シャープ & ふらっと

半音上がって半音下がる。 それが楽しい、美しい。
思ったこと、感じたことはナチュラルに。  writer カノン

思いきり愛されたくて

2006-06-01 11:10:07 | 世の中あれこれ
歌人・俵 万智さん。
「サラダ記念日」で有名になった、現代歌人である。

現代といっても、
「サラダ記念日」がヒットし、ベストセラーになったのは1987年。
もう20年前くらいになる。
「新人類」という言葉が流行語となったこの当時、
俵さんも同じように言われていた。
しかし、今でも俵さんの歌は新鮮だ。

5,7,5,7,7からなる短歌。
それを実にさらっと読み込んでいる。
普通の言葉のようだが、
よく見ると短歌になっている・・・そんな歌ばかりだ。

「この味がいいね」と君が言ったから 七月六日はサラダ記念日

これが、題名になった歌なのだが、
本の中の何百という歌の中の、ほんのひとつの歌だ。
特別でもなんでもなく、収まっている。

この本以外にも、歌の数々を散りばめた歌集が出ている。
どれも、恋愛、生活、孤独、旅行・・。
日常のあらゆる事象が歌になっている。
ただ、今でも新鮮と書いたが、
この当時と決定的に違うのが、
俵さんには、「電話をかける」 「ダイアルする」という歌が多いことだ。
携帯がなかったこの当時、
俵さんの歌には、電話での切ない思いが多い。

「私から電話します」と言って切る 終りにできない想い切るため 
あきらめて 受話器を置こうとするとその瞬間君につながりそうで
長電話すればするほど会いたくて 切れない心 置けない受話器

高校教師でもある俵さんには、学校内での歌も多い。
一番面白い、というか「うまい」と思ったのが、

「うちの子は甘えんぼうでぐうたらで、先生なんとかしてくださいよ」

私の好きな歌は、やはり恋愛系が多い。
俵さんは私よりひとつ上。
同年代で、同じ時代に独身であったことが共感を呼んだのか。
特に、季節を織り込んだ歌が好きだ。

はつなつの公園を行くあんだんて あなたの二歩と私の三歩
「寒いね」と話しかければ「寒いね」と 答える人のいるあたたかさ

「チョコレート革命」という歌集では、不倫の歌も出てくる。

焼肉とグラタンが好きという少女よ 私はあなたのお父さんが好き

そして、その中でも私が一番好きな歌が、
6月のこの歌だ。

思いきり愛されたくて駆けてゆく 六月、サンダル、あじさいの花

きょうから6月。
ふと思い出して、俵万智さんの歌集を引っ張り出した。

俵万智さんHP「チョコレートBOX」
コメント
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