先日訪問した重須本門寺

重須談所の学僧であった日尊上人は、不注意がもとで師の日興上人から破門されてしまいました。

日尊上人は破門されている間も、毎年お会式には重須に参詣し、しかしお堂には上がれない身なので、堂の前の石に座って読経したという逸話があります。
日尊上人は破門の身であった30代~40代の約12年間、全国を布教して廻り、多くのお寺を建立したようです。
伊豆の真ん中に、日尊上人が初めて建立したお寺があります。

伊豆市柳瀬は、伊豆スカイラインのインターが近く、意外とアクセスしやすいです。

四方を山に囲まれた、のどかな田園風景の広がる地に、實成寺はあります。

山門です。黒門です。
伊豆市教育委員会が設置した説明板には、黒門は「緇門(しもん)」、つまり「僧侶の一門」と同じ意味があるそうです。
黒門をくぐることで、僧侶達の聖域に入ってゆくみたいな解釈でいいですかね?

ところどころに赤色のポイントがあります。
黒と赤っていうと、飲んべえの僕的には焼酎を連想しちゃいますね~

素朴な石積みの塀がお寺を護っています。
ここは古くは伊豆の豪族・大見氏の居館跡だったようですよ!源頼朝からの信頼が厚い人だったようです。

本堂です。
苦心して開山したであろう日尊上人を想いながら合掌。

石畳も昔のままです。
多少使いにくくても、こうして残していてくれると、我々信徒が往時を偲ぶきっかけになります。

山号は「東光山」です。

右側の紋は初めて見ました。内側に4枚の花びらがありますね。
左側の紋は、重須本門寺でたくさん見られましたね!鶴は日興門流の紋なのかな?あれ、でもこの鶴は右を向いてるぞ。

彫刻が見事!三嶋大社の彫刻も手がけた、西伊豆・松崎の彫り師による秀作です。

日蓮聖人のご尊像に合掌。

伊豆配流になり伊東に滞在されていた頃のお姿でしょうか。
大学教授のようなアカデミックな雰囲気のお顔をしています。

日尊上人は今の宮城県北部の出身で、もともと天台宗のお坊さんでしたが、お祖師様がご入滅された翌年に日興上人のお弟子さんである日目上人の教化を受け、日興上人の門に入ったそうです。

日目上人のお名前は、川奈の蓮慶寺で見たことがあります。
↑は蓮慶寺の歴代お上人の系譜を刻んだ石です。蓮慶寺とご縁が深いお寺なのでしょうか。

さきほどのお祖師様のご尊像の願主は、蓮慶寺のご住職のようです。
伊豆国の宗門寺院、結束堅いです!

實成寺の歴代お上人の御廟も立派です。宝塔が5つ並んでいます。
右から日郷上人、日目上人、日蓮聖人、日興上人、日尊上人の名前が刻まれています。

破門の憂き目に遭いながらも、日蓮聖人の目指す法華経弘通を貫いた日尊上人。
特に厳格といわれる日興門流を、いろんな意味で体現した方だと思います。

12年間の破門ののち日興上人に許され、遷化されるまで日興門流を支え続けました。

人生、くじけちゃいけませんね!
どん底に落ちてからの第一歩目のお寺に残る、いびつな石畳を見ながら、そう思いました。