院のあじさいは、
人々を迎え、咲き乱れている。
ふわふわと、ころころと。
コメント (2)
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