シャープ & ふらっと

半音上がって半音下がる。 それが楽しい、美しい。
思ったこと、感じたことはナチュラルに。  writer カノン

クリスマス・イヴ

2007-12-24 16:14:40 | 世の中あれこれ
世界中の子供達に、
今夜、夢が届きますように。

メリー・クリスマス
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贈られた「聖夜」

2007-12-23 21:35:11 | 人とのつながり
Merry Christmas Ⅳ

十数年前、私は合唱団にいて、
大勢の人達とのコーラスを楽しんでいた。

ある年の年末。
恒例となった、ベートーヴェンの「第九」の、
出演の依頼があった。

相手は、小さな町の、小さな合唱団。
初めて「第九」に挑戦するという。
私達のK市合唱団は、何度も第九を歌っている。
指揮者を通じて、私達に「助っ人」の依頼があったのだ。

私を含め、数人だったが、
そこの合唱団に加わり、練習に参加することになった。
お世辞にも、上手ではなかったが、
皆、真剣に練習した。

そして、本番は12月20日頃だったと記憶している。


何とか仕上がり、
本番前日、最後の練習となった。

練習の直前、団長さんが提案をした。
『せっかくなので、クリスマスの曲も一曲歌いたい。
 「聖しこの夜」はどうでしょう。
 第九を歌い終わったら、そのまま続けて歌うんです。』

皆も賛成した。
「聖しこの夜」なら、誰でも歌える・・、
と思ったが、じっくり聴かせて歌おうとすると、
意外に難しい曲だとわかる。

とにかく、この曲の2番の歌詞を皆、知らない。
暗譜なので、歌詞を覚えることから始まった。
本番まで、24時間を切っているというのに・・。
さすがに、団長さんも焦ったようだ。

結局、第九の練習の半分もの時間を費やし、
「聖しこの夜」は、形になった。


そして翌日。
第九は、練習の甲斐あって、
無事歌い上げた。

最後のエンディングと同時に、拍手が起こる。
しかし、指揮者は姿勢を崩さない。
鳴り止まない拍手の中、
私達は、ゆっくりと「聖しこの夜」を歌い出した。

客席の人々は、少しざわついた感じで拍手をやめ、
思わぬ、もう一曲の歌に聴き入っていた。

第九を歌い終えたあと、
別の曲を歌う演奏会は、そう無いと思う。
小さな町の、小さなステージだったが、
特別な時間が生まれていた。


「聖しこの夜」が終わると、
今度は、客席からさざなみのような拍手が鳴った。
先ほどの、第九の終了と同時に手を叩くような、
お決まりの拍手とは違った温かさを感じた。

団長さんが、嬉しそうに客席を見渡す。
指揮者のM氏が、満足そうに私達を見る。
そして、静かに幕が下ろされた。


そのあと、会場を移して打ち上げとなった。
団長さんが言う。

『即席の、聖しこの夜でしたが、
 歌っていてとても感動しました。
 第九も素晴らしいが、宗教の持つ曲も素晴らしいですね』

続けて、

『応援で歌って下さった、K合唱団の皆さん、
 本当にありがとうございました。
 皆さんにとって、これからも聖なる音楽に包まれますよう、
 今日の聖しこの夜は、K合唱団の皆さんに贈りたいと思います』

嬉しかった。
合唱をやっていて良かった、と思えたひとときだった。


団長さんは、
素敵な聖夜をプレゼントして下さった。
今は、合唱から離れてしまった私だが、
このステージは、記憶に残っている中で、
一番温かな思い出である。
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Tちゃんのサンタ

2007-12-22 15:41:20 | 人とのつながり
Merry Christmas Ⅲ

この話は、最も新しい、
去年と、今年のクリスマスの話になる。


昨年、一人の女性と知り合った。
病気がちの主婦さんだが、
娘さんのために、身体を張ってパートに出ている。

家庭の状況が思わしくなく、
彼女は、娘さんのために働き、
娘さんを守っていくことで必死。

しかし、真面目でしっかりした彼女には、
私も励まされ、また癒されてきた。
真の友達と呼べる人でもある。


娘さんの名は、Tちゃん。 小学4年生。
とても明るい、ハキハキした子だ。
私は、一度も会ったことがないのだが、
よく電話口で、元気な声が聞こえてくる。

一度、電話に出た時、
『こんにちはー!』と、大きな声で挨拶をしてきた。
彼女とともに、
この娘さんも、私にとっては元気の素である。


昨年のクリスマス。

彼女は、『Tには今年、何もプレゼントできない』
と、寂しそうに言った。
彼女の、去年の家計は苦しかったのだ。

しかし私は、小学生の子供には、
せめて、クリスマスを楽しんでほしいと思った。
プレゼントという、物だけが全てではないけれど、
イヴの夜、夢は見させてあげたいと思ったのである。

私は、
Tちゃんが好きな、キティちゃんのぬいぐるみと、
綺麗なチョコレートを買い、
クリスマスの前日、彼女に渡した。

彼女は、とてもクールな性格だ。
変に有難がることなく、
変に遠慮することなく、
『ありがとうございます』と言って、静かに受け取った。


彼女は、イヴの夜Tちゃんに、
『靴下ぶら下げときなさい』と言った。
Tちゃんは喜んで、枕元に下げた。

深夜、彼女は私があげたぬいぐるみとチョコを、
そっと靴下の中に入れた。

翌朝彼女は、
Tちゃんの、「わぁーっ」という歓声で目が覚めた。
そして、
「お母さん、サンタが来たよ」と嬉しそうに伝えたという。
彼女は、『良かったね』と答えた。

いや、それしか答えられなかった。


夜、メールが届いた。

『昨日はありがとうございました。
 Tは、朝からキティちゃんを離しません。
 私もチョコレート、一緒に戴きました。
 Tの前で、泣きながら食べました・・』

私は、メールを読んで、
(私のした事は、正しかったのかな・・)と思った。
同情したつもりではなかったが、
出しゃばったかな・・という思いを持った。

しかし、メールの最後にあった。
『カノンさん・・本当にありがとう。
 来年は私、頑張ります。
 Tのために、来年はいいサンタになります・・』


そして今年。
彼女は、毎日のようにパートに出て働き、
Tちゃんのために、とにかく頑張った。

家計が苦しいのは、変わらない。
しかし彼女には、去年なかった明るい表情があった。
そして、先日言った。

『今年のクリスマスは、何か買ってあげます。
 去年の、Tの嬉しそうな顔が忘れられなくて・・』


今年のTちゃんのサンタクロースは、
Tちゃんの一番近くにいる人である。
24日の夜、
今年は彼女も、去年と同じ言葉を、
まったく違った思いで言うだろう。

『靴下ぶら下げときなさい』と・・。
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先生のクリスマスカード

2007-12-21 16:35:11 | 人とのつながり
Merry Christmas Ⅱ

私は、小学生の時、
近くの英会話教室に通っていた。

といっても、今あちこちにあるような、
大手の、外人講師と話すといった教室ではない。
日本人の、若い女の先生と、
10人くらいの小学生で、
アットホームに会話をするような、そんな教室だった。


ある年のクリスマス。
教室では、
授業をせず、クリスマスパーティーとし、
一人一つずつ、プレゼントを持参することになっていた。

ところが、
その話が出た日、私は風邪で欠席していた。
先生も、10人そこらの生徒だし、
特にお知らせも作らず、口頭で伝えただけだった。

その時、私にも伝えたと思っていたのだろう。

パーティーの日、
私は、いつも通りの授業だと思い、
いつもの教科書を持って、教室に行った。

妙に華やかな教室。
机も出ておらず、
床の上に皆、思い思いに座っている。

『それじゃ、みんなプレゼントを出してね。
 英語の歌を歌いながら、プレゼントを回しましょう!』


私はそこで初めて、
その日がクリスマスパーティーで、
プレゼントを持参してくることを知った。

皆、「持って来なかったのかよー」と言う。
聞いていなかったことを先生に言うと、
先生は謝った。
『ごめんなさいね!連絡してなかったわね!』

私は、子供心に少し白けた感じになり、
先生に「僕、帰ります」と言った。

すると先生は、
『みんな、ちょっとだけ待ってね。
 んー・・、プリーズ・ウェイト・10ミニッツ!』

10分だけ待って。

その間先生は、
教室にあった画用紙に大きな顔を書き、
色を塗り、英語の言葉を書き入れた。
そして、器用に折りたたみ・・

あっという間に、クリスマスカードを作成した。


先生のカードを加えて、
プレゼント交換は始まった。
歌を歌いながら、
止まったところのプレゼントが、その子のもの。

そして・・

私は、先生のカードが当たった。

先生は私に、開口一番 『カノンくん、ごめんなさいねー』

しかし私は、とても嬉しかった。
先生の、手作りのカード。
どこにもない、世界でただひとつのもの。

私が忘れたために生まれたプレゼントが、
奇しくも私の手に届いた。

帰り際、「先生ありがとう」と言ったら、
『カノンくんに当たって良かった』と笑ってくれた。


カードの、英語の言葉は結局わからなかった。
カードも、どこかに行ってしまった。
しかし、その後大人になり、
全国の方と、文通を始めた私。

ペンフレンドさんに、
クリスマスカードだけは、毎年送り続けた。
それは、あの時の先生の記憶が、
ずっと残っていたからだと思っている。

あのカードはもしかしたら、
私の人生で、
一番嬉しいプレゼントだったかもしれない。



先生のカード、当たって良かったです。
クリスマスになると、
カードを贈りたい、って気持ちになるんですから。
大人になった今も・・。

先生、どうもありがとう。
今年も、メリー・クリスマス!
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彼はサンタクロースだった

2007-12-20 15:55:02 | 人とのつながり
Merry Christmas Ⅰ

私の知人の男性の話だ。


もう20年前くらいになるだろうか。
知人の、独身の男性がいた。
人の善い、真面目な若者だった。

ある年のクリスマスイヴ。
友達は皆、
彼女と一緒や、仲間とのパーティーに繰り出した。
しかしその彼だけは、
イヴの夜は、個人的な用事があるという。

「彼女もいないお前がどこ行くんだ?」

友達にからかわれた彼だったが、
何も明かさなかった。


しかし、人づてで、
彼のイヴの夜の真相がわかる。

彼は、ある福祉施設に行き、
サンタクロースの服を着て、
子供達にプレゼントを配っていたという。

誰に頼まれたわけではない。
バイトでもない、ボランティアだ。

サンタの服はレンタル。
プレゼントは、
彼がバイトで貯めたお金で買った、
お菓子や文房具だったという。

豪華なプレゼントではない。
でも、とびっきりの心のこもった贈り物。
なにより、
彼のまっ赤なサンタの服に、大勢の子供達が飛びつき、
帰るまで離れなかったという。

私がそれを知った時は、
もう既に、三年目の訪問だった。
そして、
彼自身が幼い頃、その福祉施設で育ったのを知ったのは、
それからもっと、あとの事である。


彼は今、
奥様と、二人の子供のお父さんだ。
彼から、プレゼントを受け取った大勢の子供達も、
今は、立派な大人になっているだろう。

今年もまたクリスマスがやって来る。
彼のようなサンタクロースと、
それを待ち望んでいる子供達が、
どこかにいる。
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27年ぶりの再会

2007-12-03 17:57:42 | 人とのつながり
先日、ひとりの女性とお会いした。
私より、6歳上の方なのだが、
私が前回、この人とお会いしたのは・・、

1980年夏。
当時、彼女は大学4年生。私は高校2年生。

27年ぶりの再会だった。


27年前・・、
バイト先で知り合ったこの女性、
私はずっと「お姉さん」と呼んでいた。
高校生だった私にとって、
彼女は、ある時は優しく、ある時は厳しく、
本当に、親身になって下さったお姉さんだった。

受験を目指していた私に、
彼女は、良い参考書や本などを教えてくれたり、
人生についてのアドバイスも、
手紙に、便箋10枚近く書き綴ってくれるなど、
本当に、大切な人だった。


彼女は、美大の学生だったが、
やがて絵画の勉強をするために、
結婚して、イタリアへ旅立って行った。
私は高3になり、
受験勉強の毎日となった。

1981年の秋。
花の街・フィレンツェからの絵葉書を最後に、
彼女との音信は不通となった。

それでいい、と思っていた。
若かりし頃の、ひと時出会った大切なお姉さん。
思い出の中にしまっておこう・・と。


しかし二年前、
彼女から戴いた手紙を、たまたま読み返し、
何か大事なものを忘れてしまった気がした。

その後の私、そして彼女の人生。
お互いに知らないままの四半世紀。

お姉さんはどうしているだろう・・

会おうとは思わない。
でも、連絡だけでも取りたい。

昔の連絡先を頼りに、
お姉さんと連絡がついたのは、間もなくのことだ。
彼女は、日本に帰っていて、
実家の近くで暮らしていた。

その後二年間、
手紙やメールで連絡を取り合ってきた。
そして・・

今回、再会することになった。


彼女は、綺麗に、美しく歳を重ねていた。
お互い、長い年月すぎて、
昔のイメージすらおぼろげになっていた。
しかし、昔の会話は、
やはり正真正銘の「お姉さん」だった。

私からの手紙は、
相次ぐ渡伊・帰国の連続で、
失ってしまったという。

しかし、そんなことはどうでも良かった。
なぜなら、
私のことを、今も変わらずに接してくださるのだから・・。


お姉さんは今、養護学校で美術の教員になられている。
毎日が、子供達との格闘だという。
多忙な中、時間を作って会って下さったのだ。

翌日、メールが来た。
『昔のままの、純な部分を持ち続けているあなたに、
 とても偉いなぁと思いました』

そう、お姉さんだから、
ずっと純でいられたんですよ・・。
思わず、そう返したくなった。


写真はスイートピー。
昔、彼女から戴いた手紙に、種が同封されていた。
結局、蒔くこともせず、
今もそのまま、封筒の中に収まっている。

スイートピーの花言葉は、
青春の喜び、別離、優しい思い出、門出・・だという。

お姉さんは、それらを知ってて同封したのだろうか。
それを聞くのを忘れてしまったが、
聞かないでおこうと思う。

27年目の、素敵な再会をしたのだから・・。
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